第５話「ネルガルスの玉座」

■オープニング

『ろう　ろう　ねるがるす！　ねるがるす　りむがんと　なうぐりふ！』
『ねるがるす　りむがんと　くるうるく　ほろわろ　なうぐりふ！』
『ねるがるす　りむがんと　おぐん　そーど　ほろわろ　なうぐりふ！』
『ねるがるす　りむがんと　りまーが　ほろわろ　なうぐりふ！』
『ねるがるす　りむがんと　ぐろうす　ほろわろ　なうぐりふ！』
『ろう　ろう　ねるがるす！　ろう　ろう　ねるがるす！』

「ついに、ここまで来ました……。ネルガルスを滅ぼせば、私達は故郷に戻れます！」

　既にどれだけの敵を滅ぼし続けただろうか？
　現れ続ける敵との戦いは、永劫にも等しき時間が流れたようにも思えるほどに繰り返されていた。
　君が疲労を訴えるたび、女神が冒涜的な微笑と共に放つ豪拳によって、その疲労の塊はネルガルスの玉座の彼方へと吹き飛ばされていく。
　輝ける癒しの拳であった。
　君は、自分やフレンズの力が、君達をこの空間へと招きしクルウルクが望んだような、何百何千倍というおぞましきものへと変貌しているのを感じていた。

　そうして戦いの果て、超空間ネルガルスの玉座の最果てへと辿り着く。
　嗚呼、見よ。其処には巨大な闇と重力がある──。
　そこは宇宙の生まれる場所。
　宇宙は一つならず、宇宙の外にはまた別の宇宙が存在する。
　そして宇宙は、此処にて産声を上げるのだ。

　だが、ネルガルスの玉座を抜けて辿り着いた闇と重力の果てで、君達は生誕せし数々の宇宙を犯す存在を見た。
　濡れたような色合いで蠕動する桃色の脳の集合体。
　それは巨大などという言葉で形容することさえ憚られる、蠢く肉で形成された、
『生命の樹』であった。

　無数の脳髄が集まり、幾つもの「脳球」を形作り、それら同士が虫の幼虫を思わせる不気味な粘性の体組織によって繋がり、名状し難き歪んだ模様を虚空に描き出している。

　脳球の一つ一つが抱えるのは生まれたばかりの『宇宙の幼生』。
　だが、それらの宇宙は、歪み、汚され、頽廃の極みにあった。
　宇宙の幼生の間を、虚無の空間を飛翔する巨竜『プラネットブレイカー』が飛び込み、数多の星々を打ち砕く。
　今も君達の前で、第５６０ファルドバール星系を為す星々が悉く打ち砕かれた。
　仮に宇宙の真理に気付く者がいたとしても、それらは全て『密告者』によって事前に知らされ、同じ世界の人々の手によって殺されていく。
　数多の宇宙、星々と住まう人々が織り成した血の歴史は、ネルガルスの重力の鎖によって吸い上げられ、ネルガルスの永劫の思索の材として供されるのだ。

『生命、宇宙、そして万物……』

　再び生まれ出る宇宙に『燦然天使ゼルフォニア』が光を与え、『赤の王タロット』が群がり、精神の進化を促進する。
　脳球はただちにそれを抱え込み、己のものとする。
　いずれ、たった今呑み込まれたばかりの新たな宇宙にも生命が芽生え、進化し、そして滅び、ネルガルスの思索の具として供されるのであろう。
　そうしてネルガルスは深淵にして終わることなき思索を続けるのだ。
　これこそが、ネルガルス。
　叢り続け、繋がり続ける、深慮にして白痴なる混沌塊！

　だが、君達は既に知っている。
　腕力とフレンズの力は全てを凌駕すると。
　その真理をネルガルスに叩き付け、永劫の思索を終わらせるのだ。

　行動選択肢をひとつ選んだうえで、プレイングを書きましょう。
　呪言戦なので、死んだり発狂しても大丈夫です。
　ただし、この戦いに負けてしまうとどうなるのかは、分かりません……。

●行動選択

（1）ここは俺に任せて先に行け！

　ネルガルスの眷属『ドラゴンロード・プラネットブレイカー』『密告者』『燦然天使ゼルフォニア』『赤の王タロット』と激しい戦いを繰りひろげ、無念にも命を落としてしまいます。しかしその犠牲は無駄ではなく、ここで多くの者が戦い、立派な犠牲になればなるほど、続く戦いの勝率が大きく上昇する事となります。どのように命を落とすのかを、プレイングに書いてください。

（2）宇宙の幼生に飛び込む

　脳球が抱え込んでいる多数の『宇宙の幼生』を奪い、浄化することで、ネルガルスの力を大きく落とすことができます。
　宇宙の幼生を浄化するには、己が魂を篭めた呪言を叩き付け、あなたが宇宙の神となる必要があります。宇宙の管理に力を割く必要があるため、続く決戦には参加できません。
　あなたが神となった宇宙がどのような世界になるのかを、プレイングに書いてください。

（3）ネルガルスの攻撃を防ぐ

　ネルガルス本体への道が切り拓かれたら、ネルガルスの蠕動がもたらす宇宙震や狂気をもたらす念波を受け止める決死隊が必要となります。
　決死隊はそれほど多くの人数は必要ありませんが、必ず死にます。どのように食い止めるかや、遺された者たちへの最期のメッセージなどをプレイングに書いてください。

（4）闇堕ち・暴走で蹂躙する

　決死隊が攻撃を受け止めたら、ネルガルスの中枢（マザーブレイン）を露出させるため、闇堕ちあるいは暴走によって、ネルガルスの脳球を切り開きます。戦闘力10倍のためおそらくここが最大戦力となりますが、闇堕ちや暴走状態は狂気に弱いため、続く決戦には参加できません。

（5）裏切ってネルガルスの眷属になる（演技じゃないです）

　様々な動機から、本気でネルガルスの眷属になり、味方を裏切ります。
　後で気まずいことになる可能性もありますが、ネルガルス側が勝利した場合は、みんなネルガルスの元で狂気の眷属になっているので気にする必要はありません。

（6）ネルガルスにとどめを刺す

　これまでの戦いの中で、あなた達は宇宙を満たす狂気にも決して負けぬ、人の心の光を目にしてきたはず。今こそ、その光を叩き付ける時！
　強い心の光を宿した一撃こそが、ネルガルスの脳球同士の繋がりを絶ち、その命を終わらせるのです。
　さあ、狂気と邪悪を撒き散らすネルガルスの永劫の思索に終止符を打ちましょう！

■リプレイ

●（1）ここは俺に任せて先に行け！
　超高速で移動するドラゴンロード・プラネットブレイカー。
　光そのものであり、光速の攻撃を繰り返す燦然天使ゼルフォニア。
　心がある存在の隣に常にあり、無限に増殖するニヤニヤ嘲笑している密告者。
　なんとなく無限に増え続ける上に、弱点を倒さないといけない赤の王タロット。

　そんな厄介な連中に時間稼ぎをさせては、ネルガルスによって発狂する者が増えるばかりだ。
　だからこそ、眷属相手にも、足止め要員が必要とされていた。
　それも、命を捨てての足止めが。
　八代・社（ヴァンガード・e00037）は両腕に刻まれた魔術回路を全て解放した。
　極限まで増幅された狂気じみた戦闘能力の代償に、体が、骨が、軋みと悲鳴を上げる。長くは持たないと一瞬で理解しながら、社は笑った。
「――さあ、死にどころだぜ、野郎ども」
　鼓舞するように、志を同じくする仲間たちに向け社は拳を突き上げる！
「ロマンはここだ、ここにある！　全員突撃！！」
　戦いの中、迸る狂気に頭を抑えてうずくまった瞬間、タロットの群れが社を呑み込んでいく。
　だが、その勇気は確かに灼滅者とケルベロス達に伝わっていた。
「まだまだ！　この程度で死ぬものか……！　ケルベロスの底力、見て驚けっ！？」
　神宮司・早苗（御業抜刀術・e19074）を、無数の石弾が貫いていく。
　ドラゴンロード・プラネットブレイカーがすれ違いざまに撒き散らした隕石（メテオ）だ。全身に穴を開けた早苗は、しかしそれでもにたりと笑いながら前進する。
　それは狂気か、仲間への思いゆえか。

　自慢のアームドフォート、ジャイロフラフープをアンカーで固定したテレサ・コール（ジャイロフラフーパー・e04242）へと、燦然天使ゼルフォニアの放つ光線が降り注いでいた。
　損傷が秒を数える間に増えていき、腕が、脚部が脱落する。
　だが、それでもテレサがジャイロフラフープの標準をゼルフォニアの頭部から離すことはない。そしてゼルフォニアが再び輝きを放とうとした瞬間、
「当たれっ！！」
　ジャイロフラフープから最大の攻撃が発射された。巨大な反動を伴って。
　自らの砲撃の反動に四散するテレサが、その砲弾がゼルフォニアを穿つ瞬間を目にすることはなかった。

●新宇宙創世の刻
　永劫の思索を続けるネルガルスの玉座では大きさも時も意味を為さない。
　全ては狂い果てている。
　ネルガルスの力源として供され、狂気の渦に呑み込まれた宇宙は、誕生してすぐの小ささのままで保たれていた。その内部は超重力の影響下にあるが、灼滅者もケルベロスもその程度で死にはしない。

　仲間達の貴い犠牲のもとに眷属を突破した灼滅者とケルベロス達は、ネルガルスに力を供給する宇宙の幼生に次々と飛び込んでいった。
　だが、人の身で宇宙神と成れば、そこには恐ろしいまでの強固な自我が要求される。
　ガロンド・エクシャメル（愚者の黄金・e09925）のように欲望に塗れた状態で飛び込んだ者は、たちまち発狂していた。
　外から見えるのは、宇宙の幼生が収縮し、狂気に満ちた存在となって消滅していく光景だけだ。中に飛び込んだ者達がどうなったのかは知る由もない。

「俺がお前に託すのはこの一つだけだ……智を鍛えよ。これだ、これだけでいい。知識を、知恵を鍛えるのだ。真実に謙虚に、真理に熱心に、智を、ひたすら智を鍛えよ。鍛えた上げた智を記した事典でもって、俺の横っ面をぶっ叩けるほどに……いや、この俺を！お前の神を排せるほどに！　智を鍛え上げるのだ！」
　新たなる叡智の宇宙、「学術楽園（フィロソフィ・パラダイス）」を築き上げた平・和（魔法少女はエイプリルフール・e00547）。

「人類の敵やそれに対抗する者、その根源となる『異常』なものが一切存在しない平和な世界」を創造したアキレア・フロウイング（平和を夢見る家出娘・e00812）。

　そして、ガルディアン・オックス（牡牛座の鋼鉄騎士・e01581）の支配した宇宙からは、次々と新たな輝きが飛び出していた。
　ガルディアンが望む、強きものも弱きものが共に支えあい歩み続けていく世界。
　人のうちにある悪を否定せず、それに立ち向い続け、高められた宇宙から現れた彼らは、『世界警備隊』を名乗り、灼滅者とケルベロス達へと味方していく。

●揺れる玉座

「うおおおおおおッ……！！」
　トガ・バニシス（放浪の武装収集家・e04911）の武器庫が解放され、無限とも思えるような大量の武装がネルガルスの放つ攻撃を相殺し、あるいは盾となって爆砕していく。
　無論、その余波は武器達だけで止め切れるものではない。
　トガの全身は、瞬く間にネルガルスの蠕動が生む宇宙震によって破砕され、塵となって消え失せる。

「あらゆる死を、打ち消す……！！」
　李白・御理（白角・d02346）の周囲には、呪言によって強大化された
　宇宙颱風と化した清めの風は、風速１００万光年の勢いをもってネルガルスの放つ狂気の蠕動を相殺する。
　だが、神ならぬ身で、そのような無茶が通るはずもない。御理の体は音を立てて崩壊しつつあった。
「ならば、蠕動そのものを止めてしまえばいい！！」
　据灸庵・赤煙（ドラゴニアンのウィッチドクタ・e04357）はウィッチドクターとしての観点から、呪言の力でネルガルスの玉座を診断した。
「ここだ……！！」
　あらゆるものに存在する気の流れ。
　その一点に、赤煙はグラビティを叩き込む。
　すると、ネルガルスの全身のコリがほぐれ、蠕動が止まった。
　後世に伝わる『宇宙ツボ理論』が確立した瞬間である。
　その瞬間、サイガ・クロガネ（唯我裁断・e04394）は飛び出していた。
「安い命じゃあねえがな……くれてやるよ、アンタらに！」
　ネルガルスとの決着に向かう者達へ、サイガが叫ぶ。
「お父さん……舞彩さん……みんな……ばい、ばい。安心して。みんなが、僕より先に行っちゃうみたいに……今回だけ、僕が先に行くだけ、だから。今度は一人になっても……絶対に泣いたりしない。みん、なの、そばに……みんな、が、そばに……いるから……」
　言葉を残し、望未・空明（雪空を歌う聖狼・e00146）が事切れる。
　血まみれのアトリ・セトリ（常盤の片影・e21602）の放った空砲が、ネルガルスへ突き進む灼滅者とケルベロス達の背中を押して響き渡る。
　あたかも、「いってらっしゃい、気を付けて」というかのように、その音は心強さと励ましに満ちたものであった。

●脳球を切り開け
　無数に存在する脳球のいずれが中枢（マザーブレイン）であるのか、灼滅者にもケルベロスにも易々と見つけ出せるものではない。
　だからこそ、その全てを切り裂き、中枢を露出させる必要があった。
　そして脳球の守りを破るには、ただの力では足りぬ。
　故に、彼らは『己』を捨てた。

　鳳・ミコト（レプリカントのウィッチドクタ・e00733）の全身が、機械仕掛けのそれへと変わっていく。
『「アッシャー」解放(リバレート)
　擬装術式(エミュレート)、展開(スタート)
　活動せよ、我が王国(マルクト)
　第三リミッター、「イェツラー」解放(リバレート)
「心」の初期化(イニシャライズ)、実行(スタート)
　ダモクレス形態への変形を完了
　第二リミッター、「ブリアー」解放(リバレート)
　王国(マルクト)、正式版の凍結解除承認
　領域拡大、侵食攻撃、開始(スタート)

　第一リミッター、「アティルト」解放(リバレート)
　最後の剣(フィーニス)、使用を承認
　展開(スタート)、実行(スタート)、開始(スタート)……！！』
　暴走せねば扱えぬ、危険なグラビティ。それを解き放つ準備を刻々と進めていく。

　その横では来無・受理（永遠にルーサー・e28904）がなんか敗者っぽく長台詞を吐きながら負けていた。

「ワオキモい！　こんなの暴走でもしてないと触れもしない、暴走してても触りたくない、安田さん僕の心を癒して！」
　古ぼけたテレビにかけた浅川・恭介（ジザニオン・e01367）の姿が、人形のように変わっていく。
「さあ、みんな見るがいい！　安田さんの男の背中を！　その身をもって血路を造り出す様を！」
　恭介の全身から伸びる糸が、周囲の肉を絞り、捩じ切り、引きちぎる。

「動力炉最大出力、起動、外道祭文『蛭子神』」
　そして、リコリス・ラジアータ（錆びた真鍮歯車・e02164）の全身が、肉を割き骨を断つ、解体機械へと変貌していく。
　敵からの攻撃を無視し、ひたすらに脳球を掘り進めるリコリス。
　その果てに、リコリスは巨大な空洞へと落下する。
　空洞の中に浮かぶ、ネルガルス本体の現身の如き巨大な脳髄樹系図。
　それが本体であるこを確信しながら、リコリスは己の意識を狂気のうちに捨て去った。
●裏切り者の末路
　だが、灼滅者とケルベロス達の進撃は、そこで一旦の停止を余儀なくされる。
　なぜならば、この土壇場になって、ネルガルスに与する者が現れたからだ。

「何故！？」

　悲鳴のような声に、ミリム・ウィアテスト（普通の魔法少女まじかるミリム・e07815）はこう答える──。

「こっちが勝てば無限に続く未来永劫のボク自身が幸せの安息が得られるからだ！！　正義だー？　悪だー？　そんなもん、ただの立場に過ぎないだろう？　ボクはね！　ボクがこの戦いを最後に今までの虚しく苦しい世界に終止符を打ち！！　希望も絶望も何もない無の状態で一番楽になりたいが為に挑むんだよぉおおおおおお！」
　それは、戦い続ける運命を背負った者の、悲しき叫びであったのかもしれない。

　東名阪・綿菓子（蘇る妄言箱・e00417）もまた、己の理由を語る。
「ここで宇宙が生まれ、繁栄して、朽ちて、また新しい誕生を見届けて、滅び行く様を見送り続けて……そうやって悠久の時を過ごし続ける。永遠という言葉では足らないくらいの、果てしない時間の中に、わたがしはこの身を委ねたい。自然の流れとはそういうものじゃないの。輪廻の歯車はどの宇宙でも同じように回り巡っている、ならスケールがでかいだけで宇宙も一緒って考えるのがスマートな思考ってやつよ。そのサイクルを生み出すのがなにがなんだか分かんない邪神だか名伏し難いものだったとして。それがこの場でどれほど関係あるって思う？」
　全ての宇宙が等しくなった、普遍的な世界。
　それを得られる機会は、確かに今しかないのかもしれない。
　そしてまた、愛のために戦うものもいる。
「よく考えたらネルガルスに味方して宇宙の幼体一個貰えればそれを使ってザイフリート様と二人っきりのらぶらぶユートピア創れるんじゃね？」
　クリームヒルト・ブラーシュ（我が燃え盛る愛を御身に・e30010）の言葉に、僅かに灼滅者とケルベロス達にも動揺が走った。
　自分の好きにできる宇宙……それを得られるのは、確かに望ましいことであるのかもしれない。
　まあ、何かケルベロス達の宇宙で、ザイフリートが『えぇー　私を理由にしないで欲しいっていうか、それ本物の私じゃないと思うんだけど』みたいな顔をしたような気配がしていたが。

「何が宇宙だ、何が狂気だ、何が、何が、何が！　宇宙なんてちっぽけな枠組みしか認識できない異形の神も、地球なんてミドリムシの繊毛程度のスケールしか守れないケルベロスも、灼滅者も。全てわたしが支配してやるぞォー！」
　ネルガルスすらものみこみ、あらゆる者を支配せんとする欲望を露わにするノーザンライト・ゴーストセイン（実は男です・e05320）。
　ノーザンライトは飛翔し、自らをネルガルスの中枢（マザーブレイン）に一体化させる。巨大な波動が、宇宙を揺らす。
　思索だけに傾けられていたネルガルスの力が、欲望実現のために傾いていこうとしているのだ。
　それを目にし、他の裏切り者たちもノーザンライトに負けじと後に続く。
　宇宙が、欲望に染まっていく。
　最大の欲望を持つ存在が、ネルガルスなどでないことを、集った者達は改めて痛感させられていた。
「さあ、美しきラスボスの誕生だァ！！！」
　ノーザンライトが哄笑をあげる──。

●終焉、そしてはじまり
「言いたいことは、それだけかな？」
　狂気と欲望に満ちた言葉は、遮られた。
　エミリオ・カリベ（星空と本の魔法使い・d04722）は、欲望のままに心を解放する裏切り者達を静かに見た。
「……この変な世界にも少し興味はあるけれど、僕はいつまでも此処に居る訳にはいかないから……何より大切に想う大好きなあの子のことをずっと待ってるって約束したから。ううん、約束とかそんなものなくても待ってたいって、そう思うから……ん、帰らなくちゃね」
　心の中で大切な人を思い浮かべたエミリオの口元に、自然に笑みが浮かぶ。
　その言葉に、灼滅者とケルベロス達は、大切な人達のことを思い出していた。

「そうですね……さっさと倒して、早く帰るのです」
　紫藤・リューズベルト（メカフェチ娘・e03796）は、己の武器を構えた。
　ライドキャリバーが、『ぶるあああああああああああああああっ！』と男らしいエンジン音を立てる。
「今のあなた方は、強大な力を持つ存在以前に、変態のようにしか見えないですの」

『小賢しいッ！！』

　ネルガルスに融合した全ての裏切り者たちの精神が、灼滅者とケルベロス達へ降り注ぐ。だが、その呪言は、容易く打ち払われる。

「呪言の数が、圧力が違う……！！」
　シヴィル・カジャス（太陽の騎士・e00374）は、奥義サン・ブラストを繰り出しながら笑った。裏切り者など、ネルガルスの力があろうとも、所詮は少数に過ぎない。
　同数ぐらいいたら普通に負けてたかもしれないが、灼滅者の心にも、ケルベロスの心にも、正義の光は正しく宿っているとシヴィルは確信する。
「さあ、守るべき人々のいる大地に帰るため、私たちの刻んできた歴史のこもったあの土地に帰るため、そして貴様らに壊された数多くの宇宙の無念を晴らすため、及ばずながらこの私が数多くの宇宙に住んでいた民たちの代弁者として貴様を見事討ち取ってくれよう！」
　シヴィルに続き、総攻撃が開始された。
　その力はネルガルスの中枢を、そして裏切り者たちの力を容易く吹き散らす！！

「うおおおおおっ！！」
　そして、佐藤・非正規雇用（ドラゴンステーキ・e07700）が手にした光の剣がネルガルスを貫く。ネルガルスの中枢（マザーブレイン）は、一瞬小さく震えたかと思うと、収縮しはじめ、そして弾けた。
「終わったよ……神崎……！！」
　狂気スレスレで呟く非正規雇用。
　そして、ネルガルスは崩壊を開始する。
　非正規雇用はしんみりと言った。
「今日は……今日は何もなかった日として歴史に刻まれるだろう。だが、俺はそんなことはどうでもいい。皆で嘘を言って笑いあえる、そんな日常が欲しかっただけなんだ」
　非正規雇用の言葉に、皆が頷く。
「俺……就職してみるよ！この世界の先をもっと見てみたくなったんだ！！」
　励ましの言葉が、次々に贈られる。
　表情を明るくし、非正規雇用は呪言の力を一つに束ねる。
　そして、主を失ったネルガルスの体を、再び光の剣で切り裂いた。
　外へと出るための道が、切り拓かれる。
　その先に待つ宇宙の渦が、女神ラクシュミがワンパンで開けた、元の世界へと還るためのものであることを、戦い抜いた者達は直感していた。

「ありがとう、また会おう！」

　ダークネスとの、そしてデウスエクスとの戦いはまだまだ続く。
　だが、今は勝利を讃えようではないか。
　灼滅者とケルベロス達は、互いの勝利を讃えつつ、まだ残存しているクルウルク神族が飛んで来るのを叩き続けるのだった。

●いつか、どこかの宇宙で
　おぞましきものどもによる攻撃を受け、ネルガルスの玉座は時と共に消滅に近付いていく。だが、滅ぼされたネルガルスの末端は、いまだ生きていた。
　人間大ほどにまで小さくなった脳球……いや、中枢（マザーブレイン）が消滅した今、この小さな脳球こそが、デウスエクスたるネルガルスの不死性を司る本体なのだ。

　ネルガルスの玉座の揺らめきに紛れ、灼滅者にもケルベロスにも目の届かない次元へと転移したネルガルス。
　だが、その前方に、異形の影が現れる。

　触手で構築された不気味な影。
　それは、『大いなるクルウルク』……！
　滅ぼされるはずのところを何故か『運良く生き延びた』クルウルクは、触手を伸ばし、ネルガルスの脳球を絡め取る。
　そしてそのまま、灼滅者とケルベロスによって不死性を失いつつあった脳球を、躊躇なく握りつぶし……。
　おぞましい咀嚼音と共に、それを啜り喰らった。

　ここにネルガルス神族は、クルウルクただひとりを残し、絶滅する。
　それは狂える時空に起きた、過去とも未来とも取れぬ一幕であった。
　虚空に残るは、邪悪なる何者かの、おぞましき詠唱の唸りのみ。
『くる　う　くるうるく！　くるうるく　なうぐりふ　ろう　れぷりぜんた！』

→（1）ここは俺に任せて先に行け！
　（参加人数：162名　合計戦功点：69568）

→（2）宇宙の幼生に飛び込む
　（参加人数：95名　合計戦功点：53297）

→（3）ネルガルスの攻撃を防ぐ
　（参加人数：73名　合計戦功点：31423）

→（4）闇堕ち・暴走で蹂躙する
　（参加人数：98名　合計戦功点：50509）

→（5）裏切ってネルガルスの眷属になる（演技じゃないです）
　（参加人数：46名　合計戦功点：26023）

→（6）ネルガルスにとどめを刺す
　（参加人数：203名　合計戦功点：102808）