サイレーン灼滅戦

●被虐要塞ガンマゾーンにて

　ニライカナイ内でも最も多くの淫魔達を抱え込んだ被虐要塞ガンマゾーン。
　その内部では、要塞の指揮官を務める『被虐のルサルカ』が顔をしかめていた。
「むむむ……灼滅者がなんでこんなに強いのかしら？」
「まあ、それは儀式塔壊された時点で分かってたことじゃん」
「でも、相手もあんなに数がいるとは思いませんでしたわね～」
　補佐としてついている２人の淫魔、嘲謔のシュトヴィカ 夜伽のキトハが口々に言う。
　２人が珍しく真面目だと、ルサルカは内心で危機感を強める。
　かき集めた戦力を一気に削られ、陥落も見える状況下で、ルサルカをからかう余裕は無いらしい。

『灼滅者』という存在が、これだけのダークネスを易々と倒していく光景は、長いこと海底にいて現代の状況を知らないニライカナイの淫魔達にとっては異常の一語に尽きた。
　先の儀式塔の破壊作戦の際、直接灼滅者達の戦いぶりを目撃しているルサルカは、シュトヴィカとキトハに戦力をかき集めさせたのだが、強い者達は他でも必要とされていたため、被虐要塞ガンマゾーンに集められた者達はさして強いとは言い難い。
「とはいえ、さすがに凌げると思ってたんだけどね……」
　武蔵坂学園の灼滅者達の人数は、完全にルサルカ達の想像を上回っていた。
「やはり、私の見立て通り、私達の知らない変化が起きているようね」
「サイレーン様からは、エリザベート様がやられるようなら要塞の子達を連れてニライカナイから逃げるように言われてましたけど～」
「今のままだとこっちが危なそうじゃん？」
　もちろん、エリザベートがまだ倒れていない現状、無限なる白濁陣への魔力供給を行っている要塞を見放して逃げるわけにはいかない。
　深い溜息をつく淫魔３人だが、彼女達に打開策は見えそうにないのであった。