札幌迷宮戦

    ■第6ターン結果

    (13)札幌テレビ塔
    ●リチュアカレイド
     オルフェウス召喚の余波を受け、札幌テレビ塔の周辺は、既に、現実とソウルボードが入り混じる奇妙な空間へと変貌していた。
     迷宮化も影響しているのだろう、テレビ塔自体も本来の電波塔としての域を遥かに上回る、巨大な迷宮塔へと変化している。

     その迷宮を乗り越え、展望台へと辿り着いた灼滅者達の耳に、さめざめと泣き叫ぶ女性の声が届く。
    「嗚呼……あと少しで! あと少しで私達の悲願が達成されるというのに!」
     涙声で灼滅者達に武器を振るうのは、シャドウ「リチュアカレイド」だ。
    「あれが、儀式の進行を担うシャドウですか」
     灼滅者達が殲術道具を構え、そのシャドウを見る。
     サッポロファクトリーでテレビ塔の守りについていたシャドウ新沢・冬舞は、再び灼滅者へと戻った。
     彼からは、オルフェウスの力を現実世界に完全に召喚する儀式の進行を担うシャドウがいるという話が、灼滅者達へと伝えられていた。
     だが、闇堕ちしていた時の冬舞と比べても、さほどの強さは無い。
     だからこそ、シャドウにとっては本来危険を伴う、現実世界での活動という役目を任されたのだろう。
    「札幌迷宮の完成を阻止し、生きて武蔵坂学園に帰るためにも……ここで、贖罪のオルフェウスの完全召喚は止めないと!」
     十束・御魂(天下七剣・d07693)は、ウロボロスブレイドを手に敵陣へと斬り込んだ。
     群がるシャドウ達を鞭剣で切り刻み、形を変えた巨腕を振るい、敵を粉砕する。
     無数の武器を振り回し、灼滅者達を寄せ付けまいとするリチュアカレイド。
    「本当に、大したことはありませんね」
     御魂の鬼の腕がシャドウを貫いた時、悲痛な声がシャドウから上がる。
    「オルフェウス様、不完全な状態での召喚をお許し下さい!」

    ●オルフェウスの影
     夢と現実の狭間から現れたのは、スペードを模した奇妙な兜を被った存在だった。
     そこに秘められた力を感じ、灼滅者達に警戒が走る。
    『……召喚は不完全に終わったか。今の私は、本体からこぼれ落ちた力ある影に過ぎぬ。だが、私はお前の罪を許そう、リチュアカレイドよ』
     くぐもったような声。
     だが、その声の高さ、その兜の下に見える肢体が小柄な少女のものであることに、幾人かの灼滅者達が瞠目した。
    「あれが、贖罪のオルフェウス……?」
     男じゃなかったのか、等と言っている灼滅者達へと、オルフェウスは顔を向けた。
    『汝、ダークネスとして生まれながら、灼滅者という罪により意識の深層に閉じ込められ、同胞たるダークネスを灼滅する者よ。
     灼滅者という殻に閉じ込められ、孵る事なき、雛鳥よ。
     我、オルフェウス・ザ・スペードの名において、汝の罪に贖罪を与えよう。
     我が声を聞き、我が手にすがるならば、灼滅者という罪は贖罪され、汝は殻を破り、生まれ出づるであろう』
     その言葉に、幾人かの灼滅者達が記憶を刺激されたかのように顔をしかめる。
     魂の内側で、ダークネスが激しく暴れ回るのを感じ取る。
     だが、殲術再生弾の輝きは、オルフェウスがもたらさんとした闇堕ちを食い止めた。
    「どうやら、あなたの贖罪の力も、今の僕達には通じないようですね」
     白いヘッドフォンから聞こえる音楽に耳を傾け、ラピスティリア・ジュエルディライト(夜色少年・d15728)は呟いた。

    『罪深き者達……ならば、我が手によって罪を知らしめよう』
     オルフェウスの手に、忽然と鞭が現れる。
     それが響きを発すると共に、シャドウ達が現れ、灼滅者達へと襲い掛かる。
    『王達の簒奪を免れた『美』を受け継ぐ者の精神世界に、我は既に接続している。
     かのラグナロクの力を得て、我は現実に姿を現すのだ』
     オルフェウスの贖罪への誘いは、灼滅者達の精神の内側から破壊せんとし、鞭うたれた者達が悶絶する。
    「ですが、今さら……。たかが影如きに負けるものですか」
     ラピスティリアの鬼の腕が、オルフェウスの兜を打ち砕いた。
     中から現れるのは、どこか暗さを感じさせる少女の顔だ。
    『我が力、我が策、及ばずか……。
     だが、時は迫っている。光の少年、デスギガス、赤の王。
     奴らが動き出す前に……』
     その言葉を残し、オルフェウスの影は消え去る。
     ソウルボードとの繋がりを絶たれたテレビ塔の展望台には、激しい戦いの痕跡だけが残されていた。

    (19)東区役所前駅
    ●元西日本統括・グシオン
     セレス・ホークウィンド(白楽天・d25000)達は、グシオン率いるハルファス軍の残党を駆逐にかかっていた。
     残り少なく、混乱する彼らを全滅にまで追い込むのは、今の灼滅者達にとって難しいことでなかなった。
    「西日本統括というからには、関西の駐屯地辺りにいたのか? ……いや、元だったな」
    「……おヌシ、何が言いたい」
    「いや、何故ハルファス軍は、わざわざ北海道へ逃げ込んだのかと思ってな」
     灼滅者達は日本各地の殲術病院でハルファス軍と戦ってはいるが、幹部と戦った重大な戦場は、新宿や横浜である。にも関わらず、本州からハルファス軍が撤退しているのは、
    「力不足だな。特に西日本を失ったのは、単純にお前の力が足りないのでは……?」
     セレスは、辛辣に事実を指摘する。
     もし、西日本にグシオンが勢力を維持できていたのなら、ハルファス軍がわざわざ北海道に撤退するに至ることは無かっただろう。
    「ええい小賢しい!」
     怒りに任せ、グシオンは眼球を乱舞させる。
     だが、セレス達は既にグシオンの弱点を見破っていた。
     隙が無いように見える攻撃も、『眼球』あってのものだ。ならば、
    「それを先に潰してしまえばいい……!」
     眼球が潰れるたび、グシオンの動きは正確さを失っていく。
    「ひぃぃぃい……!? 我が『目』を上回るとは!? だ、誰か助けるのじゃ!」
     狡猾で鳴らしたソロモンの悪魔達は、グシオンの醜態を冷ややかに見ていた。手を貸す者はいない……というよりも、他の悪魔達も追い詰められ、次々と灼滅されつつあるのだ。
    「目が曇ったようだな。これまでだ!!」
     飛来した小さな眼球を踏みつけ、足場としてセレスは跳んだ。
     大上段から突き出した妖の槍の一撃が、グシオンの矮躯へと叩き込まれる。
    「これで、ハルファス軍も壊滅だな」
     ハルファス軍には、大量の技術が保持されていた。それを持った者に、他の組織へ行かれるわけにはいかない。
    「美醜のベレーザの再来は、避けられたな」
     セレスは過去にデモノイド技術をばら撒いたソロモンの悪魔のことを思い、安堵の息をついた。

    →有力敵一覧

    →(2)中島公園駅(0勝2敗/戦力600→600)

    →(6)豊水すすきの駅(1勝0敗/戦力1100→1050)

    →(9)西11丁目駅(2勝0敗/戦力750→650)

    →(13)札幌テレビ塔(41勝20敗/戦力1250→0/制圧完了!)

    →(14)大通駅(7勝0敗/戦力1250→900)

    →(19)東区役所前駅(3勝2敗/戦力100→0/制圧完了!)

    →(21)札幌駅(5勝5敗/戦力3750→3500)

    →重傷復活者一覧

    →死亡者一覧

    ■有力敵一覧

    有力敵 戦功点 現状

    リチュアカレイド
    450
    (13)札幌テレビ塔:Battle2にて、十束・御魂(天下七剣・d07693)に倒される。

    オルフェウスの影
    1800
    (13)札幌テレビ塔:Battle3にて、ラピスティリア・ジュエルディライト(夜色少年・d15728)に倒される。

    元西日本統括参謀・グシオン
    810
    (19)東区役所前駅:Battle5にて、セレス・ホークウィンド(白楽天・d25000)に倒される。

    戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。

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