■第7ターン結果
(22)札幌地下空間
●武者アンデッド『武光』
灼滅者達は、ソウルボードとの接続を解かれたテレビ塔方面を抜けた。
札幌地下空間に接続したビルから、札幌地下空間へと突入する。
内部は戦前に【2B桃】が確認した通り、複雑な迷宮となっていたが、大体の面積は一致するはずだった。
灼滅者達は迷宮内に現れる敵との戦闘を繰り返しながら、奥へ奥へと進んでいく。
どこからか聞こえてきた笑い声に、灼滅者たちは足を止める。見れば、一振りの日本刀を手にした骸骨が大口を開けて笑っていた。
「あれは……古戦場にいたという武者アンデッドの一体ですか?」
「いかにも、儂は武光。お主らはあの、武蔵坂学園とやらの者じゃな」
地下通路の中で、武光の乾いた声は何重にも重なって響く。反響を振り払うようにゆるりと首を横に振って、神音・葎(月黄泉の姫君・d16902)は真正面から武光に告げた。
「……お手合わせ願えますか」
その言葉に、武光はまた声だけで笑う。表情を浮かべることのできる顔の肉が、既にないのだ。
そして、彼は灼滅者たちへと刀を向けた。
「いざ参ろうか!」
骨ばかりの身とは思えぬ力で、武光の刃が押し込まれる。己の武器でそれをぐいと押し返し、葎はダイダロスベルトを撃ち返した。
一合、二合と武器がかち合ううち、次第に押され始めたのは武光の方だった。周囲のアンデッドもまた、灼滅者たちの攻撃によって薙ぎ倒されていく。この機を逃すまいと、葎は自らの腕を鬼の腕へと変化させた。巨大化した掌が唸りを上げて空を切り、武光に迫る。
鬼神変の直撃を受けた白骨が砂状に砕け、ばらばらと迷宮の床に降り積もる。
「なんと……お主の勝ちじゃ、若造」
驚いたように開かれた武光の口が、ふと最後の笑い声を零す。その顎もやがて細かな砂と化し、床に落ち――そして、戦の余波である風にさらわれて消滅していく。
豪放な武者の数百年越しの最期を、葎は黙って見送った。
●序列四七七位黒鵺・零
天祢・皐(大学生ダンピール・d00808)達が遭遇したのは、六六六人衆が率いる敵の一団だった。
「来たか、灼滅者ども」
黒鵺・零(くろぬえ・れい)。幾多の一般人を手にかけて来た、序列四七七位の六六六人衆である。
「アンデッド……ですか」
皐は、零の姿に顔をしかめた。
整ったと言える顔立ち。
だが、その身は死体を寄せ集めて作られたアンデッドと化している。
零の姿は、彼が斬新コーポレーションと北征入道によって造られた、アンデッドダークネスの一体となったことを示していた。
斬新コーポレーションは既に滅びたとはいえ、ダイダロスベルトをはじめ、その造り出したものが消えるわけでもない。
「俺は、アンデッド化と『相性』が良かったらしくてな。今の力も、闇堕ちゲームとやらに協力した報酬というわけだ」
どこか自嘲するように、零はその手にした刃を振るう。
零自身が言うように、その刃を振るう勢いは、生前よりもなお激しい。
一般人を眷属であるアンデッドにすれば、当然ながら強化される。
アンデッド化された零も、それにならうように力を増しているようだった。
(「斬新コーポレーションを潰せたのは幸いでしたね」)
皐は思う。
こんな存在を量産されてはたまったものではない。
「他者に『美』を与える、あのラグナロクの力を得れば、俺は以前の……いや、以前にも増す力を得ることができる!」
ラグナロクを求める意志を露わにする零。
六六六人衆にラグナロクを与えれば、いかなる事態を招くか分からない。
「退いてもらうぞ、灼滅者!!」
アンデッド達を引き連れ、斬り込んで来る零。
灼滅者達は、即座に彼を迎撃に移る。
序列が強さに直結しないことを灼滅者達は知っているが、生前の零が四百番台に違わぬ強さであったことを、戦場にいる交戦経験のある灼滅者達は知っていた。
「ですが、強くなり過ぎたな。動きが荒い!」
筋力の増大から、元の得物を持ち替えた影響もあるのだろう。
零が近接戦を挑む灼滅者達を追い払うように、横薙ぎの一撃を放つ。
一瞬、身が泳いだのを見逃すことなく、皐は距離を詰めると緋色のオーラを纏った光剣を振るう。湿った音がして、零の腕が内側から弾けるように砕け散った。
破壊の衝撃は全身に伝わり、黒いスーツの下から鈍い音が響く。死体を繋ぎ合わせて作られた六六六人衆のアンデッドの体が崩壊しているのだ。
「死して、再び死ぬ、だと……因果応報など……ならば、俺は、あと何度死ぬと……!」
地面に落ちた零の頭部から、言葉がこぼれる。
そうして再び、死したる六六六人衆は完全に灼滅された。
●ラグナロク「桜庭・照男」
灼滅者達は、地下歩行空間を奥へと進んでいく。
そして、札幌市と大通の中間地点に辿り着いた灼滅者達は、地下歩行空間を遮るように設置された、巨大な水晶機械の元へと辿り着いていた。
周囲を守るアンデッドやノーライフキング達を倒しながら、灼滅者達はその機械へと近付いていく。
月雲・彩歌(幸運のめがみさま・d02980)は、機械に囚われた男性と、その周囲に咲き乱れる花々を不思議そうに眺めた。
「この男性が、ラグナロク……?」
思いながら、灼滅者達は装置からラグナロクを拘束する箇所を叩き壊す。
装置から解放されたラグナロクの男性の目が見開かれ……次の瞬間、ラグナロクは激しい咆哮を上げていた。
「オオオオ……!!」
激しいサイキックエナジーの流れが、彼を中心として巻き起こる。
余波を受けた彩歌の周囲に、美しい花々が咲き乱れた。
灼滅者達の目には、ラグナロクの青年は一定の戦闘力を得ているように見えた。
「闇堕ち一歩手前、って感じか」
「それはまずいですよ……」
月雲・悠一(紅焔・d02499)の言葉に、彩歌は慌てたように言った。
サイキックエナジーの抽出から解放された影響なのか、サイキックエナジーがラグナロクの男性の全身に満ちている。
サイキックエナジーを抽出されるだけの存在として、長期間ダークネスによって拘束され続ける……。
それは、闇堕ちしてもおかしくない状態であっただろう。
「でも、まだ、あなたは完全に闇堕ちしたわけではない……今なら!」
彩歌は前に進み出た。手にしたマテリアルロッドを握り締め、
「正気に戻って下さい!!」
咆哮を上げるリーゼント頭めがけて振り下ろした。
大きくふらついたラグナロクは、思ったよりも幼さを感じさせる瞳で彩歌を見る。
「サンキュー美人さん……あんたの一撃、俺のハートに響いたぜ……!!」
がっくりとくずおれるラグナロク。
その巨体を、悠一が受け止めた。
「おっと……よし、俺達の勝ちだな!!」
ラグナロクとはいえ、その身体能力は常人と大差ない。
「大丈夫でしょうか……?」
「多分彩歌のせいじゃないぞ」
最低限の生命維持はされていたようだが、今回の事件が起きる以前から、北征入道によって拘束されていたらしい彼には、激しい消耗が見受けられた。
そうするうち、地下歩行空間を覆っていた水晶の壁が次第に薄れていく。
地下歩行空間の向こうに見える札幌駅や大通駅もまた、元の姿を取り戻していった。
「北征入道達も、撤退したようですね」
迷宮化事件の際には、アンデッドが突如出現するのが確認されている。
サイキックエナジーの供給源であったラグナロクとは、また別なのだろう。
「『蒼の王の遺産』……」
かつての蒼の王コルベインとの戦争の際にも、ノーライフキングたちは水晶城から転移するかたちで姿を消したのを思い出す。
色を冠した『王』の二つ名を持つダークネス達。
そこには、まだ多くの謎が秘められているようだった。
●取り残された淫魔達
一方、その頃。
すすきの駅に直結したデパートを占領したアリエル・シャボリーヌは、迷宮化が解かれていくのを困惑した様子で眺めていた。
「……なんか気付いたら終わってたんだけど……どうすればいいの、これ?」
多分、どうにもならないであろうことを察し、SKN六六六の淫魔達は沈鬱な表情を浮かべた。
→有力敵一覧
→(2)中島公園駅(2勝1敗/戦力600→500)
→(6)豊水すすきの駅(1勝0敗/戦力1050→1000)
→(9)西11丁目駅(1勝0敗/戦力650→600)
→(21)札幌駅(10勝4敗/戦力3500→3000)
→(22)地下歩行空間(53勝12敗/戦力2000→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。