胎蔵界戦争

    ■第8ターン結果

    ●ブラッド・ペネトレイター

     血の鉱脈の中心、赤く脈打つ城。
     そこに、ブラッド・ペネトレイターの残存軍勢が集結していた。
     統合元老院『クリスタル・ミラビリス』も既に、ブラッド・ペネトレイターただ一人。
     彼を灼滅する事が出来れば、統合元老院は崩壊し、ノーライフキングは、悠久の時をかけて蓄積してきた叡智を失い、二度と組織的な行動を行う事はできなくなるだろう。
     ノーライフキングとの最後の決着をつける戦いを前に、灼滅者達は強い決意と覚悟を持って、戦場に殺到していく。

     その灼滅者の前に、血のような赤い外套をまとったブラッド・ペネトレイターは自ら姿を見せ、そして語りかけてきた。
    「人類管理者である我々を、ここまで追い詰めるとは……さすがは人間界の勇者たる灼滅者ですね」
     両手を広げ、ブラッド・ペネトレイターは話を続ける。
    「あなた達灼滅者が勇者であれば、世界の裏側で人類を管理していた、私達、統合元老院クリスタル・ミラビリスは、さしずめ魔王というところでしょうか」
     勇者と魔王の戦い、確かにそうかも知れない。
     だが、いまさら、それがなんだというのだ?
     もはや問答無用と妖の槍『ツグルンデ』を掲げたセレス・ホークウィンド(白楽天・d25000)をはじめとする灼滅者に、ブラッド・ペネトレイターは驚くべきことを告げた。
    「では、こう言わざるを得ないでしょう。世界の半分を、あなた方に差し上げましょう。共に、世界の未来を築こうではありませんか」
     そう言って、停戦を申し入れてきたのだった。
     ブラッド・ペネトレイターは、世界の表は灼滅者が支配すれば良く、自分達は裏側の半分をもらえればそれで良いのだと、灼滅者側への配慮を口にする。
    「この戦争では、多くの同胞が灼滅されるに至りました。
     ですが、過去の恨みにばかり拘る気はありません。
     自分達ノーライフキングは、灼滅者によって殺された同胞の恨みを忘れましょう。
     これからは、ノーライフキングと灼滅者が裏と表から世界を支配する事で、ウィンウィンの関係を築く未来志向の関係こそが重要なのです。
     私の力があれば、日本に新たな油田を幾らでも作り出すこともできるのです」
     停戦を受けいれるよう、誘惑するブラッド・ペネトレイター。

     だが、
    「停戦など、考慮にすら値しない。私達はお前を灼滅するのだ!」
     セレスは、衝動的にその申し入れを断っていた。
     このセレスの言葉に、沖縄戦を戦い抜いた多くの灼滅者も同調する。
    「ダークネスと共に作る世界の未来など、見たくありません」
    「ダークネスは邪悪、信頼できない」
    「どうせ、後で裏切るつもりなのだろう? そうはいかないよ」
     そもそも、沖縄戦で灼滅者が敗北していれば、今頃日本は『雪だるま式に増えるアンデッド』によって存亡の危機に陥っていたはずだ。相手は、そうした手段を躊躇なく取る者達である。
    「自分が負けそうだから世界の半分って、都合がよいにも程があるよ」
     自分達の本拠地に攻め込まれて追い詰められたからの苦し紛れの交渉であることは明明白白だ。
     今は灼滅者達が優勢だから良いようなものの、時間を与えれば手の平を返すのは目に見えている。そのような調子の良い申し出に惑わされる灼滅者達など、いるはずもなかった。

    「そんなに簡単に結論を出すものではないでしょう。人類管理者たる私達と手を組めば、この世界のあらゆる人為的な事象をコントロールできる。……栄耀栄華も思いのままですし、皆様が望むのならば、恒久平和すら実現できるのですよ。それがわからないのですか?」
     マスクのせいで表情は見えないが、ブラッド・ペネトレイターは、明らかに狼狽しつつも言い募る。
     だが、灼滅者の返答に揺らぎは無かった。
     統合元老院クリスタル・ミラビリスに管理される事で得られる恒久平和に、何の価値があるだろうか?
     戦争も平和も、ダークネスに管理されるべきものでは無い。
     人が人として努力し、迷い、戦い、そして勝ち取っていくものなのだ。

    「……所詮は戦いに溺れる猿ですか」
     灼滅者達の答えが変わらないのを悟ったか、ブラッド・ペネトレイターは吐き捨てるように言った。
    「白の王、赤の王を灼滅した故、王の後継者の資格を得るに至ったかと思えば、所詮は人間としての思考を脱し切れない者達ですか。ならば、私の申し出を断った愚挙を後悔しながら、滅亡すると良いでしょう」
     灼滅者の揺らがぬ意志に激高したブラッド・ペネトレイターが手を振り上げると、ブラッド・ペネトレイターの残存軍勢が一斉に動き出した。
     対して、灼滅者も万全の戦闘態勢で迎撃する。
     血の鉱脈を血で染める、最後の殲滅戦の幕が切って落とされたのだ。

     ブレッド・ペネトレイターの軍勢は充分に善戦した。
     戦力の質、そして自在に蠢く血の鉱脈。地の理はノーライフキング側にあった。
     だが、数千年以上の間、大きな戦争を経験してこなかった、ブラッド・ペネトレイターの直属軍は、百戦錬磨の灼滅者に対抗するには、実戦経験が不足しすぎていた。
     何より、既に彼我の戦力差は大きなものとなっていたのだ。

    「猿どもが! 私を殺せば新たな石油は生み出されず、数十年後には石油資源が枯渇するのですよ! 石油が無くなれば、人類文明は滅亡するしかないというのに!」
     憎憎しげにはき捨てるブラッド・ペネトレイター。
     その姿には、停戦を求めてきた時の余裕は完全に失われていた。
    「確かに石油は人類の歴史には重要だ……。だが、なければないで新たな文明を作ることが出来る。それが、人類の力だ!」
     セレスはそう言い放つと、解体ナイフ『エアリアル』を逆手に持ち、白き翼をはためかせた。滑る様にブラッド・ペネトレイターの懐に入り込むと、逃げ出そうとしたブラッド・ペネトレイターの脚を鉤爪で押さえ込む。
     一気にその首の付け根にエアリアルを突き入れると、マスクに沿って円を描くように閃かせた。
     エアリアルは、何の抵抗も無いかのようにクルリと円軌道を一周した。
     ゴトリと、マスクごと、ブラッド・ペネトレイターの頭部が切り落とす。
    「お前達、クリスタルミラビリスの歴史は、ここで終わるのだ」
     セレスはゴトリと落ちた『不滅の兜』を拾い上げ、消えゆくブラッド・ペネトレイターの死骸に言い聞かせるようにそう呟いた。

     石油を生み出し、人類社会を発展・複雑化させ、新たな種類の『憎しみ、妬み、焦燥感』を次々と生み出してダークネスの支配に貢献したクリスタルミラビリスの元老、ブラッド・ペネトレイターは灼滅された。
     統合元老院『クリスタル・ミラビリス』は完全に崩壊する事となったのだ。

    「みんな、急いで撤退しろ。ブラッド・ペネトレイターの灼滅と共に、この胎蔵界もすぐに崩壊を始めるだろう」
     セレスの言葉の通り、世界の支柱を失い胎蔵界は、崩壊を始めようとしている。
     灼滅者達は、勝利の凱歌と共に、決戦の地たる胎蔵界を後にするのだった。

    ●業の荒野

    「主が与えし、最後の使命を果たす!!」
    「そいつはご苦労さんだな!!」
     小梨・武瑠(大学生ファイアブラッド・d14654)の影業が、生殖型ゾンビの指揮官を縛り上げ、地面に叩き付ける。
     主を失った完成型生殖ゾンビは、完全に動きを止める。それが、生殖型ゾンビ最後の1体だった。ノーライフキング達も灼滅し、業の荒野での戦いも終わる。
    「さて、『殺戮者には業(カルマ)が宿る』……だったか? このだだっ広い荒野に、何を隠したんだかねぇ」
     頭を掻いた武瑠は、荒野の中心部へと向かう。
    「これ、か?」
     そこには、赤土を固めて造られたと思しき巨大な石版が、突き立てられるように置かれていた。
     その表面には、まるでエジプトピラミッド怪人お得意のヒエログリフのような、奇妙な象形文字で何事かが書かれている。
    「六六六人衆に関連してるって話だが……」
     その時、胎蔵界全体に激震が走るのをその場にいた灼滅者の誰もが感じた。
     元老ブラッド・ペネトレイターの死によって、胎蔵界が消滅しようとしているのだ。
    「やべぇな、時間が無い。とにかく、こいつを持って帰るぞ!!」
     武瑠は戦場にいた灼滅者達を呼び集めると、掘りだした石版を担ぎ、水晶離界城を目指して走り出すのだった。

    ●アフリカンパンサー

    「エジプトピラミッド怪人、ブラジルサッカー怪人、エッフェル塔怪人……」
     灼滅されたご当地幹部達の名を、アフリカンパンサーは惜しむように呼んだ。
    「力を取り戻した世界のご当地怪人達でも、もう灼滅者達を止めることは出来ないか。もっと早く、止めることが出来ていれば違ったのかな」
     統合元老院クリスタル・ミラビリスにとって、名目上最後の元老となったアフリカンパンサーだが、帰属意識は無かった。
     元老といっても、所詮はノーライフキングとは種族を違える外様に過ぎない。
     ご当地幹部と同盟を組むための名ばかりの地位だ。
    「でも、こう早く職場がなくなるというのも、予想外だったね」
     アフリカンパンサーは苦笑する。
    『不滅の兜』を持つ元老達が全て居なくなったことにより、胎蔵界は崩壊を始めようとしている。
     かつてアフリカンパンサー達が、サイキックハーツに至らんとした蒼の王コルベインを討った蒼の玉座も、今度こそ崩壊するのだ。

     アフリカンパンサーが元老でいたのは短い期間だった。
     だが、得るものはあった、と彼女は考える。
    「『完成型生殖ゾンビ』のデータは、グローバルジャスティス様の計画を完成させるための役に立つはずだね」
     伝えられていた開門呪文を唱えたアフリカンパンサーの前に、胎蔵界と外界とを繋ぐ門が開く。
     深く息を吸い込むと、アフリカンパンサーは戦場の隅々にまで響くような遠吠えを発した。それを聞き届けたご当地怪人達は一斉に撤退を始める。
     そして数分後、蒼の玉座に攻め入った灼滅者達が辿り着いた時、アフリカンパンサーと配下のご当地怪人達の姿は、胎蔵界から消えていたのである。

     灼滅者達が胎蔵界での戦いを制し、灼滅者達は統合元老院クリスタル・ミラビリスを崩壊へと導いた。
     そして次なる戦いの前に、得られた情報を精査する時間が灼滅者達には必要なのかも知れなかった。

    →有力敵一覧

    →(3)業の荒野(3勝0敗/戦力50→0/制圧完了!)

    →(4)力の森林(2勝1敗/戦力450→350)

    →(6)血の鉱脈(21勝7敗/戦力300→0/制圧完了!)

    →(7)蒼の玉座(8勝3敗/戦力1100→700)

    →(10)灰の円卓(1勝1敗/戦力350→300)

    →重傷復活者一覧

    →死亡者一覧

    ■有力敵一覧

    有力敵 戦功点 現状

    完成型生殖ゾンビ(指揮官型)
    540
    (3)業の荒野:Battle3にて、小梨・武瑠(大学生ファイアブラッド・d14654)に倒される。

    ブラッド・ペネトレイター
    10000
    (6)血の鉱脈:Battle4にて、セレス・ホークウィンド(白楽天・d25000)に倒される。

    戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。

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