第３話「アイドル・オンステージ！」

■オープニング

　プロデューサーさん、世はまさに「アイドル戦国時代」ですっ！
　召喚したカードアイドルさんとユニットを組んで、グループ活動しなきゃ！
　事務所の力関係ですか？　うーん、もちろん大手のＪＡＢプロさんは強いですけど、今はもう事務所より、アイドル本人の力の方が大事じゃないですか？
　……えっ１０３１プロ？　それはさすがにナシですよ～（笑）

「……次、『片翼のアルカディア』お願いしますっ！！」
　ＪＡＢプロのトップアイドル・小野寺蜜姫は、常に休むこと無く己を磨き続けていた。ＪＡＢプロという巨大事務所の、詫び石を厭わない過剰なプロモーションによって疲弊し、潰れそうな時もあった。だが彼女はへこたれなかった。彼女の真の才能は、美貌でも才能でもなく、努力する力だったのだ。
「流石は努力の天才、いいですね～。これなら我々も詫び石を惜しみませんね～。でも、いくら『シンデレラアイドル総選挙』とはいえ、そこまで力を入れる必要がありますかね？」
　小首を傾げるＪＡＢプロ社長・斬新京一郎に、芸能界のドン・ミスター宍戸がハッハッハと話し掛ける。
「まったく、キミは何にもワカットランね！　うちの他の『センター』達を見れば、トップアイドルだろうが油断できないにキマットル。それに……」
「１０３１プロ、ですか？　『笑顔は無敵！』があなたの哲学なのは存じてますが、あんな貧乏プロダクション、本当に脅威になりますかねぇ？」

「楽しい！　歌って踊れるの楽しいっ！」
　うきうきと踊る１０３１の暫定トップ・ラブリンスターを横目に、冒険プロデューサー・ガイバーンはショタ声でガッハッハと笑う。
「いいね！楽しいのはいい事だ！でも詫び石がもうねえなー。
　うちの子達、もうちょっとちゃんとプロモーションしてやりたいんだが、何かいい方法ねぇかなー」
「アイドルの皆様、おイモの差し入れでございますぞ！」
　沢山の石焼きイモを携えて現れた、１０３１プロ社長・ハンクス長老（アイドル好きのあまり会社を作ってしまったおじいさん）のノンキな様子を思わず見てしまうガイバーン。
　ふと、石焼きイモを包む新聞紙に書かれた記事に目が止まり……。
「そうだ、これだ、これだよ！　『シンデレラアイドル総選挙』があるじゃねえか！」
「えっ、うちの事務所、そんなビッグイベントに出られるんですか？
　……あ～っ、分かりました！　強引に飛び入り参加するんですね♪」

　さあ、詫び石でカードを揃え、8人の「カードアイドル」を編成して共に『シンデレラアイドル総選挙』を勝ち上がれ！
　センターたる君の決断が、この戦いの趨勢を握る！
　君は「ＪＡＢプロ（悪）」と「１０３１プロ（善）」の、好きな方に味方できるぞ！

■参加勢力を選択してください

(1)じゃんけん総選挙！（ＪＡＢサイド）

「ＪＡＢプロ（悪）」に味方し、芸能界のドン・ミスター宍戸によって選抜されたメンバーの一員となって熾烈なじゃんけん勝負に挑みます。ユニット全員のじゃんけんの勝敗数で勝者が決まります。

(2)じゃんけん総選挙！（１０３１サイド）

「１０３１プロ(善)」に味方し、１０３１プロ社長・ハンクス長老のふしぎな機械でじゃんけん総選挙に乱入します。乱入に成功しさえすればチャレンジャーと認められ、後はじゃんけんだけが世界の全てです。

(3)アイドルパフォーマンス！

「ＪＡＢプロ（悪）」に味方し、ＪＡＢプロ社長・斬新京一郎のゴリ押しでアイドルパフォーマンスに出場します。歌唱力よりも踊りやパフォーマンスがより重視される会場で、勿論、カードアイドル達との一体感も重視されます。

(4)ニコ生アイドル作戦！

「１０３１プロ（善）」に味方し、１０３１の暫定トップ・ラブリンスターと共に、結局パフォーマンス会場には入れなかったので、代わりにニコニコ生放送でライブをします。でも、人気でアイドルパフォーマンスに勝てばいいんだもんね！

(5)シンデレラステージ！

「ＪＡＢプロ（悪）」に味方し、ＪＡＢプロのトップアイドル・小野寺蜜姫と共に、選ばれし者の最終ステージに出場します。テレビ視聴率100％、歌唱力も含めた全てが問われる最高の舞台で、蜜姫さえも退けてトップアイドルになろう！

(6)飛び入りシンデレラ！

「１０３１プロ（善）」に味方し、冒険プロデューサー・ガイバーンのイカす演出で、有無を言わせずシンデレラステージに乱入します。ひとたびステージに上がれば、あとはアイドル同士の真剣勝負。日本国民全員が、あなたを見ています！

■リプレイ

●必勝、ジャンケン総選挙
　シンデレラアイドル総選挙の最初の舞台、じゃんけん総選挙。
　不運を売りにするのは、演歌歌手だけで充分。
　友情も努力も勝利も、それはそれで必要かもしれないが、アイドルに最も必要なのは、実力が無くても人気者になれるラッキー力なのは間違いない。
　つまり、ジャンケン総選挙とは、真のアイドルに相応しいラッキー力を競う、一大競技なのだ。

　このジャンケン総選挙に、ＪＡＢプロも勿論参加。
　芸能界のドン・ミスター宍戸の詫び石力にものを言わせて、裏から詫び石をジャブジャブさせて、対戦相手を次々と不戦敗へと追い込んでいったのだった。
　このまま今年もＪＡＢプロの勝利間違いなし。
　誰もが、そう思ったとき、奇跡は起きた。
　業界の最底辺１０３１プロ所属のアイドル達が、ジャンケン総選挙に乱入してきたのだ。

「わしらは、最底辺の芸能プロですじゃ。つまり、天下のＪＡＢプロのアイドルに比べて、アイドル力は天と地の開きがあるのですじゃ。つまり、わしらが参加しても、ジャンケン総選挙の結果は変わらないのですじゃ」
　不思議機械『世界の人見ちゃん』でアイドル達と会場に乱入した、１０３１プロ社長・ハンクス長老は、聴衆に向けてそう語りかける。
　それは、確かにその通り。
　そして、ＪＡＢプロのファン達が納得しかけたところで更なる爆弾を落とした。
「ＪＡＢプロのアイドル達が不正をしていなかったとしたらですがな」
　不敵に笑うハンクス長老。
　この暴言に対して、ＪＡＢプロのミスター宍戸は、福耳をヒクヒクさせつつも、にこやかに対応する。
　内心は、１０３１プロの乱入に腸が煮えくり返っていたが、ここで騒げば相手の思う壺である。
　ならば、ここは受け入れざるを得ないだろう。
「たしかにその通り。真のアイドル力があれば、弱小プロのアイドルなど鎧袖一触で葬り去る事が可能。あなた達の挑戦、受けて立ちましょう」
　社長同士の腹芸の結果、ＪＡＢプロと１０３１プロのジャンケン総選挙対決の幕があがったのだ。

「ジャンケンポン」
「アイコでしょっ」
「勝ったー」
「負けたー」
「△だったら何出せば良かったんだっけ」
「今日の占いどこー」
「ジャンケンジャンケンジャンケンポン」
　アイドル達のジャンケン対決が続く。
　戦前の予想はＪＡＢプロ圧倒的優位であったが、詫び石をジャブジャブさせた八百長に慣れてしまっていたＪＡＢプロのアイドル達は、ハングリーでガチな１０３１プロのじゃんけん力の前に、次々と敗北を重ねていく。
　実際、ベスト８まで進んだ８名のうち６名が１０３１プロという番狂わせとなってしまったのだ。
　だが、ここから、ＪＡＢプロも意地を見せ、一進一退の攻防の末、決勝戦は、ＪＡＢプロのふわぽよウニアイドル、雲・丹（てくてくにーどるうにのあし・d27195）と、１０３１プロの神降ろしアイドル守安・結衣奈（叡智を求導せし紅巫・d01289）の一騎打ちとなった。
　両者は、互いのカードアイドル達を背後に従えて会場の中央へと歩を進める。

　明日のアイドル界をかけて、今、世紀のじゃんけん対決が始まった。
「じゃんけんポン」
「じゃんけんポン」
「じゃんけんポン」
「じゃんけんポン」
「じゃんけんポン」
「じゃんけんポン」
「じゃんけんポン」
「じゃんけんポン」
　まずは、互いのカードアイドル達が、それぞれにジャンケン勝負を繰り広げる。
　丹のカードアイドル達は、銀・静蓮、緋霄・クレス、譫妄せし悪夢・エクリア、鴬花の導・ロレッタの４人が勝利。
　結衣奈のカードアイドル達は、烏頭森・万葉、月詠み賢女・シリア、綾瀬・千鞠、渡り風・テオドール・クスの４人が勝利。
　結果は４勝４敗の五分と五分。
　勝敗の行方は、センターアイドルたる丹と結衣奈のじゃんけんの結果に託される事となった。
　丹と結衣奈は決意を秘めた瞳で互いに頷きあう。
「ここまで来たら、恨みっこなしや」
「勿論、正々堂々と戦いましょう」
　互いに、互いの健闘を称えあう２人。
　事務所の確執を超えたアイドルの友情に、会場の熱気はたかまるばかり。
「いざ、尋常に」
「勝負や！」
　そして、遂に、運命のじゃんけんの幕が切って落とされた。

「じゃーん」
　会場が水をうったように静かになる。
　全員が息をするのもわすれて、２人のセンターアイドルの一挙手一投足に注目する。
（「これは、胃がキリキリするくらいの緊張感や。でも、それも心地良く感じる。これが、トップアイドルの世界なんやな」）
（「ここまで来たら、勝ちとか負けとか関係ないよ。今は、自分が出せる最大の力を出すだけ。迷うな自分、自分らしく誇らしく……だよね」）

（「けーん」）
　２人のカードアイドル達が、自分達のセンターの後ろで、祈りを捧げる。
　明日のアイドル界の命運をかけた一戦。
　カードアイドル達の手にも力が入る。

（「ぽー」）
　１０３１プロのハンクス長老は、愛猫のライムちゃんと共に結果を見届けようとする。
　ＪＡＢプロのミスター宍戸は、裏で詫び石をジャブジャブさせて、万が一の場合の情報統制の為に記者の買収を始めている。

（「ーん！」）
　丹が出したのは、運命のグー。
　アイドルとしての自分の生き様は、このグーに集約されている。
　迷ってはならぬ。グーだ、グーで殴り抜け。
　それ以外の手などありえはしない。
　トゲ付きのウニがグーかは異論があるだろうが、それも含めて信じぬくのだ。
　そういう決意を秘めたグー。

　対して、結衣奈が出したのは、天啓のパー。
　アイドルとしての運命をその手に受け止めるやさしい掌。
　戦うのでは無く手を結び合う友愛の形。
　ここでパー以外を出すという洗濯は、結衣奈にもありはしなかった。
　統計学的にもパーが勝ちやすいという、偉人の知恵をも結集して考え抜いたパー。

　互いに絶対に譲れない魂の形、優劣などどこにもないそれは、だが、勝負という非常な世界において、明確に勝者と敗者を確定づけたのだった。

「じゃんけん総選挙、勝者！　１０３１プロ所属、守安・結衣奈ぁーーー！」
　勝利のアナウンスが会場を駆け巡る。
　静かだった会場が、悲鳴と歓声とに埋め尽くされる。

　それは、ＪＡＢプロ支配のアイドル界の歴史に咲いた、反逆の狼煙であったのだろう。
　……アイドル達の歴史が、また、１ページ。

●アイドルパフォーマンスＶＳニコ動アイドル作戦
　シンデレラアイドル総選挙のアイドルパフォーマンス部門も、最終ステージには及ばないとはいえ、狭き門をくぐり抜けた者達だけがのぼることの出来る舞台に他ならない。
「今回は、じゃんけん大会の時みたいな飛び入りは無いようですね」
　メリーナ・バクラヴァ（ヒーローズアンドヒロインズ・e01634）は安堵の息をつくと、カードアイドル達と共に大作ミュージカルを開始した。
　全三幕構成、今回のステージでは途中までしか上演できないので後でライブＢＤを販売する計画である。
　アイドルユニット【Die Mebelnach】を率いるタシュラフェル・メーベルナッハ（白茉莉昇華セリ・d00216）は安堵の息をつく。
「ふふ、私達の艶技に魅入られるが良いわっ♪」
　彼女は、お色気満載のステージパフォーマンスで、男性の人気を食いにかかる。
　裳経・いちご（五平餅はご飯じゃないのっ・d31542）も負けてはいない。カードアイドル達と共に、水着姿で挑む。
「水着とかの露出高い格好してやれば、それだけでレア度アップです！　大胆なビキニ姿をチラ見せしてやれば、どんどんお金つぎ込んでくれるんですから！」

　巨大な海賊船に乗ってステージに乗りこむのは、カードアイドル達を引き連れた黒須・レイン（海賊船長見習い・e15710）。
「アイドルに必要なのは、皆に愛される星のような輝き！　そして、同業他社を蹴落としてでも上に行こうとするあくなきハングリー精神！
　つまり！　海賊船長がアイドルなのは自明の理！　世界の真理である！」
　レインの言葉と共に、海賊船の砲門がひらかれる。
「さあ！私の舞を見るがいい！」
　爆音と共に、砲が他のステージでパフォーマンスを行うアイドル達へと放たれていく。
「上等……」
　リーナ・エスタ（シェルブリット・e00649）は、その様子に拳を固めた。
「わたしはただのアイドルさ☆　歌も踊りもそれほど上手じゃあない！それでもただ一つ！一つだけ勝っているモノがある！さあ見せてやるぞ！これが！これだけが！わたしの自慢の『拳』だぁぁっ！！」
　ステージを飛び出し、海賊船を粉砕するべく、リーナはレインのステージに乱入してく。競い合うようにして、砲撃と拳撃を交わすリーナとレイン。
　彼女達のみならず、ＪＡＢプロのアイドル達は、次々とバトルを始めていた。
　それは、上を目指そうとする者達ならば避けては通れない行為であった。

　だが、アイドル達にとっても、観客達が時々スマホを覗き込んでいるのは警戒すべき事態であっただろう。
「よっしゃー詫び石のために頑張れラブリン！　やれーラブリン！　いっちょ手助けしてやんぜ！　たーまやーっとォ！！　イマドキのライブはこのくらいやんねーとなァ！」
　スタン・シグナルレッド（ツンデレプリカント・e23517）が、花火をじゃぶじゃぶ打ち上げる。
「はい、頑張って枕の営業します！」
　応援を受けた、ラブリンスターは『現役アイドルが枕してみた』というタイトルで、枕会社をスポンサーにあからさまに炎上狙いの宣伝営業をするニコ生を行っている。
　炎上ものだが人がそもそも見ていないので問題はなかった。
　彼女の大衆人気の無さはもはや呪いである。

「うんうん、アイドルはやっぱこうじゃなきゃね」
　リーア・ツヴァイベルク（紫花を追う・e01765）は、同じプロダクションのアイドル達のニコ生活動に感心したようにうなずいた。
「とりあえずスレマと口コミで生放送の告知をしよう」
　たとえ、どんなに良いパフォーマンスをしたところで、人に見てもらえなければ人気が出ることはない……。
　その冷たい現実をよく理解していた。
「ラブリンスターの可愛さと、イケメンも美少女もよりどりみどりな僕のアイドル達をライブ写真もセットで宣伝していけば、後はパフォーマンス次第さ」
　自分のアピールも忘れないのは、リーアもまた『センター』ということだろう。
　桜井・夕月（もふもふ信者の暴走黒獣・d13800）もまた、１０３１プロのアイドル達のニコ生を、カメラワークなどの指導を行うことで支援していく。
「はいはーい、こちらスタジオでーすっ。ふふー、ニコ動でのライブってことで！皆さんコメントでじゃんじゃん盛り上がってくっださいねー！！」
　こうしたアイドル同士の協力は、互いに競い合うＪＡＢプロには、あまり見られないものであった。

『1時間耐久、フラフープをしながら歌ってみた』を放送するテレサ・コール（至高なる白銀と呼ばれた少女・e04242）、さらにラピス・ウィンドフィールド（天蓋の綺羅星・e03720）もまた、そのあざといまでの可愛さアピールでアクセスとコメントを稼ぐ。

　変わったところでは、ルビーアイ・ウィラメント（朽ちた林檎・e06393）が野草の美味しい食べ方や魚の捌き方、鶏のシメ方などを表現した歌「なちゅらる☆ばんざいっ！」を歌い、
「バスケットには食材と調味料と夢がいっぱい、手にしたナイフは調理用です☆」
　アウトドア系アイドルとしての面目躍如である。

　そうした１０３１プロの中でも、最もＰＶとコメントを稼いだのは、セデル・ヴァルフリート（秩序の守護者・e24407）だった。
　セデル率いるアイドル達の、規律正しく統率のとれたアイドル達によるマスゲームじみた一糸乱れぬダンスは、ニコ生視聴者の注目を集め、ランキングを駆け上がる。
　そして、自分達で取材せず動画を紹介とかしているだけのニュースサイトなどでも紹介されるに至る。
　ＪＡＢプロが詫び石じゃぶじゃぶして汚染し、ぬるま湯につかり切ったマスコミ業界への痛烈な皮肉とも言うべき大躍進であった。

●最高にきらめく舞台へ！　シンデレラステージ！！
　テレビを持つ者ならば、見ずにはいられない最高最大の舞台。
　それが、シンデレラアイドル総選挙の最後を飾るシンデレラステージ！！
　選ばれしアイドル達が出演する、夢の舞台に出演するべく、ＪＡＢプロのアイドル達は舞台袖で出番を待ちわびていた。
　上里・もも（高校生人狼・e08616）はゲスの極みとも言うべき顔でほくそ笑む。
「ゲースッスッス……発売するシングルに詫び石をつけ、そしてファンは詫び石を集めて応募することで投票権を得る。これぞ狂気の詫び石循環デスデスマーチ！！」
　詫び石を撒くだけに収まらない、膨大な課金と詫び石が齎す激流……。
　本来ならば、１０３１プロがこの場に現れることができるはずもなかった。

　だが、１０３１プロのアイドル達は、その程度で諦めるような諦めの良い性格をしてはいなかったのだ！！
「ちょっと待った──！！」
　サルヴァドール・ナイトフード（己貌・e00934）の声が響くと同時、突如としてステージ中をスモークが覆う！！
　そしてスモークが晴れた時、そこには１０３１プロのアイドル達が勢揃いしていた！

「花嫁は私の……！！」
「ちょっとそれは置いておいて……。ふっ、私達を差し置いてトップアイドルなど片腹痛いですね！」
　白嶺・雪兎（斬竜焔閃・e14308）が、カメラ目線でビシッと決める。
「これより魅せるは真のアイドルの一大ステージ！　貴女の心に届けます」
　スタイリッシュなビートが、会場に響き始める。雪兎のナンバーであった。
「さあ、私の歌を聞けぇえぇっ！！！」
　何せ生放送。ライブ感覚が命だ。
　強引に勝負に持ち込まれれば、ＪＡＢプロもそれに乗らざるをえない。
　ここで逃げたらアイドルではない。以後の視聴率は絶望的だ。
　ウィルヘルミーナ・アイヴァンホー（白と黒のはざまに揺蕩うもの・d33129）は、驚きのあまりに目を見開く。
「あんな手段で……やっぱり最高の舞台に立てるのなら、善でも悪でも手段を選ばないことには違いがないみたいですね♪
　ＪＡＢプロのウィルヘルミーナは、大胆なステージ衣装に身を包むと、自らもステージ上に躍り出る。
　かくして、素早く予定が変更された。ライブバトルが開始される。
　当初、注目を集めたのは、ＪＡＢプロの側だ。
　詫び石をジャブジャブ使った眩いばかりのステージパフォーマンスは、観客を引き付けて止まない。
　中でも、万道・雛菊（謎の怪盗デイジーテイル・e00130）のステージは、観客の目を奪っていた。
「怪盗～デイジーテイルでっす♪　歌って踊れて盗みもできちゃう、アイドル怪盗とは私のことよ～」
　何故か、どのカメラにも映っている雛菊は、そのミステリアスさも相まって視聴者の注目を集めていた。
　ミステリアスさでは、白銀・夕璃（白銀山神社の討魔巫女・e21055）も負けてはいない。何せ巫女である。
「時代は歌って踊れる巫女さんアイドルですっ……って神主様が言ってました」
　巫女服の概念を破壊するような際どい衣装は、観客の目を引き付ける。
「皆さま神様、どうか夕璃の一世一代、貴方に捧げる舞歌、お受け取り下さいませ♪」
　真っ赤になりながら歌う、小さな夕璃の姿に、男どもは心震わせる。
　彼女は１９歳なので色々と安心だ。

「ふふふ、アイドル衣装を持っている私が今回は頂くわ♪」
　ＪＡＢプロのデジル・スカイフリート（欲望の解放者・e01203）は放送コードギリギリの衣装で激しく動き、歌い方も色っぽく小悪魔感を出して視聴者を欲望に染め上げていく。
　対するは、１０３１プロの木嶋・キィン（あざみと砂獣・d04461）。
　トークも歌唱もせず、ただダンスパフォーマンスだけを武器に乗り込んできた彼は、ダンスのキレに関しては他の追随を許さない。
「……」
　その『無垢』とも言うべきひたむきさは、観客達の心を確かに動かしていた。

　やがて、勝負はＪＡＢプロと１０３１プロ、双方の最も輝いていたアイドルの一騎打ちへともつれ込む。
「ここでは負けたら、ぜんぶムダになる……」
　ＪＡＢプロの天津・千薙（天地薙・e00415）は、苦しい日々を思い返す。
　地獄の特訓、ユニット解散の危機。
　一度はアイドルを辞めようか悩んだこともあった。
　だが、それらを乗り越えて、千薙はここに立っている。
「随分前から担当のＰ（プロデューサー）には元気が出るドリンクを山程飲ませてたくさんお仕事（根回し）してもらいましたし、客席で偉そうに見ているプロデューサーのライバル的存在も用意しました。完璧です、心配事はありません」
　そうした努力の中に、何か芸能界の暗部じみたものが混じるのはＪＡＢプロだからしょうがないね。
「さあ、得意曲の『お願いします輝夜姫』で止めを刺しに行きましょう……！」

「Yeah！　Love You！ミライです☆」
　かたや愛柳・ミライ（宇宙救済係・e02784）は、ひたむきに見る者へと訴えかける。
「何時だって、誰だって、あなたが、あなたの物語の主人公だから。だから……私を、あなたの物語のヒロインに、してくれませんか？」
　
「聞いてください、『divine kiss！』です！」

『君に出会うことを知ってた　この窮屈な鳥籠の中からずっと君を眺めてたから～♪』

「く、この歌……！！」
　歌いなれた持ち歌を熱唱するミライ。
　勝負を分けたのは、歌う曲に対する『習熟度』だっただろう。

「優勝は、愛柳・ミライ！！」

　万雷の拍手を浴びて、ミライは今、世界中の誰よりも光り輝いていた。それはＪＡＢプロ独裁政権状態となっていたアイドル界に、楔を打ち込むものであった。

「素晴らしい！　斬新だね！！」
　そんなミライへと、現れたＪＡＢプロ社長・斬新京一郎は拍手を向ける。
「あ……ありがとうございます」
「そう緊張しなくていいさ。ほら。聴こえないかい？　世界の終わる音が──遮幸神ジャブの足音がさ」
「え？」

　そして、輝けるアイドル達の舞台は、永遠に幕を閉じた。

→(1)じゃんけん総選挙！（ＪＡＢサイド）
　（参加人数：128名　合計戦闘力：15330880　/敗北……）

→(2)じゃんけん総選挙！（１０３１サイド）
　（参加人数：265名　合計戦闘力：31309070　/勝利！）

→(3)アイドルパフォーマンス！
　（参加人数：117名　合計戦闘力：14049275　/敗北……）

→(4)ニコ生アイドル作戦！
　（参加人数：281名　合計戦闘力：33818673　/勝利！）

→(5)シンデレラステージ！
　（参加人数：186名　合計戦闘力：22034544　/敗北……）

→(6)飛び入りシンデレラ！
　（参加人数：289名　合計戦闘力：35247570　/勝利！）