■第3ターン結果
(5) 阿佐谷南市街地 Battle:24
「ふむ……。予想外の強さというべきですか。私と戦った時よりもさらに強くなっている様子ですが、どういう魔法を使ったのでしょうね」
灼滅者達の攻勢は、平野・歯車の本気を引き出していた。
これまでに使っていた名刺に加え、名刺の一枚から取り出したククリ刀を手にして灼滅者へと斬り込む六六六人衆の平野・歯車。
キリングリヴァイヴァーの存在があってなお、歯車の力は灼滅者達を大きく上回っている。
だが、その力を灼滅者達は数の力をもって圧倒していた。
「遅いな、その程度かい? ふははは!」
「このような相手では、営業活動も大変ですね……」
外法院・ウツロギ(毒電波発信源・d01207)のフォースブレイクを受け、苦笑する平野・歯車。
彼は自分達の劣勢を悟ると、手勢をまとめると後方にいた敵勢力と合流していく。
「ふん……まあ次が本番というところかね」
ウツロギはそううそぶく。
阿佐谷南の敵勢力は、いまだ全滅とはいかない様子だった。
(5) 阿佐谷南市街 Battle:2
「この耶蘇崎・峻厳に敵対しようとは、たわけたガキどもめ!」
「二十四面教祖」耶蘇崎・峻厳は、仮面の下から激しく吼える。
「デモノイド儀式を最も行い、最もアモン様に貢献したこの私が! 貴様らなぞに敗北してなるものかよ!!」
彼の言葉に、久遠寺・せらら(雨音の子守唄・d07112)の肩が微かに震えた。
小心ゆえの怯えによるものではない、怒りによる震えだ。
デモノイドを生み出す儀式ナイフ。
その存在によって、阿佐ヶ谷に住む多くの人々が犠牲となった。
いや、これまでに戦ったデモノイドの中にも、同じようにして犠牲となった人々なのだろう。
デモノイドをー生み出す技術を誇らしげに語る目の前の男は、せららにとって許し難いものだった。
「……関係ない人もたくさん傷ついて……こんな戦い、早く終わらせなくちゃ…ですっ」
「無駄無駄無駄ァ!! 貴様らは蒼の王の軍勢に敗れる運命なんだよォ!!」
首、胸、腹。
急所を狙って次々と繰り出される耶蘇崎の杖が、せららの体を激しく打ち据える。
だが、それでも。
「それでも……私たちは……私だって、負けられないんですっ……!」
せららのマテリアルロッドが、一瞬の隙をついて耶蘇崎に叩き込まれた。
瞬間、弾けるようにして撃ち出される魔力が耶蘇崎を吹き飛ばす。
「お、おのれ小娘……必ずや24の神罰を同時に下してくれよう!!」
転がるように逃げていく耶蘇崎。
その背中を見送り、せららは大きく息をついた。
(5) 阿佐谷南市街地 Battle:3
その個体は、『クアドラ』と名付けられていた。
デモノイド4体分の体格を持つ、巨大なデモノイドだ。
その頭の片隅に、記憶があるのだろうか。
葛葉・有栖(紅き焔を秘めし者・d00843)は、凄まじい咆哮を上げながら前進して来る巨体を見上げた。
「あなたも、元は一般人だったのかしらね」
有栖の言葉に、返る言葉は無い。
ダークネスを造りだすデモノイド、友人達の闇堕ちを招く六六六人衆。
いずれも有栖の怒りを誘うものだ。
次々と灼滅者達が繰り出す攻撃に身を震わせながら、クアドラはゆっくりとした動きで腕を振り下ろして来る。
叩き付けられる腕がアスファルトを砕き、電信柱がへし折れた。
崩落の音が響き渡る中で、有栖は『クアドラ』と対峙する。
大きく口を開き、上がる魔兵の咆哮に悲しみを感じたのは有栖の錯覚だろうか。
振り下ろされる腕に飛び乗った有栖は、そのままの勢いでクアドラの体を駆け登る。
十字を描いたサイキックソードが、クアドラの体に深々と傷をつける。
その時だった。
「後退するぞ、『クアドラ』!!」
「──っ、まだ動くの!?」
耶蘇崎の声に、一気に退いていく『クアドラ』。その姿に、有栖は何か奇妙な感覚を抱いていた。
(7)東京メトロ南阿佐ヶ谷駅
東京メトロ南阿佐ヶ谷駅の戦場は、まさに興奮の坩堝と化していた。
6F菊が奇襲攻撃を行った時には無かった筈の、ステージが駅の前にくみ上げられており、その上では、淫魔界にその人ありと言われた、演歌の若様のオンステージが開幕しようとしていたのだ。
「さぁ皆様、エロティックに参りましょう!」
演台から発せられた、演歌の若様の艶声が、公演の始まりを告げた。
その声は鼓膜では無く、尾てい骨を振るわせ、灼滅者が攻めてきたというのに、配下達は陶酔した表情のまま、腰を淫らに動かしはじめていく。
その律動は、右から左へと波のように伝わり、甘い吐息と怪しい水音と共にまるでウェーブのように伝播していく。
これこそ、演歌の若様の公演名物、失神者も珍しく無い淫水ウェーブである。
「……これは、教育に悪いですね」
「公序良俗は大切だと思います」
「ということで、はじまったばかりですみませんが、このステージは中止させてもらいます」
アルギルス・トリシュタン(泡沫六花・d13279)達は、この淫猥な公演をすぐに中止させようとステージに向かった。
だが、その前に一人のアンデッドが立ち塞がったのだ。
ビシッと決めた黒服のアンデッドは、鍵島コーポレーションの役職持ちに違い無い。
おそらく、演歌の若様のボディガードを任されたのだろうと考え、アルギルス達は、戦闘態勢を取った。
が、その予測は軽く覆されたのだった。
「私、若様の弟子をさせていただいております。鍛冶・清五郎と申します。それでは、さっそく、聞いて下さい。本日初披露の新曲、阿佐ヶ谷戦争歌」
なんだそれ?
予想外の出来事に、たたらを踏むアルギルス達。
その隙に、清五郎は小指を立ててマイクを握ると歌い出してしまった。
「戦場は~男の~漁火さ~ぁ♪」
演歌の若様に比べれば、どうということは無いが、素人芸としてはなかなかの歌声である。
会社の飲み会で部長が、このくらいの歌を歌えば、おそらく第絶賛されるくらいには上手い。
弟子入りしてそれほど日が経っているとは思えない歌声だが、おそらくアンデッドだけに1日24時間の特訓が可能だったのだろう。
「お歌、うまいのですね。でも、私達の邪魔はさせません」
アルギルスは、清五郎が歌を歌い終える前に、デッドブラスターの一撃でその歌を物理的に中断させたのだった。
「淫魔って、こんな人達ばかりなのでしょうか……」
攻略に失敗して、一時撤退するアルギルス達は、少しだけ疲れた表情となっていたようだった。
(7)東京メトロ南阿佐ヶ谷駅
「さぁ皆様、エロティックに参りましょう!」
演歌の若様の艶声にウェーブを重ねる者達の中には、ソロモンの悪魔の狂信者の姿も多く見える。
アンデッドさせも魅了する艶声の前に、強化一般人などなすすべも無かったのだろう。
「キャー若様ステキー」
なので、戦闘が始まっているというのに、戦っている灼滅者では無く、若様のステージに見入っている、ソロモンの悪魔の狂信者がいたとしても、それは仕方の無いことなのだ。
「なんですかこれ!」
みかんうめぇ口調でツッコミを入れた九十九・緒々子(回山倒海の未完少女・d06988)だが、それは、この戦場の多くの灼滅者達の共通の思いであったろう。
老いも若きもメロメロになって腰を上下させつつ水音を響かせる戦場は、なにがなにやらわからない。
というか、戦っている最中くらい、そういう行為はやめて、戦闘に集中して欲しいと思うのは、決して、贅沢では無い筈だ。
筈なのだが。
「必殺、ご当地キック!」
緒々子のガトリングガンのガガ美ちゃんがうなり、若様のファンらしい敵をなぎたおす。
「キャー若様コッチミテー」
だが、ダメージを受けても彼女達の視線は若様に釘付けなのだ。
これほど、戦い甲斐が無い戦場も、そうそう無いかも知れない。
緒々子は、真面目な戦闘をある意味あきらめると、若様の熱狂的なファンの中でも一番すごいやつを捜して、その息の根を止めにかかる。
このままでは、正気度を消費しかねない。
そう悟った灼滅者達は、この戦場を制圧する為の機械となって、淡々と戦場を制圧していくのだった。
そして、緒々子のマテリアルロッドのマリアちゃんが、若様の熱狂的なファンの中でも一番すごいやつの中心を貫いた。
「いっ逝っく~」
若様の熱狂的なファンの中でも一番すごいやつは、そう叫ぶと、ビクンビクンとけいれんしつつ、絶頂に達して潮を吹いた……。
その視線は白目を剥きながらも、最後まで若様から外されることはありませんでした。
「……もう一度、戦う予感がする。けど、こんなのともう戦いたく無いです」
制圧に失敗して撤退していく、緒々子達は、制圧失敗という事実以上に肩を落として、戦場を去っていくのだった。
(7)東京メトロ南阿佐ヶ谷駅
「♪あなたの~蜜壺に~わたしの~二の指を~」
演歌の若様は、ビブラートを巧みに効かせてAパートのサビを歌いきる。
カラオケ採点マシンであれば、加点の嵐のため、機械が爆発してしまうような歌声である。
だがしかし、歌詞がどうしようもなく最低であった。
「最低だ!」
「でもめちゃくちゃ上手い!」
「でも、最低だ!」
灼滅者達から総ツッコミが入ったが、演歌の若様は、満面の笑顔で聞き流す。
そして、再び、淫猥な歌を続けようとした所で、ロイ・ランバート(白いジョーカー・d13241)がマッタを書けた。
「時間が惜しいんでね、。演歌を聞いている暇はないんだ。さっさと退いてもらおうか?」
格好良いポーズでそう宣言するロイ。
その様子は、どこまでも男前だ(本当は女だけど)。
「何を仰いますやら。演歌こそが、世界で最高のエロティックソングでございますよ」
演歌を聞く暇が無いといわれた若様は、少しだけ表情を険しくすると、ロイをたしなめた。
確かに、若様の艶声を聞くと、ロイでさえ、少し、もやっとしてしまう。
確かに、危険な歌声だ。
「思い起こして御覧なさい。演歌のめくるめくエロティックな歌詞の数々を。さぁ、皆さんで」
そう若様が言い放つと、ファン達がため息と共に、次々とエロティックな歌詞を羅列していった。
「「「「「ぬ!…… みといえば、濡れた髪」」」」」
「「「「「な!…… なといえば、流し目」」」」」
「「「「「う!…… うといえば、うなじ」」」」」
息もぴったりで、若様の問いに応えるファンの人達。
ある意味、淫魔、恐るべし。
「ちっ、撤退の合図か。とりあえず、あんた達は黙ってもらおうかな」
どうやら、東京メトロ南阿佐ヶ谷駅の制圧には失敗したようだ。
ロイは、それを確認すると、若様に紅蓮斬を叩き込んで沈黙させると、仲間と共に、一旦、区役所方面へと撤退するのだった。
「こんな奴が強いなんて、何かが間違っている」
撤退する灼滅者達の心は、わりと、ひとつにまとまっていたようだ。
(8)JR阿佐ヶ谷駅:Battle1
翼を大きく広げ、ソロモンの悪魔アモンは灼滅者たちを見下ろしていた。
先程の戦闘でオデット・ロレーヌ(スワンブレイク・d02232)のフォースブレイクによって胸には大きな傷が刻み付けられ、痛みを訴えている。
一時的に耐えてはいるものの、もはや死の運命は免れないだろうとアモンは実感と共に理解する。だが、それでも納得はしがたいものがあった。
「おのれ……たかが灼滅者如きに、このアモンが破れるだと!?」
先の鶴見岳の戦いでは歯牙にもかけなかった灼滅者達。
短期間に力をつけて、アモンに迫るまでに至った。その事実は、アモンをしても認めがたいものがあった。
「アモン様、敵襲です!」
「さっさと迎撃しろ!」
怒気も露わに、部下達に迎撃を命じるアモン。
その眼前で、報告に来た部下の頭が飛来した銃弾に撃ち抜かれた。
灼滅される部下の姿に、もはや何も言えずにアモンは立ち上がると灼滅者達を見た。
「貴様らを甘く見た私が一番の道化だったということか……だが易々とやられると思うな!」
翼の羽ばたきと共に、強烈な吹雪が灼滅者達を襲う。
だが、それをメディック達が続けざまのヒールサイキックで回復させると、他のポジションについた灼滅者達が一気に周囲のダークネスやデモノイド達を殲滅にかかる。
「アモン……! あなたはここでやっつけるよ」
橘・希子(織色・d11802)は槍を手にアモンの胸元へと飛び込んだ。
心ならずもデモノイドにされた多くの人々の無念。
それを二度と再現させてはならない。
穿つように突き進んだ槍はアモンの胸板を貫き、灼滅せしめる。
強大なソロモンの悪魔の灼滅は、アモン一派と呼ばれる集団の崩壊を意味していた。
(8) JR阿佐ヶ谷駅 Battle:2
「ブエルの影っつっても、そんなもんかいな! これでよう偉そうな口叩けんな!」
泰山・創斗(通りすがりの特撮オタク・d13224)は、凄まじい速さで戦場を跳びまわり、ソロモンの悪魔達を翻弄していた。
愛犬、風丸との連携攻撃によって敵を怯ませると、次の瞬間には癒しの風で仲間を癒す。
「おのれ……!!」
「その程度の動きで、俺達に追いつけると思うなよ!!」
槍を手に突っ込んで来るソロモンの悪魔、クランプスエリート。
その勢いに内心で驚きつつも、余裕を崩すことなく風丸とともに左右に飛んだ。
創斗の影がクランプスエリートの手にした槍を縛り上げた瞬間、風丸がその名の通り、一陣の風として疾駆する。
霊犬が口に加えた斬魔刀が、ソロモンの悪魔を両断していた。
「おのれ……進化していれば……」
「したところで、大した差は無かったんやない」
創斗はニッと笑みを浮かべ、風丸の頭を撫でてやるのだった。
(8) JR阿佐ヶ谷駅 Battle:16
ソロモンの悪魔達を蹴散らして進む、一人の武者がいる。
当世具足に身を包んだ、池添・一馬(影と共に生まれし者・d00726)だ。
黒光りする鎧は、ソロモンの悪魔達から浴びた返り血を受けて、手にした血染めの皆朱槍と同じ色に染まっていた。
「鶴見岳での借りは返させてもらうぜ!!」
ソロモンの悪魔達に敗れ、闇堕ちした苦い記憶を、この機に振り払わんと振るわれる朱槍。
一馬の勢いに導かれるように、他の灼滅者達も一斉に攻勢を強めていく。
なんとか統率を保とうとしていたシャドウテイカーが絶叫する。
『灼滅者ごときの突破を許すな!』
「ごときと侮ったお前達の負けだ、踏み潰させてもらう──!」
手にした朱槍がいっそう赤い色を帯び、螺旋を描きながらシャドウテイカーの頭部を撃ち抜いた。
「灼滅、完了。まあアモンと比べりゃ弱いやつだが、少しは面目も立ったな」
消滅するソロモンの悪魔の眷属を見下ろし、一馬は槍を一つ振った。
→有力敵一覧
→(5)阿佐谷南市街地(24勝0敗/戦力2167→967)
→(7)東京メトロ南阿佐ヶ谷駅(53勝0敗/戦力3386→736)
→(8)JR阿佐ヶ谷駅(16勝0敗/戦力450→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。