■第5ターン結果
既に三竜包囲陣の完成を防いでいたラブリンスターの軍勢も完全な壊滅が迫り、逆に爵位級ヴァンパイア達も行動時間の限界が近付いている。
ここが、勝敗を決定づける最終局面だ。
灼滅者達は皆、そのことを感じていた。
武蔵坂学園の灼滅者達が選んだのは、絞首卿ボスコウへの集中攻撃であった。
●(13) 絞首卿ボスコウ Battle:16
学園の敷地南側、ボスコウの陣地が置かれたグラウンドで続く戦闘の渦中へと、灼滅者達は突入していく。
「……来てくれましたか!」
血と埃にまみれたラブリンスターが指示を出し、淫魔達が一時主戦場との距離を取る。
その数が、朝よりも随分と減っていることは、誰の眼にも明らかだった。
「さあ、最初っから全速力で行きますよ!!」
下総・水無(少女魔境・d11060)が戦場へと突入すると、ヴァンパイア達も迎撃態勢に入る。
「奴らをボスコウ様に近付けてはなりません。迎撃するのです!!」
ボスコウの愛妾の一人であるアデライーデが、奴隷達に指示を下すと、たちまちボスコウ軍と灼滅者達との間に戦端が開かれた。
小柄な体をさらに縮めるようにして敵の攻撃をかいくぐり、水無は敵陣に乱れを生んでいく。
敵の戦力がそう多くは無いことを、朝から続くラブリンスター軍との戦闘で、少しずつだが疲弊しているのだ。
「押し通らせてもらいます!!」
「あの小娘を止めなさい!」
アデライーデの命令と共に、攻撃を仕掛ける者達へと次々に攻撃が降り注いでいく。
それを防ぐのは、灼滅者側のディフェンダーたちだ。
杖を華麗に振り回し、アデライーデへと先端を向ける。
「その首、貰いましたっ!!」
解き放たれた弾丸は、アデライーデの額を貫いた。
「そんな、ボスコウ様……」
茫然としたような表情で、アデライーデは消滅していく。
●(13) 絞首卿ボスコウ Battle:7
「アデライーデが敗れただと!? 周りの奴隷どもめ、手を抜いたのか!?」
自陣の一角、それも自分の愛妾が守る区域が破られたとの報告に、ボスコウは耳を疑っていた。
「む……我が『雨傘』よ。貴様も血を欲するか。ならば往くがいい。私にたてつく愚か者どもを迎撃するのだ!」
上空を舞っていた巨大なタトゥーバットが、ボスコウの命令に従い灼滅者達へと飛んでいく。
「……あれは?」
他を圧倒する巨大さのタトゥーバットが接近するのを、八神・菜月(徒花・d16592)は見て取っていた。
「奇襲の報告にあった、巨大なタトゥーバットっていうのはあれのことかな」
眷属を引き連れて舞い降りてくる巨大眷属。
灼滅者達との戦闘は、熾烈なものとなっていく。
ボスコウの奴隷達は確実に他よりも力の水準が上と言って良かっただろう。
敗北を喫している戦場も数多い。
だが、ボスコウへと戦力を通し、勝利しなければ、ここで敗北は確定する。
「それは、嫌だね。……勝とう」
決意と共に、菜月の体を覆うオーラが、爆発的に膨れ上がった。
上空を舞う巨大眷属へと、灼滅者達の攻撃が飛んでいく。
ヴァンパイアを蹴り飛ばして跳んだ菜月の槍の矛先が、螺旋を描いて眷属の翼を貫いた。
失速する眷属とそのまま態勢を入れ替え、地面へと打ちつけるようにして落下する。
砂埃が上がり、そして眷属は消滅していった。
●(13) 絞首卿ボスコウ Battle:5
加藤・蝶胡蘭(ラヴファイター・d00151)は【非宝館】の仲間達と共に戦場をひた走った。
後退するラブリンスター軍を追撃せんとしたヴァンパイア達へと攻撃を繰り出しながら、前へ前へと突っ切っていく。
やがて辿り着くのは陣の中央。
最精鋭に守られた絞首卿ボスコウの眼前だ。
目の前に現れた蝶胡蘭たちの姿に、ボスコウは不愉快そうに鼻を鳴らした。
「ゴミどもを私の前に通すとは……失態だな。奴隷達よ、懲罰は免れぬと知れ」
「相手は私達だ、ボスコウ!!」
「なりそこないの灼滅者如きが、一人前に私の敵を名乗るつもりか? 爵位級ヴァンパイアへの不敬により、絞首刑に処す」
蝶胡蘭の言葉に眉をしかめたボスコウは、断罪の言葉を告げた。
「私の力を受けるがいい。その時、貴様達は『絞首卿』の名が意味する恐怖を知るだろう」
ボスコウが指を振ると共に、灼滅者達の首を見えざる力が締め付ける。
「だが、耐えられないほどじゃぁない……!!」
首を絞めつけるボスコウの念動力に耐え切って、灼滅者達はボスコウを守るダークネス達を破っていく。
「ここまで耐えてくれたラブリンスター達に報いるためにも、ここで倒させて貰うぞボスコウ!」
「淫魔ラブリンスターの籠絡術にほだされたか? 所詮は灼滅者、なんとも初心(うぶ)なことだな」
繰り返されるボスコウの攻撃は灼滅者達を確実に傷つけ、しかし倒すことはかなわない。
その表情が次第に険しくなっていくにつれ、灼滅者達は攻撃の勢いを強めていく。
「奴も淫魔ならば、最大の関心事は自らの欲望であろう。ダークネスと人間の間に友誼でも結んだつもりならば、愚かという他ないな」
「だとしても、人を愚か者扱いするあなたには負けない……」
次々と降りかかる攻撃にボスコウの足が止まった一瞬の隙を突いて、ミツキ・ブランシュフォード(サンクチュアリ・d18296)の放った除霊結界が、ボスコウの体に痺れを生んだ。
「今です!」
ミツキの声と共に、灼滅者達の攻撃が一斉にボスコウへと向かった。
ライドキャリバーが我が身を捨てて次々にボスコウへと突撃を敢行し、その動きを封じ込めていく。
「バカな……このようなことがあり得て良いはずがないッ!?」
勝利を目前としていた状況から、一気に死地へと突き落とされたボスコウの顔に、絶望的な表情が浮かぶ。
「灼滅者如きに……爵位級ヴァンパイアたる、この私が滅ぼされるだと!? バカな……! そのようなこと、あっていいはずがッ!?」
「終わりだ!!」
蝶胡蘭の突き出したマテリアルロッドから、衝撃波が迸った。
ボスコウの存在を跡形もなく吹き飛ばしていく。
瞬間、奴隷級ヴァンパイア達の首輪が消滅した。
彼らの顔に一瞬浮かんだ解放の喜びは、次の瞬間は戸惑ったようなものへと変わり、さらには灼滅者達への恐怖へと変わる。
「撤退しろ!!」
恐慌を来たしたように、ボスコウ配下だったヴァンパイア達が次々と武蔵坂学園から逃走していく。
●ヴラドとバーバ・ヤーガ
「ボスコウが敗れたか。凄まじいものだな、武蔵坂学園は」
「元より狂ってしまった計画だけれど、まさかここまで鮮やかに、三竜包囲陣を食い破られるとは思いませんでした」
「完敗だな。そして、我らの稼働時間ももうすぐ限界だ」
「結局、私達の成果は『武蔵坂が三竜包囲陣を破ったという事実』のみでしたね」
「まあ、気にすることは無い! 我らに命がある限り、いずれ再び機は訪れる!
敗者は勝者の武勇を讃え、静かに去るのが礼儀であろう」
→有力敵一覧
→(4)ヴラド軍馬団(5勝0敗/戦力1750→1500)
→(12)鶏足長屋(1勝3敗/戦力1790→1740)
→(13)絞首卿ボスコウ(34勝55敗/戦力1150→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。