武神大戦獄魔覇獄

    ■第4ターン結果

    ●大車輪ブエル兵
    「ここを生き延びれば、我々の敗北は消える。ブエル様の為に、その力を尽くしなさいっ!」
     ブエルの戦場では、ひときわ巨大なブエル兵が、戦力を激減させたブエル兵達を、非常に高い回転数で叱咤激励していた。
     彼こそは、数々の知識をブエルに運んだ、最古参のブエル兵・大車輪ブエル兵であった。

    「お、おおきいです。しかも、凄く回転しています」
     李白・御理(玩具修理者・d02346)は、大車輪ブエル兵の大きさと、そして回転速度をみて、少しだけビックリした。
     彼の巨体は、持ち帰った知識によりブエルを満足させた回数が87回を超えた時に下賜されたもの。
     しかし、その回転速度は、大車輪ブエル兵がもともと持っていた特性であった。
     その尋常でない回転数は、彼の情報収集速度を底上げしており、彼は、通常のブエル兵の3倍以上の速度で知識を吸収し続けてきたのだ。

    「見てるだけで目がまわりそうだけど……」
     御理は、極力回転を見ないようにして、マテリアルロッドを大車輪ブエル兵へと向けた。
    「人から知識を奪うだけで、自分で知識を得ようとしない君達に、思い知らせてあげましょう」

     そういう御理の言葉に応えるように、大車輪ブエル兵は、回転方向をギュギュギュっと反転させながら、最後の戦いの号令を発した。
    「この世界の全ての知識をブエル様に捧げましょう。勇敢に戦いなさいブエル兵。お前達の多胎は全て、私が記憶し、ブエル様に伝えて差し上げます。そう、皆さんはブエル様の知識として永遠を生きることが出来るのです。あぁ、素晴らしきかな知識」
     大車輪ブエル兵の号令に、残る少ないブエル兵も回転数をあげていきり立つ。
     ブエル兵にとって、ブエル様の知識になる事こそ、最上の誉れなのかもしれない。

     だが、いくらブエル兵の士気が上がろうが、それは灼滅者には関係は無い。
    「少しくらい大きくて、回転が早いからって……」
     御理は、大車輪ブエル兵を射程におさめつつ、その動きを見定めた。回転は早いが、その回転には無駄が多い。
     というか、回転自体が戦闘においては大きな無駄であるのだから、その隙を突く事は難しくは無かった。
     そして、御理は、
    「お疲れ様です――」
     の言葉と共に、鬼と化した片腕が大きく盛り上がり、大ダメージと共に、大車輪ブエル兵を粉砕してみせたのだった。

     大車輪ブエル兵は、御理の一撃に大きくよろめき、回転数を下げながら、止まる寸前のコマのようにヨロヨロとよろめいた。
    「あぁ、これが消滅するという事なのか……。あぁ、何故、私は、この情報をブエル様に伝える事ができぬのか」
     大車輪ブエル兵は、最後まで、知識欲とソロモンの悪魔・ブエルへの忠義を抱えつつ、果てたのだった。

    「心配しなくても良いですよ。その情報は、ブエルも今頃収集しているはずですから」
     御理は、消滅する大車輪ブエル兵に、そう言い残すと、戦場を後にした。

    ●ブーネ
    「あいつは……本当にブレイズゲートの外に出て来たのね」
     黒咬・昴(叢雲・d02294)達の前で、ソロモンの悪魔やブエル兵達を率いている赤鱗の悪魔。
     その名は、ソロモンの悪魔「ブーネ」。
     先程、多鴨戸・千幻(超人幻想・d19776)のサーヴァント『さんぽ』によって一度は倒されたものの、再び戦線に復帰していた。
     その視線には、強烈な怨みが宿っているのを灼滅者達は感じ取る。
    「知っている……知っているぞ黒咬・昴。貴様もまた、先程の多鴨戸・千幻と同じく我を殺めた者の一人……」
    「やだ、何、ストーカー!?」
    「己を殺した者のことを忘れはせぬ……711557の1だとしても、その我にとっては紛れもなく唯一の己を殺した者なのだ」
     最初に発見されたブレイズゲートである『世界救済タワー』。
     を建てた悪魔教団を率いていたソロモンの悪魔であるブーネは、灼滅者達にとって最もよく知るソロモンの悪魔といって良い存在に違いなかった。
     灼滅者達によって倒されたブーネの分割存在の数は膨大だ。
     ブーネは間違いなく、横須賀市に現れているダークネスの中でも、灼滅者達を最も警戒している存在であっただろう。
    「711557の死、そのたびに我が儀式は邪魔されて来た……。貴様らさえ邪魔立てしなければ、今頃はさらなる力を得られていたであろうに!」
     中空に浮かぶブーネの姿は、ブレイズゲートにいた時のそれと変わりない。
     だが、その力が大幅に増しているのは昴にも一目で分かった。

    「勝っている相手とはいえ、舐めてかかるわけにはいかないみたいね。どれだけ強くなっているのかしら?」
    「求めるならば答えよう。これこそ、我が力なり!!」
     両腕の竜頭が開き、猛毒のブレスを噴きつけ、灼滅者達が一斉に飛び退いた。
     ガスを受けたブーネの周囲のアスファルトが溶解していく。
    「使って来るサイキック自体はブレイズゲートと同じけど、威力が段違いね……」
     以前の縫村・針子やカットスローターと同じく、ブレイズゲート内では本来の持てる力を大幅に制限されているのだろう。
     本来のブーネがどれほどの立場であるかは不明だが、ウァプラ等に比べ、強力な存在であるのは間違いなかった。
     だが、ブーネと灼滅者達との戦闘は、ブーネに灼滅者達に関する知識を与えただけではない。
     ブーネというソロモンの悪魔の研究もまた、灼滅者達によって進められていたのだ。
    「隙のあるタイミングは、変わらないみたいね!」
     ブーネの竜の顎から放たれるブレスを回避しながら、昴は妖の槍を突き込んでいく。
     灼滅者達の攻撃に耐え兼ね、槍を受けた竜の頭部が内側から破裂するようにして弾け飛ぶ。
     振り回すようにしてブエルを地面に叩き付けると、昴は槍を喉笛に突きこんだ。
    「バイバイ。またブレイズゲートでね」
     怨みの籠った目で灼滅者達を見つめたブーネは、ブレイズゲート内でそうであるようにたちまち消滅していくのだった。

    ●ブエル
     横須賀市の一角に忽然と現れた空間の裂け目。
     それこそが、ソロモンの悪魔『ブエル』の居城である『見えない玄室』の入り口であった。
     内部に広がる儀式場のような空間の中へと攻め入った灼滅者達は、再び獄魔大将たるソロモンの悪魔と対峙していた。

    「ブエル兵は私の獄魔大将化により質、量ともに増加したとはいえ、眷属に過ぎない。
     故に、私が勝利するには『見えざる玄室』を利用するしかない。
     模倣配下を帰還させることにより、他の獄魔大将は戦力低下を避けられない。
     しかし、武神大戦獄魔覇獄の間、常に維持し続けることはできない。
     それは私にとっての隙に他ならない」
     敗者となろうとしていることに、ブエルは慨嘆する。
     その身体には、先程グレイス・キドゥン(適当人間・d17312)の影業がつけた傷がくっきりと残っていた。

    「ふっ、隠れ続けられば僕達にも勝機は無かったでしょうね。ですが、己の能力を過信したのがあなたの過ちです。ぶっ潰しますよ、その変な装甲ごと」
     ハルトヴィヒ・バウムガルテン(聖征の鎗・d04843)は『Patroneheiliger』と名付けたハルバードを構え、ブエルを見る。
    「これは装甲に非ず、我が肉体の一部に他ならない」
     ブエルの周囲に浮かぶ、魔導書の欠片のような物体が、魔力塊を形成。
     存在を抹消する呪いが込められた魔力塊は、空気すら消し去りながら灼滅者達を狙う。
     気圧の激変を感じながら、ハルトヴィヒ達はブエルの隙を伺っていく。

     知の蒐集者であるブエル。
     その本質は、彼の言動と同じく『否定』である。
     知る故にこそ、『正しい否定』を魔術として行使しうるのだろう。
     強敵だ。

    「ブエルを止めなければ、また被害が出る……」
     ブエルを取り巻く眷属『ブエル兵』の中には、元は闇堕ちの素質すらない、ただの人間であった者も少なからずいる。
     知識面において突出した部分さえあれば、それ以外の素質を問わず、獄魔大将となったブエルは眷属に変えてしまう。ある意味、闇堕ちよりも性質が悪い。

     灼滅者達の攻撃はブエルの金属の肉体を打ち砕いていく。
     ブエルの詠唱が途切れた一瞬の隙をついて、ハルトヴィヒは飛び出した。
     浮かぶブエルを下から立つように、ハルバードが振り切られる。
     その刃はブエルの体を断ち割り、その身体から魔力が溢れ出した。

    「灼滅者の動機を理解することは容易ではない。
     灼滅者となれる者は、闇堕ちの素質を持つ者に比して多くない。
     一般人は灼滅者の味方ではない。
     既に生存を得つつある武蔵坂学園が何故に戦うのか、私には理解できない……」

     よろよろと力なくブエルは後退し、闇の中へと消えていく。
    「これで、この戦場も勝利ですか。面倒な相手でしたね」
     ブエルが姿を消すのと時を同じくして、横須賀市内に展開されていた『見えない玄室』も解除されていく。まだ戦っていたブエル兵を倒すと、ハルトヴィヒ達は横須賀中央駅へ帰還するのだった。

    ●斬新・京一郎
     獄魔大将シン・ライリーと、ラグナロクを巡って激しく争っていた、斬新コーポレーションの社員一同は、灼滅者の襲撃に驚き慌てる事となった。
     社員一人一人の斬新な発想を大切にする斬新コーポレーションは、強力な上意下達の命令伝達システムが無く、こういった時に、難儀するようだ。
     前哨戦で倒された人事部長が前線にいれば、話は違ったかもしれないが……。
     結果として、灼滅者の攻勢は、社長である斬新・京一郎のところまで届くことになったのだ。

    「残念だ、まさに、残念だ」
     戦場で、灼滅者達の前に姿を現した獄魔大将・斬新・京一郎は、ろくろ回しのポーズで、灼滅者達に相対すると、大げさに頭を振ってみせた。
     その頭の動きに、特徴的なサングラスが揺れる。

    「何が残念なんだ、バカ社長」
     灼滅者の中から、怒りの声がわく。
     ブラック企業を隠れ蓑に、多くの若者を闇堕ちさせた六六六人衆の親玉。
     同じ学生として、その悪行を許すことなどできないだろう。

    「何が残念か……ね。まぁ、折角だから答えてあげるよ。僕はね、人事部長には常日頃から言っていたのさ。斬新コーポレーションに必要なのは、君達みたいな人材だってね。それなのに、君達を我が社に転職させられなかったなんて、本当に、人事部長は役立たずだったなぁとさ。これって、残念だろ?」
     京一郎の背後では、銀色の帯達もうねうねと動き、その残念さを表現しているようだ。
    「任命責任はどうするんだ、社長さんよっ!」
    「頼まれたって、お前の所みたいなブラック企業に就職なんてするかよ」
     反駁する灼滅者の怒声も、京一郎にはどこ吹く風。

    「最初はみんなそう言うものさ。でもね、人間は働く事で自己を確立する社会性のある生物なんだ。それが無ければ、犬畜生と変わらない。
     僕の会社はね、そんな人間が人間として輝くことの出来る瞬間を、24時間365日、絶え間なく提供し続ける事を社是としているのさ」
     そう言うと、京一郎はニヤリと笑った。
    「これ、新しい社是として考えてみたのさ。どう、少しは斬新だろ?」
     どこまでも人をくった京一郎の答えに、灼滅者達は心を決めた。
     一刻もはやく、この男には退場してもらわねばならないと。

    「どうやら、やる気みたいだね。でもね、一つ教えてあげよう。君達のような労働者は、僕達資本家を害する事はできないのだよ。なぜなら、それが、世界のルールだからね。ダイダロスベルト、アーマーモード!」
     京一郎の声に、銀色の帯……ダイダロスベルトが鎧のような形態をとる。そして灼滅者の攻撃に耐えると、サングラスをキラリと光らせて、灼滅者達に攻撃をしかけてきた。
     その攻撃の早さに、特徴的な髪型が風になびく。
     その姿は、まさに、斬新であったろう。

     その体に巻きつけた、包帯のようなものが鎧となり武器となり、京一郎を守り、灼滅者を攻撃する。
     灼滅者達は、京一郎から距離を取り対峙する。
    「押し切れるか……?」
     灼滅者達が続けての手を打とうとした時、灼滅者達の側に思わぬ援軍が現れた。
     斬新コーポレーションの軍勢と争っていた、シン・ライリー配下のアンブレイカブル達である。

     壊滅的被害を被っていた斬新コーポレーションの軍勢にとって、この新手の登場は致命傷となった。

    「ちょっとタンマっ!」
     と叫ぶ京一郎だが、アンブレイカブル達はお構いなしに攻撃を始める。
     瞬く間に周囲の社員を制圧された京一郎は、アンブレイカブルの手により、刺し貫かれ、そして敗退する事となったのだ。

    「ひどいな、ちょっとタンマって聞こえなかったのかい?
    まぁ、いいか。今日はここまでだ。賞品のラグナロクは君達で好きに争うといいよ。彼女を使えば、いろいろな商売できっとウハウハだと思ったんだけど。じゃ、また、近いうちにお会いしよう」
     そう言うと、京一郎は、サングラスをたなびかせて、華麗に戦場を脱出していった。
     ……おや、何か帯のようなものが落ちているようだが?
     さっきカンナビスの戦場に落ちていた交通標識と言い、これらは一体何なのだろう?
     とりあえず学園に持ち帰り、調べてみるとしよう……。

    ●白き炎、動く
    「斬新コーポレーションは撤退したか。だが、俺達の被害も大きいな……」
     シン・ライリーは六六六人衆の血を払うと、ラグナロクの様子を見るために彼女が『置かれていた』倉庫へと戻る。
     置かれていた、というのは、開戦時から、ラグナロク『遥神・鳴歌』は突然謎の水晶球に覆われていた。
     本人も困惑していた様子だったが、その後は敵も味方も手出しすることができず、放置されていたのである。
    「おそらく、あのジジイの仕業だろうがな」
     と、ラグナロクのいたはずの倉庫に入ったシン・ライリーは今度こそ困惑の表情を浮かべた。
     ラグナロクの様子を見るように言いつけていたアンブレイカブル達が、慌てた様子で走り回っている。
    「す、すみませんシン・ライリーの旦那!」
    「ラグナロクが、突然飛んでいっちまったんです!」
     アンブレイカブル達の要領を得ない説明を総合すると、戦闘が起きている間に突然ラグナロクを入れた水晶球が白い炎に包まれたかと思うと、ラグナロクを持って飛び去ったのだという。
    「……こちらの戦力が減ったのを見計らって、あのスサノオが動いたか。だが、今から奴らの居場所を探しても間に合うまい」
     シン・ライリーは地面に座り込むと、体を休めはじめる。
    「俺は武蔵坂学園が攻めて来るのを待つ。お前達も休んでおけ」
     シン・ライリーの軍勢はここで脱落だ。
     たとえ武蔵坂学園が攻めて来ずとも、獄魔覇獄の決着後には再び新たな戦いが起きるであろう。それが直後か、一定の間を置いてからかは分からないが。
     アンブレイカブルたるシン・ライリーは、それを疑っていなかった。

    ●効果発動
     「(8)シン・ライリー」の戦力低下により、ラグナロク『遥神・鳴歌』の身柄が「(3)ナミダ」に移動しました!

    →有力敵一覧

    →(2)ブエル(20勝3敗/戦力600→0/制圧完了!)

    →(3)ナミダ(7勝7敗/戦力2300→1950)

    →(6)斬新・京一郎(9勝2敗/戦力700→250)

    →(7)アガメムノン(0勝7敗/戦力62→62)

    →(8)シン・ライリー(25勝10敗/戦力2460→1210)

    →重傷復活者一覧

    →死亡者一覧

    ■有力敵一覧

    有力敵 戦功点 現状

    ブーネ
    1271
    (2)ブエル:Battle1にて、黒咬・昴(叢雲・d02294)に倒される。

    ブエル
    3800
    (2)ブエル:Battle3にて、ハルトヴィヒ・バウムガルテン(聖征の鎗・d04843)に倒される。

    大車輪ブエル兵
    750
    (2)ブエル:Battle23にて、李白・御理(玩具修理者・d02346)に倒される。

    アガメムノン
    4200
    (7)アガメムノン:Battle1で戦い、現在も同地域に存在。

    悪夢の大蜘蛛・トラウマイザー
    676
    (7)アガメムノン:Battle3で戦い、現在も同地域に存在。

    親衛騎士長・黒穴の騎士伯ガラリッチェ
    700
    (7)アガメムノン:Battle7で戦い、現在も同地域に存在。

    戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。

    戦闘結果を取得しています。しばらくお待ちください。

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