PSYCHIC HEARTS

    『宇宙服の少年』
    ~日本海海底 23:30~

     その声は少年のそれであった。
     そして少年は、深海の水圧にも耐えうる、重厚な宇宙服を身に着けていた。
     業大老は、驚愕に目を見開く。だがそれは、宇宙服についてではない。
    「貴様は、魂の中に闇を宿していない! 馬鹿な、そのような人間の存在する筈が……!」
     宇宙服の少年は、業大老の言葉に耳を貸さず、一方的に告げる。

    「君の絆を僕にちょうだいね」
     少年がそう言うと同時に、彼の着た宇宙服から電子音が響き渡った。
    『Standby Spade! SnipeSpear!』
    『Standby Heart! HeatHammmer!』
    『Standby Club! CrusadeCluster!』
    『Standby Diamond! DeadlyDarts!』
    『F・F・F・Final Form! Standby Tarots!』
    『The Fool』『The High Priestess』『Wheel of Fortune』『The Hanged Man』
    『The Devil』『The Tower』『The Star』『The Sun』『……And、The World!』
     少年の体から、次々と衝撃波が、或いは変形した腕が、具現化した剣が放たれる!
     明らかに人間の範疇にない凄まじい攻撃に、今の業大老が耐えることはできなかった。

    「闇も持たぬ只の人間が、何故斯様な力を! まさか、貴様が『タカト』だと……!」
     その言葉を言い終わる間も与えず、少年は腕を巨大化させて業大老の顔面を掴む。
     そしてそのまま、業大老の体を海溝の更に奥深くに投げ捨てたのだった。

     戦いを終えて浮上を始めた少年……タカトが、誰かに向けて呟く。
    「おじいさんの持っていた『武神大戦』という絆は、僕が確かに引き継いだよ。
     前に参加した人達の情報も、間違いなく全て受け取った。
     この絆を未来に繋げるため、まずはシン・ライリーに会いに行こうか……」