■第2ターン結果
●楢山御前
『密室』による影響なのだろう、広大なホールのような光景と化した区役所の一室で、灼滅者達は楢山御前と対峙していた。
濃尾平野での決戦で、一度は完全に灼滅したはずのノーライフキング。
その体の周りには、灼滅者達でさえ思わず顔をしかめるような瘴気が渦巻いていた。
灼滅者達ですら顔をしかめるような瘴気の中へ、迷わず足を踏み入れたのは撫桐・娑婆蔵(鷹の目・d10859)だ。
「お控えなすってお控えなすって、早速お控えありがとうござんす! 手前、姓は撫桐、名は娑婆蔵! C.o.S斬込隊長、撫桐娑婆蔵たァあっしのことでござんす!」
瘴気漂う部屋の空気を塗り替えんとするかのように、その声は朗々と響いた。
C.o.Sの腕章を見せ付け大見得を切った娑婆蔵に、楢山御前は好ましげな笑みを見せる。
「元気の良い子ねぇ。おばちゃん、終わったはずなのに、また戦うことになるとは思わなかったわ」
楢山御前が本来帯びていた冷気とは異なる、おぞましい瘴気。
それは、ノーライフキングであった彼女を刻一刻と六六六人衆へ近づけつつある。
その果てに生まれるのが、いかなる存在であるのか。
「ならば、再び死を与えてみせやしょう」
鯉口を切った娑婆蔵の刃が長く伸び、楢山御前の分身を切り捨てる。
「おばちゃんノーライフキングだから、復活するのは別にやぶさかじゃないんだけど。これはちょっと死に過ぎねぇ」
「だったら、大人しく冥府に帰って貰えるとありがたいんですがねぇ」
「自分だけでどうこうできるものでもなさそうなのよね」
『再誕儀式』のため、意図を以て集められた死者の怨念は、彼女を六六六人衆としての殺意に導いている。
灼滅者達へと、竜の口から白い冷気が叩きつけられる。幾度も繰り返される攻撃を前に、氷に覆われ、倒れ伏す者が現れ始めていた。
だが、灼滅者達は、冷静に状況を見定めていた。
今の楢山御前が形成している分身体は、力の弱いものばかりだ。灼滅者達ならば、一目見るだけで簡単に判別がつけられる。
「話に聞いたように、無敵モードじゃぁない……なら、今が倒す好機!!」
個体としての戦闘能力はともかく、特殊能力が封じられている今ならば幾らでもやりようはある。
再び楢山御前の竜首が冷気を吹き出さんとした瞬間、娑婆蔵は背中に背負ったトンカラ砲を解き放った。
包帯に覆われたクロスグレイブからの砲撃が冷気を吹き散らすと共に、娑婆蔵は一気に前進。
いまだ熱いトンカラ砲を、白磁の如き楢山御前の肌に叩きつける。
陶器の割れるような音が響き、ノーライフキングの胸に大穴が開いた。
「……また会うことにならないといいわね」
「そうしないように、これから行って来やすよ」
言って、娑婆蔵は消滅していく楢山御前の足元に落ちたスマートフォンを拾い上げる。楢山御前を再誕させるために使われ、彼女の服の中にしまわれていたと思しき『改造John-Phone』は、再びの灼滅と共に機能を停止していた。
「再利用は出来ない、と……なら、親機で連絡を取っている奴を潰すべきでさぁね」
●ドクターER
迷宮化した区役所を駆け抜け、灼滅者達は扉を押し開ける。
「……ここ、区役所だよね?」
目にした光景の奇妙さに、端城・うさぎ(リンゲンブルーメ・d24346)は思わず目を瞬かせた。
音を立てて開いた扉の向こうにあったのは、病院の手術室のような部屋だ。
広い部屋に血に濡れた手術器具が点々と散らばる光景は、『病院』関係者が見れば憤りを覚えるものであったであっただろう。
そして、その主もまた、医療を愚弄するような存在だった。
「キシシシシ! 外での殺人の経過は順調のようだねぇ。この調子なら、あと5時間もすれば立派な六六六人衆が生まれるんじゃないかって僕は予想するよ」
そううそぶいて、手術着を纏った六六六人衆は、赤黒い塊を床に投げ捨てた。
濡れた音と共に床に落ちた何かを一顧だにせず、彼は灼滅者達へと視線を向ける。
「六六六人衆……!」
「勝手に手術室に入って来ちゃ駄目だろぉぉ? 助手諸君、無法者たちを追い出してやりなよ」
六六六人衆の胸には、『ドクターER』の名札が誇らしげに揺れている。
あの六六六人衆が、区役所での儀式を担当している密室殺人鬼の一人であろうことをうさぎ達は感じ取る。
同時に、反対側の扉が開き、控えていた六六六人衆が、一斉に灼滅者達へと各々の凶器を振りかざし、襲い掛かって来る!
「『松戸市密室』を解除した武蔵坂学園! 一度チミ達を手術してみたかったんだよねぇ!」
歓喜の声をあげながら、ドクターERが触れた手術器具が、その意のままに灼滅者達へと飛来する。
「切開注射摘出縫合投薬! さあさあ灼滅者相手にはどれがいいのかなぁ!!」
「生憎だけど、医者は間に合ってるから!!」
うさぎは縛霊手を振るって飛来する手術器具を次々と打ち払い、接近してきた六六六人衆をまとめて結界に捉える。
すかさず後方からの攻撃が飛び、動きを止めた六六六人衆達を灼滅していく。
六六六人衆の殺意をも寄せ付けぬ勢いを目にし、自信に満ちていたドクターERの顔に、にわかに焦りが滲み始める。いかに能力が高かろうとも、一人でかなうはずもない。
「ま、参ったなぁ! 楢山御前もやられたし、ここで僕がやられちゃ元も子も無いじゃないか」
劣勢に陥ったドクターERが触れた手術用のベッドが目くらましとばかりに灼滅者達の方へと飛来する。
だが、それを一蹴りで跳ね返し、うさぎはドクターERへと詰め寄った。
「痛いじゃないか!! ボクは人を斬る方で、傷つけられる方じゃないんだよ!!」
「あなた達に殺された人達の怒り、知りなさい!」
無様に喚く密室殺人鬼に、流星の如く蹴りが突き刺さる。
中村区役所を巡る戦いの、それが決着となった。
→有力敵一覧
→(2)ユニモール(4勝2敗/戦力1300→1100)
→(3)サンロード(5勝3敗/戦力1100→850)
→(9)中村区役所(38勝6敗/戦力1750→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。