不死王戦争

    ■第4ターン結果

    (5) 阿佐谷南市街地 Battle:33
     六六六人衆、第600位平野・歯車。
     灼滅者達は彼を追い込むことに成功していた。
     戦場の状況、キリングリヴァイヴァーの存在。
     そうしたものを差し引いても、平野歯車は自分を狙う灼滅者達の強い意志を感じていた。

     名刺を盛大に放出しながら、平野歯車は荒い息をつく。
    「やれやれ。本来ならば、義理はあっても義務は無いのですがね」
     ネクタイを締め直す彼のスーツ姿には、いささかの揺らぎも無い。
     とはいえ、既に自分が窮地に追い込まれていることを理解はしていた。
     彼自身、鍵島コーポレーションに力を貸してはいても、本来的には六六六人衆だ。
    「フリーランスよりは定職に就いている方が楽とはいえ、今回のこれは残業手当と危険手当をたっぷりもらったところで割りに合いませんね」
     そう嘆く平野・歯車の眼前に忽然と現れるのは、黒衣に身を包んだ少年と、それに付き従う存在だ。
    「亡霊……いやサーヴァントですか」
    「…………」
     ガイスト・インビジビリティ(亡霊・d02915)からの返答は無い。ガイストはビハインドの「ピリオド」と並び、相次いで歯車への攻撃を繰り出していく。
     無言のままに繰り返される攻撃は、彼がまさしく亡霊であるかのようだ。
    「喋らず惜しみなく……ビジネスマンになれば大成するかもしれませんよ、貴方」
     賞賛ともつかない言葉を歯車にかけられながら、ガイストはガトリングガンを平野に向ける。
     轟然と唸りを上げたガトリングガンが、魔力を帯びた大量の弾丸を吐き出していく。
     ブレイジングバースト。
     ガトリングガンのサイキックが平野の姿を爆炎の中に呑み込んでいく。
    「まさしく火の車ですか。予算未達を出したことはないのが自慢だったのですがね……。鍵島コーポレーションでは死亡手当は出るのでしょうか?」
     そう呟きながら、平野・歯車の姿は炎の中に消えていった。

    (5) 阿佐谷南市街地 Battle:6
    「目標、巨大デモノイド『クアドラ』。B.K.S.Fはこれより集中攻撃を開始する!!」
     小田切・真(少尉・d11348)はそう宣言すると共に、『クアドラ』との交戦に入った。
     巨体のデモノイド達と比べても、さらに大きな体躯を持つ『クアドラ』。
     その戦闘力は事実上、クアドラプル(4倍)のさらに上を行く。
     だが。
     その圧倒的な暴力は、灼滅者達によって完全に食い止められていた。
     『クアドラ』の巨体から繰り出される攻撃が、次々と路上に破壊の痕跡を残す。

    「ガアアアアアアアアアッ!!!!!!」

     デモノイドの咆哮を受け、真の被るヘルメットにビリビリと衝撃が走った。
    「だが、技術もない暴力など……!!」
     咆哮と共にクアドラの傷が癒えていく。
     蒼い魔兵が振り回す腕を受け流し、そのままの勢いで真はクアドラの体を持ち上げた。
    「うおおおおっ!!」
     轟音と共に、デモノイドの体が地面に叩き付けられる。
     アスファルトの破片が舞い散り、さらにクアドラの骨がへし折られる音が響き渡った。
     全身を覆う蒼いオーラが内側から爆ぜると、その爆発は連鎖していく。
    「制圧完了です!!」
     真の言葉が、戦いの勝利を告げて響いた。

    (5) 阿佐谷南市街 Battle:7
    「クアドラがやられただと!?」
     ガシャン!!
     耶蘇崎が最新式のスマホを地面に叩き付ける音が、路上に響いた。
    「ええい、所詮は試験体か。ならば別の者を利用して新たな巨大デモノイドを作るまでだ!」
     他の戦域からの報告に、苛立たしげに叫ぶ耶蘇崎。
     だが、彼のいらだちも、敵襲の叫びを聞き、顔を上げると同時に吹き飛んだ。
    「ま、またお前か小娘!! 貴様、私に何か恨みでもあるのか!?」
    「え、えーと……」
     はっきり言って、全くの偶然なのだが、その事実を指摘するのもどうかと思い、久遠寺・せらら(雨音の子守唄・d07112)は困ったような顔を造った。
     強敵に立ち向かう意志を持っているからこその必然とも言えたかも知れないが。
     せららを前にした耶蘇崎が狼狽するのを、周囲のソロモンの狂信者達が怪訝そうな顔で見る。
    「ここさえ切り抜ければどうにかなるのだ! 貴様ごときに何度も倒されてたまるか!」
     必死の様子で灼滅者達を切り崩そうとする耶蘇崎。
     その姿に、せららは強く殲術道具を握りしめる。
    「怖い……でも……」
     消えない恐怖心はある。
     灼滅者として戦う上で、自分の気の弱さが欠点ともなりうると、せららは理解していた。
     だが、それでも戦う理由はあるのだ。
    「こんな怖さ、きっと、傷ついて、怖い思いをして……大切なものを奪われて、喪ってしまった、たくさんの人たちの無念に比べたら、なんてことないっ……!!」
     阿佐ヶ谷の街で失われた数々の人命を思い、せららは殲術道具に祈りを篭める。
    「私の力は……そんな人をもう作らない為にあるのっ……!!」
     再びのフォースブレイクが、今度こそ耶蘇崎を完膚なきまでに灼滅する。
     ソロモンの悪魔によって強化された耶蘇崎に、復活の目は無い。
     邪悪な儀式を繰り返した邪教の輩は、その姿を完全に消滅させていた。

    (7)東京メトロ南阿佐ヶ谷駅
     東京メトロ南阿佐ヶ谷駅の若様オンステージは、興奮の余韻を残しつつ、終了間際の寂寥感を醸し出していた。
     周囲には、何度も逝って失神したり、灼滅者によって物理的に逝ってしまった死体が散乱している。
     だが、まわりに死体が散乱するのは、若様のステージでは珍しい事では無い。
     若様の流し目が自分を見たとか見ないとかで凄惨な殺し合いに発展する事もままあったのだから。

     そして現在。ステージでは、若様の弟子が歌を披露しているようである。
     本来は、前座としてステージを温めるのが弟子の役目なのだが、若様のステージでそんな事をすれば、暴動に発展してしまう。
     なので、こうやって、腰砕けで失神したファン達が立ち上がれるようになるまでの場つなぎの為に、彼ら若手が起用されているのだ。
    「戦場は~男の~漁火さ~ぁ」
     現在は、鍵島コーポレーションのブラックスーツから転身したという、異色の経歴を持つアンデッド演歌歌手、鍛冶・清五郎が歌声を披露している。

     だが、その歌声は、近衛・一樹(紅血氷晶・d10268)によって中断させられた。
    「残りはお前らだけや! 覚悟しぃ」
     一樹は、そう言うと、ビシっと清五郎を指さしたのだ。
     それに対して、清五郎は、舞台上から灼滅者たちを見下ろすと、
    「わたくし、鍛冶・清五郎と申します。拙い歌ではございますが、是非、御拝聴ください」
     と、丁寧に頭を下げてみせた。
     当然ではあるが、その清五郎への灼滅者の返答は、NOである。
     まさに、NOと言える、灼滅者であった。
    「これで終いや!」
     一樹は、愛用の武器をひらめかせると、バトルオーラをまとうと、閃光百裂拳にて、清五郎を灼滅させたのだった。

     それは、演歌歌手を目指した一人の漢の夢の終着駅であったのかもしれない……。

    (7)東京メトロ南阿佐ヶ谷駅
     死屍累々。
     そんな単語が似つかわしい、東京メトロ南阿佐ヶ谷駅に、灼滅者達は、再び足を踏み入れた。
     その戦場は既に、何だかお疲れ気味だった。
     それが、戦いのせいか若様のコンサートのせいなのかは分からない。ていうかどうでもいい。
     いたいた、若様の熱狂的なファンの中でも一番すごいやつ。
     若様の熱狂的なファンの中でも一番すごいやつは、興奮しすぎて逆に冷静になってしまっている。
    「突然ですがコンサートで隣に座った女の容姿をチェックすることはありますか?……あっ、若様が今こっち見た! キャー若様ステキー」
     気のせいだった。
     番鎧・広竜(閃変怪奇・d06674)は、少しイラッとしたのか無言のままジャッジメントレイで、正義の裁きを下してみせた。
     それは、傲慢なまでの王者の裁きであったろうか。

     若様の熱狂的なファンの中でも一番すごいやつは、信徒280名を誇る新興宗教の教祖として、多数の強化一般人を束ねてきた女傑であったのだが、ひょんな事から若様に出会ってしまったのだ。その後、信徒から巻き上げたお金を全て若様グッズを買うのに浪費して、ついには、教団を破滅させてしまったらしい。
     それもここまで。若様の熱狂的なファンの中でも一番すごいやつは、今度こそ、息を引き取り、戦場は制圧される事になる。


    (7)東京メトロ南阿佐ヶ谷駅
     再び突入した、東京メトロ南阿佐ヶ谷駅。
     演歌の若様のステージはすでに終わっていたが、舞台裏から若様の気配がする。
     とういことで、笹銀・鐐(赫月ノ銀嶺・d04707)達は、若様のもとへと駆けつける。
     若様のような危険な淫魔を、野放しにする事はできないのだから。
     主に教育的な意味で。

     そんな彼らが突入したのは、演歌の若様のための控室である。
    「なんとも無粋な人達ですね」
     着物の裾をそろえて、にこやかに振り返る、演歌の若様。
     後ろでファン達が若様を求めて喘いでいるようだが、若様は既に、営業スマイル完全完備である。

    「お前は、灼滅しなければならない」
     鐐は、決意を込めて、そう言い放つ。
     その言葉の中には、交渉の余地は1ミクロンも含まれていなかった。
    「なんと嘆かわしい、最近の若者なのでしょう。そのようなことだから、日本の少子化が進んでしまうのです」
     そして若様は、演歌の衰退と日本の少子化の因果関係について、語りだした。
     若様曰く、世界最高のエロティックソングである演歌が復権することこそ、日本の少子高齢化に歯止めをかける最良の方法であるらしい。
     ある意味、一理あるのかもしれないが、いややっぱり全然無いし、加えてそれは今回の戦いに全く全然ひとっかけらも関係なかった。

    「言いたいことは、それだけですか?」
     鐐は、若様の学説を聞き流すと、サイキックソードを構えて必殺の紅蓮斬を放つ。
     その紅蓮斬が、ロイの紅蓮斬で死の運命を身に受けた、若様に対するとどめの一撃となったのだ。
     そして、若様は、まるで、スポットライトを浴びたように光り輝くと、ふわりと着物をひるがえして、えろてぃっくな部分を露出しながら、乱れ艶やかに、息絶えるのだった。
     最後に、
    「エロティーーーーーーック!」
     という、魂の叫びを残して……。

    →有力敵一覧

    →(5)阿佐谷南市街地(33勝0敗/戦力967→0/制圧完了!)

    →(7)東京メトロ南阿佐ヶ谷駅(59勝0敗/戦力736→0/制圧完了!)

    →重傷復活者一覧

    →死亡者一覧

    ■有力敵一覧

    有力敵 戦功点 現状

    『クアドラ』
    200
    (5)阿佐谷南市街地:Battle6にて、小田切・真(少尉・d11348)に倒される。

    「二十四面教祖」耶蘇崎・峻厳
    60
    (5)阿佐谷南市街地:Battle7にて、久遠寺・せらら(雨音の子守唄・d07112)に倒される。

    平野・歯車
    200
    (5)阿佐谷南市街地:Battle33にて、ガイスト・インビジビリティ(亡霊・d02915)に倒される。

    「若様の弟子」鍛冶・清五郎
    90
    (7)東京メトロ南阿佐ヶ谷駅:Battle13にて、近衛・一樹(紅血氷晶・d10268)に倒される。

    演歌の若様
    180
    (7)東京メトロ南阿佐ヶ谷駅:Battle16にて、笹銀・鐐(赫月ノ銀嶺・d04707)に倒される。

    若様の熱狂的なファンの中で一番すごいやつ
    60
    (7)東京メトロ南阿佐ヶ谷駅:Battle17にて、番鎧・広竜(閃変怪奇・d06674)に倒される。

    戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。

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