■第5ターン結果
新宿殲術病院の周囲に展開した白の王セイメイの軍勢。その強固な護りを、灼滅者達は出血を強いられながらも確実に削ぎ落していた。
地面に尾の先端を差し込んだまま、滑るように近付いて来る『古の畏れ』。
青面竜王『ゴウテン』は、矛を振り回して叫び声を上げる。
『お前たちは自然の嘆きが聞こえぬのか? このような自然の息吹を感じない、歪つな都市を生み出したものは、明らかに狂っているのでは無いか?』
矛を回避した灼滅者達へと、口からの炎が龍の吐息の如く襲い掛かる。
下総・水無(少女魔境・d11060)は、守護の力を宿した聖剣でその炎を断ち切り、距離を詰める。巨体の相手にとって、至近距離は死角となる。
平均身長よりも低い背丈を十分に利用しながら、水無は青龍の尾の根元へと剣を叩き込む。こちらを見ることもなく、接近を寄せ付けまいと振るわれる尾を、水無は跳躍一番回避する。
待っていましたとばかりに迎撃に繰り出されて来る三叉矛の先端にマテリアルロッドを噛ませるようにひっかけると、そのまま身を振り回し、距離を取るように跳躍する。
『狂いは正されねばならない。自然の守護者である竜の畏れを戴く我が畏れにより、手始めに、この地を、緑なす平原に変えてみせようぞ!』
それを追うべく視線を水無に向けた『ゴウテン』へと迫るのは、兄、下総・文月(夜蜘蛛・d06566)だ。
「御託はもう聞き飽きたぜ!」
ゴウテンの長い尾を地面に縫いとめるように、文月の手にした聖剣が振り下ろされる。
「決めろ、水無!」
「はい、続きます!」
着地するやいなや、バネのように身をかがめた水無の体が再び跳ねる。
受け止めようとした矛をすり抜け、非実体化した聖剣は『古の畏れ』の体内へと潜り込んだ。
「せーのっ!」
合図と共に、殺し屋の血を引く兄妹は非実体化した刃を振るい、敵の体内を滅茶苦茶にかき回した。
故障したテレビの画面のように、『古の畏れ』の体にノイズが走る。
『我を倒し、畏れを力づくで抑えつけるか、それもいい。だが、抑えつけ、忘れ去ろうとも、古の畏れは消えぬ。ゆめゆめ、忘れるな……』
そう言い残して消えるゴウテン。
「地獄……には行っていそうにないですね」
「放っとけ、どうせ戯言だ」
肩をすくめる兄に続き、水無は残る敵の掃討にかかる。
やがて水無が最後に残った『古の畏れ』を撃破すると共に、新宿殲術病院での戦いは終わりを迎えた。
●(12) 新宿殲術病院 Battle6
殲術病院の周囲で戦っていた灼滅者が、病院内に攻め入る音を聞きながら、
最後まで白の王の軍勢と戦っていた水無瀬・旭(瞳に宿した決意・d12324)は、セイメイに向けて強い視線を向けて見せる。
「俺達の勝ちのようだな……!」
「そのようでございます。流石は武蔵坂学園」
詠うように話すセイメイは、傷ついた仲間達を撤退させた旭を、手にしたチェーンソー剣で切り裂く。
崩れ落ちる旭に、
「しかし、スサノオを御覧なさいませ。あれはまさしく大地の怒り。自然を蔑ろにする愚かな人間に鉄槌をもたらすべく遣わされた……」
「世迷い事を!」
「さても早ようにバレましたか。愉快愉快。その通り、あれも私も、自然などどうでもよろしい。そして、あれはまだ、ただのダークネスにてございます」
背中の翼を広げると、セイメイは夕暮れの空に浮かぶ上がった。
「みっともなく逃げの一手と参りましょう。それでは、いずれまた……」
翼を広げ、セイメイは空へと消えていく。あと一息で、仕留められたかもしれないのに……!
彼の配下のノーライフキング達もまた、いずこかに撤退していった。
●(12) 新宿殲術病院 Battle:20
「……競り勝った、か……」
倒れた一之瀬・祇鶴(リードオアダイ・d02609)は、白面妖狐『キッショウ』の存在が揺らぐのを目の当たりにしていた。自分達のいた戦場では敵に敗北を喫したが、どうやら他の戦場は敵を押し切ったようだ。
『おお、哀しや……我はセイメイ様の母にはなれなんだか』
「どういうこと……と聞いたところで無駄かしらね」
キッショウの存在は、既に薄れ始めていた。
一度敗北したキッショウはセイメイの存在によって維持されていたのだろう。
『白面は我ならず。されば、真の白面たるは何者か……』
消えていく『古の畏れ』の姿に、祇鶴は大きく息をつく。
●(11)国立競技場
「あら、セイメイ負けちゃったの?」
新宿御苑、新宿殲術病院の双方から灼滅者達が進出しつつあるという報に触れ、大淫魔スキュラは唖然とした表情でその連絡を持って来た緋影丸に応じた。
「セイメイの行方は分かりませぬ。おそらくは姿を隠しているのかと存じますが」
「セイメイがいなくなったのなら……アレ、私がもらっちゃってもいいわよね?」
言って、スキュラは都庁の上に座すスサノオを指差す。
ラグナロク海空・夏美を新たな『犬士』とする陰謀に失敗してなお、彼女の野心は旺盛だ。そしてその野心こそが、武蔵坂学園と相容れない原因である。
「ううむ……」
「セイメイと戦った以上、武蔵坂学園だって無傷ではないでしょう? あとは粘れば良いだけじゃない。みんな、頑張りなさいよー!」
競技場のあちこちから、スキュラの色香にやられた者達が歓声を返す。
だが、その油断が淫魔ラブリンスターにも揶揄された、犬士2人を失う大敗の原因だったのではないかという思考が、一瞬緋影丸の脳裏をかすめた。
そう思いながらも、そうした傲慢さもまたスキュラの力を為す精神性の一部であると知る以上、『忠』の犬士たる緋影丸は己の忠誠を示すのみだ。
大量の戦力を派遣した同僚、安土城怪人や、セイメイとの同盟の橋渡しをしたグレイズモンキーなど、この作戦には犬士達も少なからぬ労力を割いている。
(「いざという時には、この身も命を捨てねばなるまい……」)
→有力敵一覧
→(4)歌舞伎町(5勝0敗/戦力1100→850)
→(7)神楽坂(14勝1敗/戦力1200→500)
→(10)新宿御苑(17勝1敗/戦力950→100)
→(12)新宿殲術病院(19勝24敗/戦力750→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。