(5)業大老
業大老の高まる力を感じ、僅かな記憶を頼りに集まって来た門下生や力を求めるアンブレイカブル達は、来るそばから灼者達によって次々と灼滅されていた。
『もっともいけないナース』が援護してくれているから、まだ何とか持ちこたえているようなものの、その数は今朝の時点を下回っている。
灼滅者達は、何故、こちらを攻めるのか?
それは、アンブレイカブル達には純粋に謎であった。
「狼狽えるな小僧ども!!」
だが、業大老はそれを喝破する。
「灼滅者の考えなど、推し量れると思うな。奴らは我らの想像を超えていくと思え。
何より、奴らは元より敵であろうが」
狼狽していたアンブレイカブル達は押し黙る。
武神大戦獄魔覇獄で灼滅者の考えを読み損ない、大敗北を喫した業大老が言うとあまりに重みがあった。
「……」
長谷川・信二をはじめ、灼滅者達によってベヘリタスから救われた者もおり、そうした者には多少は異論はあるようだったが、業大老に否を言う者などいない。
増してや、灼滅者達が正面切って戦いを挑んで来ている状況ならば、なおさらだ。
「灼滅者どもめ、タカトを倒し、デスギガスを我が物とせんとする我が野望に気付いたか? まあ構うまい。いずれ戦う相手ならば、ここで雌雄を決しようぞ!」
●長谷川・信二
「光の少年タカトは共通の敵だろう。何故業大老を攻撃するんだ? まさか武蔵坂学園まで、タカト側に籠絡されたのか?」
戦場でそう問いかけられ、叢雲・宗嗣(贖罪の殺人鬼・d01779)は相手の顔を見た。
アンブレイカブル長谷川・信二。
光の少年タカトによってベヘリタスの卵を植え付けられていたところを、灼滅者達によって救われた青年アンブレイカブルである。
「俺は武蔵坂学園には恩義がある。戦いたくはなかったが……」
「戦う気が無いなら、下がっていることだな」
叢雲・宗嗣(贖罪の殺人鬼・d01779)の忠告に、しかし長谷川は首を振った。
「いや……。あの虫野郎から逃げ、お前達との戦いから逃げ、それで生きながらたところで、何になる?」
戦うならば、自分が選んだ相手と戦いたい。
そして、その相手が灼滅者であるならば、悔いはない。
長谷川の表情から迷いが消えた。その表情には、戦意が宿っている。
「良かろう。ならば一凶、披露させてもらおう」
宗嗣は、手にした禍月・喰の切っ先を長谷川へ向けた。銀の爪と蒼い刃の切っ先が、長谷川を断ち切っていく。
相手も黙ってやられようとはせず、反撃を繰り出しては来るが、宗嗣は守りを顧みようともせず、矢継ぎ早に攻撃を仕掛けていく。
「これが……灼滅者の力か! やはり、強い……!」
どこか満足げな声と共に、長谷川の体から力が抜ける。
灼滅され、消え去りゆくアンブレイカブルの姿は、力弱きダークネスの運命を示しているようだった。
●業大老
「ナースが守ってくれるのは貴方達だけではないようですね。おかげでこのようにし合うチャンスを得られましたゆえに」
李白・御理(玩具修理者・d02346)の言葉に、業大老は顔をしかめた。
「姦婦どもめ。やはり、あのような者達に信を置くべきではないな」
言いながらも、放たれる一撃が灼滅者の陣を裂く。
だが、その力は灼滅者達が過去に交戦した超強力なダークネス……ザ・グレート定礎や、眼前にいるデスギガスには遥かに及ばない。
武神大戦獄魔覇獄を企んだ時の力は、大きく損なわれているのだろう。
灼滅者達と自ら交戦している今、もはや、タカトへ向けて超大型気弾を放つ暇もない。
「だが、野望を企み、阻んだ間柄とはいえ……こうして拳を交えられることをザ・グレート定礎たちには感謝しなければな! しかしタカトと敵対する我を狙うとは、やはり我が野望に感づいていたか」
どこか楽しげに、業大老は拳を振るう。
「それは……」
「あのタカトめから、デスギガスを奪い取る。そして、デスギガスの持つ膨大なサイキックエナジーを奪い……全盛の力を取り戻し、サイキックアブソーバーを破壊するのだ!」 とりあえず御理は、分かっていたような顔で頷いておくことにする。
確かにデスギガスの力、そして業大老が朝から見せていた気弾があれば、それも不可能ではないように思えた。
「やはり、業が深い。業の者、業大老とはよく言ったものですね」
「ハ、どこぞでコソコソしておる白の王は、縁の蒐集者などと名乗っておるが……我に言わせればまだまだヒヨッ子よ!」
業大老の気が、激しく膨れ上がる。
墨のような漆黒のオーラが、彼の体を覆った。
「全て己が力にてねじ伏せ、奪い取る……それでこそ、価値がある!」
サイキックアブソーバーに制限された力を、再び十全に振るう。
武神大戦獄魔覇獄の時から、業大老はそれだけを目的に活動してきた。
いずれ、灼滅者達との激突は避けられなかった存在だ。
だからこそ、今ここで倒さねばならないと、灼滅者達は再認識する。
「……でしたら、試してみると良いでしょう! 僕達を、ねじ伏せられるかどうか!」
業大老のかざした手から気弾が放たれ、その爆発が重奏を生む。
「小僧、衰えたりといえど、我が力を侮るな……!!」
「侮ってなどいません。あなたこそ、甘いですよ!」
気の爆発が生んだ土煙の向こうから、サイキックが一斉に放たれ、業大老の足を止める。その隙をついて、風の刃が空を裂いた。
業大老の胸板が、横一直線に断ち切られる。
「く……我が力が、完全ならば……! 野望、ならずか!!」
口惜しげに言い、業大老は天を見上げた。
「あの小賢しい『光の存在』を倒すことも、この弱り果てた醜い姿を晒した目的ではあったが……それは貴様らに任せるとしよう。我を倒した者達よ、勝て! 勝ち続けろ!」
怒りとも、激励ともつかない言葉を残し、業大老の姿は完全に消滅する。
光の少年タカトを止める意志と力を持つ者は、これで武蔵坂学園のみとなった。
夜を迎えた新宿に、決着の刻は訪れようとしていた。
●戦場特殊効果発動!
戦力への影響は、次ターンの開始時に反映されます。
・「(6)もっともいけない収容所」が未制圧!
次のターン、灼滅者の重傷/死亡率が半減! 重傷からの回復率が2倍!
・【注意】次は第8ターンです!
戦争は、第8ターンで終了します!
勝利条件を満たせなかった場合、武蔵坂学園の敗北となります!