■第1ターン結果
灼滅者達が奇襲を終え、孤立するより早くドルフィン桟橋に再集結する頃には、貯炭場の羅刹達も迎撃態勢を整えていた。
敵の中には羅刹が目立つ。九州各地で活動する間に、『うずめ様』の元に集まった者達なのだろう。
だが、それ以上に目を引くのは『うずめ様』配下の強化一般人だ。
着こんだ軍服が異彩を放つ男達は、羅刹達に命ぜられるがまま、灼滅者達へ向け突撃を敢行する。ダークネスにとって、強化一般人とはそう扱われるべき存在である。
●突撃兵「山口・二郎」
「ガキどもがッ! うずめ様の島に攻め込むとは、ナマイキだぞ、ナマイキィッ!!」
口から泡を飛ばしながら、濁った眼で吠える強化一般人「山口・二郎」の体には、大きな刺青がのぞいて見えていた。
おそらくは中洲の風俗店で拉致され、強化一般人に改造された客の一人なのだろう。
女性蔑視をこじらせたような傲岸不遜な性根が透けて見えた。
その精神性が強化一般人にされたが故のものなのかは分からないが、今の彼が善良な人間と言い難いことは、誰の目にも明らかであった。
「大体女連れで戦場に来ようなんざ、おい、聞いてるのかコラッ!!」
だが、山口の怒鳴り声を向けられている瑠璃垣・恢(残響のフューネラル・d03192)にとって、その罵声など無きに等しい。
「一番槍、推して参る」
背の翼が大気を叩くと、弩の矢の如き勢いで恢は貯炭場を駆け抜け、敵陣へと斬り込んでいく。
怯む様子も見せず、戦場を駆ける彼の姿に、山口は怒り、僅かな怯えが入り混じったような表情を浮かべた。
「お、俺は人間を越えた超山口様なんだぞ! ダークネスでもないくせに、それを無視するなんざ、ナマイキナマイキナマイキィィィィィッ!!!」
瓦礫から身を乗り出した山口の投げつけた手榴弾が恢の頭上で爆発。
衝撃と撃ち出される破片が、範囲内にいた者達を叩く。
だが、恢はその衝撃を容易く耐え切った。
黒地に黄文字の書かれた【Combat of Slayers】の腕章を揺らし、突っ込んだ恢は、強化一般人へとマテリアルロッドを突きつける。
「ナマ……」
何事かを言葉にするよりも早く、フォースブレイクが発動した。
衝撃音と共に、山口の体が倒れ伏す。
「ここには未だ、何もないな。早く先に進もう」
目の前のダークネスも、強化一般人も、恢にとっては眼中にはない。
先を急ぐことを促す恢に続き、灼滅者達は敵の防衛網を薙ぎ倒し始めた。
●護衛任侠「酒田・高次」
「うずめ様の御島に、何人たりとも近づけるな!!」
「へい、酒田の兄貴、がってんでさぁ!!」
護衛任侠『酒田・高次』の激励を受け、羅刹達が勢いよく飛び出してくる。
だが、攻め込む灼滅者達の勢いは、それを容易く上回った。
「悪いね、今日の僕は……非紳士的に行かせてもらうよ!」
村瀬・一樹(ユニオの花守・d04275)の手の中で、チェーンソー剣が応ずるように『紳士的な』騒音を鳴り響かせる。
白手袋に包まれた手がチェーンソー剣を巧みに操ると、回転する刃は飛び出して来た羅刹を切り裂いた。
その勢いのままに身を翻し、一樹は飛来する弾丸の射線上から退避する。
「今だよ、皆!!」
声と共に、クラブを同じくする仲間達の射撃が羅刹の陣を打ち砕く。
「こいつァたまらん……あっしの陣地も長くは保ちそうにねェな」
一樹をはじめ、灼滅者達の水際立った動きに指揮官である酒田は瞠目する。
「撤退するなら今のうちだよ?」
「生憎、そうもいかねぇんでね!!」
酒田の腕が隆起し、陽炎のように闘気を纏った鬼の腕が刀を振り下ろした。
地面ごと叩き割らんとするかのような一撃が、灼滅者達を襲う。
「流石にここの守備隊長か……」
他の羅刹達よりも明らかに強い。
一樹がそう思う間にも、酒田は立て続けに刀を振るった。灼滅者達からの攻撃を受けながら、退く様子を微塵にも見せない。
「お互い事情があるなら戦うまで! お前さんらにも事情があり、あっしらにも事情がある。それだけの事でさァ……!」
「道理だね!」
チェーンソー剣を投げ出すようにして振るう一樹。
金属音をあげ、酒田の刀と噛み合った回転刃は、しかし酒田が力を籠めると強引に断ち切られんとする。
だが、酒田の目論みが現実になるよりも早く、一樹のスーツの下から五線譜のようにベルトが伸びる。
刃の如く変化したダイダロスベルトは、そのまま酒田の喉笛を貫いた。
「みんな、先を急ごう!」
ダイダロスベルトを引き戻すと、一樹は仲間達にそう声を向けるのだった。
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→(2)貯炭場(90勝4敗/戦力2700→0/制圧完了!)
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■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。