■第6ターン結果
●(7) 神楽坂 Battle:3
「俺の名を言ってみろォ!!」
「宇都宮……」
「違う!」
餃子状の頭を持つご当地怪人は、ヴィントミューレ・シュトウルム(ジーザスシュラウド・d09689)の言葉をぴしゃりと遮った。
「宇都宮餃子怪人ではない! 全く違う、我こそは餃子日本一、浜松餃子怪人である」
餃子を返すためのヘラを高々と掲げ、浜松餃子怪人は宣言する。
「宇都宮餃子怪人が、ご当地怪人ロシアンタイガー様に媚を売り、自らの陣営を強化している事は明白! であるからして、この俺、浜松餃子怪人が、ロシアンタイガー様との友誼を結ぶべく、はるばるやってきたのだ!」
「……まあ……頑張ってね」
ヴィントミューレはマテリアルロッドを向けた。
浜松餃子怪人『浜松が勝つ!』の顔面で、衝撃が迸った。
「う、うおぉぉぉ!? 中身が! 中身が出てしまう! くそっ、貴様なんてことをするんだ! 覚えていろ!」
餃子の皮を抑えながら逃げていく『浜松が勝つ!』を、灼滅者達は呆れたように見送るのだった。
●(7) 神楽坂 Battle:1
神楽坂地区、東京理科大学を占領したロード・アーヴェントを、灼滅者達は着実に追い詰めつつあった。じわじわと戦力を削られたロード・アーヴェント側を、ついに指揮官であるロード・アーヴェント自ら前線に立たざるを得なくなるまでに追い込んでいる。
「クリム……待たせてしまってごめんなさい、迎えに来たわ」
「邪魔です!!」
聞く耳を持たないといわんばかりの様子で、ロード・アーヴェントは槍状に変化した腕から青白い光弾を乱射する。
「貴女には迷惑かもしれないけれど、私は妹のように思っているのかもしれない。だから……迷子の妹を連れて帰るのは姉の役目。絶対に一緒に帰るんだから、覚悟なさい……!」
リリー・アラーニェ(スパイダーリリー・d16973)の手に現れるのは炎の剣だ。
勢いよく振り抜かれた炎の刃は、アーヴェントの体に大きく傷をつけていた。
傷を手で抑えたアーヴェントの体がぐらりと揺れる。
「ここで敗北してなるものか……一度退きます……!」
もはや最後の抵抗だろう。
●(10)新宿御苑 Battle:1
ペナント。それは、一昔前までの、おみやげの定番として親しまれたモノ。
ペナント。旅好きの輩は、旅行先のソレを買い集め、そして、ソレを部屋中にペタペタと貼って喜んでいたらしい。
今となっては、何が楽しいのか理解できない人もいるだろうが、インターネットも携帯電話も無い時代、自分が歩いてきた道を示すログとしての意味合いもあったのでは無いだろうか。
そんな郷愁と哀愁をあわせもつ、ペナント怪人の一人、摩周湖のペナント怪人5人衆の一人、摩周ブルーは、目の前の戦場の様相にブルーな気分を禁じ得なかった。
彼は、摩周レッド、摩周ブルー、摩周グリーン、摩周イエロー、摩周ピンクの5人組であったが、現在生き残ってるのはブルーだけという設定のペナント怪人であり、何事もブルーな気分で挑む習性があったのだ。
「ちっ、嫌な予感がしてたんだよ。なにが、敵はここまで辿りつけない……だ。大淫魔も焼きがまわったな」
彼の前に現れた灼滅者は大群であり、とてもとても、勝利はおぼつかない。
「摩周湖、聞いたことがあります。折角観光に来ても、湖が霧で見えない事が多いというのを逆手にとり、霧の摩周湖として売りだした……。霧が出れば、霧の摩周湖が見れてよかったですねと言い、霧がなければ、こんな綺麗に湖が見えるのは珍しい、運がいいですねと言う。まさに、商売上手の湖です」
更に、彼の前に現れた灼滅者は、彼が背負う摩周湖のダークサイドを鋭く突いたのだった。
それは、言わない約束では無いだろうかと思いつつ、戦いが始まる。
そして、
「とりあえず、摩周湖ペナント怪人くん、私に倒されてくださいますですか?」
下総・水無(少女魔境・d11060)が放った言葉に、摩周ブルーが待ったをかけた。
「ちょい待ち。戦う前には名乗らせろや。俺は、全国ペナント怪人の一人、霧の勇者、摩周湖戦隊摩周ブルー!」
摩周ブルーは、一人で戦隊ポーズを決めるも、たったひとりではバランスが悪く滑稽であった。
「なにか、痛々しいのです。ペナントであるだけで痛々しいのに、ここまで痛々しいのは……。私が灼滅してあげるのが、親切というものでしょう」
そこから、灼滅者達の猛攻が始まった。
その攻撃に翻弄される摩周ブルー。
だが、しぶとく生き延びようとする摩周ブルーは、遂に、言ってはならない事を言ってしまった。
「俺は今はたった一人だ。だが、皆のペナントは俺のペナントの中で熱く輝いている、だから俺は一人じゃない! そして、一人じゃ無いなら、俺は死ぬまで戦えるっ!」
そう、後ろ向きのブルーが妙に前向きなセリフを言う時、それは、死亡フラグとなってしまうのだ。
事実、このセリフの直後、破壊力がアップしまくった水無の神霊剣が、摩周ブルーのペナントをズタズタに破り、息の根を止めてみせたのだ。
「これで、最後です」
こうして、摩周ブルーは、新宿御苑に散った。
(「レッド、グリーン、イエロー、ピンク、今、お前たちのところに行くぜ……。約束より早かったが、邪険にしねーでくれよ。これでも、せいいっぱいやったんだからな……。そうだろ?」)
なお、摩周ブルー以外に摩周湖のペナント怪人が存在してチームを組んでいたという事実は、確認されていない。
●(10)新宿御苑 Battle:6
古都京都、といえば、修学旅行の定番の行き先。
修学旅行、といえば、おみやげ。
そして、男子学生のおみやげといえば、『木刀』と『ペナント』であったのだ。
そう、あったのだ。
確かに、そういう時代はあったのだ。
京都ペナント怪人『千年王城』は、目の前の灼滅者達に、そう力説してみせた。
それこそが、彼の、アイデンティティを充足させる唯一の方法であるかのように。
だが、
「ペナントも木刀も、持ち帰ってからの扱いに困りますよね」
「というか、ペナントと木刀って、ぷぷ」
「ペナントはともかく、木刀って記念になるのかな」
「少なくとも、自分の子供に、修学旅行のおみやげだと説明できませんね」
「ほんに、いたいたしい」
聴衆たる学生たちの反応は散々であった。
「ええぃ。やはり、このような田舎町で、我が崇高な歴史を理解できるものはいないのか。安土城様のご下命ではあるが、このような蛮地で戦わねばならぬとは、なんという不運」
もはや、何を言っているかわからない。
「田舎町? ここは、新宿、都会も都会大都会だぜ?」
永由・師(果ての無い奇跡・d00050)は、普通に疑問をかえす。
「ならばお主に問おう、日本の首都は何処か……と」
「なんだ、クイズか? それは、東京に決まって……」
疑問に疑問を返された師が正しい答えを返すが、千年王城は怒り心頭で、その回答を遮った。
「東京が首都だと? お前はバカか、日本の首都は京都、千年王城京都に決まっているだろう」
と。
「これだから無学な蛮人は度し難いのだ。我がペナントに宿るは、千年の文化の極みなり、お前達などに倒されわせんよ」
そして、戦いが始まった。
だが、戦いは一方的であった。
既に多くの同胞を失っていた京都ペナント怪人『千年王城』に、勝ち目といえるものは、すでになかったのだ。
数々のサイキックが、新宿御苑の闇を照らし、千年王城に襲いかかる。
それでも、千年王城は耐えに耐え切った。
「お前らのサイキックは軽いな。確かに強いかもしれんが軽い、それは、背負う者を持たぬ雑兵の武にすぎない」
そして、千年王城は、ペナントパワーを頭部に輝く金閣寺に貯めると、高まったパワーで攻撃を繰り出そうとする。
「この俺のサイキックは重いぞ。ペナントレース優勝の重みが、この体に宿っているのだからな」
だが、その重い攻撃とやらが炸裂することは無かった。
「悪いな、恨むなよっ!」
師が、その重みとやらを軽く無視して、止めのフォースブレイクを繰り出したのだ。
これ以上、こんな敵に関わってはいられない。
そんな決意に満ちた攻撃であったのだろう。
「次に生まれ変わるときは、せめて、良いおみやげになれよ」
「全国ペナントレースに栄光あれっ!」
師の別れの言葉に、千年王城の末期の声が重なり、それが新宿御苑の戦いの終了を告げる合図ともなった。
灼滅者達の戦いは続く……。
●(11) 国立競技場 Battle:6
「慈悲はいらない。……大淫魔スキュラ、ここで潰す!」
勢いよく戦場に飛び込んだ識守・理央(マギカヒロイズム・d04029)の両手から、オーラの輝きが撃ち出された。
次々と襲い掛かって来るダークネス達を退け、国立競技場に攻め入った理央たち灼滅者達。彼らの前に立ちはだかったのは、イケメン淫魔の率いる敵集団だ。
夜を迎えつつある新宿の街灯の下、輝かんばかりのイケメンフェイスが闇を照らす。というか実際に光っていた。何かのESPかも知れない。
「はーい、ボクはアスタリスクですベイベー。スキュラ様の忠実なる下僕ですベイベー」
「……いや、完全にスキュラに洗脳されてるよね、お前……」
あからさまに目がグルグルしているアスタリスクの顔に理央は思わずツッコミを入れる。
「ハハハ、心配してくれてありがとうベイベー。でも、ボク的に幸せだから別にいいかなって思ってるんだベイベー。今は、スキュラ様のスタイリストをやらせて頂いているのさベイベー」
意気を削がれた理央だが、気を取り直すと指を突きつける。
「飼い慣らされた手駒程度で、僕達を止められるなんて思っちゃ大間違いだっ!」
真っ向勝負を挑んでいく。その勢いをいなすように踊るようなステップで女性灼滅者達に接近したアスタリスクは、彼女達に次々と声を掛けていく。
「今は、スキュラ様に着て頂ける冬服のデザインを考えているところなのさベイベー」
キラリン。
「いくら大淫魔であっても、冬にあの格好では美意識を疑われちゃうよベイベー」
キラリン。
「もしよければ、ボクのモデルにならないかいベイベー? スキュラ様の冬服のデザインが終わったら、子猫ちゃん達をモデルにして、春服をデザインしてみたいのさベイベー」
キラキラキラリン。
「「うっとおしい……!」」
いちいち擬音チックな効果音つきで台詞を吐くアスタリスクに向けて、理央をはじめとした灼滅者達から一斉にサイキックが集中した。
様々な体液を芸術的にまき散らしながら、アスタリスクは吹き飛び、そして足を下にして着地した。華麗なポーズを決めたまま、アスタリスクが末期の言葉を発する。
「くぅ……これは致命傷ですねベイベー。最後に頼みがあります、もう少し右手の後ろに下がってくれませんか?」
「……こう?」
理央に微かに頷くと、アスタリスクはイケメンに微笑した。
「えぇ、そのくらいですベイベー。……そこは、私の死に顔が最も美しく見える角度ですから……絶対に見逃さないでくださいベイベー。最後まで美しく死ぬのがデザイナーの誇りなのです……ベイ……ベー」
「た、立ったまま死んでる……」
かくして飼いならされた淫魔デザイナーアスタリスクは、好き放題やった挙句に灼滅されたのである。
●(11) 国立競技場 Battle:21
大淫魔スキュラの配下とする8体の強大なダークネス『八犬士』。
結界要塞の戦いで灼滅者達が灼滅したオロバス、お絹、そしてペナント怪人達を統率する安土城怪人、セイメイに協力しているらしきグレイズモンキー。
この4体に加え、巨大な猟犬の如き姿の緋影丸も、八犬士の1体だ。
スキュラの座す祭壇へと向かおうとする九条・都香(凪の騎士・d02695)達の前に立ちはだかった緋影丸は、スキュラに従うダークネス達の先頭に立って暴れ回る。
『グルォゥ!!』
吠え猛る叫びと共に、炎を纏った緋影丸が灼滅者達を吹き飛ばしていく。
緋影丸によって乱された灼滅者達の陣容に、スキュラ配下の淫魔や、彼女の色香に惑わされた他のダークネス達が斬り込み、灼滅者達を突き崩そうとする。
だが、緋影丸という強力な指揮官を持ってしても、ここまでの戦場を乗り越えて来た灼滅者達を止めるのは不可能事だ。
緋影丸の周囲の敵群は5分もしないうちに蹴散らされ、戦場に唯一残る緋影丸を、灼滅者達が包囲する構図となっていた。
「……ここまで強いとは。オロバスやお絹がやられるのも道理。だが、我が『忠』にかけて、貴様らの首はもらっていく!」
牙を剥きだしにした緋影丸の体が炎に包まれ、倉・道文(週末限定ワケあり魔女・d08183)を狙う。
だが、それを灼滅者達にディフェンダーとしての役目を与えられたサーヴァント達が盾となり、幾度となく阻んでいく。
都香のサーヴァント、ハートレスレッドも、その1体だ。
「邪魔立てを!」
忌々しげに唸りを上げる緋影丸。
だが、サーヴァントたちの忠心によって灼滅者達は守り切られた。
そして緋影丸を倒すべく、灼滅者達は最後の攻撃を加えていく。
九条・真人(火炎魔人・d02880)の手にした炎の剣が、緋影丸の熱い皮膚を断ち切った。己のものとは異なる炎に焼かれる緋影丸へと、都香は一気に距離を詰める。
「ありがとう、ハーレイ。良い風が吹いている……今なら、行けるわ!」
突進した都香のWOKシールドが、緋影丸を強烈な勢いで叩き付けられる。
そして、『忠』の犬士は最後に一つ鳴き声を上げると、その存在を消滅させた。
●(11) 国立競技場 Battle:12
千葉県安房地方で、灼滅者達との間にラグナロク海空・夏美を巡る戦いを繰り広げた大淫魔スキュラは、今再び灼滅者達の前に姿を見せていた。
国立競技場に陣を張った彼女の元には、多種のダークネスが集結している。
同盟を組んでいる白の王セイメイ傘下のノーライフキングや、ハルファス軍のソロモンの悪魔といった者達をも仲間に加える手管は、さすがに大淫魔を名乗るだけのことはあっただろう。
「これだけのダークネスを揃えれば、あいつらだって私には敵わないでしょう」
だが、それらの軍勢をも踏み越えて自分達の前に立つ灼滅者達の姿は、スキュラにとってどう見えたのだろうか。
灼滅者達は、国立競技場の中央に設けられた祭壇でスキュラと交戦を開始していた。
「さぁ、勝負! 勝負なのですよ!」
指を突きつける日輪・かなめ(第三代 水鏡流巫式継承者・d02441)に、スキュラの美しい顔が歪む。
「相変わらず、こっちの思い通りにいかない連中ね……! かかりなさい!!」
スキュラの号令一下、一斉に襲いかかって来るダークネス達を、灼滅者達のサイキックが迎え撃つ。幾多のサイキックによる火炎が、閃光が競技場のグラウンドを彩り、周囲がまるで昼間のように照らし出される。
危険な光に照らされながら、スキュラは妖艶な仕草で灼滅者達から精気を吸い取っていく。スキュラの能力は、危険極まりないと言えるだろう。
灼滅者達が過去に遭遇した敵の中では、セイメイに次ぐだろうか。
だが、白の王セイメイがその油断から敗北を喫しているように、スキュラもまた、その傲慢さのツケを払うことになりつつあった。
スキュラにとっての誤算は、殲術再生弾の存在だろう。
殲術再生弾による援護無しでも敗れたスキュラが、今の灼滅者達に勝利しうるか。
答えは否だ。
式守・太郎(ニュートラル・d04726)の無敵斬艦刀の一撃を受け、傷ついたスキュラの指先に紫色の炎が宿る。
「あれは……!」
結界要塞内でスキュラと相対した経験のある灼滅者達の脳裏を、緋影丸を呼び出したスキュラの姿が過ぎった。
「緋影丸、あなたの命を私に捧げなさいな」
配下の命を犠牲にしての強烈なサイキックへの使用は、大淫魔スキュラの十八番だ。だが、緋影丸を召喚しようとした矢先に、スキュラの指先に宿っていた炎の『忠』の文字が消え去る。
それはまさしく、九条・都香(凪の騎士・d02695)達によって緋影丸が灼滅された瞬間であった。
「まさか……!」
顔色を変えたスキュラに、かなめは告げる。
「……逃げられると思ったのでしょう、大淫魔スキュラ?
狡猾なあなたは、おそらく「緋影丸を犠牲にして逃げる技」でも持っていたのでしょう。
しかし、そうはさせません。
あなたは今ここで、私の水鏡流神楽拳法によって、跡形もなく消滅するのです!!!
さようならスキュラ、灼滅者を侮ったあなたは、それが故にここで「終わる」のです!」
決別の言葉と共に、かなめはスキュラの懐へと潜り込んだ。続けざまに繰り出した拳と足を、スキュラが素早く捌く。だが、最後に繰り出されたのは頑強な鬼の腕による一撃だ。
かなめの腕に胸を貫かれ、スキュラの口から血が溢れた。
「あーあ、これだから……あなた達に関わるとロクなことがないわ……」
そう呟いたスキュラの体が、かなめが腕を引き抜くと共に消滅していく。
国立競技場を舞台にした大淫魔スキュラの軍勢との戦いは灼滅者達の勝利に終わり、ハルファス軍、白の王セイメイ、大淫魔スキュラの3勢力による連合は、ここに崩壊した。
→有力敵一覧
→(4)歌舞伎町(3勝1敗/戦力850→700)
→(7)神楽坂(9勝1敗/戦力500→50)
→(10)新宿御苑(5勝1敗/戦力100→0/制圧完了!)
→(11)国立競技場(53勝7敗/戦力1818→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。