■第7ターン結果
ニライカナイの中央にそびえ立つ塔の正門からサイレーンの褥に至るまで、全ての道は大淫魔サイレーンの指示によって開戦当初から開け放たれていた。
だからといって、塔に入れば即座に大淫魔サイレーンの元に行くことが出来たかと言えば、そうではない。
『悦楽の門』と銘打たれた塔の正門をくぐれば、待ち受けているのは無数の淫魔達だ。
『無限なる白濁陣』『堕落せし汚濁陣』の2つの魔法陣によって強化された淫魔達を突破して、大淫魔サイレーンの元に到達しようという試みは、これまで複数回行われ、そしてことごとく褥に集った淫魔達によって阻まれて来た。
だが、白濁陣・汚濁陣の2つが効果を失った今、灼滅者達は淫魔達の抵抗を打ち破り、確実に塔を昇っていく。
上に上るにつれて、塔の内壁は金属らしい堅固な物質から、粘性を帯びた触手の集合体へと次第に変化していく。
そして、灼滅者達は最後の通路へと辿り着いた。
通路を走り抜けようとする灼滅者達の前に、執事服姿の淫魔が現れる。
●執事長『セバスチャン』
「あなたは……」
「サイレーン様の執事、セバスチャンと呼ばれております」
執事服を着込んだ淫魔は、灼滅者達に一礼した。周囲が触手に覆い尽くされた奇怪な迷宮でなければ、それは完璧なものであっただろう。
「失礼ですが、皆様方がサイレーン様の元に行く力があるか、試させていただきます。
まあ、ここまで来ている時点で、半ば果たしているようなものですが……」
セバスチャンが白手袋に包まれた手でハンドベルを鳴らすと、灼滅者達を待ち受けていたかのように肌も露わな淫魔達が姿を現す。
「無謀に突っ込んで来るだけでないテクニックをお持ちであることは既に証明していただけました。後は、実戦で皆様方の力を試すのみです」
「お望みとあらば、執事とお嬢様プレイ、もしくは執事と旦那様プレイなどといった形で試していただくのも……」
「悪いけど」
宮守・優子(猫を被る猫・d14114)は、淫魔執事の言葉を遮った。
「あんまり時間ないんすよね。ガク!!」
ライドキャリバーの機銃掃射が、淫魔達へと放たれる。
無論、それで倒れるような相手でもないが、足止めされた相手へと他の灼滅者達の攻撃が向かう。
「甘言には惑わされぬということですね。では、手練手管で皆様方を楽しませましょう」
こいつも欲望を満たす機会は逃さないようっすね、と優子は小さく呟く。
サイレーンの執事を務めるだけの事はあるということか。
触手と化した床の隙間を縫うように迫る蛇群から、優子は素早く足元の触手を蹴って逃れる。
「やるものですね。ですが、防いでいるばかりでは──」
「ガク、やるっす!!」
それまで機銃掃射に徹していたライドキャリバーが、床の触手をジャンプ台にして一気にセバスチャンへとのしかかる。
「なんと──」
「終わらせるっす!」
動きを止められたセバスチャンへと、優子の影業が食らいつく。
そして、灼滅者達の前に、サイレーンの褥は口を開く──。
●大淫魔サイレーン
サイレーンの座す巨大寝室、サイレーンの褥。
まるでホールのような巨大なそこへと入り込んだ灼滅者達は、一瞬眩暈を覚えた。
そこに居たのは、直前まで欲望を満たしていたと言わんばかりの、肌も露わな淫魔達だったのだ。
外や階下で戦闘が起きていたことには、当然気付いているであろうが、一向に気にする様子も無い。
「どうした、何を驚いている?
快楽を、欲望を何より優先する……それでこそ、淫魔というものであろう」
部屋の奥から、ゆっくりと灼滅者達へ歩み寄って来るのは、触手を体のあちこちから生やした淫魔。
その顔は、人ならざる獣のそれだ。
「仮面……いや、半獣化しているってことか」
レオン・ヴァーミリオン(鉛の亡霊・d24267)は、そう理解する。
触手の生えた肢体は、男性はおろか女性をも惹きつけてやまないものだ。
「個人的には豹頭はポイント高いんすけど、それ以外がてんでダメっすね。せめて爪と肉球と毛皮が無くちゃ」
優子は、褥への淫魔達の流入を阻むために交戦しつつ後方で言った。
「もしも、それが欲しいならば生やそう。
人間の姿を妾に求めるのであれば、欲望を満たすために人の姿を取ることもしよう。
もっとも妾の触手の与える快楽の前に、陶酔せぬ者はいなかったがな」
そう応じると、サイレーンは獣の鼻をひくつかせる。
「若き猛りが、今にも妾まで伝わってくるのう。
今にもそなた達を抱擁し、忘我の淵へと連れ去ってしまいたくなるぞ」
サイレーンの言葉に、レオンは大仰に礼を一つ。
「お初にお目にかかる、首領サイレーン。少し色々語らいたいとこだけど、今さらだし、状況は許してくれねぇよなって思うからさ」
手にした刃を、サイレーンへと向けた。
「存分に力を尽くそう。言葉は不要、理性は無用。ここか先は、すべて刃で語ろうか!」
「良かろう。語らうばかりでは、この触手より滴る汁のぬめりは収まらぬ。汝らが妾を組み伏せんとするならば、妾もまた汝らを組み伏せ、法悦の極みへと導かん。
さあ、妾が勝つか、汝らが勝つか。淫獄の幕を開けよ!!」
サイレーンがそう言い終えると共に、部屋の壁を構築していた触手が蠢き、サイレーンを包み込んだ。夜の大気が灼滅者達を包む中、花蕾が開くかのように触手が開かれ、その内からは見上げるような背丈になったサイレーンが姿を現す。
「……巨大化!?」
「遍く世全てのニーズに応えるが我が力。世には巨大なる者をまさぐることに渇望を──」
「詳しく説明しなくていいぜ」
既に、全てを刃で語ると言ったばかりだ。
レオンの手にした刃が、電信柱を束ねたかのような太さで振り下ろされてくる触手を切り払う。
まるで固いゴムを叩いたかのような手ごたえ。
切り損ねた、と思う間に、横殴りに振るわれた触手は、一気に灼滅者達を薙ぎ払う。
だが、彼らが感じるのは痛みではない。強烈な快楽だ。
「嗜虐、被虐……ルサルカは残念だったが、被虐に陶酔する淫魔ならば、死の間際にでも快楽を満たすことができたであろうな」
頭上からの言葉が、灼滅者達へと降り注ぐ。
大淫魔の名に恥じぬ、おそるべき力。だが、
「欲望を追求するのは、大いに結構。だが、それを耐え切ってこそ得られるものもあると、私達は知っている──!」
灼滅者達から声が上がる。
内なる欲望に、そして闇堕ちの誘惑に耐えて、幾つもの難関を越えて来た。
それこそが、灼滅者達の今を為しているのだ。
「欲望に、耐える? それは妾に死を命ずるも同じことよ。
淫魔として生まれたからには、情動の赴くまま、快楽を広めることこそが命の意味。
あまり興醒めするようなことを言わぬことだ」
だが、それは
瞬間に、サイキック・リベレイターによって復活すると同時、即座に邪心を持つ人間達に闇堕ちを広げはじめた大淫魔サイレーン。
それが彼女の曲げられぬ意志であるというならば、自分達とは、相容れぬ存在なのだろうと、灼滅者達は改めて理解する。
サイレーンの強さは、過去に灼滅者達が交戦したダークネスの中でも確実に上位に入る。
「だが、勝てない相手ではない」
今の自分達の力。それを信じて、灼滅者達は疾走した。
切れぬならばとサイレーンのぬめる触手を駆け上ると、その根元の肌まで強引に走り抜ける。
「良き痛みだ! 汝らも痛みを与えたことに歓喜を得ているか?」
「嬉しくはあるが、別に痛みを与えること自体が目的じゃねぇって」
一撃一撃は勝利に、ダークネスによる支配を覆すための解放に繋がるものだ。
「これで──淫魔との戦いを、終わらせる!!」
そして、レオンの放った刃が、サイレーンの巨大な顔面へと突き刺さる。
「灼滅者──その素晴らしき力、未知の力──。
我が死もまた、汝らの新たなる快楽への入口となることを願おう」
最期まで快楽を追求し、大淫魔サイレーンは消滅していく。
それと共に、海上都市ニライカナイ全土には、震動が走り始めていた。
「まずいな。これは、パターン的に沈むのか?」
「早いところ、撤退した方が良さそうですね」
視線をかわすと、勝利を収めた灼滅者達は一斉に船へ乗り込み、ニライカナイを脱出していく。
ニライカナイに響く鳴動は、それは淫魔という種族の組織的な活動の終焉を、そしてダークネスによる支配体制の一角が崩れ去ったことを告げていた。
→有力敵一覧
→(6)密通街道 ダルテリウム(1勝2敗/戦力600→550)
→(7)色情海岸 レシピスコン(1勝0敗/戦力750→700)
→(8)獣欲鉄橋 クレアチュア(1勝0敗/戦力800→750)
→(10)誘惑華園 アペラティオン(0勝1敗/戦力1500→1500)
→(11)邪淫隧道 キケロニア(1勝0敗/戦力800→750)
→(12)嬌声劇場 ヴィソピドゥム(0勝1敗/戦力900→900)
→(23)サイレーンの褥 マーレバビロン(35勝7敗/戦力1650→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。