PSYCHIC HEARTS
ご当地幹部「ロシアンタイガー」
~オホーツク海・巨大氷塊~
「ロシアンタイガー様、『シベリア氷河船計画』の経過は順調です。
怪人の皆様を載せたこの巨大氷塊は、まもなく日本に到着する見込みです」
一般人諜報員の報告を受け、ロシアンタイガーは僅かに身を起こし、厳かに告げる。
「ご苦労。お前達一般人は、このまま氷塊中枢の動力部に避難するが良い」
「この順調な状況で、脱出準備ですか? 一体どういう……」
質問には答えず、ロシアンタイガーは体を軋ませながら立ち上がり、海上を睨みつける。
「……クッ、我の目覚めが遅かったか! すまぬ、一人でも多く生き延びよ」
「状況は不明ですが、全員に伝令を行いました……ぐおっ、この揺れは……!」
突然の揺れに這いつくばった諜報員の眼前には、驚くべき光景が広がっていた。
彼等の載った、ひとつの島はあろうかという規模の巨大氷塊が、突如として中央から分割されたのだ! そして、引き裂かれた氷塊の中央には、この大破壊をもたらしたであろう、ひとりの男の姿があった。
黒き槌と白き鎌を構え、ロシアンタイガーは男と対峙する。
「鋼鉄拳をここまで鍛え上げた男など、我は一人しか知らぬ。
汝が自らを封印し、乏しいサイキックエナジーを徐々に蓄えていた事は知っている。
しかしまさか、その目的が、この瞬間の為だったとはな」
「オホーツク海は我の『間合い』。油断したな、ロシアンタイガー」
二人の強大なダークネスの対峙により、空はたちまち黒雲に覆われてゆく……。