PSYCHIC HEARTS

    「クロキバ」&スサノオの姫ナミダ
    ~長野県軽井沢・ブレイズゲート化した別荘地

    「ココニ、『大地ノ楔』ノ残滓ガ残ッテイル……」
    「さすがは『黒牙』じゃな。今までもそうやって、セイメイの『白炎換界陣』によって生まれたブレイズゲートを、人知れず砕いておったのか?」
    「大地ノ乱レヲ正シ、ガイオウガニ至ル。ソレガ我ラノ定メデアッタ」
    「なるほどな。だが今後は壊してくれるなよ。ここは儂が『戴く』としよう」

     クロキバの返答にナミダ姫はそう返すと、別荘地が見渡せる丘の上で、何事かを呟く。
     ……彼女が呪文のような言葉を唱えても、別荘地は何も変わらない。
     しかしその地には、力あるものだけが感じ取れる、ある変化が発生していた。

     別荘地より、ひとりのダークネス……ヴァンパイアの女性が現れた。
     彼女は丘の上のナミダ姫に対し、驚愕の表情で語りかけた。
    「まさか、ブレイズゲートを『喰った』のか……!?」

     ナミダ姫は鷹揚に笑い、ヴァンパイアに答える。
    「いかにも、そのとおりじゃ。汝らと違い、儂らスサノオは優雅と無縁でな。
     それよりも、己が身を確かめるが良い。力がみなぎっておるじゃろう?
     お主を阻んでおったブレイズゲートは、この儂、スサノオの姫ナミダが喰ろうた。
     お主は最早分割存在では無い。さあ、いずこなりとも、望む場所に行くがよい」

     ヴァンパイアの女性は驚愕と、溢れんばかりの感謝の表情と共に一礼した。
    「スサノオの姫君よ、この御恩はいずれ、我が生命を賭して……!」

     別荘地を後にしたヴァンパイアを眺めつつ、ナミダ姫は晴れ晴れとした表情で、クロキバに語りかける。
    「上々の結果じゃ……せっかくじゃから、セイメイの奴も少し出し抜いてやろうかのう。
     ブレイズゲートは他にもあるのじゃろう? 端から順番に巡るとしようか、クロキバよ」