■第1ターン結果
■(2)入場口
三方から攻め寄せるダークネスの軍勢に対応するべく、幹部直属のご当地怪人達が移動した結果として、正面の守りは比較的手薄なものとなっている。
特に、この場所を守っている主体はアメリカンコンドル配下のアメリカンご当地怪人達だ。
海外出身の者が多いご当地幹部に、武蔵坂学園の灼滅者達を侮る向きがあったのも仕方のない事かも知れない。
本来ダークネスの敵はダークネスであり、灼滅者とはダークネスに狩られるか、闇堕ちさせられるまでの姿に過ぎないのだ。
そんなダークネス達の油断を突くかのように、灼滅者達は新潟ロシア村の入場口へと攻め入った。
既に廃墟と化したはずのロシア村は、ロシアンタイガーをはじめとする幹部達によって大幅に手を加えられ、要塞化されつつある。
「ヘーイ、見ろよ。身の程知らずのスレイヤー達が来やがったZE?」
「日本人は無謀な特攻が好きなんだろう。俺は詳しいんだ」
「カミカゼってヤツか!!」
爆笑するアメリカンご当地怪人達。
「では、戦いの時間デース。黄色いサルどもに、日本人はアメリカ人に未来永劫勝てないということを教えてやりまショウ!!」
号令の元、軍隊のように統制のとれた動きで迎撃に動き出すアメリカンご当地怪人達。
だが、その余裕が驚愕へ、やがては絶望へと変わるまで、さほどの時間はかからなかった。
●アメリカナイズドマン
「HAHAHA! ミー達巨大化怪人が、全世界アメリカナイズの偉大なる礎となるのデース! ユー達もアメリカ人になるのデース、さあ、レッツ!!」
これもペナント怪人の一種なのだろうか。
星条旗のペナントを頭にしたご当地怪人『アメリカナイズドマン』と、ラピスティリア・ジュエルディライト(夜色少年・d15728)達灼滅者は向かい合っていた。
「さあとレッツで意味が重なっていますね」
「イチイチ細かい文法を気にするなんて、これだから日本の学生は英語ができるようにならないのデース。大切なのはハート! すなわちアメリカンスピリッツなのデース!!」
アメリカナイズドマンが胸を張り、頭部から光線を放射する。
「HAHAHAHAHA!! どうデスか? ワタシのアメリカナイズビームは! このビームを受けた人は、アメリカナイズされるのデース!!」
「Oh,シット! ……!?」
ラピスティリアは思わず口走った言葉に自分で動揺した。余波を受けただけで、この状態だ。ある意味、恐るべき力に違いなかった。
「グローバリゼーションによって世界中をアメリカ化することで、アメリカンコンドル様は最強のご当地パワーを得て来マシタ。これまでも、そしてこれからも、アメリカこそが世界の中心なのデース!」
続けざまに放射される、アメリカナイズビーム。
「ちなみに、どうすれば元に戻るんデー……ですか?」
「HAHAHA! ミーを倒せば戻りマース。それができればデスけどネ?」
倒そう。
灼滅者達の心が一つになった。
それを本気でかいくぐりながら、灼滅者達は巨大化したアメリカナイズドマンへと一斉攻撃を加えていく。
「WAO!? ちょっ、待っ、こいつは聞いてないデース!?」
思わぬ痛手を受けて戸惑うアメリカナイズドマン。
その動揺から立ち直らないうちに、ラピスティリアの除霊結界が巨大化したご当地怪人にとどめをさした。
「よし……これで、元に戻りましたね?」
恐る恐る声を出してみて、珍妙な口調が直ったのを確認し、ラピスティリアは大きく溜息をついた。
●メガチーズベーコンビーフバーガーマン
灼滅者達と交戦しているのは、1体の巨大なご当地怪人を中心とした一団だ。
問題のご当地怪人の頭となっているパンズの間には、ビーフのパテは勿論のこと、チーズにベーコンと、溢れんばかりの動物性たんぱく質がぎっしりと詰め込まれている。
周囲にいる他のハンバーガーマンと似た姿ではあるが、その重量感と肉々しさは絶大だ。
「野菜の一つも入っていないのですか……!?」
戦慄したような表情で牧野・春(万里を震わす者・d22965)が言う。
チッチッチッと指を振って、巨大化怪人は答えた。
「野菜が無いって? ノンノン……よく俺の手を見るんだな!」
言われ、灼滅者は怪人の左手を見る。
そこには、パッケージに収まった巨大なフライドポテトが握られていた。
「見ろ! これが、野菜だ!! つまり……ヘルシーだ! 女性にもおすすめだ!」
「炭水化物ですよね!?」
「何を言うか! 統計的に世界の美人はほぼ間違いなく炭水化物を摂取している! つまり美人となるには炭水化物は必要不可欠……!」
ご当地怪人の反論と共に放ったタックルが、地響きと共に直撃を受けた灼滅者を薙ぎ払う。
ベチャリという音を耳に当てたヘッドフォンの音量をあげてごまかしつつ、春は頭上へと顔を向けた。
「それだと人は死ぬまでに誰でも水を飲んでいるので水は危険とかそういうことになりませんか」
「人は危険と隣り合わせに生きるものだぜ」
何か良い事を言ったと言わんばかりの自慢げな顔つきで、メガチーズベーコンビーフバーガーマンは重々しく頷いた。
肉の脂が滴り、パンズを染める。
春は特に感銘を受けなかったので手にしたガンナイフを巨大な顔に向け、そして撃った。
寒々しさを感じさせる銃声が、入場門に響き渡り、巨大な身体が轟音と共に倒れる。
アメリカでの銃犯罪の発生率は日本などと比べて極めて高いという。
アメリカご当地怪人が銃によって倒れるのも、また当然のことなのかも知れなかった。
●テーマパークコンサルタント仮面
「珍しい種類のがいますね」
ご当地怪人との戦いに心躍らせる森村・侑二郎(尋常一葉・d08981)の視線の先にいるのは、観覧車を頭部とするご当地怪人だった。
「フフフ、全国のテーマパークのガイアパワーを力とするテーマパークコンサルタント仮面とは私のことだ!!」
「観覧車仮面とは違うんですか」
「奴のことを知っているのか? 奴はソウルフレンドだ!」
頭の観覧車が激しく回転し、灼滅者達を薙ぎ払う。
「巨大化フードを食べた以上、私はここで命を捨てる覚悟! だが、私の遺志はロシアンタイガー様達に受け継がれ、新潟ロシア村は再生するだろう!」
「何ッ……!!」
「このパークを再生するなど容易いこと……具体的には観覧車をつければ良いのだ!」
「……」
「そして観覧車に洗脳装置を取り付けることによって訪れる人々を洗脳し、世界を征服するのだ!」
「それ洗脳装置があれば観覧車いらないじゃないですか……」
流石にご当地怪人というべきか、やることの方向性が間違っている。
侑二郎はこのご当地怪人とのまともな会話を諦めた。
讃岐の地に代々伝わるという縛霊手が唸りを上げ、強固な結界を展開する。
他の灼滅者達との連携から、挟み込むようにして突き進んだ除霊結界は、テーマパークコンサルタント仮面を勢いよく押しつぶした。
頭の観覧車がひしゃげ、そして乾いた音を立てて転がっていく。
●思念
(「……」)
そして戦いが終わった時、春や侑二郎たち、かすかな呻きのような声を聴いたように思った。
「この声は……」
レストラン「ダーチャ」跡で確認されたという思念だと察し、春が叫びを上げる。
「貴方はどこにいるんですか! 何が有ったんですか!!」
春の声に応じるように、思念は訥々と意志を伝えて来る。
(「私は幼い頃から、日本の各地を巡り、数々の料理店で腕を磨いて来た。
私が加わった店は、私が腕を揮うことで繁盛し……あるいは揮わずとも自然と良い食材が集まるようになっていった。
私のことを『食材に愛された者』などと呼ぶ人もいた。
私もまた、それを誇りに思っていた……それが、私の隠された力によるものと知るまでは……」) やがて、声は途切れる。
「続きはまた後、ですか」
勝利を収めた灼滅者達は、制圧した入場口からロシア村内部へと侵入していくのだった。
<ダークネス勢力同士の交戦が発生!>
(3)(4)(8)の敵戦力が500減少しています!
→有力敵一覧
→(2)入場口(99勝6敗/戦力2800→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。