■第6ターン結果
●(5) 赤城南面千本桜
千本桜を中心とした一帯での戦闘は、皇・千李(復讐の静月・d09847)の一刀と共に終わりを迎えていた。
「……終わりだな」
千李の刃がメイド服を斬り散らし、中にいた園児服の少女を救い出す。
「この戦場も、これで制圧完了ですわね」
千本桜を守っていた赤鬼を撃破したカリーナ・ランドルフ(パラサイトナース・d17268)が、周囲に倒れた鬼達が消えるのを見ながら言う。
羅刹のラグナロクダークネスによって無から生み出された羅刹達は、以前に灼滅者達が戦った時と同じく、撃破されれば眷属や都市伝説のように消えてしまう。
傷跡こそ残れど、この土地で戦いがあったことを人々が知ることはないだろう。それが、バベルの鎖の力というものであった。
●(8)寺沢ダム
「知りません……あなた達の言っていることは……! 私は、今の私しか分からないんです……!!」
浅凪・菜月(ほのかな光を描く風の歌・d03403)の繰り出す攻撃は、灼滅者としての時を大幅に上回っている。
だが、説得を繰り返されるたび、その威力が次第に弱まっているかのように灼滅者達には感じられていた。あるいはそれは、今の羅刹たる彼女の、自分に対する自信の無さゆえなのかも知れなかった。
繰り返し、繰り返し彼女へと言葉を投げかける灼滅者達の存在が、「羅刹としての彼女」を揺るがせている。
繰り出される風の刃を受け止めて、東屋・紫王(風見の獣・d12878)が声をあげる。
「届かないとしても俺達は何度でも手を伸ばすよ。この化け物だらけの学園の事、気に入ってるんだ。誰かが欠けるのは嫌だからね」
紫王は炎の剣を手に地を蹴った。
炎の剣が、ダークネスと化した菜月をその揺らぐ心を焼き尽くす。
傷つけ、同時に救う。
その奇妙にも思えるなやり方こそが、闇堕ちした人を救い出す、唯一の方法だ。
「一緒に闘おう。そして皆で一緒に帰ろう!」
炎の剣が振りぬかれる。
斬閃と共に菜月の体が崩れ落ち、一瞬のうちに、その服装が変化した。
駆け寄ってくる仲間たちの前で、元の年齢相応の姿に戻った菜月が、ゆっくりと顔をあげる……。
●(12)夜景パノラマ展望台
(12)夜景パノラマ展望台:Battle8
パノラマ展望台のガラス窓に黒い染みができていた。
それは、地獄羅刹衆が一鬼「黒縄地獄」の使役する黒い縄の姿である。
うねうねと動く黒い縄は、展望台より灼滅者の襲来を確認すると、黒縄地獄の元へと舞い戻る……。
「ご苦労なんだな。ほうびに灼滅者の血と肉をたんまり喰わせてやるんだな」
黒縄地獄は、黒い縄を愛しそうに愛撫すると、やってくる灼滅者を待ち構えるのだった。
「話に聞く、ただでさえ気持ち悪いのに、さらにやばい感じのやつよりは全然マシ……ですかね?」
加賀峰・悠樹(惨劇の視聴者・d05633)は、そう言うと、楽しげに黒縄地獄の前に立ち塞がった。
戦争という状況は、悠樹にとっては心躍るシチュエーションなのだ。
一方、黒縄地獄は、うねうねと動く黒い縄を体にまとわりつかせ、黒縄漢縛りの体位で、恍惚として戦闘体勢を整える。
「こ、この黒縄で、まず皮を焼き剥がすんだな。次に肉を焼いて、筋を焼いて、骨を焼いたら、おいしく煮えた骨髄が出てくるんだな。それをちゅるんと一飲みするのが、お、おいしいんだな」
黒縄地獄は、黒い縄の愛撫を受けながらうっとりと、そう妄言する。
まさに妄言である。しかし、
「君の趣味は肯定できませんが、否定もしないでおきましょう。さぁ、楽しく殺りましょうか」
悠樹は、その妄言を否定することなく、影技を蠢かせる。
悠樹の影技と、黒縄地獄の黒い縄。
互いが互いの信じる武器でもって戦い合う。それは、芸術のような戦いであった。
そして決着は……、悠樹の影縛りによって決まった。
悠樹は、影縛りで死の運命を付与した黒縄地獄を、冷めた目で見下すと、仲間と共に軍を退いたのだった。
(12)夜景パノラマ展望台:Battle23
赤城山を見渡す展望台に、羅刹の摩利矢……上泉・摩利矢の姿があった。
御子を利用しようとする羅刹達から御子を逃がそうとして失敗し、その後、灼滅者の協力を得て、御子を救うために羅刹の村へと向かった摩利矢……。
だが、時既に遅く、羅刹の御子はラグナロクダークネスに堕ち、その契約者たる摩利矢もまた、その意志に従い、灼滅者の敵となる事と成ったのだ。
「御子ちゃんは私が守る! 約束したんだ!」
摩利矢は、群がる灼滅者に容赦なく攻撃を浴びせ続ける。
ここを守る事が御子を守る事につながると諭され、体よく、御子の側から遠ざけられた事にも気づかないまま。
「あんたバカだね。羅刹の村は、もう制圧されているよ! ここで幾ら戦ったって、御子を助ける事なんてできないんだよ!」
時宮・霧栖(ドレッドブラッド・d08756)は、そう事実を告げて、摩利矢に降伏を勧告する。
羅刹の村を制圧された以上、この戦場に戦略的価値など全く無くなっているのだから。
しかし、正常な判断力を失っているのか、摩利矢は、その勧告を受け入れなかった。
「御子ちゃんが無事なのは、私にはわかる。だって、私は御子ちゃんの心を感じる事ができるのだから。だから、私は、自分のすべき事をするよ」
研ぎ澄まされた摩利矢の攻撃に迷いは無い。
ラグナロクダークネスとの契約、かくのごとし。
「ったく、しょうがないね」
霧栖は、ウロボロスブレイドに炎を宿し、摩利矢へと肉薄する。
「アタシは、あんたを説得はしない。ラグナロクダークネスの契約者であるあんたを、今の状態で説得出来るとは思わないからね。だけど……、御子を助けた暁には……きちんと自分で帰ってくるんだよ!」
そういうと、霧栖は、レーヴァテインを摩利矢の腹腔に叩きつけた。
ゴフっと呻いて倒れる摩利矢を背に、霧栖は踵を返した。
摩利矢を説得する先に、ラグナロクダークネスとなった御子をなんとかしなければならない。
霧栖は、そう確信していた。
●(16)地獄絵図の間
事前に『地獄絵図の間』の場所を聞いていた灼滅者達は、村長の家に備えられた地獄絵図の間へと向かおうとしていた。
だが、組長の家に一歩足を踏み入れた瞬間、そこに広がっていたのは炎渦巻く巨大な空間だ。
組長の家の外観からは、考えられないほどに広大な空間の正体は、
「ラグナロクの作り出す、異空間か……!!」
「まさに『地獄絵図』そのものだな」
かつてラグナロク神津・零梨を救出せんとした時に、彼女の暴走する力は無数の異空間を作り出した。『御子』は本来的に、無から有を作ることに特化したラグナロクだ。
ラグナロクダークネスとなり、力を増した今ならば、この程度の空間は容易く作りうるのだろう。
そして地獄絵図の向こうから、駆け寄って来るのは夥しい数の鬼達だった。
その先陣を切って走るのは、巨大な大釜を抱えた青い鬼だ。
地獄羅刹衆「大叫喚地獄」。
その声が、灼滅者達の元へと届く。
「ホッホッホッホ、地獄の裁きはどなたでもギルティ(有罪)!
わたくし『大叫喚地獄』は、皆様をいつでもウェルカムしております。
皆様の肉体は、煮汁の高熱ですぐホロホロにほぐれますので、定員オーバーの心配もございません。ささ、どうぞ四列にお並びを……」
奇妙に愛想の良い地獄絵図の羅刹が抱える釜から漂う悪臭は、まさしく地獄めいていた。
「あれを浴びるのは御免こうむるね」
柚木・小夏(金色の情熱・d09145)の言葉に、周囲にいた灼滅者達もうんざりとした顔で同意を寄越す。
「私の煮汁の素晴らしさを理解できないとは、残念極まりない人達ですね。あなた方はもう紛れもなくギルティです!」
足音も高く突き進んでくる鬼に対し、小夏はバトルオーラで蒸気を防ぎながら突き進んだ。地獄の蒸気の中で、小夏の纏うバトルオーラが激しく輝く。
「おぉ、痛い痛い、これはたまらん!」
痛打を受けた鬼は、泡を食ったように逃げ去っていく。
「あんな鬼達がまだウジャウジャ増えるのよね……」
ラグナロクダークネスも、もう少し実体化させるものを選ぶべきだと小夏は思うのだった。
(16) 地獄絵図の間 Battle:7
進軍を続ける灼滅者達。その眼前で地獄絵図の空間の炎を喰らいながら現れるのは、巨大な体躯を持つ赤い獣だ。
「イフリート……?」
バベルの鎖によって、その存在自体は薄々感じられていたとはいえ、その巨大さはこれまでに灼滅者達が遭遇したイフリートの中でも群を抜いている。
『ルォォォォォォォォ!!』
吠え猛るイフリートの体から溢れ出す炎が、鬼達をも飲み込んで膨れ上がる。
地獄絵図の中で、炎は灼滅者達を
朝倉・くしな(初代鬼っ娘魔法少女プアオーガ・d10889)が他の灼滅者に声を向ける。
「皆さんは先に! こいつらは、この鬼っこ魔法少女プアオーガが引き受けましたっ!」
くしなをはじめとする
「ワガナハバルトロン! コノヤマノクサビヲクライシモノ! がいおうがニチカラヲササグモノナリ!」
「バルトロンだか何だか知りませんけど、邪魔はさせませんよ。この先では、私達と共に歩む人が待っているんです!」
灼滅者達が奥へと進んだのを見送り、くしなは大きく金棒を振るった。
バルトロンの炎を割いて、金棒がその爪の一本を叩き割る。
「ルォォォッ!?」
「さあ、その爪全部叩き割ってあげる!」
くしなの声と共に、灼滅者達はイフリートへと挑みかかっていった。
(16) 地獄絵図の間 Battle:12
地獄絵図の間の奥で、「御子」は静かに佇んでいた。
「あなた達がここに来たということは……忠次郎たちは敗れたのですね」
鬼を突破して自分の前に現れた灼滅者達に対し、御子は静かにそう告げる。
御子の後ろで後光のように輝く曼荼羅は、灼滅者達を照らす。
その輝きに照らされた地獄絵図の地面から、鬼達は次々と現れては灼滅者達へと襲い掛かる。
鬼達と相対しながら、灼滅者達はなおも強く殲術道具を振るった。
クゥ・シャミナード(命火招来・d02496)は、御子へと鋭い叫びをあげる。
「ラグナロクダークネスさん……あなたはまだ完全にダークネスになってないのでは?」
「何を言うかと思えば、」
「だとしても!」
額から流れる血を振り払い、クゥは近付いてくる鬼を振り払った。
一歩ずつ距離を詰めながら、御子へと言葉を投げかける。
「まだ人に戻れるはずだ! 戻ってきたらどうだ!! あんたを慕ったあの羅刹の為に!」
「……摩利矢は『私』の友達であり、私にとっての忠実な臣下。いずれにしても、私と彼女との関係は変わりませんよ」
その言葉に混じる揺らぎを、クゥは感じ取る。
やはり、摩利矢の存在がキーだろうか?
だが、説得もここまでだった。
御子の力は戦いの中でもなおも増大し、地獄絵図のあちこちから転送されて来る鬼が、彼女を守らんとしているのだ。
「今はここまでだな……ごめんよ!」
クゥは御子に向けて閃光百烈拳を繰り出すと、他の灼滅者達と共に、その場を離れるのだった。
→有力敵一覧
→(5)赤城南面千本桜(6勝0敗/戦力132→0/制圧完了!)
→(7)東国文化歴史街道東側(16勝0敗/戦力850→50)
→(8)寺沢ダム(7勝0敗/戦力200→0/制圧完了!)
→(10)三夜沢赤城神社(3勝0敗/戦力1491→1341)
→(12)夜景パノラマ展望台(25勝0敗/戦力2000→750)
→(13)赤城白樺牧場(11勝0敗/戦力2100→1550)
→(16)地獄絵図の間(20勝4敗/戦力2500→1500)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。