■第6ターン結果
●不死王アンリ
超魔術空間『ソロモンの鍵』を舞台とした、2体のサイキックハーツとの戦争は終わりを迎えようとしている。
そのうちの1体、ソロモンの悪魔を率いる『グラシャ・ラボラス』は手勢の大半を失って逃走し、『不死王アンリ』もまた、残る戦力はごく僅かだ。
『だからといって、勝利を諦める気は僕にはない』
『ソロモンの鍵』の最深部に造られた迷宮の、さらに最奥。
「絶対空間」の完成を目指す不死王アンリの元へ、ついに灼滅者達は辿り着いていた。
ここに至るために、灼滅者達はアンデッドやノーライフキング、その他の眷属を数多倒して来ている。
迷宮の中は、彼らが、そして灼滅者達が流した血に染まっていた。
その色に染まらぬ水晶の色を保ち、不死王アンリは灼滅者達を迎え撃つ。
彼の肉体はほぼ全てが水晶と化し、その背からは何枚もの翼が生える。
さながら水晶の天使を思わせる姿。より正しく性質を表するならば死の天使か。
アンデッドの創造を得手とするノーライフキングのサイキックハーツ。
その力は、例え彼一人だけになったとしても、世界を滅ぼすことを可能とする。
「白薔薇の君、そして倭華裏狂姫。2人の力を僕に貸してくれ」
『ええ、やりなさい。不死なる世界を築かんとする者』
『汝の理想を叶えるが良い』
「妙にあっさり倒せたかと思えば」
「魂の力を分け与えたまま、か……」
2B桃、3C桜の灼滅者達が、総攻撃で倒した2体の魂が、いまだアンリに宿っていることを感じ取る。
「誰も死ぬことのない世界を作る。そのために、僕はここにいる。
数百年の時の後に、誰もかなえたことのない世界を実現しよう」
その宣言と共に、戦いは始まった。
アンリの戦い方は、その翼を武器とする点で、グラシャ・ラボラスと似通っていた。
赤の水晶が灼滅者達の四肢を断ち切らんと飛び交い、その間を舞う水晶の白い薔薇が、灼滅者達の動きを束縛していく。
だがアンリは、グラシャ・ラボラスに比べれば戦闘力の面では劣るようだった。
ノーライフキングの少なさ、そして理想を同じくする者の少なさ故か。
優勢に戦いを進めながらも、灼滅者達は決め手を繰り出せずにいた。
不死王アンリは、灼滅者廣羽・杏理(ヴィアドロローサ・d16834)の闇堕ちした姿だ。
だが、アンリは灼滅者達の言葉に、一切反応を示そうとしない。
灼滅者達の多くが、彼を救出せんと言葉を尽くしながら、絶望感を覚え始めていた。
やはりサイキックハーツになった者には、言葉すらも届かないのか。
「ん~……なにかオカシイヨ。あのお腹が悪いか? 引っこ抜く? タタク?」
「ステイステイ」
アンリの腹部を殴りにいこうとしたファム・フィーノ(太陽の爪・d26999)を、撫桐組事務所の者達が押しとどめる。
「どっちかっつーと、あの翼も怪しい気がしやすね。さっき変な声がしてやしたし」
撫桐・娑婆蔵(鷹の目・d10859)は顎に手をやった。
同じ戦場内で、他の灼滅者達もいかにして言葉を届かせるか思案していた。
「おそらく一切反応がないのは、彼がサイキックハーツであることに原因がある」
「サイキックハーツだから絶対に無理と?」
「いや、先程の声のように、ノーライフキング達の魂が、灼滅者である杏理へ言葉を届かせるのを阻んでいるのだろう」
手加減しながら言う千布里・采(夜藍空・d00110)に、セレス・ホークウィンド(白楽天・d25000)が推測を述べる。
「闇堕ち救出のときに邪魔してくる同じ体のダークネスが、大量にいると思えばいいのか」
サイキックハーツとして、アンリは無数のノーライフキングの魂を内包している。
それが、説得を本来よりも遥かに困難なものとしているのだ。
つまり。
「他の魂が邪魔出来なくなるまで、叩けばいいか。なら得意分野だ!」
既にアンリが己の魂から分離させたノーライフキング達は粗方全滅させつつあった。
他の戦場にいる者達が勝利を収めるのを待ち、灼滅者達は杏理へと言葉を届けるべく攻撃を重ねていく。
『灼滅者達に奪わせるな!』
『蒼の王に続く、ノーライフキングのサイキックハーツを!』
『再び我らが、世界を支配するために……!』
ノーライフキング達が追い詰められるにつれ、超魔術空間の中には幾重にも重なり合う思念が響き始めていた。
それはアンリを奪わせまいとする、ノーライフキング達の魂の叫びだ。
思念はもはや物理的な圧力すら伴って、杏理への声を阻もうとしている。
葛葉・有栖(紅き焔を秘めし者・d00843)が、それに負けじと叫びをあげる。
「不死王アンリ……ううん、杏理さん! どうしてサイキックハーツになったのかは分からないけど、本当にこれは杏理さんがしたかったこと!?」
有栖へと、深紅の羽が突撃した。
翼に身を裂かれながら、有栖は一翼を蹴り付け、踏み割る。
水晶の翼が割れ砕け、内側から現れた狂姫の魂が消え去る。さらに灼滅者達の攻撃が、白薔薇状の水晶の内から、白薔薇の君の魂を葬り去っていた。
割れた翼の破片を足場に、彼女はアンリへと疾走する。
「君が描いた未来はこの先にあるの? 引きこもったって、何も変わらないよ!!」
言葉と共に、放たれた蹴りが不死王の全身に炎を走らせる。
その炎が収まった時、不死王アンリが浮かんでいた場所には、気を失った杏理の体が浮かんでいた。
「やった……!!」
サイキックハーツと化した者の救出。
朱雀門・瑠架には届かなかったが、今度は届かせることが出来たと、灼滅者達の顔に安堵が浮かぶ。
だが、時を同じくして『ソロモンの鍵』全体が収縮を始めていた。
「また自爆か!?」
「ご当地怪人じゃあるまいし……」
「とにかく、撤退するぞ!!」
既に敵はいなくなり、もはやこの場所に用はなかった。
灼滅者達はラリベラ岩窟教会群へと脱出を果たす。
だが、勝利を収めた灼滅者達の元に、日本に残るエクスブレイン達から急報がもたらされる。それは、新たな、そして最大の戦いの訪れを知らせるものであった。
→有力敵一覧
→(16)不死王アンリ(26勝4敗/戦力418→0/制圧完了!)
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■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。