PSYCHIC HEARTS

    アンブレイカブル『柴崎・明』
    ~破壊された海岸線~

    「力無きアンブレイカブルなど、塵芥程の価値も無し」
     美しい景勝地として知られていた海岸は、アンブレイカブル同士の激しい激突の余波により、無残な残骸と化していた。
     静かに拳を固める柴崎・明の周囲に無様に転がるのは、屈強なる数十人の男女の群れ。
     明ひとりに全滅させられた彼等は、いずれもただの力自慢では無かった。
     彼等は皆アンブレイカブル……天を裂き地を砕く、人外の武を極めたダークネスである。

    「我らを、力無き者と呼ぶか……」
    「やむを得ません。手傷こそ与えましたが、現に、地に這っているのは私達なのです」
    「流石は業大老の高弟、柴崎・明! 我らの師になってはくれまいか?」

     その言葉を受け、明は静かに口を開く。
    「奇襲を仕掛けておいてその言い草は見事。前言を撤回し、その貪欲さに敬意を払おう。
     だが、俺は弟子を取らぬ。群れたアンブレイカブルは、その拳に保身を宿す。
     ……そもそも、業大老の高弟という言い様は気に食わぬ。俺はあの爺を殺す為に鍛えているのだ。弟子になったつもりなど無い」

    「……だがそれでも、オレ達は強くならなきゃならねぇんだ!」
    「お願いしますわ明様、どうかこの通り!」

     彼等の懇願を無視しながら、明はふと、遠くの景色を眺める。
     そのまま、誰に語りかけるでもなく、独り言を話し始めた。
    「ゲルマンシャーク……世にその名を知られた、偉大なるラグナロクダークネスだ。
     奴は未だ完全体ではないが、奴が儀式を執り行った地には、未だ異変が残っている。
     不完全ながら、その地にはブレイズゲートが生まれようとしている。
     ゲートに取り込まれる事を恐れぬのならば、良い鍛錬の場になるだろうな」