■第6ターン結果
●エジプトピラミッド怪人
激戦が続く胎蔵界の北方『闇の雪原』では、ご当地怪人4000年の歴史が、灼滅者達を見下ろしていた。
鮮やかな腰布をひらめかせ、朱色の単眼から放たれる威圧の力。
その視線の持ち主こそ、ご当地幹部エジプトピラミッド怪人その人である。
「また、お前達か。以前と同じように逃げ出すならば、見逃してやるゆえ、すぐに立ち去るが良い」
エジプトピラミッド怪人は、コブラの杖を灼滅者に向けると、この場を立ち去るように宣告する。
だが、灼滅者達に、ここを立ち去るという選択肢は無い。
沖縄沖のご当地戦艦スミングコンドル2世で邂逅した時は、陽動が目的であり無理に戦う必要は無かったが、この戦いにおいては、避けて通るわけにはいかないのだ。
「ご当地怪人たちが、いったい何のためにここまで来てるの?なんとなくですが、兜を奪いに来たのでしょうけれど……。ここで、しっかり倒させてもらって、後顧の憂いを断たせて頂きますっ!」
蒼月・碧(碧星の残光・d01734)は、そう言い返すと、サイキックソード『降魔の光刃』を握りしめエジプトピラミッド怪人と対峙する。
「王の眠りを妨げる者、死の翼触れるべし……受けよ、ファラオの呪い!」
「無明の闇を切り裂き光を示せ! レイザースラスト」
互いに技を繰り出す、エジプトミラミッド怪人と碧。
戦いの音がしんしんと消え行く闇の雪原に、激しい戦いの炎が巻きあがった。
「やるではないか、灼滅者」
「キミもだよ、エジプトピラミッド怪人」
躍動する小麦色の肌でそう語るエジプトミラミッド怪人に、碧が短いスカートをひらめかせて語り返す。
「だが、勝利するのは私だ。古代エジプトの女神ウアジェトの一撃、その身に受けるがいい!!」
ピラミッド怪人は、複雑なステップで雪原にヒエログリフを描きつつ、碧へと接近した。コブラステッキを繰り出そうとうする。
もし、この杖で貫かれていれば、死ぬのは碧であったかもしれない。
「ボクには、多くの仲間がいるんだよ。そして、その仲間が俺に勝利をもたらせてくれる」
だが、その言葉と共に、周囲のご当地怪人たちを制圧した灼滅者達の攻撃がエジプトピラミッド怪人を貫いたのだ。
「ぐぬぅぅ」
「そして、多くの仲間の力を受けとり、ボクのレーヴァテインは、闇を越える光の一撃になる!」
苦悶の声をあげるピラミッド怪人を、碧の降魔の光刃の光が貫いた。
「無念……!! もし、この戦場が砂漠でさえあれば、このような結果にならなかったものを! グローバルジャスティス様に栄光あれ!」
致命傷を受けたエジプトピラミッド怪人は、そう言いのこすと、ご当地幹部らしく爆散して七色の爆風と共に灼滅されたのだった。
●エッフェル塔怪人
「ボンジュール、灼滅者諸君。ご機嫌はいかがかね?
折角、ここまで来てくれて悪いのだが、他人の住居に無断で侵入するとは、紳士淑女とはいえない。
もう少しマシなマナーを学習するまで、お引取り願えないかな?」
闇の雪原の戦場に到達した灼滅者達を出迎えたのは、ファッショナルブで高貴でオフランスなご当地幹部、エッフェル塔怪人であった。
戦場であっても優雅さを失わない、まさに、貴公子の風情だ。
「言いたいことはそれだけでござるか?」
対する、四方祇・暁(ダークサイドリッパー・d31739)は、赤いマフラーをたなびかせる忍者装束。
高貴さとは程遠い、闇に生き影で戦う者の末裔たる姿だ。
暁を下賎の蛮族と見下すエッフェル塔怪人に、暁は、クスリと笑んで言葉を返す。
「貴殿こそ、ノーライフキングに雇われた傭兵でござろう? マナーを云々できる立場では無いでござるよ」
と。暁の的確な突っ込みに、エッフェル塔怪人の瞳が燃えた。
「傭兵だと? この高貴な騎士たる私を傭兵と呼ぶのか! そもそも、ブラッド・ペネトレイター君にあれだけ世話になっておきながら、恩を仇で返そうという君達には言われたくないな。わがフランスパンの錆になるがいい。ラッサンブレ・サリューエ!」
エッフェル塔怪人は、そう言うと、神速の速度でフランスパンサーベルを突き出した。
「くっさすがに速いでござる。しかし、人類がブラッド・ペネトレイターに世話になったでござるか? 不当に支配されていたの間違いでござろう!」
神速のフランスパンサーベルを避けながら暁が反駁しつつつ『シュヴァンハルス』を繰り出す。
鞭のようにしなる剣先は、フランスパンの一撃に勝るともオそらぬ速度でエッフェル塔怪人を襲う。
だが、エッフェル塔怪人は、その反駁にフンと鼻で笑った上で攻撃も華麗に避けてみせた。
「ならば、君達は、ブラッド・ペネトレイター君が生み出した『石油』の恩恵を受けていないとでもいうのかね? 石油ほど素晴らしいものは無い、アレは人間を爆発的に増やした魔法の水なのだからね!」
ご当地幹部は、自分の功績でもないくせにドヤ顔でそう言い放つ。
世界経済の血液とも呼ばれる石油を生み出したのが、ブラックペネトレイターであるのならば確かに人類は世話になっているとも言えただろう。
暁は、石油が『動物の死骸が変質した物』であることを思い出し、この言葉が嘘では無い可能性に思い当たった。
死骸を操作して変質さえる事など、ノーライフキングの王の一人であるのならば、難しいことでは無いのだろう。
そして、経済を司るゴールド・コンダクターが石油の流通までも握っていたというのならば……ノーライフキングが『人類管理者』を自称していた事も頷ける。
しかし、そのドヤ顔のエッフェル塔怪人に、暁は更なる怒りと共に愛刀『熾天狼』を振り下ろした。
「アッシュ・ランチャー殿が武器を扱う死の商人。そして、貴殿は石油王でござるか? ノーライフキングはやっぱり汚いでござるな!」
死の商人も石油欧も、日々を地道に働いて暮らす庶民の敵である。
そして、庶民の敵であるのならば、灼滅者の……ヒーローの敵であるのだ。
自分が示した真実の前に恐れ入る事がなかった灼滅者達に、エッフェル塔怪人は驚きに目を見開く。
「何故、恐れ入らない? お前達の国は石油の一滴は血の一滴といって、石油を大事にしていたのではないのか!?」
「いつの話でござるか!」
暁はそうツッコむと共に、『熾天狼』の会心の一撃で彼の自慢のエッフェル塔を切り落としたのだった。
「まさか、この私のエッフェル塔が……多くのパリジェンヌ達を喜ばせた誇りの象徴が切り落とされるとは!」
エッフェル塔怪人は自らの象徴を切り落とされたショックで膝から崩れ落ちる。
それは、彼の最も大事な誇り的なナニかであったのだろう。
崩れ落ちたエッフェル塔怪人は、頬に涙を伝わせる。
「グローバルジャスティス様、私はここまでのようです。オルヴォワール……そして、グローバルジャスティス様に栄光あれ」
そう呟き、泣き崩れるように雪原に沈んだのだった。
「いささか、哀れ過ぎたたでござろうか?」
暁は、その哀れな姿にほんの少しだけ同情したのだった。
●ブラジルサッカー怪人
闇の雪原の中心部には、縦110m横75mの長方形で囲われた戦場が用意されていた。
その戦場の中心で3本の足を巧みに使ってリフティングをしながら灼滅者の到来を待っているのは、ご当地幹部ブラジルサッカー怪人だ。
「灼滅者諸君、私のコートへようこそ。さっそく『試合』を続けましょう」
紳士のスポーツと称されるサッカーを象徴とする怪人が丁寧に言う。
灼滅者達が戦場に到達すると、どこからともなくホイッスルが鳴り響き、コートの中で『死合い』が開始される。
サッカーとは、ボールの奪い合い……タマの奪い合い……。
つまり、命の奪い合いである事に疑問の余地は無い。
雪原のコートの中を縦横無尽に駆け巡るブラジルサッカー怪人のパフォーマンスは圧倒的であり、灼滅者を戦闘不能に追い込むごとに、3本の足と萎えた腕とを使い勝利のダンスを披露して見せる余裕すらあった。
ダンスの完成度も高く、もし、この戦場に観客がいれば、大盛り上がりだっただろう。
誰か、ブラジルサッカー怪人を止める事ができるものはいないのか? 灼滅者達がそう思ってコートを見回すと、田磯辺・倉子(爽やかな青空・d33399)が前に出た。
「ブラジルサッカー怪人は、私がマンツーマンでマークします。その間に、他の怪人達を」
そう言うと、果敢にも倉子は、ブラジルサッカー怪人に、大きな胸を弾ませてローラーダッシュからのスライディングタックルを仕掛けた。
だが、足の数が違えばサッカー歴も雲泥の差である2人では、そもそも勝負にならない。
華麗なテクニックと足数の差で翻弄するブラジルサッカー怪人に、倉子はついていくのがやっとという有様であった。
「いかせませんよ!」
本気になった倉子は、獰猛な笑みを広げてブラジルサッカー怪人を追い続け、自分の右横を抜こうとしたブラジルサッカー怪人のドリブルを肩を入れて止めようと試みた。
しかし、ブラジルサッカー怪人は、退化した腕を鞭のようにしならせて、倉子を牽制すると、そのまま突破していこうとする。
「お待ちなさい!」
しかし、倉子は縋るように腕を突っ張って無理矢理止めようと追いすがると……。
「くっ」
と、ここで、それまで縦横無尽に動き回っていたブラジルサッカー怪人が始めて動きを止めて、ボールをトラップしたのだった。
「そういうことですか」
その動きを見た倉子は、ブラジルサッカー怪人を攻略する糸口を閃いた。
「あなたは、ゲルマンシャークのいるドイツをライバルとしているそうですね。でも、本当のライバルは違うのでは無いですか?」
倉子が想起するのは、ブラジルと同じ南米でブラジルと雌雄を争うサッカー強国の名前。
……その名はアルゼンチン。
そして、アルゼンチンのサッカーは……、
「アルゼンチンのサッカーはな……腕でするのだと聞いています!」
倉子は、そう宣言するとローラーダッシュと共に強引に腕を使うことで、ブラジルサッカー怪人を抑えていった。
そしていつしか、戦場に立っているブラジルサッカー怪人勢力は、ブラジルサッカー怪人ただ一人となっていたのだ。
「お待たせしました。あとは、あなた一人だけです」
多くの灼滅者に取り囲まれたブラジルサッカー怪人は、それでも持ち前の身体能力で血路を開こうとするが、多勢に無勢で押しつぶされていった。
「ローラーダッシュからの……マルセイユルーレット、まわさせていただきます」
倉子の、ブラジルサッカー怪人との死闘で体得したサッカー技を組み込んだグラインドファイアが、ブラジルサッカー怪人の第三の足を蹴り飛ばし、もぎ落とした。
サッカー男子の象徴とも言うべき第三の足を失ったブラジルサッカー怪人は、ユニフォームを脱いで倉子に手渡すと潔く敗北を認めた。
「まさか、日本のサッカーレベルがここまで来ていたとは。これからのサッカー界をよろしく頼みますよ。グローバルジャスティス様に栄光あれ!」
そして、ブラジルサッカー怪人は、倉子達に世界のサッカー界の行く末を託すと、満足げに微笑み、塵となって消え去っていった。
激闘を終え、荒い息で大きな胸を上下させつつ呼吸を整えた倉子は、遺品となったユニフォームを手に取りつつ、
「私も、制服を脱いで渡せばよかったのでしょうか……?」
と、小首をかしげたのだった。
●知識の山脈
知識の山脈の突破を許したノーライフキング達は、元老達が次々と討たれていることに動揺を隠せずにいた。
「サイキックエナジーの枯渇問題を強く受けて、アンデッド達の創造にも支障をきたしていたのは事実……だからといって、灼滅者の侵攻を止めることも出来ず、おめおめと元老様達を討たれてしまうなんて……このままでは、不死王の名が泣くわ!!」
研究主任レディ・アンタレスは、知識の山脈を守るノーライフキング達を鼓舞し、灼滅者達を迎撃する。そこに自分のスパコンを奪われた私怨が混じっていたとはいえ、その燃え盛る闘士は劣勢に追い込まれた不死王達にとって、頼もしいものであっただろう。
だが、その奮戦も、今の灼滅者達には届かない。
「く、悔しい……このままでは終わらないわ! 覚えていなさいよ~っ!!」
「タフな女性だな……何か見ている世界が違うようにも思えるが」
蹂躙のバベルインパクトの直撃を受け、捨て台詞を残して吹き飛んでいく彼女を、霧凪・玖韻(刻異・d05318)は呆れたように見送るのだった。
→有力敵一覧
→(2)闇の雪原(29勝2敗/戦力850→0/制圧完了!)
→(3)業の荒野(3勝0敗/戦力300→150)
→(4)力の森林(1勝2敗/戦力500→450)
→(5)知識の山脈(2勝2敗/戦力150→50)
→(10)灰の円卓(2勝0敗/戦力450→350)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。