■第6ターン結果
(6) 都立杉並高等学校
ベレーザ・レイドは、醜い反面だけでなく、美しい反面までも醜く歪ませて、戦場を掛け抜ける。
宇津木・拓真(気紛れな突風・d14697)によって穿たれた傷は、本来ならば致命傷に近いが、それでも、彼女は戦場を駆ける。
「なんとか陥落は免れましたね。でも、このままでは……」
焦りがベレーザの胸腔を支配し、息をするだけで疲労を感じるほどだ。
だが、それは、彼女の生き残る意志に翳りを与える事は無かった。
「私は、生き残る、どんなことがあっても」
美醜のベレーザは、吐息と共に、その誓いを新たにするのだった。
(6) 都立杉並高等学校
「なんとか撃退したね。でも、まだ油断はできないよ」
ベレーザと同様、カルマクィーンのリーダー、ヒヒイロカネ銀虎もまた、高宮・琥太郎(ロジカライズ・d01463)の螺穿槍で穿たれた傷を気にしつつ、仲間達を呼び集めた。
(「デモノイドを作ったヤツらは……徹底的に狩るって言ってたけど、そんなの私達に関係無いじゃないか。私達は、ただのお手伝いで来ているだけだっつーの」)
だが、しかし、そんな愚痴を言っても始まらない。
「必ず、ラブリンスター様の元に戻るよ! こんな戦場で死んでたまるかっての」
銀虎は残る仲間達を鼓舞するように激を飛ばした。
ラブリンスター様の元に戻るという希望に、カルマクィーン達もなんとか士気を取り戻す。
(「これで、もう少しは戦えるか……」)
銀虎は、そう思いながら、後ろで自信なげに俯く少女に声をかけた。
「安心しな。あんたの事は、私達みんなで守ってやるさ。私達の可愛い妹分だからね」
その銀虎の言葉に、「カルマクィーン見習い」佐藤・優子は、小さく頷くと、銀虎の目を見て応えた。
「守られるだけなんて嫌です。私も、全力で戦います。そして、姉さん達と一緒に、ラブリンスター様の元に戻るんです」
刀狩・刃兵衛(剣客少女・d04445)のような手練れに習われるのは怖い。でも、銀虎たちと共にラブリンスター様の元に戻る為なら、きっと戦えるのだ。
決意の眼差しでそう応えた優子の頭を、銀虎がガシガシと乱暴に撫でる。
都立杉並高等学校の戦いは、まだ終わらない。
●(10)春の宮
サイキックエナジーを吸収する超機械『サイキックアブソーバー』。
その稼働によって、最も被害を受けたダークネス種族がどれであるかは議論の余地があるだろうが、ノーライフキングが受けた被害の大きさが、数あるダークネス種族の中でも上位に位置するであろうことは、議論の余地の衆目の一致するところであった。
ソロモンの悪魔アモンの勢力に多数のソロモンの悪魔が所属していたのと同様に、『蒼の王コルベインの勢力』と言った場合にも、その組織には多数のノーライフキングが所属している。
だが、その強力さ故に、ほぼ全てのノーライフキングが活動不能となり、封印状態に陥ってしまったのである。
封印を免れたノーライフキング……つまり『あまり力の強くない者達』は、『水晶城』の内部にいた。いや、アンデッド達に守られていたと言っても良いだろう。
その彼らも、眷属達が水晶城の奥にまで灼滅者達の侵入を許すに至り、出撃することを余儀なくされていた。
「勉強中ごめんね~! ここからは特別授業だよ! ボク達、灼滅者と戦ってみよう~! ……負けたら殲滅だけど!!」
金井・修李(無差別改造魔・d03041)の宣言と共に、凄まじい量の弾丸が春の宮を蹂躙していく。
「鍵島め、役に立たぬ……このままでは」
「私は、静かに暮らしたいだけなのに……」
「混濁王」アグリッパが沢崎・虎次郎(衝天突破・d01361)に、「後継者」桜崎・小夜子が修李にと、有力なノーライフキング達もそれぞれ死の運命を与えられ、ダークネス達に戦慄が走る。
だが、春の宮の戦力もまた、灼滅者達に大きな打撃を与えていた。
「成長途上といっても、ノーライフキングってことっすね」
虎次郎の言葉に、灼滅者達にも緊張が走る。
蒼の王コルベインがもしいるならば、彼らを遥かに上回る力を持っているはずなのだ──。
●(11)控えの間
控えの間で灼滅者達を待ち受けていたのは、鍵島コーポレーションの社長、鍵島・洸一郎その人であった。
灼滅者の中には、財界で精力的に活動を行っていた彼の名を知る者もいただろう。
だが、その本性がアンデッドであるという事実は、これまで露見していなかったのだからタチが悪い。おそらくは、彼のように密かに現代社会に潜んでいるダークネスや眷属は、まだまだ数多くいるに違いない。
「これが『見えざる圧政』ということなのですね」
「その通りだ。世界は悪に満ちている。知って尚輝けるか、灼滅者!」
「だからこそ、そのためにこそ戦うんです。世界を悪から救うために!!」
「良かろう! 全ての灼滅者、ダークネスは、俺にとって主の次に尊敬すべき存在だ。初手から、全力で御相手させていただく……!」
紅林・美波(茜色のプラクティカス・d11171)と鍵島の叫びと共に、広大な控えの間は戦場と化した。
(11)控えの間:Battle16
突入せんとする灼滅者達を押し返すアンデッドの軍勢、その練度は外に比しても高い。
蒼の王コルベインの勢力が持つアンデッド兵団のうち、優秀な者のことごとくが、この空間に集められているのだろう。
「貴様が鍵島か…人の命を冒涜した罪、思い知れ!!」
怒りの声と共に駆けだす百舟・煉火(彩飾スペクトル・d08468)を、遮るように立つのは黒衣に身を包んだアンデッドだった。
「邪魔をするな!!」
「ブラックスーツの隊長、社長秘書の有栖川・亜梨子です。……社長への面会許可を取る際は、私をまずお通し下さい」
「だったら貴様を殴って押し通る!!」
有栖川の振るう刀を、煉火の縛霊手『シュヴァリエR.C.』が押し返す。
「この程度でボクを切ろうなんてスイーツよりも甘いね!!」
煉火はシュヴァリエR.C.を構えたまま突撃、繰り出される斬撃を突破して、有栖川へと迫った。味方の攻撃が生んだ一瞬の隙を突き、縛霊手が有栖川の体を握りしめる。
「行くよ!」
煉火は掴みあげた有栖川の体を、高々と掲げた。
その姿、まさしく横浜みなとみらいにそびえるランドマークタワーの如し!
「必殺! みなとみらいダイナミック!!」
轟音と共に、有栖川の体は控えの間の床に叩き付けられた。
その体から力が抜け、アンデッド本来の死体へと立ち戻って行く。
「(あなたは私に気づかなかったけれど、死んでからの私は幸せでした……ありがとう、父さん……)」
「……勝手なことを」
アンデッドとなったが故の幸せ。
想像の外にあるものだと、煉火は大仰に首を振った。
(11)控えの間:Battle8
自ら前線で灼滅者と切り結びながら、鍵島は問う。
「お前達の戦いは、お前達にとっての『幸福』なのか?」
「……どういう意味です?」
美波の掲げたマテリアルロッドが、鍵島の一刀を受けて大きく歪んだ。
即座にオーラを拳に集中、連打を繰り出す美波に対し、鍵島はなおも言う。
「眷属は、主の為にだけ存在する。故に、己の存在意義を悩む必要が無い。生の苦しみを持たぬ俺達は『幸せな愚者』だ」
革靴が地面を蹴り、高級な仕立てのスーツ姿が高速で接近して来る。
突きの一撃に捨て身で突っ込みながら、美波は叫ぶ。
「どれだけ悩もうとも、私は人間でありたい──!」
武蔵坂学園の灼滅者達によって闇堕ちから救われた美波。
自分が自分でなくなるという経験を経た彼女にとって、人間であり続けることが何より必要とされることだった。
鍵島の突きを再び受け止めた美波のマテリアルロッドが、完全にヘシ曲がる。
そのマテリアルロッドを拳に握りしめ、美波はフォースブレイクを鍵島の胴を目掛け叩き込んだ。凄まじい衝撃と共に胴に大穴が空く。
だが、血の一滴も零れないのは、鍵島が紛れもないアンデッドであることを意味していた。
「コルベイン様、申し訳……」
灼滅され、消滅する鍵島。
アンデッドでありながら人間としての知性を残していた鍵島が、彼が言うように幸福であったのか否か。それは、彼自身にしか分からないのだろうと美波は思った。
(11)控えの間:Battle12
「これは……ゴーレムとかいう類なのでしょうか」
山岸・山桜桃(ヘマトフィリアの魔女・d06622)が首を傾げる。
控えの間の最奥、コルベインの玄室に続く扉の前に控えているのは、巨大極まりないガーゴイルだった。
眷属の一種であることは分かるのだが、このガーゴイルがどのような存在なのかはイマイチ掴みづらい。
と、不意にどことなく斜に構えたような声が、頭上から響いた。
『余裕は強さを生む。怠惰は情熱に火を付ける。
……俺に刻まれた、鍵島コーポレーションの社訓だ。
なかなか良いと思わないか? 俺は好きだね、この言葉』
見上げれば、ガーゴイルが山桜桃へと語り掛けている。
「でも、もう終わりだと思いますよ鍵島コーポレーション」
『そうだなぁ。俺も再就職先を考えないとなぁ……ダイセキゾウとか名前も安直だし……』
ロダンの考える人のように、考え込む姿勢を取るガーゴイル。
山桜桃ら灼滅者達は、全力のサイキックで、ダイセキゾウがこれ以上悩む必要が無いようにしてやった。
「さて……問題はこの先ですね」
玄室の扉がゆっくりと開かれていく。
その先で灼滅者達を待ち受けるものは……。
→有力敵一覧
→(6)都立杉並高等学校(9勝0敗/戦力1185→735)
→(10)春の宮(11勝12敗/戦力800→250)
→(11)控えの間(54勝7敗/戦力1300→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。