■第2ターン結果
●新沢・冬舞
サッポロファクトリーで灼滅者達を迎え撃ったのは、シャドウと化した新沢・冬舞(d12822)の率いる部隊だった。
現実世界であるにも関わらず、周囲にはシャドウ達が平然と動き回っている。
迷宮化現象による
「今はまだ弱いシャドウ達だけだが、贖罪のオルフェウスが現世に現れた暁には、さぞ面白い光景が現れるだろう」
シャドウ達を盾にするように、後方から指揮を執る冬舞。
彼が闇堕ちするのは、これで三度目だ。武蔵坂学園へ来る契機となった一度目、そして仲間となった灼滅者達に再び救われた二度目。そして三度目の今、彼はかつての再現はさせぬと言わんばかりに、ダークネスとなった冬舞は敵陣の奥で灼滅者達を待ち受けている。
「殻から解放してくれたオルフェウス。かの四大シャドウならば、この力を捧げるに相応しい」」
贖罪のオルフェウスへの恩義を感じているのか。
オルフェウスへの進軍ルートを遮る冬舞の体からは、圧倒的な力と、殺気が漏れ出していた。
「新沢さん、闇に打ち勝って戻ってきて?一緒に青春しよっ! これから学園祭もあるよっ!」
既に複数回闇堕ちしているせいなのだろうか、冬舞へ呼び掛ける百瀬・莉奈(ローズドロップ・d00286)達の声も遠い。
多数のシャドウや眷属を従える冬舞の姿は、完全な敵、そのものだ。
「奴は魂の深淵へと閉じ込めた……奇跡は二度も起きさせはしない」
断固として戻ろうとしない冬舞。
その動きを止めようと、振るわれた莉奈の『piacevole』が、彼の身体に衝撃を迸らせた。
「くっ……現状では不利だな」
劣勢を悟ってか、冬舞はシャドウ達の群れの中に身を躍らせ、その場を退いていく。
「そう簡単には、元に戻ってはくれないか……でも」
ダークネスが本来の人格を『閉じ込めた』と言っていた。
冬舞はまだ『消えていない』のだ。
いかにか細い望みであっても、仲間を救出するためには、再び説得を続けるまでだった。
●武者アンデッド『風の灰靭・百入丸』
「我が主の邪魔立てをするか。ならば風の灰靭・百入丸、容赦はせぬぞ」
「私の台詞よ。ここは通してもらうわ」
ルージュ・ジロドゥー(紅き血潮の華・d23851)と相対した武者アンデッドは、その言葉に抜刀で応えた。強烈な斬撃がルージュを襲うとともに、周囲のシャドウたちもまた一斉に突撃してくる。
だが、突破力であればこちらとて負けてはいない。ルージュは縛霊手を装備した腕を構えると、迷いなく敵陣へと飛び込んだ。その背中に、仲間たちの声と足音が続く。
「食らってしまえばこちらのものね」
一度食らい付き、噛み破ってしまえば、敵陣になだれ込むことは難しくない。突破口を開いた灼滅者たちの攻撃で、一体、また一体とシャドウたちは斃されていく。
その中にあって、百入丸は縦横無尽に駆け回り、弱った味方を守るように立ち回っていた。
だが、幾度となく味方を庇うということは、即ち百入丸自身へのダメージを蓄積させるということに他ならない。明らかに動きを鈍らせている武者アンデッドに向けて、ルージュは得物に収めた祭壇を展開した。
「Adieu」
光り輝く結界が百入丸とその周辺にいるシャドウをまとめて包み込み、彼らの霊的因子を強制的に停止させる。ぐ、とよろめいた百入丸が、血を振るい落とした刃を収める。
「ここは一旦退こうぞ。だが、ぬしらの攻めをこのまま許しはせぬ」
体勢を立て直すべく撤退していく武者の背を追うことはせずに、ルージュは金の髪を翻す。堕ちた仲間が戦っているのであろう方向をちらと見やって、彼女は浅い息をついた。
●『白』霧渡・ラルフ
北18条駅を守る、斬新コーポレーションの新幹部たる『白』。
白いマジシャンスーツを着た姿は、斬新コーポレーション社員達の中でもよく目立っていた。
闇堕ちによって変化した金髪が、戦が生んだ風を受けて微かに揺れた。
「次で斬新コーポレーションは詰み、カ? この展開を予期していたのカ? なるほど、人間を妄信すル貴様らシイ」
内なる存在へ向け、呟く『白』。
一方、斬新コーポレーションの六六六人衆達は殺し合い殺されることに興奮状態だった。
今の彼らの話題は、指揮を執る『白』である。
「手品師っぽい六六六人衆とか、一周回って斬新じゃない!?」
「すげぇっすよ『白』様! 流石は斬新コーポレーションの新幹部!」
「どうでもいいけど『白』って前にコラボしようとした白の王セイメイと被ってない?」
「つまり殺して王座を簒奪する気なんだよ……!!」
「斬新……!!」
「貴様ラ、無駄口ばかり叩いてテいないデ、さっさと迎撃に移ってはどうダ?」
斬新コーポレーションの社員達の無闇な尊敬の視線を浴び、ラルフはシルクハットを軽く弾いた。
ラルフの普段使っていた殲術道具を模したような影がシルクハットの中からボロボロと零れ落ち、灼滅者達へと飛来する。
斬新コーポレーションの六六六人衆や強化一般人達もまた、ラルフの指示を受け即座に動き出していた。
配下達も会社に様々な意味で縛りつけられているとはいえ、やはり六六六人衆。実力を見せつけねば、言うことを聞く連中でもない。
「ラルフさん!」
「ヒハハッ! それは表の名だナ。あの様な『愛する者を殺したい』などという狂った殺人鬼と一緒にして、ワタシに悪いと思わナイか?」
灼滅者達の呼びかけに『白』はシルクハットから矢継ぎ早に繰り出した。
それらを受ける灼滅者達の体は、たちまちのうちに傷ついていく。
「ぜったい負けない、もん……!」
それでも、栄・弥々子(砂漠のメリーゴーランド・d04767)は、ラルフの姿から目を逸らさない。
「ラルフさん、この間の依頼で弥々子達を逃がしてくれてありがと、なの」
彼女達を斬新コーポレーションから撤退させるため、ラルフはその身を賭した。ならば、それを救うのは自分達でなければならない。
「このまま敵のままなんて、やだよ! どうか帰って、きて……!」
弥々子の腕が羅刹のそれへと変わり、ラルフを強引に地面に叩き付ける。
瞬間、弥々子の一撃だけでなく、内から走った衝動に、『白』の顔が歪んだ。
「ここまでカ。今回は貴様と、貴様の仲間達の勝ちと認めてやロウ。ヒ、ハハッ……ヒハハハハハ!!」
哄笑はすぐに止み、ラルフの髪が金髪から栗色へと戻っていく。
彼がダークネスから人間へと戻ったのは明らかだった。
「ラルフさん……!」
弥々子がほっとしたように声をあげてラルフを手から解き放つ。
残っていた六六六人衆の掃討も終わり、灼滅者達がラルフの元へと走り寄って来る。
闇堕ちから戻ったで消耗していたラルフだったが、その身を殲術再生弾の力が包み、すぐに戦闘可能な状態にまで復帰させる。色の戻った髪を束ね直すと、ラルフは笑い声をあげた。
「クハハッ! それじゃア『元』幹部としテ、斬新コーポレーションでも潰しにいきまショウか」
●五〇八位シレイラ・マーベリック
カーマイン色のスリットドレスを翻し、五〇八位シレイラ・マーベリックは灼滅者達へと大型の銃を向けた。
指先がトリガーを引くと共に、轟然と唸り、弾丸を吐きだしていく。
手にした殺人のための破壊兵器も、異様に肥大した左手も、生前に目撃された姿と酷似している。
だが、シレイラ・マーベリックは、既に灼滅者達によって滅ぼされたはずの存在だ。
「斬新の仕業か……」
灼滅された際に遺骸の一部や武器などを遺す者もいるが、灼滅されたダークネスは、跡形もなく消滅するケースが多い。
シレイラ・マーベリックも、その例外ではなかったはずだった。
死体も残らない形で灼滅されたダークネスをアンデッドと化す。
それは灼滅者達にとっても、確かに画期的なことかも知れなかった。
「ノーライフキングなら、やろうと考えても不思議はないけど……よく実現したなぁ」
成瀬・亮太郎(チビっ子爆音ロケンローラー・d02153)は、感心したように呟いた。
その辺りを埋めるアイデアを、斬新コーポレーションが提供したのであれば、もしかすると斬新と認めてやっても良いのかも知れないと頭の隅で考える。
『私の機能は、破壊することにある……再び組み上げられたのならば、それを為すのみだ』
『破壊兵器』を自認していたシレイラ・マーベリックは、生前よりもさらに感情を感じさせない瞳で、灼滅者達を見る。
北海道大学で目撃された六六六人衆のアンデッドよりも、さらに無感情であり、装備も相まって灼滅者に機械を連想させる。
それは『破壊兵器』を自認していたが故なのか、あるいは慈愛のコルネリウスによって、既に残留思念がソウルボードの彼方にある『プレスター・ジョンの国』へと送られているからか。
「ほんとに破壊が望みなの? お姉さん、全然楽しくなさそうだよ?」
亮太郎は怪訝な声をシレイラに向けた。
『楽しいか否かなど、問題ではない』
「僕は楽しいのが一番だと思うよ!」
多くの人が『楽しい』と思うことができるためにも。
ダークネス達のもたらす死と破壊は喰い止めねばならないと、亮太郎は弾丸が途切れた一瞬の隙を突いて飛び出した。
シレイラの左手が迎撃せんと動くが、それに覆いかぶさるようにして、縛霊手が包み込む。
「ただし、楽しむのも常識の範囲内でね!」
腕を振り抜くと、シレイラの左腕もろとも、縛霊手が彼女の顔を打撃する。
よろめいたシレイラの体が、朽ち果てたようになって崩れ落ちていく。
「楽しいこととか、見つけられれば良かったのにね」
死してなお『兵器』としてしか在ることのできなかったシレイラを見送り、亮太郎は痛ましげに首を振った。
●元西日本統括参謀・グシオン
東区役所前駅を守る敵を突破し、灼滅者達はホームにまで至る。
地下鉄路線は既に、水晶の迷宮へと変化しつつあった。札幌市営地下鉄の路線の中には、地上に出ている箇所もある。
迷宮化が地上を覆い始めるのも、時間の問題だろうと思われた。
その迷宮の入り組んだ一角で、指揮官級のソロモンの悪魔は灼滅者達を待ち受けていた。
「あらゆる戦場に『眼』を送る。それが、このグシオンの力じゃ! 情報収集にかけて、このグシオンにかなう者などおりはせぬ!」
豪語するグシオンの周囲を、血走った眼球が浮遊する。
グライアイと呼ばれるダークネスに似ているが、それらの眼球の全てがグシオンにとっての武器であり、グシオン自身と繋がった知覚器官でもあるのだろう。
「大した自信だ」
もっとも、サイキックアブソーバーから情報を引き出すエクスブレインには及ばないだろうが。
そう心中で付け加えつつ、黒咬・翼(ブラックシャック・d02688)は頭上に回り込んだグシオンの眼球から放たれた光線から飛び退いた。
直撃は回避したものの、黒いスーツから焼け焦げたような臭いが立ち昇る。
「先程の攻撃で、貴様らの力は見切った! ハルファス殿の智謀、サブナック殿の力、そして、このグシオンの情報収集能力さえあれば、ハルファス軍が再び大勢力として日本に返り咲くことも容易! 儂の『眼』に狂いはないのじゃ!」
「そうか。……だが、勝ってから言うんだな」
グシオンの繰り出して来る眼球の群れを引き付け、翼は水晶の壁を振り抜いた。
砕けた水晶の破片が、『眼』達に刺さる。
「眼球がむき出しというのは、不便だな」
言いながら、翼は身を低くし、眼球の群れの下を潜り抜ける。
己の身を貫く槍に、グシオンは全身の眼球を白黒させていたが、
「ええい、ここはひとまず撤退じゃ!」
言うが早いが、後ろの壁を叩くと、グシオンの体が下へと落下する。
「忍者屋敷か……!?」
やはりノーライフキングのダンジョン。仕掛けは豊富にあるようだ。
それでも、東区役所前駅の敵は大幅に減少している。
灼滅者達の攻撃によって、駅が制圧できるまで、そう時間は要しないだろう。
→有力敵一覧
→(2)中島公園駅(2勝3敗/戦力750→650)
→(5)学園前駅(6勝1敗/戦力800→500)
→(8)西18丁目駅(5勝6敗/戦力1450→1200)
→(12)サッポロファクトリー(24勝6敗/戦力1500→300)
→(16)北18条駅(7勝0敗/戦力150→0/制圧完了!)
→(17)北海道大学(19勝0敗/戦力2650→1700)
→(19)東区役所前駅(12勝5敗/戦力850→250)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。