垓王牙大戦

　垓王牙大戦のありえた可能性のうち、「ソロモンの悪魔のガイオウガ奪取」の可能性は既に潰えた。
　そして今、灼滅者達によってもう一つの可能性も消え去ろうとしていた。

●合体ダブルご当地怪人司令部
「合体ダブルご当地怪人達の努力と鉄板によって完成した鋼鉄の一夜城、合体ダブルご当地怪人司令部！！　だが、その命運は風前のともしびとなっていた！
　だが、世界征服のため、そしてグローバルジャスティス様のためにも負けるわけにはいかない！　負けるな！　合体ダブルご当地怪人！　戦え！　合体ダブルご当地怪人！」
「鬱陶しいってば」
　暑苦しいナレーションを入れていた合体ダブルご当地怪人司令部の指揮官、合体ダブルご当地怪人皿うどんちゃんぽんチャンピオンに、白樺・純人（ダートバニッシャー・d23496）の繰り出したマテリアルロッドが突き刺さった。
　爆炎を上げて吹き飛んだ皿うどんちゃんぽんチャンピオンは、空中でくるくると回転しながら態勢を立て直し、皿うどんもちゃんぽんもこぼさず着地する。
　その姿はチャンピオンと呼ぶにふさわしい風格に満ちていたかもしれない。
「おのれ灼滅者！！」
「いい加減、そろそろ言わないといけないな……」
　その丼顔に、純人は指を突きつける。
「名前長いよあなた達。覚えられない」
「何……だと……！！」
　ご当地の名産品の名前を記憶に残さずして、何がご当地怪人か。
　レゾンデートルを揺るがされている合体ダブルご当地怪人皿うどんちゃんぽんチャンピオンは、気を取り直して言う。
「では今日から私のことは皿ちゃんチャンと呼ぶがいい……！」
「略称でもまだ７文字もある……！！」
　皿うどんとちゃんぽん、そしてカンフーを組み合わせ、拳撃を繰り出す皿ちゃんチャン（自称）。だが、司令部を陥落させようとする灼滅者達の勢いは、止まらない。
　純人のフォースブレイクが再び唸りを上げた時、皿ちゃんチャンの手にした皿は砕け散る。
「おのれ……あまり短くなっていないのが敗因だったか……グローバルジャスティス様に栄光あれ！！」
　爆発四散。
　ちゃんぽんスープの美味しい香りが一瞬漂うも、それも火山の硫黄臭に消える。
　皿ちゃんチャンの愛称の使用期間はわずか数分で終わった。

●のんびりくん
「んあ～……もうご飯の時間？　みんなの鉄板、美味しそうな匂いがするからお腹減っちゃうんだよねぇ～」
　司令部の最奥、そこに寝転がっていたカバ桜島怪人は、攻め寄せた灼滅者達を前に、寝ぼけまなこで言った。
　だが、とぼけた言動に見合わず、その実力が他の合体ダブルご当地怪人達を上回っていることを、灼滅者達は見て取っている。
「あれがアフリカンパンサーの側近っちゅうわけか」
「随分と時間をかけさせてくれた……だが、今度こそ」
　切り込む東当・悟（の身長はプラス七センチ・d00662）の後を追い、若宮・想希（希望を想う・d01722）は、彼を狙うご当地怪人を水晶の矛『望奏』で貫く。
　それを皮切りに、『のんびりくん』への道を遮る合体ダブルご当地怪人達は次々と蹴散らされていった。
「『アガルタの口』でアフリカンパンサー様をガイオウガの力に導けるのを開けるのは僕だけなんだから、みんなしっかり司令部を守ってよね～」

「みんな～、何してるの～？　はやく～、たすけに来て～」
「残念ながら、もうあなたを助けに来る人はいません」
「ええ～、そんな～……」
　のんびりした様子で、しかしカバ面に汗がにじむのを灼滅者達は見逃さなかった。
「悟」
「おう！！」
　連打で繰り出された悟の拳に『のんびりくん』の意識が向いた瞬間、想希の杖が突き付けられた。
「今度こそ、終わりだ」
　生じた魔力の爆発が、『のんびりくん』の胴に風穴を開ける。
「アフリカンパンサー様～、ごめんなさ～い！！」
　謝罪の言葉と共に、のんびりくんは灼滅された。
　その灼滅と共に、司令部は崩壊。鉄板に残されていたお好み焼きやタコ焼きは、灼滅者達によって美味しく頂かれたという。

●大戦は続く
　かくして、「アフリカンパンサーのガイオウガ奪取」という可能性も消え去った。
　だが一方で、（２）透熊の戦場・（６）溶岩鰐の戦場は、灼滅者達が一定の戦力を投入しながらも、またも制圧できずにいた。

　司令部を失いながらも、合体ダブルご当地怪人達は今なお戦闘を続けている。
「厄介ですね……」
「だが、尾の状況と合わせて、援軍の割合も大体わかった」
　垓王牙焔炉の敵戦力は、援軍を含めると百竜包囲陣よりもさらに多い。
　状況は予断を許さないものとなりつつあった。

・特殊ルールにより、（2）～（11）のうち制圧されていない戦場の戦力が600に戻りました！
・(2）～（11）を制圧した際、援軍を絶たれた戦場は、戦力が発動時の『７０％』に減少します（同時に２つ以上発動した場合、重複して減少します）