アンリ戦争

    ■第2ターン結果

    ●アスモダイ
     アスモダイの待ち受ける賭博場空間に、灼滅者達は三度攻め込んでいた。
     既に敵の戦力は大幅に減少しており、制圧まであと一歩のところまで追い込んでいる。
     だが、問題は大悪魔アスモダイその人だ。
     竜の如き翼が羽ばたき、杖から魔力が迸るたび、外傷も受けることなく倒れる灼滅者達が増えていく。
     精神に作用する魔術の使い手、その本領を発揮していた。
     既に戦いは、アスモダイと饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)との一騎討ちとなっていた。
    「どうした? お前達の力は、この程度ではないはずだ。
     お前達には、グラシャ・ラボラスを倒して貰わねばならないのだからな」

     灼滅者達の攻撃は、確かにアスモダイをあと一歩のところまで追い込んでいた。
     既に周囲の悪魔達は全滅し、アスモダイ本人もまた満身創痍。
     だが、彼女を灼滅するに足るもう一押しが足りないことを、樹斉は感じていた。
    「……!!」
     耳を揺らして立ち上がった樹斉の歌を、アスモダイは楽し気に魔力の障壁で受け止める。
    「面白い。しばし楽しませてもらおう」
     邪竜紋を輝かせながら樹斉の攻撃を受け流し、自らの傷を癒し終えたアスモダイは、杖を振り上げる。
    「お前達に討たれることもなく、しかし『アスモダイ・ギャンビット』も成り立たぬ。
     我がことながら、何とも予想外な状況となったもの」
     だが、それこそがギャンブルというものかも知れぬ。
     嘯いたアスモダイは賭博場空間を去っていく。
     裏切りの首魁である大悪魔達に、グラシャ・ラボラスを守る気はないだろう。
     だが、大悪魔からグラシャ・ラボラスに力が与えられ続けていることもまた明白。
     グラシャ・ラボラスを撃破できるか、灼滅者達には判断が求められていた。

    ●リュシアン・ジレ
    「ここまで追い込まれてしまっては、もう手も足も出しようがないなあ」
     リュシアン・ジレは、自らの運命を嘆くように、手にしたロッドを一振りした。
     放たれる魔力を切り飛ばして突き進んで来る夜桜・紅桜(純粋な殲滅者・d19716)の姿に、リュシアンは大仰に肩をすくめる。
    「こうやって正面で切った張ったをするのは、僕の専門分野じゃないんだけどね」
     そううそぶく彼の華麗な装いは、既に戦いの影響でボロボロだ。
     元々、リュシアン・ジレは大悪魔達ほど強力なソロモンの悪魔というわけではない。
     サイキックハーツ傘下として一翼を担うに辺り、強化を施されてはいるようだが、それでも数々の強力なダークネスを退けて来た灼滅者達と戦うには力不足は否めない。

    「サイキックハーツ『グラシャ・ラボラス』様を守る結界を張る、名誉ある役割……なんて言われもしたけれど、実際は貧乏籤を押し付けられてるよね」
     リュシアンは自分の運命を悲観するように、わざとらしい溜息をついた。
     大悪魔達がそれを引き受けなかったのが、アンリに内通し、アスモダイの魔術によって、サイキックハーツの座を奪おうという計画であると灼滅者達は知っている。
    「だったら戦場になんて出て来るじゃない!」
    「そうしたいのは山々だけど、グラシャ・ラボラス様を倒されたら一蓮托生で全滅だからね。僕達は」
     紅桜の一刀を浴び、リュシアンの表情が僅かにゆがむ。
     それでも癇に障るような物言いを崩さないのは、この少年悪魔の特徴だろう。
    「一方的にやられるのも好みではないし、最後の最後まで抵抗はさせてもらうさ。君達にとっては、その方が厄介だろう?」
    「なんとでもするがいい」
    「怖い顔したら美人が台無しだよ、お姉さん?」
     蠱惑的な笑みを浮かべながらリュシアンを指輪を輝かせると、呪いが灼滅者達を襲う。だが全身に走る激痛をこらえながら、紅桜は前進した。
     その切っ先が、少年悪魔の杖を打ち砕き、薔薇を散らす。
    「そうやって、傷ついても戦うようなところが気に食わないんだ。我ながら良く頑張ったかな」
    「全く、口の減らない悪魔ですね……」
     その言葉にまさに小悪魔めいた微笑を浮かべ、リュシアン・ジレはつま先から消滅していく。
     やがて帽子が落ち、青い薔薇もまた、ソロモンの鍵に溶けるように消えていった。

    ●白百合
    「また会うたな、武蔵坂の灼滅者。ここまで、好き勝手してくれたようだのう」
     グラシャ・ラボラスを守る鍵たる戦場を任された、ソロモンの悪魔・白百合は、灼滅者を迎えて、弓のように目を細める。
    「だが、こたびは退いてやるわけには、いかぬ……」
     どちらかが死ぬまで死合おうぞ。
     白百合はそう言うと優美な衣装を振り乱し、全力で勿忘・みをき(誓言の杭・d00125)達に襲い掛かってきた。
     それは、常に余裕を持ち続けたこれまでの戦いとは様相を異にしていた。
    「我が誉は、サイキックハーツに至ったグラシャ・ラボラス様より、直々に鍵を任された事。ならば、この戦場を死守する事こそ、我が為す全て」
     白百合はソロモンの悪魔の中で、重要な地位にあったわけでは無い。
     大悪魔でも無いし、特別に強大な力を持つわけでも大きな組織や作戦を任されたわけでも無い。
     その彼女が、勢力の首魁たる、グラシャ・ラボラスの鍵を任されたのならば、それを誉とするのは理解できよう。だが、
    「憐れですね、白百合。多くのソロモンの悪魔は、グラシャ・ラボラスを見限り、アスモダイ・ギャンビットを支援している。君が、鍵を任されたのは、時世に取り残されたが故だ」
     みをきは、そう真実を指摘する。
     ソロモンズ・キーが託されたのは、白百合とリュシアン・ジレの2悪魔。
     どちらも、ソロモンの悪魔の中枢から大きく外れた悪魔達であり、グラシャ・ラボラスの人望が見て取れる。
    「世迷宵事よな。だとしても、力を尽くさぬ理由にはならぬ」
     紅を差した唇の端が、悪鬼のように吊り上がり、みをきをにらみつける。
     自分が得た誇りを傷つけるものを、許せる筈が無い。
     白百合は、振り乱した白銀の髪より白き光輪を産み出し、みをきを打擲しようと撃ち出だされる。
    「させないよ!」
     その攻撃を紙一重で交わしたみをきは、そのままの勢いで、白百合の懐に入り込んだ。
     そこに、衣装の裾より取り出した懐剣を合わせる白百合。
     だが、その懐剣の一撃よりも、みをきのクロスグレイブが早かった。
    「白百合、君は俺達武蔵坂と長い因縁があっただろう。でも、もう終わりだ。最後に鍵を任されたという自負を抱いて死になさい」
     みをきのクロスグレイブが、白百合の体を痛烈に強打する。
     くの時に折れ曲がった白百合の体を、みをきは更に突き上げ宙に浮かすと、全身の力を込めて、その体を叩き潰し肉塊に変え灼滅を完了する。
     白百合が灼滅されると同時に、戦場の中心で、パリンと何かが割れる音が響いた。
     その音こそ、グラシャ・ラボラスへの道が開いた証であったのだろうか……。

     戦いが終わり、悪魔の軍勢と灼滅者が去った戦場に、銀色の髪が一房だけ風に舞っていた。

    ●フュルフュール
     ソロモンの悪魔フュルフュール。ブレイズゲートの分割存在に堕していた身から、大悪魔としての力を取り戻した彼女は、グラシャ・ラボラスへの道を塞ぐ門番として、灼滅者達の前に立ちはだかっていた。
     自らの分割存在を率い、自らもまた槍を振るい、氷雪を招く魔術を立て続けに放ち、灼滅者達を一度は退けたフュルフュールは、確かにひとかどの武芸者ではあったのだろう。だが、状況は彼女の心に焦りを生ませる。

    「アスモダイ殿の魔術が破綻した。これでは、たとえ勝ったところで……!!」
     アスモダイの『アスモダイ・ギャンビット』は既に成り立たず、大悪魔達の計画は既に崩れた。この上、グラシャ・ラボラスが灼滅されることにでもなれば、ソロモンの悪魔は滅亡だ。
    「このような事態になっておるのも、全てはソウルボードがグラシャ・ラボラスを選んだが故……」
     魔術師ソロモンでなく、ソウルボードがグラシャ・ラボラスを選んでしまったことを今更ながらに呪うが、そのようなことは戦場では余計な考えに過ぎない。

     魔術空間の地面を急加速しながら突っ込んで来た睦月・恵理(d00531)の槍が、フュルフュールの頬をかすめる。
    「戦いの場において、集中を欠くなど失礼な人ね」
    「確かにこのような振る舞い、大悪魔には相応しくは無いな」
     自分を戒めるように言うと、フュルフュールは槍を構えなおす。
    「さあ、来るがいい。このフュルフュール、易々と倒されはせぬぞ!!」
     無数の突きが交錯し、氷の嵐が戦場を覆い尽くした。
     やがて、その嵐が止んだ時、立っていたのは灼滅者達の側だ。
     恵理の槍が、フュルフュールの胸を貫き、冷たい血を滴らせる。
    「ここまでか。じゃが、グラシャ・ラボラスは強いぞ」
    「それでも、勝つわ」
     槍を引き抜くと共に、フュルフュールの姿は消滅する。
     サイキックハーツ大悪魔グラシャ・ラボラスへの道は開かれたのだ。

    ・(10)アスモダイ、(6)フュルフュールの制圧により、不死王アンリの戦力が大幅に低下しています。
    ・大悪魔アスモダイは逃走しました。

    →有力敵一覧

    →(2)ウヴァル(1勝0敗/戦力2230→1960)

    →(3)アンドレアルフス(1勝0敗/戦力2230→1960)

    →(4)ザガン(1勝0敗/戦力2230→1960)

    →(6)フュルフュール(7勝0敗/戦力1690→0/制圧完了!)

    →(7)ヴァレフォール(1勝1敗/戦力1960→1690)

    →(8)オセ(10勝1敗/戦力4000→1300)

    →(10)アスモダイ(3勝1敗/戦力530→0/制圧完了!)

    →(11)白百合(10勝0敗/戦力2000→0/制圧完了!)

    →(12)リュシアン・ジレ(3勝0敗/戦力110→0/制圧完了!)

    →(16)不死王アンリ(1勝1敗/戦力12061→5777)

    →重傷復活者一覧

    →死亡者一覧

    ■有力敵一覧

    有力敵 戦功点 現状

    大悪魔フュルフュール
    2160
    (6)フュルフュール:Battle6にて、睦月・恵理(北の魔女・d00531)に倒される。

    大悪魔アスモダイ
    2860
    (10)アスモダイ:Battle4で戦い、同地域の制圧と共に姿を消す。

    白百合
    1920
    (11)白百合:Battle3にて、勿忘・みをき(誓言の杭・d00125)に倒される。

    リュシアン・ジレ
    1680
    (12)リュシアン・ジレ:Battle2にて、夜桜・紅桜(純粋な殲滅者・d19716)に倒される。

    戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。

    戦闘結果を取得しています。しばらくお待ちください。

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