■第6ターン結果
真なる獄魔大将に覚醒した猫乃目・ブレイブ。
その招集に応じ、全ての獄魔大将が彼女の元へと集結した。
だが。
「……完全に撤退した者達まで、再び戦うようにできるというわけでもないのか」
既に戦場が壊滅している獄魔大将達は、もはや戦える状態ではないようだと、ブレイブは自らの得た力を試した結果に憮然とした表情を作った。
ブエル、ナミダ、クロキバ、カンナビス、斬新・京一郎。
そうした、既に撤退した者達は、『獄魔大将保護結界』によって命こそ失っていないものの、戦える状態ではないらしい。
が、その配下達は召喚できたため、全くの無駄では無かったようだ。
「動ける獄魔大将は、シン・ライリーとアガメムノンのみか。行けるな?」
「負けた以上は、お前に従おう。それに、お前の方が俺より遥かに強いだろうしな」
「デスギガス様以外に従うというのも稀有な経験だな」
シン・ライリーとアガメムノン、こと戦闘においては獄魔大将の中でも最強であった2人は、ブレイブの命令に従い出撃していく。
「さて、灼滅者達は私に勝てるのかしらね?」
●アガメムノン
ブレイブの元へ進もうとする灼滅者達を、金色のシャドウが放つ閃光が遮った。
獄魔大将アガメムノン。
戦闘開始の段階で、四つの組連合による猛攻と『慈愛のコルネリウス』によるソウルボードへの攻撃を受け、戦力を大幅に減じながら、ついに自軍の完全な壊滅を防ぎ、この場に現れていた。
「用意された戦場で他の敵を倒すだけで、ラグナロクを得られる決戦。まあ上手い話には裏はつきものということであるなあ」
「行って下さい!!」
比良坂・八津葉(時鶚の霊柩・d02642)達が、アガメムノンの猛攻を防ぐべく、彼へと挑みかかっていく。
獄魔大将アガメムノンは、武神大戦獄魔覇獄という戦いそのものを振り返りながら光を連続して撃ち出して来る。
精神に眠るトラウマを抉る、苦痛に満ちた光だ。
「よもや、このアガメムノンが『歓喜のデスギガス』様以外に仕える羽目になるとはな。まあ、それもまた一夜の夢の如きもの。その愚かさも、デスギガス様は歓喜と共に認めるだろう!」
莞爾と笑いながら、アガメムノンは灼滅者達を攻撃して来る。
『歓喜のデスギガス』の配下に相応しいというべきか。
その姿は、現実世界で力を振るえる喜びに満ちているかのようであった。
「ソウルボード内では味わえぬ感覚! これでこそ、現実世界に現れた甲斐があるといもの!!」
だが、灼滅者達も多少のことでくじけはしない。
デスギガスやダークネス達の攻撃を凌ぎ切り、その金属の巨体に今日何度目になるか分からぬ攻撃を入れていった。
「あなたに、これ以上の邪魔はさせません!」
やがて八津葉の放ったご当地ビームが、アガメムノンを貫く。
「ブレイブがどうなるか知らんが、お前達との戦いも、今日はこれで終いだ。再び相見える時には、より歓喜に満ちた戦いをしよう!」
最後の戦いを楽しむように攻撃に耐えていたアガメムノンの姿が、忽然と消え失せる。
現実に出現し続けるためのサイキックエナジーを失い、ソウルボードへと退いたのだろう。
金色の巨体は、その閃光を放ちながら戦場から消えていた。
●シン・ライリー
海沿いの道で灼滅者達と拳を交えながら、シン・ライリーは痛快といった表情を浮かべていた。
「何がおかしい?」
「この展開、業大老にとってはさぞ予想外だっただろうよ」
迅雷の如く戦場を駆け巡るシン・ライリーを止めるべく、椙杜・奏(翡翠玉ロウェル・d02815)は影業を伸ばしていく。
立て続けの攻撃に足が止まった瞬間を見逃さず、ようやくの一撃がシン・ライリーに直撃する。
だが、それでも易々と戦うのを止めてはくれないのが、シン・ライリーというダークネスだ。
「ブレイブが獄魔大将と化した、今の状況が、予想外だって?」
「ああ。修行をしている間に、奴の性格は大体分かった。業大老の望みは自分が戦うことに他なるまい」
海底で業大老に修行を受けていたというシン・ライリーの言葉には、一定の信頼性があるように奏には思えた。
「『自ら戦えない状況』こそが、奴の最も憎むものだ。大方、あのブレイブが拒否するものとタカをくくっていたのだろうよ」
「それは……」
闇堕ちを拒む精神。それは灼滅者達の存在と不可分だ。
考える間にも、拳と蹴りの連打が、灼滅者達へと繰り出されて来る。
重い衝撃が襲い、また一人の灼滅者が戦闘不能に陥らされる。
「まあ、あのブレイブが闇堕ちすることを選んだとすれば、獄魔大将という地位に目がくらんだか──」
灼滅者の攻撃が、シン・ライリーの体に僅かな炎をともす。
舌打ち一つ、シン・ライリーはさらに動きを加速させた。
「あるいは、お前達が自分を止めることを期待しているのだろうよ」
「何故説明する?」
「良いものを見させてもらった見物料だな。俺はどちらに転んでも構わない。お前達とこうして拳を交える機会をくれる奴に逆らう気は無い。妖艶さではスキュラには劣るだろうがな」
やがて奏の影業がシン・ライリーを捉え、彼に膝を屈させる。
「俺もまだまだ修行不足。モヤシのカンナビスを笑えんな」
修行のやり直しだと身を翻したシン・ライリーの姿が海へと消えていく。
やがて水音がして、アンブレイカブルの姿は見えなくなっていた。
●真獄魔大将ブレイブ
幼い頃の記憶を失っているという灼滅者、猫乃目・ブレイブ。
彼女が闇堕ちした姿であるご当地怪人は、大きな提灯を抱えていた。
このダークネスならば、あるいは彼女の出身地なども知っているのかも知れないが、それよりも灼滅者達にとって問題なのは、空から降り注ぐ灯篭である。
提灯から噴出した炎を包むように次々と灯篭が具現化したかと思うと、ブレイブの刀の振るいに合わせ、雪崩れをうって灼滅者達を襲う。
本来とは異なる女性的な口ぶりで、ブレイブは微笑んだ。
「灯篭の斧と名付けようかしら」
「それを言うなら蟷螂の斧でしょ……」
思わず突っ込む袖岡・芭子(匣・d13443)だが、見た目はともかく灯篭のもたらすダメージは馬鹿に出来たものではない。
武神大戦という勢力同士の戦いを制した獄魔大将である事実を反映するかのように、ブレイブのサイキックは多くの敵を相手にするための技を備えている。
提灯に書かれた『猫』の文字が光を発したかと思うと、灼滅者達の脳裏からトラウマが現れ、襲い掛かって来る。
真獄魔将軍となったブレイブの力は、他の獄魔大将に比しても圧倒的だと、見なさざるを得ない。
「絞首卿ボスコウぐらいは一ひねりに出来そうだね」
夏に武蔵坂学園を襲った爵位級ヴァンパイアのことを思い出しながら、芭子はブレイブの動きを見定める。
別の場所でシン・ライリーが語ったことが真実ならば、この力を元より強い業大老が得ていたということになる。
灼滅者としてのブレイブは既に業大老の目論みを阻むことに成功し、バトンを他の灼滅者達に手渡した。
武神大戦獄魔覇獄の『獄魔大将』として選ばれた天覧儀最後の戦い。
あの場に参戦した誰もが、獄魔大将となる可能性を有していた。
選ばれた時に、自らを犠牲にする判断を下せたか。
「でも、絶対に連れて帰る……」
自らを犠牲にすることなどさせないと、芭子は真獄魔大将ブレイブを見る。
その妖艶な笑みは、彼女の年を本来よりも幾つか上に見せてすらいた。
そして手にした刀を振るう速度もまた、尋常の闇堕ちした灼滅者を大幅に上回っている。
若生・若(若桜・d20457)、そして中川・始(近所のメイド王・d03087)が倒れる。
うっとりとした様子で流れ出る灼滅者達の血を眺めるブレイブ。
灼滅者達の血が流れ出るたび、人間の心が押し込められていくのだろう。
だからこそ、一人も倒させまいとするように、灼滅者達は動いていく。
ディフェンダーに回ったサーヴァントたちが消滅する頃には、配下としたダークネス達はことごとく灼滅されている。
「行かせないから……かえっておいで」
閃光百裂拳を受け、崩れ落ちるブレイブを、芭子が強く抱きしめる。
抱えたブレイブの体から、真獄魔大将としての強烈な力が消えていく……。
やがて意識を失った彼女が元の姿に戻ったのを見届けて、灼滅者達は武神大戦が本当の終わりを迎えたことを悟るのだった。
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→(9)真獄魔大将ブレイブ(33勝52敗/戦力3000→1350)
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戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。