■第8ターン結果
●掃討戦突入
武蔵坂学園の切り札『殲術再生弾』は、およそ12時間に渡って効力を発揮する。
ノーライフキング北征入道の計画を阻止した今、灼滅者達は戦場に取り残された敵の掃討に移ろうとした。
すなわち、HKT六六六の分派の一つ。
ゴッドセブン淫魔アリエル・シャボリーヌが率いる「SKN六六六」である。
すすきのを本拠地とする彼女達は、にも関わらず計画から完全に取り残されていた。
(2)中島公園駅
●イカサマアドバイザーリホコ
札幌市営地下鉄南北線の中島公園駅。すすきの駅の隣の駅であり、周囲には札幌市立の総合公園が広がっている。
公園には、コンサートホール、天文台、文学館などが立ち並び、札幌市民の憩いの場となっているのだ。
その中島公園に拠点を構えるのは、斬新社長のカジノ計画でアドバイザーとして辣腕を振るった淫魔、イカサマアドバイザーリホコだ。
イカサマアドバイザーというと、嘘だらけのアドバイスをするように思えるが、実際は『イカサマ』についてのアドバイスをする、カジノ運営にとって有為の人材である。
だが、そんなデキル女だったリホコの姿は、既にこの場所には存在しなかった。
「戦争は終わったのですよ。どうして、まだ、あなた達は戦うのですか?」
疲れきった表情で灼滅者を見上げるリホコ。張り付いた営業スマイルでさえ煤けて見える。
「みなさまのご活躍で、札幌迷宮化も阻止されラグナロクは救出。斬新コーポレーションも壊滅し、ソロモンの悪魔ハルファスまで打倒されました。なんという素晴らしい決着なのでしょう」
マニュキアの剥げた右手を忙しなく動かしながら、リホコは、灼滅者達を褒め称える。
「つまり、あなた達の完全勝利です。
もはや、あなた達がするべきことは、札幌の誇る温泉郷、定山渓温泉などで疲れを癒やすくらいではないのでしょうか」
リホコは、すっかり形の崩れた髪型も気にかけず、灼滅者に伏して願い出た。
「どうか、見逃していただけないでしょうか」
と。
それは、イカサマアドバイザーリホコ史上初、全身全霊、偽りなしの『お願い』であった。その姿は哀れさを誘い、思わず許してあげたくなる雰囲気に満ちあふれていた。
だが、マイリー・スザイル(ぶらぶら野郎・d30963)は流されることは無かった。
「確かに、この戦争の主目的は達成されたんだろうね。だけど、ボクの仕事はダークネスを一体一体確実に倒すことなんだ。だから、ダークネスであるキミを見逃すという選択肢は無いんだよ」
マイリーの、言葉にリホコは思わず涙をにじませた。
思えば、賭けに勝ち続けた人生であった。しかし、その全ての勝利が、こんな意味の無い戦いで潰えるというのか。
いや、まだだ。
「もし、私を見逃してくれれば、私はあなたの味方になります。下僕になります。サーヴァント扱いで結構ですから、是非、おそばに置いて下さいっ!」
必死に自分を売り込むリホコ。
だが、結論は変わらない。
「信用できないし、信用するつもりも無いよ。さっきも言ったよね。僕の仕事は、一体一体確実に倒すことだって」
そう言うと、マイリーは、武器を大きく振りかぶると、緋色に染まった妖刀村雨の一閃で、リホコの命を摘み取った。
「ちまちまするさ。最後までね」
一仕事終えたマイリーは、そう言って、疲れた目をこすったのだった。
(3)すすきの駅
●アリエル・シャボリーヌ(淫魔)
「SKN六六六のアリエル・シャボリーヌさんですね。あなたを狩りにきましたよ」
片桐・公平(二丁流殺人鬼・d12525)は、頭部をシャボン玉で覆ったツインテールのアイドル淫魔に右手のガンナイフを突きつけた。
「ワタシがアリエルだったら、なんだってのよー」
すすきの駅の戦場の中で、既に涙目のアリエルは、公平の言葉に、そして周囲を取り囲む灼滅者達の姿に、かんしゃくを起こしたように応じた。
こんな筈では無かったのに……。
それが、アリエルの偽らざる思いであった。
「別にあなた個人に恨みつらみがあるわけではありませんが、まぁ運が悪ったとでも思ってください」
「恨みがないのに、どうして、こんな酷い事をするのよ! こんな可愛い淫魔が困ってるのに、助けてくれないなんて! ひどいひどいひどいっ!」
逆上したようにシャボン頭を振るアリエル・シャボリーヌ。
その姿には、SKN六六六を率いる存在としての威厳の欠片もない。
「札幌迷宮化計画なんて、ワタシには関係ないんだからっ!
すすきの歓楽街だって、迷宮にならないほうが住みやすいくらいだし……。なのに、どうして、こんな戦場で戦わなきゃならないのよっ!」
アリエルの嘆きはもっともである。
彼女が札幌迷宮戦の戦場にいるのは、贖罪のオルフェウスに恫喝されて計画に加わることを余儀なくされ、逃げ遅れて流された結果に過ぎないのだ。
札幌迷宮戦の戦場を見れば、彼女とその配下が、北征入道の作戦に組み込まれていないのは明白であったし、彼らが撤退した後に取り残されているのだから現状がそれを証明している。
そう、彼女は、たまたまそこに居たという理由で、戦争に参加せざるをえなかった被害者なのだ。
だが、公平は、そんなアリエルの主張を切って捨てる。
「あなたの言うことが全て真実だとしても、関係は全くありませんね」
そもそもアリエル・シャボリーヌは、すすきの周辺で闇堕ちを引き起こしていた、ダークネス集団の元締めなのだ。遠慮する必要は灼滅者達には無かった。
公平の二丁拳銃と凶刃がアリエルを襲う。
アリエルは、間一髪で避けると、頭のシャボンをブルブルと細かく震えて泡立たせながら、脱兎のごとく逃げ出した。
「誰かー! 助けてぇ!」
アリエルの叫びは、戦場に木霊するが、助けに入るものは誰もいなかった。
「逃げても無駄ですよ。この攻撃は、避けられないでしょう」
公平の言葉の通り、アリエルを魔法の矢が貫いた。
「どうして、ワタシは、悪いことなんて、ほんのチョッピリしかしてないのにぃ……」
アリエル・シャボリーヌは、未練がましくそう言い残すと、シャボンが弾けるようなパチンという音と共に、その存在を泡と消したのだった。
●五六九位タルト・タタン
タルト・タタンは恋が好きだった。
恋する人間が大好きだった。甘ったるくてリア充で、そういう人間を絶望の底に叩きつけるのが好きだった。
でも、今のタルト・タタンはそうでは無い。
「恋ってどういうものですか? 大人の恋の街だというススキノに来たのに見つからないの」
タルト・タタンは、アルカンシェル・デッドエンド(ドレッドレッド・d05957)に問うた。
アンデッド六六六人衆となった事で、彼女は、その感情がどういうものかわからなくなってしまったのだ。
「ねぇ、あなた? 恋は生きてるものの特権だと思う? 死んじゃったら、もう『愛』せないのかしら」
タルト・タタンは不幸せそうにナイフを手にして戦場に踊り出る。
迎え撃つアルカンシェルもまた、タルト・タタンに相対するように戦場を駆ける。
「恋を忘れたタルト・タタンのぅ。だが残念じゃ、実は妾も恋などよくわかっておらぬのじゃ」
そう言う彼女は、愛や恋よりも戦闘を好んでいるらしい。
「だが、わかっている事もあるのぅ。それは、ここがお主のデッドエンドじゃという事じゃ!」
恋する人間を絶望させて殺してきた生前の彼女に、ふさわしいのは恋でも愛でも無く、デッドエンドだけ。
アルカンシェルはそう言うと、マテリアルロッドに膨大な魔力を流し込む。
「なんだ、あなたも知らないの。じゃぁ、あなたなんて必要ない。とっとと殺して、次の人に聞きに行かなくちゃ」
そうしよう、そうしよう。
歌い出しそうなタルト・タタンの目には、既に狂気が漂っていた。
これは、六六六人衆というダークネスが、その力のままアンデッド化した事になった後遺症なのだろうか。
「ブラックレイヴンズ序列21位、悪食黒鳥。翼の御下に蹴散らしてくれる!」
アルカンシェルは、そう宣言すると、狂気に染まったタルト・タタンの瞳を正面から見据えると、強い視線でその瞳を射抜き、その威圧に一瞬だけ動きを止めた、タルト・タタンに、魔力に満ち満ちたマテリアルロッドを叩き込んだ。
その衝撃に、体の半分を抉りとられたタルト・タタンはそのまま、床に叩きつけられ崩れ落ちたのだった。
「あぁ、恋を忘れたまま死にたくなかったな。恋って、どんな味なのかなぁ」
その崩れ落ちた体は腐りかけていたが、どこかから、アップルシナモンの香りが漂ってきた。
→有力敵一覧
→(2)中島公園駅(10勝9敗/戦力500→0/制圧完了!)
→(3)すすきの駅(44勝20敗/戦力1500→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。