PSYCHIC HEARTS

    !!!!
    ~隔絶された山中・羅刹の里~

    「この絵は、地獄絵図……?」
    「そうだ御子よ。これは『百八地獄絵図』。百八体の鬼が地獄の罪人に様々な責苦を与える、江戸時代の絵画だ。救いなき現世への恨みと、茫漠たる死後の恐怖を全て塗り込めたかの如き、狩野響羅による畢生の大作のひとつだ」
    「怖い……」
    「これはただの絵だ。しかしお前ならば、それ以上のものにできる」
    「どういう……ことですか?」
    「ダークネスは人の別人格。人の魂に潜み、その総数は人の総数に左右される。
     しかし俺は考えた。人がサイキックエナジーから都市伝説を生むように、深い深い怨念、人の根底に刻まれた恐怖は、何かの契機あらば、或いは羅刹を生む事さえも可能なのではないか、とな。この絵にあるように、鬼……すなわち羅刹は、人が恐怖を感じた時に連想する姿に、もっとも近いようだからな」
    「……私に、何をさせたいの……?」
    「察しの良い子だ。この絵に向けて、ラグナロクたるお前の念を注ぎ続けるのだ。
     ただ、それだけの事だ。そうすれば、摩利矢の命は保証しよう」