瑠架戦争 ファーストアタック

    朱雀門・瑠架& 祟部・彦麻呂

    ●変わりゆく避難活動

     灼滅者達は『ひとつのソウルボード』によって全人類をサイキックハーツ化した。
     いまや灼滅者とダークネスを除き全知的生命体が、潜在的なエスパーなのだ。

     エスパーは、ダークネスや灼滅者と同様に『バベルの鎖』を帯びる。
    『バベルの鎖』を持つ者同士、あるいは、そうした者達からの直接的な情報伝達では、『バベルの鎖』の情報阻害効果は及ばない。
     一方でエスパー達には、一般人を対象としたESPが通用しない。
     一般人救出を担当する8H百合連合では、そうした変化を考慮した上で可能な限り一般人の被害を減らす作戦を立て、戦争前から既に動き始めていた。

    「行政への事前要請……あまりこういう機会が無い方がいいんだろうが」
    「行うのは戦争の時ですからね……それにしても、私達の状況も、数年前に比べると随分と変わりましたね」
     ニコ・ベルクシュタイン (花冠の幻・d03078)と椎那・紗里亜 (言の葉の森・d02051)が呟く。
     灼滅者達は都知事や西東京市と武蔵野市といった地方自治体の首長と接見し、住民達の避難活動を頼んでいた。
     新宿で幾度も発生した大規模破壊のことを知る人々が、いまさら灼滅者が直接伝えて来る事件の情報を否定するはずもなく、事前の避難活動や周辺の交通規制は粛々と進んでいた。
     もっとも『民間活動』により、人々を助けるものとしての灼滅者達の存在が広まりつつあるとはいえ、警察や消防との連携などは未知の領域だ。8H百合の灼滅者達は直接、そうした人々と接触し、自分達の存在と戦いに関する情報を伝え協力を求めていく。

    「サイキックハーツが出て来る以上、建物などへの被害がどうなるか分からないな」
    「逃げ遅れている人がいるかも知れないね。しっかり確認していこう」
     石宮・勇司 (果てなき空の下・d38358)と無堂・理央 (鉄砕拳姫・d01858)が、建物の内部を確認していく。
     連絡が届かない等の事情で街に残っている人々を直接避難させるのも、灼滅者達の役割だった。担当するグループを作った彼らは、ひばりヶ丘駅北西の「自由学園」敷地を避難先として、戦争直前まで現場周辺に残っている人達を避難させていく。

    ●西東京市を包む闇

     そして6月17日未明。
     膨大な数の蝙蝠型眷属が、西東京市に現れていた。
     既に避難を終え、無人となった街の中に蝙蝠の嵐の中から現れたのは、朱雀門・瑠架の軍勢だ。

    「先の提案、武蔵坂学園はどう反応するでしょう」
    「わたくしが同じ立場でしたら、受け入れるかも知れませんが……」
    「20億人から死ぬと言われて受け入れる連中ではなかろうな」
     瑠架の言葉に、2人の羅刹、聖女ガラシャと鞍馬天狗が応じる。
     瑠架の元にいる有力なダークネスは、この2人だけだ。

    『ダークネスと一般人と灼滅者の共存』を目指すソウルボードを受け入れ、『サイキックハーツ』の一人となった瑠架だが、その力は強くない。
     力の乏しさは、『ダークネスと一般人と灼滅者の共存』を志向するソウルボードの貧弱さであり、彼女が従える兵の少なさとイコールでもあった。
     大量の眷属タトゥーバットは、それを補うための苦肉の策だ。
     眷属を創造した分だけ瑠架本人の力は減ずるが、それでも単身で戦いを挑むよりはよほどマシというのが、指揮官達全員の判断だった。
    「では、さらばだ朱雀門・瑠架」
    「……失礼致します」
     タトゥーバットが展開を終えるのを待ち、鞍馬天狗と聖女ガラシャが各々の配下を率いて陣を敷きに行く。
     入れ替わるようにして現れたのは、武蔵坂学園の灼滅者達だった。

    ●交渉の申し出

    「ここを通してくれる? そちらの提案に対する返答をさせて」
     2B梅の代表者の一人である祟部・彦麻呂 (快刀乱麻・d14003)は、竜巻のように飛び交い、自分達の正面を阻んでいたタトゥーバットの群れが開くのを目にした。
    『直接聞きましょう。まっすぐ進んで下さい』
     タトゥーバットの1体が、瑠架の声で導く。
     先導するタトゥーバットに従って進みながら、彦麻呂は眷属の群れに目を凝らした。
    「……大して強くないね。それに、少ない」
     高速で飛び回っているので一見多く見えるが、そこまでの数はない。
     殲術再生弾があれば、瑠架軍を全滅させることは難しくないであろうと彦麻呂には容易に判断できた。

     やがて、彼女の眼前に瑠架が現れる。
     肉体的に大きな変化こそ見られない。
     だが、その力が武蔵坂学園に拘禁されていた頃に比べ、大幅に増していることは一目で分かった。
     そのマントの下からは、あたかも黒の王を思わせるオーラが溢れ出し、宇宙のように渦巻いている。

     だが外見的な変化よりも、その気配が異常だった。  目の前にいるのは瑠架一人のはずだが、何百という数の人々から見つめられているかのような感覚が、彦麻呂を襲う。
     瑠架でこの調子では、他の元々強かった者達の種族・思想のサイキックハーツの力は、果たしてどれほどのものなのか。
     それでも、今は瑠架を説き伏せねばならない。

    「20億人以上を見捨てろという、あなたの提案は受け入れられない。だけど、あなた達とわたし達で協調して戦うことはできないの?」
     提案が拒否されることは既に察していたのだろう。
     瑠架は、灼滅者の言葉にさしたる落胆の色も見せずに言った。
    「私の提案は既に把握されていますね」
    「うん」
    「私は自分の提案が、勝利の可能性をもっとも高め、犠牲となる命をもっとも少なくする手段だと考えています。あなた達は力を得なくてはならない。いくら全人類がサイキックハーツになっていても、あなた達が敗北し、ダークネスのサイキックハーツ同士の戦いが終結すれば、ことごとく殺され、再び知的生命体の滅亡のサイクルは繰り返されるでしょう。
     それを阻止できるのは、私ではありません」

    「分かってるんだね」
     彦麻呂は改めて確信した。
    『ダークネスと一般人と灼滅者の共存』という瑠架の理想から遥かにかけ離れた未来を遠ざける可能性のためであれば、瑠架は自分の身を捧げることすら厭うていない。
     そこに瑠架自身の生存は度外視されている。
    「それは無駄死にだよ……話し合いでなんとかできないの?」
    「私はそうは思いませんし、たとえ話し合ったところで、力を得る手段がなければ、間に合わなくなります」
    「間に合わない?」
    「敵が強大になり過ぎるからです」
     瑠架は彦麻呂の瞳を覗き込むようにして続けた。

    「サイキックハーツはサイキックハーツの力を奪い、力を増します。
     時間をかければかけるだけ、敵は強大になり、勝機は失われます。
     武蔵坂学園は現状、私以外のどの勢力に対しても勝ち目はありません。
     これは、単純に私と手を組んだところで、変わりません」

    「なら、今の私達が力を示したら……これから現れる黒の王軍を相手に勝てたら、私達の提案を聞いてくれる?」
    「黒の王? ……そうですか、私を狙って来るのですね。情報には感謝しますが、無意味な仮定でしょう。力を得ることを放棄した今のあなた方に、黒の王を灼滅することはできません」
    「諦めるつもりはないよ。たとえ、今は無理でもね」
     頑なに言う彦麻呂に、瑠架は小さく息を吐いた。
    「もし、あなた方が己の力を過信したままでいるなら、やむを得ません。
     私が自分自身での勝利を目指すしかないでしょう。
     微々たるものですが可能な限りの一般人サイキックハーツを吸収し、力を増します」
     それは瑠架にとってさえ望まぬ虐殺だ。
     いずれにしても、彼女の考えを変えるのであれば、黒の王を灼滅するしかないことは明らかだった。
    「あなたが共存共栄という考えを諦めていないのなら、色んな価値観を持つ皆で、考えて答えを出すことも認めて欲しいよ」
    「……私を助けようと考えてくれたことには感謝します」
     そう言い残し、瑠架は彦麻呂に背を向ける。大量のタトゥーバットが渦となり、彦麻呂を仲間達の元へと押しやっていく。
     瑠架の体が、タトゥーバットを吸収し大きくなっていくのが見えた。

    「キリング・リヴァイヴァーッ!!」

     強制的に退かされながらも、彦麻呂は内からこみ上げる衝動のまま、指を天高くつき上げる。
    『黒』に包まれつつある西東京市に、灼滅者達の戦いを支える光が降り注いだ。


    ●『黒の王』朱雀門・継人

     闇が、朝を迎えたはずの西東京市を覆っていく。
     鳴り響くのは、闇の奔流が引き起こす轟音だった。
     その中心に血族の存在を感じ取り、瑠架の体は冷風に晒されたように総毛だった。

    「……『黒の王』」
    『我が血族にして造反者、朱雀門・瑠架。ここで捕縛させてもらう』

     冷徹な宣言と共に、瑠架によるタトゥーバットの竜巻を、漆黒の闇が侵食していく。

     それが一方的な戦いであることは、その戦いを外から見る灼滅者達にも容易に見て取ることが出来た。
     ギィ・ラフィット (カラブラン・d01039)が目を凝らせば、闇の中には幾つもの人型の影が見えた。影の一つ一つが、ヴァンパイアであることを見て取り、ギィは小さく唸る。
    「イフリートにとってのガイオウガと同じ状態っすか……」

     全ての知的生命体が闇堕ちすると、全ての魂が1個体に集結し、最強のダークネス『サイキックハーツ』となる。
     黒の王に従うことを決めたヴァンパイア達は、既に『黒の王』という『サイキックハーツ』の元に、その魂を集結させているのだ。
     いまや瑠架のようなほんの僅かな離反者を除き、全てのヴァンパイアは黒の王の一部だった。

    「けど、今回のあれで全戦力ってわけでもなさそうっすね」

     ヴァンパイアは、瑠架だけでなくロード・プラチナにも離反されている。
     バーバ・ヤーガを除く爵位級ヴァンパイアが何をしているのかは知る由も無かった。
     市街地を覆う闇へと奇襲を仕掛けた灼滅者達は、闇から現れたヴァンパイアの頑強な抵抗に合っている。そのヴァンパイアの1体1体もまた、強力だ。
    『勝負から降りた者達が、今さら邪魔立てをするか』
    「勝手に決めつけるな。そう易々と、諦めるわけ気はない……!!」
     犠牲を出さない。そのためには勝たねばならない。その意思を示すように、声を発した闇をギィの一閃が引き裂いた。

    ●聖女ガラシャ

     天海大僧正は元々、慈眼城の分割存在化したダークネス達を外に連れ出して戦力として使っていた。
     天海、そして彼の地盤と刺青を奪った刺青羅刹『依』が灼滅されて数年が経過し、その手段は既に失われている。
     だが、ガラシャの分割存在のひとつは脱出し、瑠架によって力を与えられて彼女の傘下に加わっていた。
     もっとも、『依』に従わずに離散していた慈眼衆をかき集め、タトゥーバットを加えてもその戦力は乏しいものだ。

     そして今、聖女ガラシャの軍勢の注意は、開始された瑠架と黒の王の戦いの方に向けられていた。
     警戒の隙を突き、7G蘭の灼滅者達は聖女ガラシャの軍への奇襲を仕掛けていく。
    「瑠架軍自体、そこまで強力な戦力では無いとは思っていたけれど……」
     ライ・リュシエル (貫く想い・d35596)が放ったジャッジメントレイが、慈眼衆を貫き、灼滅していく。
    「……来ましたか。」
     ガラシャの指示の元、敵勢は守りを固めていく。既に瑠架への交渉を申し込んだ時点で、武蔵坂学園が動き出していることは瑠架軍は把握済みだ。
     戦果が落ちていることは否めないはずだが、それでも奇襲は相当な戦果をあげている。
     ポンパドール・ガレット (火翼の王・d00268)が頭をかく。
    「妙に手ごたえが無いなぁ」
    「罠ということもなさそうですね。これが、現状の瑠架の力ということでしょう」
     ステラ・バールフリット (氷と炎の魔女・d16005)は、タトゥーバットが消滅していくのを見ながら言った。

    ●アタワルパ

     ひばりヶ丘駅東側で奇襲攻撃を仕掛けた3C桜は、アタワルパ配下のアンブレイカブル達を確実に仕留めていく。個々の力では勝るアンブレイカブル達は纏まりの無いままに反撃を繰り出すが、チームを組んで挑む灼滅者達の攻撃を前に、その数を減じていた。

    「そこまで強くなっているわけでもない、か」
     仲村渠・弥勒 (マイトレイヤー・d00917)は、アンブレイカブル達の力は先のグラン・ギニョール戦争での時と変わっていないと見ていた。
     サイキックハーツとなった『黒の王』の支援を受けているはずだが、直接的に見て取れる力は、さして以前と変わっていない。
     もちろん、それが敵の弱さを意味してはいないのだが、安心材料ではある。

    「退け、邪魔だ!」
     怒号と共に、敵陣が割れ、剣をひっさげた男が灼滅者達の前に姿を見せる。
    「アタワルパ!!」
     アンブレイカブルを引き連れて現れた彼の姿に、灼滅者達は奇襲の限界点だと悟る。
     アタワルパの真正面にいた灼滅者が、剣を受けて倒れ伏したのを担ぎ上げ、榎・未知(浅紅色の詩・d37844)は告げる。
    「決着をつけにまた戻ってくる! 次こそ武蔵坂が全身全霊でお前を倒しに行くぞ!」
    「ならば、全身全霊を持って、挑ませてもらおう。そして、今この場でお前達を逃がす気もないぞ!!」
     切りかかって来るアタワルパから逃れ、灼滅者達は武蔵坂学園へと帰還するのだった。

    ●バーバ・ヤーガ

     ひばりヶ丘駅から南側の西東京地一帯には、多数の『鶏の足の小屋』が上空から降下して来ていた。
     爵位級ヴァンパイア、魔女『バーバ・ヤーガ』の眷属だ。
     小屋の入り口が開くと同時に、ヴァンパイア達が溢れ出して来る。

     だが、その目立つ移動は、1A梅の灼滅者達にとっては奇襲の良い的だった。
     細かな路地や避難が終わり無人となった民家を突っ切って、1A梅連合は眷属やヴァンパイア達に一気に接近、攻撃を開始した。
    「行くぞ!」
     先陣を切って飛び出した咬山・千尋 (夜を征く者・d07814)のエアシューズが、月弧を描いて小屋の鶏足を叩き折る。
     そのまま駆け上がるようにして叩き込まれた小屋は一瞬の炎上の後に消滅。
     内部にいたヴァンパイアが飛び出して来るのを、後続の灼滅者達が一斉に攻撃を叩き込み灼滅する。
    「撮影の方も問題なさそうだな」
     鈍・脇差 (ある雨の日の暗殺者・d17382)は、敵の返り血を拭いながら言った。
     灼滅者達の中には、撮影用のビデオカメラを持っている者達もいた。
     戦いの様子を撮影し、世界の真実を知らない人々に、さらに真実を伝えようとする考えの元、彼らは動いていた。『バベルの鎖』はいまや強い力を持たない。
     撮影された戦いの光景は、ネットを通じて配信される手筈だ。
     異形の小屋や数々のサイキック、そして灼滅されると同時に屍すら残さず消えていく眷属、ダークネス達の姿は、敵が人間ならざる異質な存在であることを、見た者に知らしめているだろう。
    「空撮班が敵の射撃の的にならないと良いのですが」
    「もう降りました。空の移動は敵の方が上ですね」
     有城・雄哉 (蒼穹の守護者・d31751)の言葉が聞こえたのか、箒を持ったアリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)達が後ろから追い付いて来る。飛行して戦況を撮影したかったところだが、空を飛んでいて目立てば良い的だ。
    「ですが、巨大な小屋は確認できました。バーバ・ヤーガはあそこにいるのでしょうが、敵の数が多く接近は難しいですね」
     ならば、と灼滅者達は敵戦力の漸減に力を注いでいく。

    ●学園防衛

     武蔵坂学園では、防衛に専念することを決めた5E蓮の指示のもと、2B桃、3C桜、4D椿の各組連合からの連絡を受け、合計16,000名からの灼滅者達が学園各キャンパスの防衛を行っていた。
     既に周辺の避難活動が終わった今、怪しい動きをしている者達がいれば、すぐにそれは判明する。
    『阿佐ヶ谷方面、ダークネスが出現しました! ソロモンの悪魔です!』
     パトロールを行っていた者達からの連絡を受け、坂崎・ミサ (食事大好きエクソシスト・d37217)は即座に学園を防衛していた灼滅者達に敵襲を連絡した。

     灼滅者達は道路の封鎖と検問を行っていた警官たちをすぐに避難させると同時に、サイキックアブソーバーや重要な人・モノを守る担当者達を残し、対応する班が学園を守るべく出撃していく。

     攻める悪魔達、守る灼滅者達。
     戦いが始まって数分のうちに、殲術再生弾を受けた灼滅者達の側の優勢ははっきりしていった。
     阿佐ヶ谷方面から現れた外見も様々な悪魔達を、灼滅者達は確実に撃破していく。
    「大悪魔を確認した!」
    「援護しますよ!!」
     敵陣を突っ切った木元・明莉(楽天日和・d14267)と、ガトリングガンを連射する加持・陽司 (陽射しを抱いて・d36254)は、一際強力な存在を視界に捉えていた。
     自分達にまで迫る灼滅者の奮闘を不愉快な様子で眺める女悪魔が、傍の鳥頭に問う。
    「黒の王に気を取られているかと思えば、存外、守りが厚いな。どう見る、アンドレアルフス?」
    「アンドラス様。私愚考致しますに、これは負け戦かと」
     その2体の大悪魔の姿に、戒道・蔵乃祐 (d06549)は『不滅の兜』で見たばかりの記憶を思い出す。
    「アスモダイ、それにアンドレアルフス……。やはり、ブレイズゲートの虜囚から脱していたか」
     大悪魔2体は、ブレイズゲートの分割存在と化していた者達だ。
     どうやら精神防衛戦に現れた分割存在だったダークネス達と同様、強大な力を取り戻しているようだった。

    「分割存在でいた間に世話になった意趣返しと行きたかったが、賭けに出るには戦力が足りぬか」
    「すっかり避難も済んで一般人相手の『殺戮』もこなせませんなぁ」
    「『殺戮猟犬』め。この私を殺戮の手駒にするなどと偉くなったものだ。……退ぞ」
     武蔵坂学園側の防衛体制が強固であることを受け、悪魔達は潔く撤退していく。
    「深追いは禁物か」
    「敵勢力は、一つじゃないからな……」
     さらなる敵襲の可能性を考えれば、学園から大勢を離すわけにもいかず、灼滅者達は武蔵坂学園の防衛に戻っていく。

    ●サイキックハーツの選択

     救護準備を行う6F菊連合は、ひばりヶ丘駅の南口ロータリー及び近隣の谷戸イチョウ公園に救護本部を設置していた。
     現在、そこには黒の王軍と交戦し、負傷した灼滅者達が次々に運び込まれている。殲術再生弾が既に発動しているが、重傷を負わぬようにするには戦闘直後の治療が影響する。
    「学園の方は防衛できたみたいね」
    『ああ。怪我人は多少出たけど、各キャンパスで収容出来ているから問題ないだろう』
     松原・愛莉 (大学生ダンピール・d37170)に、電話の向こうで武蔵坂学園内の救護拠点の一つにいた神鳳・勇弥 (闇夜の熾火・d02311)が答える。
    「今日の今日まで避難してない人達は少数みたいだから、避難した一般の……いや住民の人達については、8H百合の皆さんにお願いして大丈夫そうだね」
    「既にエスパーに目覚めた人達には『バベルの鎖』があるから、戦闘にさえ巻き込まれなければ平気なはずですね」
     エミリオ・カリベ (星空と本の魔法使い・d04722)と華宮・紅緋 (クリムゾンハートビート・d01389)は、物資が行きわたっていることを確認しながら言葉を交わす。
     たとえ移動中に交通事故が起きようと、エスパーとなった人々は無事で済む。
     その分、一般人を治療する必要は減じていた。

    「瑠架は……何なんだ、あいつ?」
     一方、4D椿の白石・明日香 (教団広報室長補佐・d31470)は2B桃の交渉結果を聞き、困った様子で他の灼滅者達に話を振った。
     瑠架は頑なだ。
     今回の攻撃を仕掛けた目的が、人類存続のための捨て石になることなのは、既に明らかだった。
     灼滅者達は、犠牲を出すことを望んでいない。
     戦術的に正しいからと犠牲を認めるのが灼滅者達の中で絶対的多数派ならば、そもそも全人類をサイキックハーツにしたりはしなかっただろう。
     では『ダークネス』で『サイキックハーツ』で『自分の死を覚悟し』『武蔵坂学園に攻撃を仕掛けて来ている敵』で『他のサイキックハーツに力を奪われそうな者』ならばどうか。

    「黒の王を灼滅でもしなけりゃ、思うようにはなりそうにないな」
    「その上で、こちらが兵を引けば、何らかの反応はあるかもしれませんが……」
     色射・緋頼 (色即是緋・d01617)もまた、断言はできない様子だ。
     装填されている殲術再生弾が現在最後の1発という事情もある。
     サイキック・リベレイターを発射すればもう1発は何とかなるが、仮に瑠架が退いて後日来られでもしたら、また厄介なことになるだろう。

    「こちらの指定した状況になった時に、皆の判断に任せるしかないか」
     果たして、灼滅者達の決断は……。
    組連合 ファースト
    アタック
    ファーストアタック結果
    1A梅 (6)奇襲 (6)魔女バーバ・ヤーガの敵戦力が200減少!
     『民間活動』として、撮影およびネット配信を行いました。
     
    2B桃 (8)奇襲(交渉) (8)朱雀門・瑠架の敵戦力は減少しませんでした。
     朱雀門・瑠架との交渉を行いましたが、心変わりさせるには至りませんでした。
    3C桜 (7)奇襲 (7)アタワルパの敵戦力が200減少!
     アタワルパはアンブレイカブル軍を率いています。グラン・ギニョール戦時と、敵個体の強さは変わっていないようです。
     
    4D椿 撤退条件 撤退条件を設定しました(下記に詳述)
    5E蓮 放棄(学園防衛専念) 学園防衛を行い、襲来したソロモンの大悪魔アスモダイ・アンドレアルフスを撃退しました。
    6F菊 救護準備 全ての戦場で、KO時の重傷/死亡率が7%減少!
     ひばりヶ丘駅、および武蔵坂学園各キャンパスに救護拠点を設けました。
    7G蘭 (4)奇襲 (4)聖女ガラシャの敵戦力が300減少!
    聖女ガラシャの連れている戦力は乏しく、かつ単体の実力も高くありません。
    8H百合 一般人救出 重傷からの復活率が48%上昇!
     行政に事前の避難への協力を要請した他、連絡が行き届いていない人達の直接避難、警察、消防、自衛隊などとの連携など多岐に渡って活動を行いました。『民間活動』の影響、および『バベルの鎖』の影響が大幅に減じたことで、効果が激増しています。
    9I薔薇 (9)奇襲 (9)朱雀門・継人の敵戦力が100減少!
     朱雀門・継人はガイオウガと同様、多数のヴァンパイアの魂を取り込んだ群体生物となっています。

    ●今回のテンションアップ

    今回はテンションアップは行われませんでした。

    ●今回の撤退条件

    下記の条件を満たした場合に『撤退』の選択肢が表示されます。
    1.第8ターンまでに「(8)朱雀門・瑠架」を攻略できないと確定したとき
    2.【黒の王軍】を3つ制圧し、「(8)朱雀門・瑠架」が残っているとき
    3.学園防衛では防ぎきれないほどの襲撃がある場合又は勝利条件、敗北条件の変更があった場合

    ●今回の不滅の兜情報

    Q:知的生命体の魂がサイキックハーツに集結して一つになった後で元通りに切り分けることは可能かどうか。それを可能とするための事前準備は存在するのか?
    A:サイキックハーツは、自身の一部となった同種のダークネスを、個体のダークネスとして分離することができる。
    (※不滅の兜には、ガイオウガとイフリートの事例のみが知識として存在します)
    (※他の種族や灼滅者、一般人、エスパーの分離が可能であるかは、不滅の兜の知識にはありませんでした)

    Q:サイキックハーツから力を奪う方法は?
    A:サイキックハーツが自らダークネス個体を分離させた際に、そのダークネスを灼滅することで、総合的な力を削ぎ落すことができる。
     強力な個体であれば、その分だけ大きく減らせる。
     ガイオウガは度重なる他種族との争いとイフリートの灼滅、龍脈を経由した力の奪取等によって力を減じた。

    Q:「朱雀門・継人」に転生以前の、黒の王の情報について。名前や、姿、性別など。
    A:『シュヴァルツヴァルト』を名乗る、ドイツを本拠地とする男性ヴァンパイアが、朱雀門・継人になる直前の黒の王だった。同時に闇堕ちした血族は不明。
     サイキックアブソーバー稼働前の『黒の夜』と呼ばれるソロモンの悪魔とヴァンパイアの戦争で、出撃した大悪魔多数を道連れに灼滅された(そして転生した)。

    Q:統合元老院クリスタル・ミラビリスが把握していた、活動可能と推測されるソロモンの大悪魔の名簿を知りたい
    A:統合元老院クリスタル・ミラビリスの知る範囲で活動可能な大悪魔は下記。
      武蔵坂学園の情報と合わせると、生存している大悪魔は【生存】のついた11体。

    バエル
    ヴァサーゴ
    ヴァレフォール【生存】
    ブエル
    グシオン
    シトリー
    レラージュ
    サレオス【生存】
    アイム
    ナベリウス
    グラシャ・ラボラス【生存】
    ブーネ
    フォルネウス
    アスモダイ【生存】
    フュルフュール【生存】
    ハルファス
    ウェパル
    サブナック
    ビフロンズ
    ウヴァル【生存】
    クロケル【生存】
    フルカス
    ムルムル
    オロバス
    オセ【生存】
    ウァプラ
    ザガン【生存】
    アンドラス
    アンドレアルフス【生存】
    アムドシアス【生存】
    デカラビア
    ダンタリオン