■第8ターン結果
(15)光の玉座
●魔神ベヘリタス
ベヘリタスの頭頂部に置かれた『光の玉座』。
そこを守るのは、タカトに率いられた雑多なダークネス、そしてさまざまな形態のベヘリタス達だ。
『繁殖』の能力を持っていた、本体たるベヘリタスが灼滅され、残っている存在はここと、分割存在だけとなっている。
『174777の絆を通じ、我は汝らを知った。故に汝らに負ける道理なし!』
タカトの玉座に迫る灼滅者達に対し、立ちはだかった『魔神』ベヘリタスは、高らかにそう宣言する。
新宿橘華中学の伝説として伝わっていた『魔神』である、このベヘリタスは、分割存在として、灼滅者達との戦いを経た全てのベヘリタスの経験を得ていた。
その経験が、真に活かされる状況であれば、確かに強敵となったかも知れない。
『光と闇の……』
「邪魔すんじゃねぇよ、三下が」
だが、万事・錠(ハートロッカー・d01615)の槍が、ベヘリタスの言葉を遮るようにその仮面へと叩き込まれる。
『不可解な。万事・錠の力が想定を上回っている。これは、殲術再生弾の影響か……?』
「たとえ再生弾がなくても、てめぇなんぞに負けやしねぇよ」
拳を固く握ると、錠は言った。
「こっちは光だとか闇だとか、何が正義で誰が悪党だとか、そんなことはどうだっていい。あの宇宙服のガキが踏みにじった六門恭二の無念を晴らす、そんだけだ」
『敵である存在の無念を晴らす、とは。不可解な』
「敵とか味方とか、そういうんじゃねぇんだよ」
錠は、新宿橘華中学を恐ろしい回数の戦闘を経たはずのベヘリタス。
だが、分割存在であるが故か。あるいはシャドウであるが故なのか……ベヘリタスと相互理解を得られるとは思えなかった。
「どれだけ戦っても学ばないてめぇには、絶対に分かりやしねぇ!!」
錠前の閃光百裂拳に続き、灼滅者達の攻撃が一斉に叩き込まれ、魔神の体を突き破っていく。
やがて錠の拳がベヘリタスの金色の仮面を打ち砕いた時、戦いは終わった。
●ベヘリタス巨大蛾形態
タカトへの行く手を遮るように舞い降りてきたのは、巨大な蛾のような姿を取ったようなベヘリタスだ。
「輸送用? それとも逃げるための準備をしていたの? 彼も随分と、疲れる生き方をしているね」
糸木乃・仙(蜃景・d22759)も、また戦いを共にする灼滅者達も、おそらくは数百の羽虫型ベヘリタスが融合したのであろう存在を前にしても怯むことなく火力を集中させていく。
「私達を、今更ベヘリタス程度で止めようなど、無駄なことだ……」
羽が起こす風に耐えると、仙は巨大蛾形態のさらに上方へと回る。
念じることで、デスギガスからの重力を遮断すると、彼女の体は風に乗って宙に舞った。
ストールを翻し、宙を泳ぐかのように巨大蛾の上へと回り込むと、バベルブレイカーの杭の先端を巨大蛾の体の中央へと向ける。
「これで、おしまい……おやすみなさい」
振り下ろしの一撃が、ベヘリタスをデスギガスの肌へと縫いとめる。
そのまま繰り返される刺突が、巨大な黒蛾を完全に消滅させていた。
●光の少年タカト
『F・F・F・Final Form! Standby Tarots!』
電子合成音が、次々とタロットの名を読み上げていく。
「やあ。待ちかねたよ。ベヘリタスは、君達に負けたみたいだね」
タカトは、光の玉座から立ち上がると、灼滅者達を宇宙服からの声で出迎える。
『Standby Spade! SnipeSpear!』
『Standby Heart! HeatHammmer!』
『Standby Club! CrusadeCluster!』
『Standby Diamond! DeadlyDarts!』
武器が次々とタカトの周囲に現れる。
そう言うタカトの攻撃が繰り出されてくる間にも、彼に操られるダークネス達が次々と襲い掛かって来る。
「我らが武蔵坂は、最強である」
エイジ・エルヴァリス(邪魔する者は愚か者・d10654)は、それらの敵を確実に屠っていった。
口ずさむのは、芸術発表会で詠んだ詩だ。
「ゆえに立ちはだかる者、全てを……」
討つ。
その強い意志と共に、タカトとの間を遮っていた、最後のダークネスが灼滅される。
「もはや逃げ場はない……覚悟を決めるでござる、光の存在よ!」
最強であらんとする。
エイジは逃げ道を塞ぐように回り込むと、その意志を叩きつけるかのように、蹴りを繰り出していく。
「忍法、回し蹴り!!」
サイキックですらない一撃が、タカトの宇宙服の背を捉える。
タカトがたたらを踏んだ瞬間、エイジは足袋でタカトの背を踏みしめ、縛霊手に充ちた霊力を宇宙服の少年へと叩きつけた。
●光の存在、闇の存在
タカトのヘルメットにひびが入り、宇宙服の隙間から一瞬、その中に渦巻く奇妙な気体をエイジは見た。
「僕の存在は、これで終わりだね」
「お主は、一体何なのでござるか?」
多くの者達が同じ疑問を抱いているであろう事を、エイジは問う。
「ベヘリタスも、もういない。君達が望むなら、答えよう。
僕は、ベヘリタスが行った『実験』の産物だ」
ベヘリタスは、闇堕ちしてシャドウとしての存在を得る以前から、長年の疑問を抱いていた。それは、『一般人は何故ダークネスに比べて弱いのか』である。
それを解決するため、絆のベヘリタスが行ったのは、その魂の中に押し込められていたもっとも強い絆で結ばれた存在……人間たるタカトとの『和解』だった。
「全ての人間の魂には、『普通の人格』と『ダークネスの人格』のふたつが内包されている。知っているね?」
「ああ」
「『ベヘリタスとタカト』という混ざりあった魂から、ベヘリタスの秘宝によって普通の人格だけを切り離したのが、この僕だ」
「するとどうだろう。僕は、宇宙服なしには地球に生存すらできない、この脆弱な肉体の代わりに、強大な『力』を得ることができた」
「そのとき、僕とベヘリタスはいくつかの疑問を得た。
『僕たちは、本当に人類なのか』『なぜ、人と呼ばれるものだけがこうなっているのか』『力を持つのはダークネス人格だけでは無いのではないか』と」
「だから僕達は、魂を切り離す実験をはじめた……もっとも、デスギガス以外の四大シャドウは、皆何らかの実験を行っていて、その成果はソウルボードを通じて自動的に共有されるのだけれど」
「お主……」
エイジは覆面の下で顔をしかめた。
「その実験とやらのために、どれだけのものを犠牲にしたのでござる!」
だが、タカトは平然としたものだ。
「だって、その方が大事だと思ったから」
自覚なく、ある種の善意すら込めて、邪悪を為す。
その醜悪さに、灼滅者達は吐き気すら覚えた。
「ところでエイジと言ったっけ。
君は『武蔵坂学園は最強』と言っていたけれど、その誇る最強で何を目指すの?
その実験も興味深いな。実際君達は日に日に強くなっているし、色々聞いてみたかったけど……」
タカトはおもむろに、星の隠れた夜空を見上げる。
「そろそろ、僕は終わりみたいだね。人は死んだらどうなるのか、僕はどこまで観測できるかな」
宇宙服のヘルメットが崩れ落ちる。
一瞬だけ、少年の顔がのぞいて見えたかと思うと閃光が走り、後に残るのは、残骸となった宇宙服だけだった。
顔を見合わせる灼滅者達。
だが、ダークネスは灼滅者達に、思考を巡らせる余裕を与えはしなかった。
灼滅者達の立つ『デスギガス』が、彼らを振るい落とすように激しく揺れたのだ。
●デスギガスの帰還
「偉大なる我らが主、混沌の顕現たるデスギガス様……」
『あれ、アガメムノンくん。僕のおへそで何やってるの?』
「あなた様の召喚儀を完遂すべく、僭越ながら防衛任務についておりました。されど絆のベヘリタスは滅び、光の少年もまた滅びました。潮時かと提案いたします」
『そうなんだ、じゃあ帰ろうよ!』
「叡智に満ちた素早き戦略判断、流石は我らが主にございます!」
デスギガスが、新宿駅から足を抜く。
そして、灼滅者達を振り落した巨体は、残存するシャドウ達だけを乗せ、『歓喜の門』の向こう側へと消えていく。
静まり返った街が、灼滅者達に戦いの終わりを告げていた。
→有力敵一覧
→(6)もっともいけない収容所(2勝2敗/戦力550→450)
→(7)白の王セイメイ(4勝5敗/戦力1800→1600)
→(10)デスギガスのへそ(1勝0敗/戦力2100→2050)
→(15)光の玉座(46勝19敗/戦力2200→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。