学園祭クラブ企画 結果発表!

    五十嵐・姫子
     学園祭も最終日。突き刺さるような日差しの中を、五十嵐・姫子 (dn0001)はそぞろ歩いていた。喫茶店スペースがひときわ賑わっているのは、この日差しと暑さのせいもあるだろう。
     どこも色々なサービスや癒しがあって素敵で。全ての企画を最高点にできればよいのだけれど、そこはそれ、投票だから。中でも人気の高かったところへ人気投票の結果を伝えに行かなくては。
     そのついでに少しだけ涼んでしまおうかしら、と思えば微笑みも浮かぶ。

    ●第三位~泡影の伽話~La Sirenetta
     姫子が最初にやってきたのは『泡影の伽話』のブース。そこはまるで海の底のようだった。
     鮮やかな色彩の魚たちがきらめくように泳ぐアクアリウムがテーブルを囲むように置かれ、珊瑚や真珠などの装飾が海色の照明で照らされている。
    「まあ、姫子さん。またいらして下さったの?」
     オーダーを取りにきた白弦・詠(ラメンタツィオーネ・d04567)が少し驚いたような表情を見せる。羽衣をまとった乙姫のような彼女の水着も、この雰囲気を引き立てていた。
    「ええ。実はこちらの『La Sirenetta』が、喫茶店巡り部門の第三位を獲得されたので、お知らせに伺ったのです」
    「まあ、それは……」
     驚きで目を丸くした詠に、にこりと姫子は微笑みかけた。
    「おめでとうございます。私もお邪魔しましたが、こちらの素敵な雰囲気や美味しいドリンクが人気を博したのだと思いますよ」
     詠手ずから工夫して作るイメージドリンクというサービスも、嬉しい驚きだったに違いない。楽しい学園祭とはいえ連日の暑さに辟易している灼滅者からすれば、水底のように穏やかで静かなこの店が、癒しになったのは間違いないだろう。
     驚きからやっと嬉しそうな表情へ変わった詠は、本物の水底の姫君のようにふわりと笑った。

    ●第二位~-Feather-~ファイターズ・カフェ【2018】
     どこか秘密めいた階段を降りた先、開けた空間に居心地のよさそうな喫茶店があった。壁のあちこちに貼られたポスターは格闘技関連のもので、それを見れば普段はここにリングがあるということも頷ける。
     鍛えられているというだけでなく、出るべきところは出た魅力的な水着姿の赤松・鶉(蒼き猛禽・d11006)がやってきて、姫子ににこやかにフルーツを差し出した。
    「いらっしゃいませ、姫子さん。夏バテ防止も兼ねてフルーツはいかがです?」
     今年はフルーツ増量でパワーも倍増っぽい。
    「ふふ、美味しそうですね。スイカを少し頂きます。あとお知らせがありまして、こちらの『ファイターズ・カフェ』が喫茶店巡り部門の第二位を獲得されましたよ」
    「あら、それは嬉しい驚きですわね!」
    「やりましたね、先輩!」
     鶉と、カフェにいた蒼月・碧(碧星の残光・d01734)がぱっと表情を輝かせた。『-Feather-』は昨年も三位を獲得している。地上よりも涼しい地下の喫茶店で、学生に嬉しいパワー系の食事とデザートが支持を集めたのだろう。なんかカレーやロコモコにスイカがごろごろ入ってたりするけど。
    「やはり暑さに負けない身体を作るうえで、食事は重要ですものね」
     晴れやかな笑顔の鶉に姫子も頷いた。

    ●審査員特別賞~Chaser~【Chaserのお正月】
     門には注連縄に角松、行き交う人は紋付袴に着物。大広間に入ったら炬燵で闇鍋をやるとあっては来客は若干焦るに違いない。しかし実際は炬燵の中には氷入りの樽があり、クーラーの効いた部屋で『美味しい』闇鍋を味わえる。
    「っしゃいませー!」
     顔を出した東当・悟(の身長はプラス三センチ・d00662)がぱっと人懐こい笑みを見せる。
    「おー、姫子先輩また来てくれたんか!」
    「実はこちらが、今年の喫茶店巡り部門の審査員特別賞を獲得されましたのでお知らせに来ました。おめでとうございます!」
    「わ、本当ですか! 」
     若宮・想希(希望を想う・d01722)が大広間から顔を出して驚いた声をあげる。
    「夏バテ対策にもよさそうですし、野菜も多くて美味しいとあって喜ばれますね」
    「おめでとうございます、悟」
    「おおきに、めっちゃ嬉しいわ!」
     肩を組んだ悟と想希が喜びを爆発させた。

    ●第一位~下宿施設『撫子荘』~撫子荘名物【足湯&スイーツ喫茶】
     足湯を楽しみながら美味しいスイーツで涼もとれるとなれば、賑わうのは必至というもの。ましてゆったりと足湯や足水を楽しめる目の前には、綺麗に手入れがされた日本庭園が広がる。いくら眺めても見飽きない美しい風景の中で、久瑠瀬・撫子(華蝶封月・d01168)が上品に笑いかけた。
    「はい、いらっしゃいませ~。あら、姫子ちゃん。またのおいででしょうか?」
    「お邪魔します。実はこちらの足湯&スイーツ喫茶が、喫茶店巡り部門の第一位に輝きました。おめでとうございます!」
    「あらまあ」
     こくりと首を傾げる撫子が微笑む。足湯の方で対応していた天峰・結城(皆の保安官・d02939)も顔をだしてふと口元を緩めた。
    「これは光栄ですね」
     暑いとつい身体を冷やしがちだが、足湯に浸かりながらなら冷たいものも存分に楽しめて、サーヴァントたちのための簡易風呂も用意されている。日傘やタオルなどの気遣いや豊富なスイーツのラインナップ、見事な庭園を眺めながら談笑できる穏やかな雰囲気が人々を惹きつけたと思われた。
    「この素敵な景色と足湯にスイーツまであったら、ずっとお喋りしてしまいそうですね」
     激しい戦いをようやく終えた灼滅者たちに、穏やかな時間を楽しんでほしい。庭を眺めて姫子は思わず笑みをこぼした。

     日差しは峠を越えたけれど、まだまだ暑さはかなりのもの。喫茶店企画のあたりへやってくる灼滅者もたくさんいる。学園祭を楽しむ笑顔を眺めて、姫子は自然と笑みが浮かんだ。
     灼滅者たちのこれから、ひとびとのこれから、世界の未来。考えなくてはならないことは山積みだけど、今は楽しい時間を満喫して欲しい。
     企画はもちろん、灼滅者たちとの未来を楽しみに。姫子は喫茶店を巡る人々の中へ紛れていった。