■第8ターン結果
●(17)垓王牙焔炉
イフリート王、垓王牙(ガイオウガ)。
その巨大な存在を自壊に追い込むまで、灼滅者達は後一歩のところまで迫っていた。
灼滅者達の接近に反応し、ガイオウガを小サイズにしたような者達や竜種イフリート達が次々に出現。
加えて、ラーヴァタイガーやフレイムトリケロスといったイフリート達が援軍に駆け付け、守りを固める。
そして溶岩の奥、焔炉そのものが動き出すのが灼滅者達の目に映る。
一体の『ガイオウガ』へと変貌した焔炉は、高々と咆哮をあげた。
「垓王牙焔炉の防衛機構のようなものか」
「けど、周りのイフリートを倒して制圧さえできれば……!!」
いずれにしても、ここで戦いの決着はつく。
灼滅者達は、イフリート達の群れへと駆け出した。
●朱剛竜ガゼイドラ
朱く堅固な肌を持つ四足の竜。
その姿は、赤城山に出現したものに似ていた。
もっとも、力の度合いでいれば遥かに上だ。
灼滅者達の攻撃を受けながら、泰然としてそれを跳ね返すガゼイドラ。
溶岩の海から現れ、灼滅者達を睥睨する巨体に向け、ヴァイス・オルブライト(斬鉄・d02253)は静かに近付いていく。
手にした刃がガイオウガの口腔が放つ赤光を照り返し、明々と煌めいた。
「――お前の罪(カルマ)は何色だ?」
一息、ヴァイスは溶岩に浮く岩を蹴り、ガゼイドラの頭部を目掛けて跳ぶ。
ガゼイドラの目が、それを捉え、空中にあるヴァイスを目掛け強烈な焔が噴出。
白刃が一閃される。
膨大な熱を秘めて解き放たれる焔を、その一刃を持って切り裂いたヴァイスは、全身に焔を帯びながらも刃を振り抜いた。
細く、鋭い一撃が、ガゼイドラの鼻先を断つ。
だが、その手ごたえが浅いことに、ヴァイスは無言で眉をしかめた。
●紅炎竜ズライグ
「負けて、堪るか!」
鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)の叫びは、灼滅者達の意志を示していた。
切り離された尾にいるイフリート達。
その想いを強く感じ、勝利を信じて彼は刀を振るい続ける。
そうして遮二無二前進する灼滅者達を阻むべく現れるのは、巨大な翼を持つ火竜。
かつて倒したファフニールに準じるその姿は、まさしく『竜種』のものだ。
だがファフニールに対して、その瞳に理性の色は薄く、ただ灼滅者達を殲滅せんとする敵意に満ちている。
ほとんど足場も無い垓王牙の口の中、灼熱の焔が頭上から吹きつけられ、一人また一人と焔に焼かれていった。
「だからといってッ!!」
手近にいたフレイムトリケロスの岩の如き肌を蹴り、脇差は飛ぶズライグの足へと刀を突きたて、ぶら下がったかと思うと、懸垂の要領で体を持ち上げ、ズライグの足から体へと切り裂きながら登っていく。
『──!!』
吼声を一つ、速度を落としたズライグへと、下にいた灼滅者達からの攻撃が連続。
体にとりついた脇差を振り落さんとアクロバット飛行を繰り返しながら、ズライグはガイオウガの巨大な牙へと近づいていく。
「これで、どうだデカブツッ!!」
牙に叩きつけられる直前、脇差の一撃がズライグの鱗に大きく傷を作る。
そして走る衝撃に、ついに脇差の手がズライグから離れる。
ガイオウガの溶岩の海へと落下しながら、脇差の瞳は墜落するズライグの姿を捉えていた。
●垓王牙焔炉
「……イフリート、幻獣種、私の宿敵」
月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030)は呟いて、ガイオウガの群れを見た。
小さいものから大きな──焔炉が姿を変えたものまで、数多のガイオウガがその眼前には群れを為し、灼滅者達へと襲い掛かって来る。
「ここで一つの結末を迎えるのかな、残念だけど……さあ、悔いの残らないようにいこうか!!」
玲をはじめ、灼滅者達は一気に焔炉の防衛機構たる大小のガイオウガ達を蹴散らしにかかる。
たちまちにその身を四散させ、溶岩の海に消えるイフリート達。
だが灼滅者達もまた、彼らの炎を浴びて次々と戦闘不能に陥っていく。
ただ無機質なの意志に満ちた焔炉は、自らの損傷すら顧みることなく、灼滅者達の殲滅を選択している。
だからこそ、灼滅者達にとっては狙いやすいとはいえた。
焔炉本体を目掛けてサイキックが次々と繰り出され、そして周辺にいたイフリート達を排除していく。
「これで最後……!!」
残る巨大なガイオウガ……焔炉の防衛機構へと、玲はひたと視線を向けた。
殲術道具たるエアシューズは溶岩にもよく耐えた。
その痛みと熱を感じながら、玲の蹴りが焔炉へと叩きつけられる。
焔炉の倒れ込む轟音が響き──だがガイオウガの自壊は、起こらなかった。
●敗戦
「──え?」
玲の周り、灼滅者達を退けたイフリート達が焔炉を取り囲み、一斉に炎を吹き付けていた。彼らの焔を吸い込み、垓王牙焔炉は再び稼働を再開していたのだ。
活動を再開した焔炉が、再び吠え猛る。
「ここを制圧しなきゃ駄目なのか……!」
苦渋の表情で呻く玲。
だが、灼滅者達の体からは、殲術再生弾の力が急速に失われようとしていた。
「撤退だ!!」
誰からともなく声が上がる。
撤退。その決断に動揺する灼滅者達を、イフリート達は逃げ場を絶ち、追い立て、垓王牙焔炉のある大口の外へと追い払う。すなわち、地表へと。
「尾を守れ、絶対に潰させるな!!」
やむなく撤退と落下を選びながら、喉も裂けよとばかり、脇差が叫んだ。
山肌に墜落した灼滅者達は、痛みに呻くが、それを精神力で抑え込むと立ち上がる。
バべルの鎖の力で行動を阻害されることもなく山を駆け抜けた灼滅者達は、切り離された『協調』の意志が詰まった尾の元へ辿り着くと、それを守るべくガイオウガに向き直る。
灼滅者達の姿を鶴見岳の山頂部があった場所から見下ろす巨大なガイオウガ。
その頭頂部の位置が、次第に低くなっていくのを灼滅者達は見た。
「いや、違う……」
ガイオウガの巨大な体が、地面に沈み込んでいるのだ。
「あちらにも、俺達を追撃する余裕は無かったか」
灼滅者達の口から、安堵の混じった声が漏れる。
百竜包囲陣の本陣は陥落し、いまだ多数のご当地怪人が背中で暴れており、しかも焔炉も一度は破壊された。
ガイオウガにとっても、この戦いで受けた痛手は決して小さなものではない。
灼滅者達が尾を守りつつ撤退する姿勢を見せたことで、ガイオウガ本体は尾を即座に吸収するのを諦めたようだった。
灼滅者達が去り、『協調』の意志の抵抗も止んだ今、まずはご当地怪人も排除したのだろう。
しかし、事態がこれだけで済まないことを、灼滅者達は無論理解していた。
地下から出現し、大災害を引き起こしうる存在──イフリート王ガイオウガが、
再びこの地球に解き放たれたのだ。
→有力敵一覧
→(3)魔犬の戦場(1勝0敗/戦力600→550)
→(5)焔豹の戦場(1勝0敗/戦力600→550)
→(8)火麗狐の戦場(0勝1敗/戦力600→600)
→(11)飛炎虎の戦場(0勝1敗/戦力600→600)
→(16)百竜包囲陣(0勝1敗/戦力50→50)
→(17)垓王牙焔炉(43勝19敗/戦力2485→335)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。