PSYCHIC HEARTS

    朱雀門・瑠架 & 絞首卿ボスコウ
    ~朱雀門家・私邸~

    「男爵様、当家に何の御用でしょうか。必要事項は既にメッセンジャーに伝達済みですが」
    「なに、私が直々に視察してやろうというだけの事だ。光栄に思い給え。
     そして、早速見せて貰ったぞ。昨年メッセンジャーから話を聞いた時点では半信半疑だったが、なかなかどうして、あのデモノイドというのは便利そうな手駒ではないか!」
    「本国の指令には逆らいませんが、あれが魂の冒涜であるという意見は変わりません」
    「フン、貴様の意見などは知らんよ。爵位級たる私を前に、くだらぬ持論など……」

    「再びお伺いします。男爵様、当家に何の御用でしょうか。
     御身は仮にも男爵級吸血鬼。今その御身を動かすサイキックエナジーが、如何なる犠牲の上に得られた物かをご存知ならば、作戦前にこのような無駄使いはなさらない筈」
    「何だその言い草は! 継人の『末裔』にして『姉』というだけで、偉そうに!
     貴様をこの『奴隷の首輪』で縛り、今この場で辱めることもできるのだぞ!」
    「いいえ、あなたにそれはできません。
     あなたの武器がその首輪であるように、私の武器は『朱雀門・継人』との血縁。
     これが正しく認識できる程度には、男爵様は賢明であると存じます」

    「フン、戯言ばかりの雑魚が! 此度の作戦が終われば、目にもの見せてくれよう!」
     荒々しく朱雀門邸を出て行く絞首卿ボスコウ。
     彼の気配が完全に消え去ったのを見届け、ロード・パラジウムが物陰から姿を現した。
    「よろしいのですか? ガチでむかつく殿方でしたが、あの実力は紛れも無く桁外れ。
     そのような相手を怒らせて、益があるとは思えませんが……」
    「いえ、私の事は良いのです。ああ言えば、男爵様も現状を再認識し、作戦決行日まで大人しく待機してくださるはず」
    「やるからには万全の体制を、という事ですわね。でも、何故そこまでする必要が?
     そもそも、あの方がきちんと奴隷ヴァンパイアを躾けていれば、ロシアンタイガーの一件もあのような結果にはならなかったというのに……!」
    「過ぎた事は仕方ありません。私達は本国からの要求に答え、最大限の協力をするのです。
     ……でなければ、デボネアも浮かばれません」