■第2ターン結果
●(3)新宿駅
六六六人衆「堕ちし者」石英・ユウマは、サンタ服を着た巨躯の六六六人衆と言葉を交わしていた。
「まさか、あなた程の方までもが白の王に雇われているとは思いませんでした。共に殺戮の場に立てる事を嬉しく思いますよ」
恭しさを装った仕草で一礼するユウマに、サンタ服の巨漢はぎらつく目を向ける。
「おぬし、イケメンじゃな……? 今までさぞや爛れたクリスマスを送ってきたのじゃろうなぁ……どうじゃ、爆発、するか!?」
「いえいえ。私などリア充とは全く呼べませんよ。何しろ、己を友と呼び手を差し伸べる者達を切り捨て、裏切り、五九〇位を頂いたのですからね」
石英・ユウマの姿をした殺人鬼は、冷笑を浮かべながら言う。
彼のダークネスとしての力は、魂を同じくする灼滅者を完全に制したことでさらに強化されていた。
「ですが、これから駅に来るであろう武蔵坂の学生達は青春を謳歌している者達。まさにリア充揃いといって過言では無いでしょう」
「ほう、それは楽しみじゃ。そのようなリア充どもならば、腕によりをかけて出迎えねばな。リア充爆発しろっ!」
気合いを入れるサンタ服の男が背負う袋の中から、より小さな「サンタ服の男」が現れると、爆弾を手に駅へと走り出していく。やがて遠くから男女の悲鳴と、爆発音が聞こえて来た。
それでもまだ根深い嫉妬心を顔に刻み付けたような形相で、のしのしと去っていくサンタ服の男から離れたユウマは長い息を吐いた。
「……あれが噂に聞いた分身能力ですか。嫉妬心の権化のような方ですね。まさに『12月のアンタッチャブル』。より上位の六六六人衆からも手を出されない理由ですか」
六六六人衆二八八位、『クリスマス爆破男』の背を見送ると振り返った。
「まあ、リア充を爆破できるかどうか、見物ですね。……そして、こちらもお客さんですか」
●(3) 新宿駅 Battle:17
スキュラの結界で封鎖された新宿から逃げ出そうと、最も身近な交通手段である電車を頼ろうとした人々こそが、六六六人衆の最大のターゲットだった。
日曜日ということもあり、朝のラッシュが無いとはいえ、日本有数のターミナル駅を利用する客の数は尋常ではない。
先だって新宿駅に奇襲を行った9I薔薇連合に保護された一般人は幸いだったと言えるだろう。
「まだアンデッド化はされてないけど……!」
その被害は決して僅かとは言い切れない。
奇襲を行ってからの時間で被害に遭った人達がどれだけいるか。
歯噛みする羽柴・陽桜(ひだまりのうた・d01490)の耳に、爆発音と共に男の胴間声が届く。
「リア充、爆発しろ!!」
新宿駅を、爆発音と悲鳴が彩る。
爆発しているのは、手にダイナマイトを掲げたサンタ服を着た男達だ。
「報告にあった六六六人衆!!」
散開した灼滅者達の防具の表面を爆風が叩く。
「フォッフォッフォッ。メリィー・クリスマス!! ワシの名は『クリスマス爆破男』!」
クリスマス爆破男の能力。
それは、『増殖する』ということ。彼は12月24日が近付くにつれ、コピー体を増殖させるという能力を有しているのだ!
「12月24日を間近に控えた今が、我が力が最大となる時じゃ!」
「だからって、負けないもん!!」
クリスマス爆破男の群れと、新宿駅で殺戮を繰り広げんとしていた襲い掛かる六六六人衆達が、灼滅者達に襲い掛かって来る。
「クリスマスをみんなと一緒に楽しむんだから……!!」
「女子供といえどもリア充ならば容赦せんぞぉ!! リア充爆発しろ!」
爆風が陽桜の背中を叩く。背中が燃えるのを感じながら、陽桜は足元の床を踏みしめた。
一直線の踏込から繰り出されるフォースブレイクが、クリスマス爆破男の腹にぶち当たった。衝撃が迸り、肥満体がどうと音を立てて床に倒れ込む。
「クリスマス爆破男は死なず、人に嫉妬心がある限り、第二第三のクリスマス爆破男が現れるだろう! リア充……爆発しろっ!!」
「みんな、離れてーー!!」
陽桜の声に反応して灼滅者達が離れた次の瞬間、クリスマス爆破男の姿は跡形もなく消し飛んでいた。
●(3) 新宿駅 Battle:2
「よお、センパイ。愛用のポン刀はどうしたんだ?失くしちまったのか?」
探していた石英・ユウマを発見した一・葉(デッドロック・d02409)は、ユウマに向けて肩をすくめて見せた。
「良かったら俺の刀貸してやろっか。無銘だが良く切れる。これとって戦えよ、アンタ灼滅者だろ?」
「ふふふ、何を今さら……く……」
と、ユウマが突然顔色を変えた。
頭を押さえ、苦しむような仕草をするユウマは、葉に向けて手を伸ばす。
「刀……俺の……そうだ、俺は……」
掌から突如として伸びた黒刀を、葉は余裕をもって飛び退り、回避する。
「いや失敗失敗。演技など通用するものではありませんね」
「……演技がクサ過ぎるぜ」
もはや彼を取り戻すことは出来ない。
その事実を改めて感じながら、葉は刀を構える。
周囲では隠れていた六六六人衆が現れ、灼滅者達と戦闘を繰り広げ始めていた。
五百番台に至ったユウマの力は以前にも増して強く、黒い刃から放たれるサイキックは灼滅者達を容赦なく切り裂いてくる。
だが、説得しようとする向きこそあれ、もはや灼滅者達の側もユウマを灼滅する覚悟を決めている。
「うおおお!!」
ユウマの突き出した黒い刃に胴を貫かれながら、葉は強引に刀を振り切った。
石英・ユウマの胴が大きく切り裂かれ、赤い血が溢れ出す。
「死は……唯一の救済……。では……私の死は……誰にとっての救済なのでしょう?」
誰にともなく言いながら、ユウマはなおも笑う。
「石英ユウマか、私か、それともあなた達か……? 灼滅者はダークネスを倒すことで魂の癒しを得ると言いますしね。フフフ……」
六六六人衆五九〇位石英・ユウマは、そう言葉を残して黒い塵のようになって消滅していく。新宿駅を完全に制圧したとの連絡が届くまで、かつての仲間を灼滅した灼滅者達はじっとその場に立ち尽くしていた。
●(5)戸山ハイツ
新宿副都心からほど近い新宿区戸山の一角に、高度経済成長時代から取り残されたような、巨大な集合住宅「戸山ハイツ」が広がっている。
公的な記録上、居住する人々の半数近くが高齢者とされているが、実際に住んでいたのが不老のダークネスならばそれも当然だろうと灼滅者達は推察していた。
新宿がスキュラの結界に包まれた今、戸山ハイツは吸血鬼勢力が新宿に出入りできる唯一の場所だ。
この場所を朱雀門高校の制服を着たヴァンパイアやデモノイド達が、灼滅者達を目掛けて次々と走って来る。
その指揮を執るのは、朱雀門高校のロード・レンジョウ。
小規模な勢力とはいえ、蒼の王勢力への調略を成功させた彼は、この場所の主と共に、今回送り込まれた朱雀門高校の戦力中、最精鋭のデモノイド達の指揮を任されていた。
「この精鋭達ならば、武蔵坂学園相手といえど、そうやすやすとは破れまいが」
だが少数の彼らにとって、先程の奇襲は痛い。
そしてロード・レンジョウの元に、武蔵坂学園の再びの襲来の報が届いていた。
●(5) 戸山ハイツ Battle:1
「ロード・レンジョウ! あなたが蒼の王勢力を引き入れたのでございますか!?」
蓮条・優希(今は昏き水底の蛸・d17218)を取り戻すべく灼滅者達が説得の言葉を投げ掛ける中、靴司田・蕪郎(靴下は死んでも手放しません・d14752)はロード・レンジョウにそう問いかけていた。
「礼を言わねばならないだろうな。もし、武蔵坂学園が蒼の王勢力の信頼を損ねていなければ、交渉はもう少し難航したかも知れない」
魂の内側で解放を待つ優希を抑え込んでいるのか、顔をしかめたロード・レンジョウは靴司田・蕪郎(靴下は死んでも手放しません・d14752)の言葉に答える。
「紫堂・恭也は快諾してくれたぞ」
言いながら、デモノイドロードとしての力を振るうロード・レンジョウ。
「彼らはここにいるのデェス!?」
「言うと思うかね? ……しかし、紫堂の育ての親と親しい仲間を殺して、今度は彼から何を奪う気だ? そっとしておいてやった方が彼のためだろう」
言われ、灼滅者達は思わず言葉に詰まる。
もっとも、それを受け入れたところで紫堂達を待つのは朱雀門高校の戦力としての運命だ。
そんな問答の間にも、灼滅者達は朱雀門勢力を押していく。
「ここは一時退くか……!」
「お待ちなさい!」
制止の声を振り切って、手傷を負ったロード・レンジョウは撤退していく。
灼滅者達は戸山ハイツの戦力の大部分を排除している。制圧は間近だろうと思われた。
●(5)戸山ハイツ Battle:7
我が城に足を踏み入れるのはどこの誰だァァァ!?」
叫び声と共に血臭が立ち込める。
狂乱の声と共に鬼神楽・神羅(鬼祀りて鬼討つ・d14965)達の前に現れたのは、全身の皮膚を剥がれたような姿のヴァンパイアだった。
『戸山ハイツの主』と呼ばれるヴァンパイアは、灼滅者達へと爪を振り上げ襲い掛かって来る。
「奴が戸山ハイツの主……なんと面妖な! だが仲間が蓮条殿を救う為にも、目前の敵を倒すのみ!」
意識を一瞬で切り替える。
戦闘となれば、他のことを考える余裕はない。血風を巻き上げるヴァンパイアと、それに付き従うデモノイド達に、灼滅者達は立ち向かう。
「破っ!!」
やがて呼気と共に神羅の拳がヴァンパイアの胸板に叩き込まれた。
大きく飛び退ったヴァンパイアは、憎悪を籠めて灼滅者達を睨みつける。
「オォォォノレェェェ!! だが、これで勝ったと思うなよォォォォ!」
そう不気味な声を残し、ヴァンパイアは大きく跳躍すると戸山ハイツのどこかに消えて行くのだった。
→有力敵一覧
→(3)新宿駅(69勝0敗/戦力2486→0/制圧完了!)
→(5)戸山ハイツ(15勝7敗/戦力945→195)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。