武神大戦獄魔覇獄

    ■第5ターン結果

    ●(3)ナミダ姫親衛隊・涙魂狼
     ナミダ姫の元へと向かう灼滅者達の前に、立ちふさがったのは一頭のスサノオであった。
     いや、一頭とはいえないであろう。
     そのスサノオは、スサノオの姫・ナミダの為に戦い果てたスサノオの残留思念が寄り集まった、集合意識体であったのだから。

    「我等が、いる限り、ナミダ姫には指一本触れさせぬ」
    「ナミダ姫の為に、ナミダ姫の為に、ナミダ姫の為に……」
    「おまえ、ヒメの敵、殺す」
    「ヒメサマ、ダイスキ、ダイスキ、ダイスキ」
     彼らの思念はナミダを守り戦うことだけに集中していた。
     それこそが、ナミダ姫親衛隊という役割を与えられた理由であったろう。

     だが、その程度で怯む灼滅者では無い。
    「あんたらがナミダ姫が好きなことはよくわかった。だがな、そろそろうちにラグナロクを返してもらわないといけないんでな。
     あんたらには恨みはないが、殺さない理由もない。ここで死んでもらおう:
     瑠璃垣・恢(死に沈む・d03192)が、そう涙魂狼達に宣告する。

    「我らが、いる限り、ナミダ姫には指一本触れさせぬと言っておろうが」
    「死ぬのはお前だ」
    「ナミダ姫の為に」
    「ヒメサマ、ヒメサマ、ヒメサマ、オマモリスル」

    「うるさい、死ねよ」
     だが、涙魂狼の言葉は恢に何の感銘も与える事なかった。
     ここで、ナミダを倒さなければ、望まざる決着を強いられる事になるのだから、
     手加減などできる筈がなかった。

    「これで、さよならだ」
     そして放たれる、恢の必殺のフォースブレイク。
     あまりの痛みに腰の引けた涙魂狼を、恢は更に容赦なく追撃し、その体を全て四散して消滅させたのだった。

    「スサノオの姫・ナミダ、結局何が目的だったんだろうな……」
     幾つかの謎をはらみつつ、獄魔覇獄の戦いは続く。


    ●(3)古の畏れ・三浦の槍使い
    「我がいる限り、この地をよそ者に渡したりはしない!」
     戦場の中心で槍を振るう男は、そう宣言して灼滅者達に攻撃をしかけてくる。
     横須賀市にある三浦半島は、鎌倉時代までは三浦氏の領土であった。その三浦氏を滅ぼしたのが、鎌倉幕府である。
     つまり、彼は『宝治合戦に破れ滅ぼされた三浦氏の生き残りといわれる槍使い』という、古の畏れなのだった。

     鎌倉周辺の氏族を次々滅ぼして、譜代の家臣達をその地に派遣した鎌倉幕府の意図は明白であり、三浦氏以外にも多くの氏族が幕府に寄って粛清されている。
     武蔵坂学園に縁のある、武蔵国でも、同様に、比企氏や畠山氏が滅ぼされているようだ。

    「だから、僕たちは敵じゃないよっ!」
     と説得する灼滅者もいたが、三浦の槍使いは、その言葉に怯むこと無く槍を振り続ける。
     古の畏れは、都市伝説と本質的には同じ存在なので、理性的な話し合いや説得は行う事は、やはり無理なのだろう。

    「ナミダさんは、古の畏れを持ち運ぶ事ができるようでしたけど、やっぱり元々この地に根付いた古の畏れの方が強くできるのですかね?」
     宮代・庵(小学生神薙使い・d15709)は、そう思いつつ、三浦の槍使いに相対する。
     今は古の畏れとなったとは言え、鎌倉時代からの由緒があるのならば、それなりの敬意を払って戦うべきなのだろう。

    「では、行かせてもらいます」
     まずは、バトルオーラを全開にした庵は、三浦の槍使いを牽制する。
     それに反応して、三浦の槍使いが豪槍を腰溜めにし、槍先を庵に向けた。
     そのまま突き入れるかというタイミングで、庵名は、半歩だけ体をずらし、槍使いとの間合いを取る。
     絶妙の間にたたらを踏む三浦の槍使いに、庵は、マテリアルロッドを両手で振りかぶってドゴンと音のするほど叩き込んだ。
     その打撃は、完璧すぎるほど完璧な手応を庵の両手に伝えてくる……。
    「流石、わたしですね! 今日も最高に輝いています!」

     その言葉の通り、庵のマテリアルロッドは吸い込まれるように、三浦の頭蓋を砕き、三浦の槍使いは、砂のように崩れ消え去ったのだった。
     一族の恨みをもって産まれ、現世に蘇り、そして戦いに散った、三浦の槍使い。
     だが、その最後の戦いを終えて消え去る彼の表情は、少しだけ満足そうであったという。

    ●(3)スサノオの姫・ナミダ
    「こんなの、占いの範疇をこえてるよー!」
     謎の水晶玉の中に、囚われたラグナロク、遥神・鳴歌の魂の叫びが響く。
     が、どうやら、水晶の外に声はもれないらしく、周りの化け物達に動きは無い。
     彼らは自分に危害を加える事はしない。
     どちらかと言えば、守ってくれているようだ。
     でも、だからって、安心なんて出来るはずが無い。
     だって、この化け物達は、他の化け物と戦争をしているのだからっ!

    「今週のあなたは、あなたの運命に出会います。ラッキープレイスは、海の近くのパワースポット。ラッキーアイテムは賽銭箱……。占ったのは私だけど、ラッキーアイテムが賽銭箱って時点で、怪しいって思いなさいよ、あの時の私っ!」
     鳴歌は現実逃避気味に、そう言うと、周囲をぐるぐると見回した。
     化け物の動きが慌ただしい。
     どうやらまた戦いが始まったようだ。
     この世界はどうやら、自分の知っていた常識とはかけ離れた世界であったようだ。
     であるのならば、ここは、正義のヒーローの登場を祈るしか無い。
     賽銭箱の中で震えていた自分を助けてくれた人達のような……。
     囚われの鳴歌は、そう祈りながら、戦いの結果を待つことしか許されていなかった。

    「見えましたっ! あそこにいるのが、ラグナロクの遥神さんですっ!」
     完璧な推理により、ラグナロクの居場所を発見した、星陵院・綾(パーフェクトディテクティブ・d13622)が、戦場の中心を指さして叫んだ。
     確かにそこには、2mくらいもある水晶玉の中に囚われた、ラグナロクの姿が見える。
     水晶玉の中のラグナロクは、目を見開いて、周囲を見渡しているようだ。その瞳には恐怖の色があり、意識がある事が見て取れた。

    「僕達は、武蔵坂学園の灼滅者だよっ! 君を救いに来たんだ」
    「鳴歌ちゃんっ、今度こそ、絶対に助けるよ」
     灼滅者達は、そう言って、ラグナロク、遥神・鳴歌が囚われた水晶玉へと駆け寄ろうとする。
     だが、その前に立ちふさがったのは、スサノオの姫・ナミダであった。

    「止まるが良い。それ以上ラグナロクに近づく事は許さぬぞ」
     戦場に響いたナミダの声は、そこが戦場だと忘れるほどに穏やかなものであった。
     が、その言葉に秘められた力は、綾達の足を止めさせるに充分であった。
     綾は、ラグナロクを背に庇うようにたつと、ナミダに向かって、言い募った。
    「お言葉を返すようですが、スサノオの姫、ナミダさん。この子はラグナロクという名前ではありません。彼女には、遥神・鳴歌という名前があります。彼女を一人の少女では無く、ラグナロクと読んで利用しようとするものに、わたしたちは彼女を渡すわけにはいかないのです」
     綾の真摯な言葉に、ナミダは眉を顰める。

    「其方の言葉、わからぬ事もあるが、儂の胸にも響いたぞ。だが、儂はスサノオの姫、ナミダ。古の約定により、獄魔覇獄に参ずる大将。ここで引くことは出来ない」
     そう言うと、ナミダの姿みるみるうちに巨大な黒いスサノオへと変わっていく。

     獄魔大将シン・ライリーに勝るとも劣らない力を感じる、スサノオを前に、灼滅者達は決死の覚悟を決めた。
     この戦いが、武神大戦獄魔覇獄の最大の戦いとなる……その思いを一つにして……。

     ナミダが変じた黒いスサノオは強力であった。
     その力は、かつて四日市殲術病院の地下に封印され、白の王セイメイが利用しようとしていたスサノオを遥かに上回る。
    「この力は、ナミダ一人……いや、個人の力じゃない」
    「おそらく、ナミダを中心にして、多くのスサノオ達が寄り集まり融合したものだろう」
    「ならば、スサノオの姫というのは、多数のスサノオを融合させる為の触媒……、巫女のようなものなのかも……」
     そんな事を言い合いつつも、灼滅者達は懸命の戦いを続ける。
     黒いスサノオが豪腕をひとふりすれば、町の形がかわるほどの暴風が吹き荒れ、唸り声を一つあげれば、ビルのガラスが割れるほどの振動が伝わった。
     まさに、人間と天災とが戦うような戦いが繰り広げられる。

     人が天災に勝つことが可能だろうか?
     その答えを、綾の妖の槍が導き出してみせた。
     暴風に煽られつつも、黒いスサノオの尻尾を伝い背を駆け抜け、首筋を蹴り上がり、その眉間に向け、綾は、あらん限りの力で、妖の槍の螺旋の力を解き放ったのだ。

    「これでチェックメイト。犯人は貴方です! 黒いスサノオ、神妙にお縄につきなさい!」
     綾の言葉と同時に、黒いスサノオは闇が染み出すように姿を縮め、そして、消えていった……。
     『獄魔大将保護結界』がある以上、ナミダ自身は死んではいないのだろうが。
     こうして灼滅者達が勝利を確信した時、一つの悲鳴が上がった。

     それは、水晶玉にとらわれていたラグナロクが、割れた水晶玉から這い出して助けを求めた声である。
    「もう、なにがなんだかわからないけど、助けてーっ!」
     その言葉を聞き、灼滅者達は、慌ててラグナロク、遥神・鳴歌の元へと駆け寄り、彼女にそっと手を差し伸べる。
    「もう大丈夫です、私達が来たからには貴方に触らせたりしません!」
     綾は鳴歌の手を取り、そう声をかけて立ちあがらせてやる。綾を見上げた鳴歌が微笑みを浮かべた瞬間、綾の目には鳴歌の胸元が輝くのが見えた。
    「これは! 失礼、少しその部分を見せてもらえますか」
    「え、ええ……!? ……コックリさんコックリさん、なんだか信頼できるかもって思った人がいきなり脱げって言ってるんですけど本当にこの人信頼していいんでしょうか!?」
     突然一人コックリさんをはじめた鳴歌の指先で、五円玉が二つの文字に触れる。
    「『ぬげ』ってえええ……」
    「何をやっているんですか鳴歌さん」
     などと一悶着ありつつも、綾が鳴歌の胸元に浮かんでいた『刻印』に触れる。
    「んっ……」
     鳴歌が痛みを堪えるように呻いたと同時、刻印が輝いた。
     それは、綾が鳴歌の契約者として認められた証だった。
     刻印からはサイキックエナジーが放出され、武蔵野市の武蔵坂学園地下に秘められたサイキックアブソーバーへと飛んでいく……。
     灼滅者達が、勝利を確信した瞬間だった。

    「獄魔覇獄は、俺達の勝利だっ!」
     そう歓声をあげる灼滅者達。

     だが、武神大戦は、まだ終わりではなかった……。
    『武神大戦の真髄は、ここより始まるのだ!』
     何者かの大音声が、戦場に響き渡った。


    ●終戦、そして開戦
     戦場に満ちた膨大なサイキックエナジーが渦を巻く。
     勝者たる武蔵坂学園の獄魔大将、猫乃目・ブレイブ(灼熱ブレイブ・d19380)の元へと!
    「ブレイブ!!」
     彼女を案ずる灼滅者達の声が響く。
     やがて渦が止み、再びブレイブの姿が現れる。
    「良かった、無事だったのか……」
    「待て、何かおかしい!」
     ブレイブの身を案じ、彼女の元へ行こうとした灼滅者を、別の者が制止する。

     若武者の如く凛とした雰囲気を漂わせていたブレイブの雰囲気は一変していた。
     妖艶な笑みを浮かべ、『猫』と大書された提灯を手に、第一声を発する。

    「……目覚めたり。
     ラグナロクのエナジーは「契約」により奪われたが、それは元より、私には過ぎた褒賞。
     先程までヒトであった我が魂の残滓が、今なお我をこの地に縛り付けているが……。
     所詮は儚き灯籠の斧。じきに抵抗を諦めるであろう。

     全ての獄魔大将よ聞け。我が名はブレイブ。真獄魔大将ブレイブ!
     我が配下となり、我と共に世界の覇を目指せ!」

    →有力敵一覧

    →(3)ナミダ(46勝29敗/戦力1950→0/制圧完了!)

    →(7)アガメムノン(0勝5敗/戦力62→62)

    →(8)シン・ライリー(3勝5敗/戦力1210→1060)

    →重傷復活者一覧

    →死亡者一覧

    ■有力敵一覧

    有力敵 戦功点 現状

    古の畏れ・三浦の槍使い
    1375
    (3)ナミダ:Battle6にて、宮代・庵(小学生神薙使い・d15709)に倒される。

    ナミダ
    4200
    (3)ナミダ:Battle13にて、星陵院・綾(パーフェクトディテクティブ・d13622)に倒される。

    ナミダ姫親衛隊・涙魂狼
    2800
    (3)ナミダ:Battle74にて、瑠璃垣・恢(死に沈む・d03192)に倒される。

    悪夢の大蜘蛛・トラウマイザー
    676
    (7)アガメムノン:Battle1で戦い、現在も同地域に存在。

    親衛騎士長・黒穴の騎士伯ガラリッチェ
    700
    (7)アガメムノン:Battle2で戦い、現在も同地域に存在。

    アガメムノン
    4200
    (7)アガメムノン:Battle5で戦い、現在も同地域に存在。

    戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。

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