グローバルジャスティス 総攻撃開始!

    荒谷・耀 VS ソロモンの悪魔クロケル

    ●武蔵坂学園の変化

     フィレンツェ出撃に向けて慌ただしく動く灼滅者達は、向けられる視線が変わったことを感じていた。
     瑠架戦争での、灼滅者とダークネスの戦いの動画は全世界に拡散している。
     その動画の中には、制服を着ている灼滅者も少なからずいた。
     既に武蔵坂学園が『武装集団の拠点』であることは確定事項で、関係者はマスコミの注目の的だ。

     灼滅者達の、社会からの隔絶は終わろうとしている。
    『民間活動』の成果もあって灼滅者達をヒーローのように考える者達が多くいる一方、武蔵坂学園を『学校を装った少年兵の育成組織である』とする見方もあった。
    「ある意味正しいのは困りものですが」
     開設したサイトに届いた取材申し込みへの返答メールのテンプレートを考えつつ、九十九坂・枢 (銹びた約束・d12597)は呟いた。
     人々を守るためとはいえ、灼滅者達が法律など踏み越えて来たのは事実ではある。
     人々は灼滅者達から見れば守るべき存在だったとしても、関わったことのない人々にとっては灼滅者達が本当に信じるに足る存在なのか、確証を持てないのだ。

     そうした状況下で、1A梅と3C桜の灼滅者達は、日本政府に協力要請を行っていた。
    「今はこれが必要でしょう」
     かつての『民間活動』の際の、『各国政府との交渉を開始する』方針を引っ張り出して来たアリス・バークリー (ホワイトウィッシュ・d00814)は、最も必要なものを理解している灼滅者の一人だっただろう。
     そんな彼女達と政府との最初の交渉は、学園の応接室で行われていた。
     灼滅者達の前には、背広姿の大人達が顔を並べている。
     防衛省と外務省に警察庁、加えて文部科学省に在日米軍、イタリア大使館から送り込まれて来た者達だ。
     これまでならば秘密裡に潜入して直接指示を出せる僅かな有力者に『お願い』していたところだが、相手の側から学園に来てくれている。
    「私共が担当ということになりますので、今後の連絡はこちらにお願いします」
    「あ……はい、分かりました」
     次々と名刺を渡され、大学生になったばかりの鈍・脇差 (ある雨の日の暗殺者・d17382)は目を白黒させる。
     灼滅者達は、ダークネスによる大規模災害や、利用された軍隊による侵攻まで、破滅的な危機を何度も防いでいる。日本では一般市民よりも先に、事情を知る上層部の方が灼滅者に一定の信頼を置いているのだった。
     当然、そのことは今回の担当者達にも伝わっているのだろう。

    「皆さんは、あのグローバルジャスティスを名乗る存在と戦われるのですね」
    「はい。学園の全力をあげて、総攻撃を仕掛けます」
     有城・雄哉 (蒼穹の守護者・d31751)が作戦の概要を伝えると、外務省と在日米軍の担当者が唸った。
    「かなりの人数ですね。距離を考えると相当数の航空機が必要ですが、移動手段は?」
    「是非、ご協力をお願いしたいです」
     榎・未知 (浅紅色の詩・d37844)は率直に言った。
     実のところ、普通に出入国する気でいたことはおくびにも出さない。
     だが、今回イタリアで組連合の総攻撃に参加する人数だけで2万4千人。
     国の協力がなければ、かなり無理をすることになっていただろう。
    「では、出入国と現地での受け入れ計画についての相談はこちらで……」
    「じゃあ、そっちはオレが」
     外務省とイタリア大使館のスタッフに連れられ、仲村渠・弥勒 (マイトレイヤー・d00917)が打ち合わせのため部屋を出ていく。
     そこから担当する分野ごとに分かれ、灼滅者達と公務員達との話し合いが始まった。

     それを皮切りに、武蔵坂学園を訪れる人の数は増えていった。
     取材に訪れるマスコミや、必要とされる物資を納入する民間企業。それぞれの渉外を担当する灼滅者達が出入りするにつれて、必要とされる書類の数は日増しに増え、やがて応対する場所は、大教室から最終的には体育館に移った。
     そうする間にも出国する灼滅者達は増え、学園に残る者達への負担も増していく。
    「つ、疲れた……」
    「戦いの規模が大きくなるって、大変ですね……」
     組連合の中心となった灼滅者達は、数万人を一度に動かす困難を実感していた。
     政府の協力がなければ、全員を出国させられたかも怪しいところだ。
     最後まで日本に残っていた灼滅者達は、外務省が用意した飛行機に飛び乗り、久しぶりの睡眠につくのだった。

    ●アンリの行方

     サイキックハーツ「アンリ」の行方を追い、7G蘭の灼滅者達は日本はもちろん、世界中での探索を行っていた。
     海底にいた業大老、中国から攻めて来た統合元老院、ヨーロッパを本拠地とする爵位級ヴァンパイアといったように、強力なダークネスの中には日本国外にいた者も多い。
     グローバルジャスティスもまた、フィレンツェを本拠地としている。
     他のサイキックハーツが、海外に拠点を持っていてもおかしくはなかった。

     そして調査を始めてすぐに、灼滅者達は日本より海外での調査が大変であることを悟っていた。
     言語はまだハイパーリンガルで何とかなる。
     しかし日本国内でダークネスが関わる事件であればサイキックアブソーバーが関知してくれるが、海外ではそうもいかない。
    「なんだかんだで日本警察って優秀だなあ! 汚職多くないし!」
     協力要求どころか挨拶代わりにワイロを要求されるような国も世界にはあるらしい。
     4000人の灼滅者が動員されているとはいえ、学園の情報収集本部に残っていたライ・リュシエル (貫く想い・d35596)の元に届く灼滅者達からの連絡も、手ごたえなしの状況が続いていく。

     潮目が変わったのは、1A梅が広報用のサイトを開設し、広く自分達の存在を世界にアピールした後だった。
     ダークネスと思われる存在に関する情報が、灼滅者達の元に続々と寄せられるようになったのだ。
     九分九厘は無関係なものだったが、その中の一枚の写真が、東雲・菜々乃 (本をください・d18427)の目に留まる。
    「これは……」
     その写真に写っていたのは、水晶で出来た精巧な人間の腕。
     だが、それが造り物などでないことを、菜々乃達は一目で理解していた。
    「ノーライフキングの腕ですね」
    「この写真がどこの国から来たものか、確認できますか?」
    「ええと……エチオピア?」
     ステラ・バールフリット (氷と炎の魔女・d16005)が首を傾げる。
     アフリカで最古の独立国にして、20世紀後半まで、内戦と混乱と政変のオンパレードだった国だ。
    「腕だけということは、『このノーライフキングが、誰かと戦闘した』ということ……?」
     すぐにステラは、航空機の時間を確認する。
    「今からエチオピアにいってからフィレンツェに行くのは無理ですね」
    「近くにいる誰かに、現地に向かってもらおう。戦争に出ない人でも、殲術再生弾の効果はあるから、戦闘に巻き込まれても無事で済むはず」
     グローバルジャスティスとの戦争が終わる頃には、何らかの報告が届いてくれることを願いながら、情報収集本部のスタッフもフィレンツェへ旅立っていく。

    ●闇をもたらす光の中へ

     そして、決戦の前日。
     日本政府が準備した特別便に米軍の輸送機、加えて様々な国を経由して、灼滅者達は戦いの場となるフィレンツェの近郊の都市に集結していた。
     壮行会の場となったホテルには、協力に応じてくれたミュージシャン達による音楽が流れ、芸術品の数々も展示されている。
     芸術の都とも呼ばれているフィレンツェを奪還しようという、灼滅者達の意識を高める狙いだ。

    「応援もだいぶ集まっているな!」
    「世界中廻った甲斐があったな」
     四軒家・綴 (二十四時間ヘルメット・d37571)とアトシュ・スカーレット (黒兎の死神・d20193)は疲労感をにじませながらも、ほっと息をつく。
     1A梅の灼滅者達は手分けして世界中に飛び、ハイパーリンガルを駆使して全力で世界の真実に対する説明を行った。
     ダークネスの存在と性質、彼らが世界を支配して来た歴史。
     そして、それに対抗する灼滅者達の活躍、世界がサイキックハーツの出現により滅びを迎えようとしていること。
     説明を受けた多くの人々は『ダークネスになりたくない』という感情を抱いており、それに立ち向かう灼滅者達への応援は、日を追うごとに増加していた。
     また、先行して到着した1A梅の灼滅者達が光に呑まれたフィレンツェ市街に突入し、内部に取り残された人々の救助活動を行っていたことは、大きな称賛を受けていた。

     そうした反応を見計らって、武蔵坂学園が所在する日本、次いで灼滅者達の移動に協力したアメリカ、フィレンツェを光に呑まれたイタリアの三か国は、灼滅者達がグローバルジャスティスと戦うことへの支持と、協力を表明する。
     その表明もまた議論を招いていたが、反応はおおむね好意的だ。

    「『バベルの鎖』って、本当にダークネスの支配を楽にしてたのね……」
     灼滅者達が関わらずとも、日増しに増加するネットのダークネス関連記事を見つつ、鹿島・狭霧 (漆黒の鋭刃・d01181)はそう実感する。
    『バベルの鎖』によって存在を広められることなく、人類から敵視されることも、対策を練られることもなかったダークネス達。
     だが灼滅者達からの情報を受け、短期間の間に、人類は各国間の軋轢こそ残しつつも『反ダークネス』という点において、意見を一致させようとしている。

     一方でダークネスに対する見方は、『人外の怪物』から『不可逆的に変化してしまった人間』へと変わった。
     その法律上の扱いもまた議論を呼び、灼滅者達に対する見方もまた変化の途上にある。
     エスパーは『バベルの鎖』を帯びながらもサイキックを使えない。
     病、事故、暴力、兵器。どれもが人の死に結び付かなくなった中で、灼滅者とダークネスだけが、人間を殺せる。
     互いに『殺せない』ことが分かり、紛争地帯でも今は戦いが止んでいたため、1A梅の灼滅者達が世界を巡る中で、エスパー達を相手に力を振るう必要は無かった。
     だが蓄積された憎悪がいつか新たな『相手を苦しめる』手段を生み出す時、それを止めるのが灼滅者達でよいのか。

    「難しいなあ……」
     夜なお輝くフィレンツェの方角を眺め、居木・久良 (ロケットハート・d18214)は飲み物を口に運んだ。
     社会の中で、灼滅者はどのような立場に立つのか。
     これからのサイキックハーツ達との戦いの中で、組連合による『民間活動』を通じ世界にどのように働きかけるのかは、戦後の灼滅者達の立場にも大きく関わって来ることだろう。
    「何にせよ、勝ってからだね」
     全人類ご当地怪人化計画を阻止しなければ、今の人類に未来はない。

    ●総攻撃開始

     フィレンツェ市街は、光に包まれていた。
     灼滅者達はその中へ、慎重に侵入していく。
     1A梅が取り残された人々を助けに乗り込んだ際、巨大建造物が出現しているのが判明している。
     ルネサンス期を思わせる外装を帯びた、ご当地本拠地ジャスティスベース。
     その入り口は、フィレンツェにあるダヴィンチ博物館を下押しつぶす形で出現していた。
    「レオナルド・ダ・ヴィンチか……偶然とは思いがたいな」
     かつてザ・グレート定礎は『ダヴィンチ・コード』をその顔の中に隠し持っているなど、ご当地怪人絡みの事件では、何かと出て来る名である。

    「みんな、突入するわよ!」
     9I薔薇の荒谷・耀 (一耀・d31795)の声に、灼滅者達が一斉に鬨の声を上げる。
     灼滅者達は、一斉にジャスティスベースへ突入していった。
     ジャスティスベースの入り口は、フィレンツェの大深度地下へとつながっていた。常識外れの広大な領域が、そこには設けられている。
    「グラン・ギニョールみたいだな」
     天方・矜人 (疾走する魂・d01499)は、池袋の地下に存在した六六六人衆の本拠地を思い出す。
     薔薇の咲き乱れる『おフランスベルサイユ宮殿怪人』の守備領域を一点突破し、灼滅者達はさらに奥へと攻め入る。
     そして9I薔薇の灼滅者達は、ソロモンの悪魔「クロケル」の守る温泉領域へと突入した。
    「ご当地怪人、ソロモンの悪魔もいます!」
     オリヴィア・ローゼンタール (蹴撃のクルースニク・d37448)が、魔法を唱えようとした悪魔の喉笛を蹴り付けながら叫んだ。
     ソロモンの悪魔がいることは、9I薔薇の灼滅者達も予期している。
     サイキックハーツ達の一斉出現以前、ソロモンの悪魔勢力はご当地怪人の勢力下に置かれ、徐々に洗脳・支配されつつあるとの情報があったからだ。
    「でも、ソロモンの悪魔の数は、そう多くないみたいっすね」
     ギィ・ラフィット (カラブラン・d01039)が、温泉地のペナント怪人を切り倒す。
     その疑問への答えは、基地の奥から溢れ出す温水と共にもたらされた。
    「『グラシャ・ラボラス』がサイキックハーツに至ったのだ。支配が弱かった者、いまだ支配されていなかった者は既にかの大悪魔の元へ去った」
     その言葉が聞こえた瞬間、足元を濡らしていた湯は、その水嵩を一気に増した。膨大な温水が灼滅者達を押し流さんとするのを、灼滅者達は床に武器を突き刺し、あるいは仲間達の手を掴んで耐える。
    「クロケル!」
    「……総員、グローバルジャスティス様がバリアを張られるまでの時間を稼ぐためにも、命を懸けよ」
     温水を操る能力を持つソロモンの大悪魔「クロケル」が生き残りのダークネス達に、冷徹に指示を下す。
     それを聞き届け、灼滅者達に立ち向かわんとする配下の数はもはや僅かだ。
     クロケルは、自ら望んで現れたわけではない。
     灼滅者達の総攻撃の勢いは凄まじく、クロケルが守る地点のダークネス達を一気に灼滅し、彼女を追い詰めていた。
    「我が敵を煮沸せよ、黄金の潮流」
     だがクロケルは最後の抵抗とばかり、その湯量を増していく。
     黄金の輝く湯の壁が通路を埋め尽くして灼滅者達の行く手を遮り、波濤へと変わり、そのままに押し流さんとする。
    「ここで、止まるわけにはいかないの」
     耀は、静かに精神を統一すると蒸気と共に向かって来る黄金の波濤へと、手にした日本刀を振り抜いた。
     蒸気と波濤が真っ二つに断ち切られ、一瞬、クロケルへの道が開く。
     驚きに目を見開きながらも、クロケルは再び鎧の放出口からサイキックの湯を放出せんとする。
     だが、湯が再び通路を埋め尽くすよりも早く、灼滅者達の攻撃が彼女へと殺到し、そして耀の『暁』が、クロケルを貫いていた。
     クロケルの透き通った色の血が滴り、湯を染めていく。
    「見事だ。烏天狗よ、契約はこれまでだな」
     バシャリと音が響き、クロケルの体は黄金の湯となって消滅していく。
    「制圧、完了……でいいの?」
     敵の抵抗が止んだことを確認し、耀はクロケルが守っていた温泉領域を、先へ進んだ仲間達を出迎えるための拠点とするべく動き出した。

    ●バントラインスペシャルマン

    「あれは、日光慈眼城の……」
     先行偵察部隊の白石・明日香 (教団広報室長補佐・d31470)は、前方の空間を守る何体もの羅刹達の姿を認めていた。
     ご当地怪人バントラインスペシャルマンが守る空間には、西部の荒野を思わせる乾いた空気が漂っていた。
     そして、アメリカンご当地怪人に加え、『日光慈眼城』にいたダークネス達が守りを固めている。
     彼らはサイキックハーツ化したグローバルジャスティスにより、バントラインスペシャルマンと共に分割存在の身から脱し、揃ってグローバルジャスティスに忠誠を誓い、武蔵坂学園の灼滅者達に立ち向かっている。

    「敵襲だ!! 皆、守りを固めろ!」
    「俺達……じゃないな、本隊の方が見つかったか」
     単純に、総攻撃に参加する人数は今までより遥かに多い。
     気付かれずに行動するには、こちらの規模が大き過ぎた。
     これまでの『奇襲』とは、多少勝手が違って来る。
    「急いで攻撃開始するよう知らせてくるぜ」
     師走崎・徒(流星ランナー・d25006)が伝令に走っていく。

     偵察部隊の報告を受けた4D椿の本隊は、すぐさまご当地怪人の軍勢との交戦を開始する。9I薔薇がそうしたように、少しでも多くの敵を削り取ると共に、先に向かう仲間達を支援する構えだった。

    ●アメリカンコンドル

     9I薔薇、4D椿と2つの組連合の支援を受けてアメリカンコンドルの守る区画にまで到達した8H百合。
     彼らは目的を「敵の戦力減少」に絞っていた。

    「やっぱり、今までとは多少考え方を変えて良かったな」
     ニコ・ベルクシュタイン (花冠の幻・d03078)は、ここまで自分達を導いてくれた組連合と、前方通路を塞ぐアメリカンご当地怪人達の姿に、そう判断する。
    「これだけの人数がいると、『奇襲』とは多少変わってきますね」
     椎那・紗里亜 (言の葉の森・d02051)も同意する。
     敵も味方も過去を大きく上回る規模になっている。
     今までのように、敵の機先を制しての接近は難しい。
     敵がこちらの攻撃に対して備えをしていることを前提として、死力を叩き付けるしかない。
     戦場を完全に制圧しなければならない以上、『無用な戦闘』などもはや存在しなかった。

    「敵発見! 攻撃を開始してくれ!」
     石宮・勇司 (果てなき空の下・d38358)が、後続の者達に連絡すると、自らも突撃を仕掛けていく。勇司をはじめ、偵察を担当する者が敵の位置を把握すると、即座に連絡を受けた者達が攻撃を開始する。
    「敵はこちらの攻撃に対応するので手いっぱいだな」
    「とはいえ、退路は確保しておきましょう」
     8H百合は堅実に、その戦力を削っていく。

    ●ドーター・マリア

     おフランスベルサイユ宮殿怪人の陣地を突破して来た灼滅者達の軍勢。
     対抗するべくドーター・マリアが配下にくだした命令は単純だった。
    「配置について。で、敵が来たら、見つけ次第殺して」
    「そ、それだけですか?」
    「それ以外にやる事なんてある? もう退く場所なんてないし」
     殺人衝動のままに殺すことを旨とする六六六人衆達が歓声を上げて即座に従う一方、アフリカンご当地怪人達には戸惑いがあった。
    (「なんかアフリカンパンサー様とノリ違うカバー」)
    (「娘さんだと聞いたけど、なんか怖いキリン」)
     組織だって活動して来たご当地怪人と、今までも個人個人で活動して来た六六六人衆。
     グローバルジャスティスを守ろうという考えは同じでも、やり方にはだいぶ違いがあるようだった。

     6F菊の灼滅者達が想定したように、ドーター・マリアの陣地は密林化していた。
     かつての「アガルタの口」と同様に、高温多湿の環境が灼滅者達を蝕んで来る。
     鬱蒼と生い茂るジャングルを、工作部隊が後続の者達の前進を助けるよう、切り拓きながら進んでいく。
    「ドーター・マリアは、自分から打って出るタイプかとも思ったが……」
     敵の性質を見誤っていたのかも知れない、と蔵座・国臣 (殲術病院出身純灼滅者・d31009)は考える。
     昨年秋からの群馬密林での戦いは、灼滅者達が探索を開始して決着が着くまで、実に2か月以上を必要としていた。
     ドーター・マリアは、ジャングルという巨大拠点を構築しての『潜伏戦』を得意とする六六六人衆なのだ。
    『密室殺人鬼』などとは性質が似ていると言えるかもしれない。
     灼滅者達はジャングルから時折奇襲を仕掛けて来るダークネスを撃破しているが、そのままでいれば足は鈍っていただろう。

     もっとも、それも灼滅者達が方針を変えなければ、の話だ。
    「出て来ないならば相応の手を取りましょう」
     華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)の指示の元、灼滅者達は一斉に隊列を変えた。横陣を組んだ灼滅者達に、下される指示は単純明快だ。
    「薙ぎ払って下さい!!」
     一斉にサイキックが繰り出され、眼前の木々が消し飛んだ。
     今までを大幅に上回る人数での灼滅者の総攻撃は、地形すら変えうる。
     ジャスティスベース本体はグローバルジャスティスの力で守られているのかビクともしないが、後から生やされた木々は例外だ。
    「し、自然破壊反対!」
    「やかましいわ!!」
     焼け出されたアフリカンご当地怪人を、サイキックが吹き飛ばす。
    「今のうちに、2B桃と5E蓮の皆さんは先へ進んでください!」
     ダークネス達を次々に灼滅しながらの紅緋の言葉を受け、灼滅者達は先へと向かう。

    ●アフリカンパンサー

     2B桃は予想外の苦戦を強いられていた。
     神崎・摩耶 (断崖の白百合・d05262)が報告する。
    「ディフェンダー班の損耗が激しいです」
    「予想のうちではあるが、厳しいな」
     不動峰・明(大一大万大吉・d11607)もまた、平静ではいられない。
     2B桃では、強さを基準に『ディフェンダー班』『クラッシャー班』『スナイパー・メディック班』に部隊を分けた。
     だが、敵を押しとどめるはずの『ディフェンダー班』は結果として圧倒的少数になり、彼らは敵の集中攻撃を受けることになっていた。
     一撃離脱の奇襲ならば、それも許容できたが、今回はすぐに退くわけにはいかない事情がある。
    「5E蓮が戻るまで、持ちこたえるぞ!」
     より奥に向かった者達は、彼らが絶えられなければ、さらなる危険に晒されることになる。
     崩れかかる前衛を、人数の多いスナイパー・メディック班が支える形で戦いは推移しいている。
     ディフェンダー達の粘りに期待せざるを得なかった。

    ●グローバルジャスティス

    「バリアが張られるまでに、可能な限りの敵を倒すんや!」
     オーラキャノンで有田みかん怪人を吹き飛ばし、東当・悟 (の身長はプラス三センチ・d00662)が叫ぶ。
     5E蓮がグローバルジャスティスのいるジャスティスベースの最深部に辿り着いた時、この場所を守る『ガイアパワーゲート』は、まだ閉ざされてはいなかった。
     四月一日・いろは (百魔絢爛・d03805)がハンバーガー頭の怪人を切り裂きながら言う。
    「流石に常時展開してはいられないみたいだね」
    「殲術再生弾で強化された、僕達の攻撃全てをシャットアウトするほどの強固なバリアですからね」
     バベルブレイカーでロシアご当地怪人ピロシキノフのピロシキを破裂させて、戒道・蔵乃祐(ソロモンの影・d06549)が応じる。

     周囲の空間からは、膨大な種類のご当地怪人達が次々と現れ、それぞれのご当地サイキックを繰り出しては、灼滅者達を迎撃にかかっていた。
     死にゆく彼らは、異口同音にこう叫ぶ。

    「グローバルジャスティス様に栄光あれ!!」

    「自分達も、サイキックハーツであるグローバルジャスティスの一部だろうに……」
    「とんでもないカリスマ性だな」
     加持・陽司 (d36254)は事前に、レオナルド・ダ・ヴィンチが親しかった人物や、その子孫について調べていた。そうした人達に接触し、ダークネス化に反対だという言質は取ったものの、意味があるのかは分からない。
     仮に人間だったとして、全人類を『生殖可能なダークネス』に変えようという、その精神性は常軌を逸していた。
     全人類がご当地怪人化してしまえば、全人類が彼らと同様、グローバルジャスティスの一部となるだろう。
     彼らが『生殖可能』であったとしても、そうなってしまえば今の人類は終わりだ。
    「皆、ガイアパワーゲートが閉じる!!」
    「ラストスパートだ、ぶっ放せ!!」
     悟の号令と共に、灼滅者達が最後の一撃をご当地怪人達に加え、灼滅者達は撤退していく。

     この総攻撃で力を使い果たし、以後の作戦に参加できなくなる者も多数いる。
     だが、人数に任せた総攻撃の効果は、奇襲とは段違いだ。
     以降の戦いでの作戦の選び方を考慮しつつ、灼滅者達はジャスティスベースの攻略を目指していく。

    組連合 ファースト
    アタック
    ファーストアタック結果
    1A梅 民間活動 重傷になる確率が51%緩和!
    重傷からの復活率が39%上昇!

    日本政府を通じて各国に協力を求めると共に、世界各地の人々に、世界の真実を広め、応援を募るため活動しました。
    2B桃 (11)総攻撃 (11)アフリカンパンサーの敵戦力が9200減少!
     奇襲との勝手の違いから苦戦を強いられましたが、5E蓮の帰還まで耐え抜きました。
    3C桜 超テンションアップ 戦力780以下の戦場をスルー可能に!
    また、勝利1回ごとの減少敵戦力が「130」に!

     灼滅者達の出国や物資の手配を行うと共に、フィレンツェ近くの都市で壮行会を実施しました。
    4D椿 (7)総攻撃 (7)バントラインスペシャルマンの敵戦力が9800減少!
     バントラインスペシャルマンの敵陣には、日光慈眼城のダークネス達が数多くいるようです。それらの敵も、サイキックハーツの力で強化されています。
    5E蓮 (12)総攻撃 (12)グローバルジャスティスの敵戦力が9400減少!
    『ガイアパワーゲート』構築前に、最深部のグローバルジャスティス本陣を強襲、撤退しました。
    6F菊 (8)総攻撃 (8)ドーター・マリアの敵戦力が10400減少!
     ジャングル化した敵拠点ごと破壊する戦術で、敵の潜伏戦を無効化し、優位に戦闘を進めました。
    7G蘭 対サイキックハーツ調査 サイキックハーツ「アンリ」の調査を実行(作戦内容修正:220)
     エチオピアで、ノーライフキングの戦闘の痕跡を発見しました。続報待ち中です。
    8H百合 (9)総攻撃 (9)アメリカンコンドルの敵戦力が9600減少!
     敵陣奥地への攻撃でしたが、敵の戦力減少に専念し、確実に戦力を減少させました。
    9I薔薇 (4)総攻撃 (4)ソロモンの悪魔クロケルを制圧!(減少戦力2000)
     ソロモンの悪魔クロケルを灼滅し、(4)を制圧しました。(4)の制圧により、(9)の戦力が30%減少しました。

    ●今回の超テンションアップ

    戦力「780」以下の戦場をスルー可能です。
    また、勝利1回ごとの減少敵戦力が「130」に上昇しています。

    ●今回の不滅の兜情報

     最初の使用希望者が被った途端に闇堕ちしかけたため、使用は中止されました。
     以降、戦争の詳細で使用できることが明記されていない限り、使用できません。
    (被った者を闇堕ちさせようとする力は知識を引き出そうとするたびに強くなり続けており、改善の見込みは現状ありません)