軍艦島攻略戦

    ■第3ターン結果

     かつて炭鉱であった面影を強く残す坑道は長々と地下へと続いている。
     先程の奇襲の際には真っ直ぐに下へと突っ切ったが、その分岐した道の先にいたのであろう定礎怪人達は、奇襲の時を遥かに上回る大人数で灼滅者達を迎え撃った。
    「今度はそう簡単には突破させねぇべ!」
     ハンマーを振りかざす定礎怪人達。
     その頭部は、紛れもなく定礎石で出来ている。
     かつて潜入調査に赴いた灼滅者達が目撃した定礎石から、あの怪人達が生まれたのだろうか。
     定礎怪人を作るための儀式がどのように行われるかを考えると、相当な数の一般人が、この場所に連れ去られて来ていたのかも知れなかった。


    ●北関東から連れて来られた男
    「俺にはもはや、名前も無い……仕事しか無い……ただ、働くだけだ……!」
     『北関東から連れて来られた男』。
     その攻撃の威力を目にして、実は男への警戒を強める。
    「強化一般人にしては、やたら強いな……。油断するなよ、クロ助」
     桃野・実(水蓮鬼・d03786)の声に、霊犬はひと声吠えて答える。
    「強くて当たり前だ、俺を強化してくれたのは、このトンネルの工事の責任者『関門トンネル定礎怪人』さんなんだからな!」
     言葉と共に繰り出される拳を、実は縛霊手で受け止める。
     縛霊手を通して響く一撃の重さが、相手の力を物語っていた。
     武術の心得があるようには見えないが、強化一般人としての身体能力は、無造作な蹴りでさえ異様な速度にまで到達させる。
     その威力は、今の実にとっても侮りがたいものとなっていた。

    「学生か……」
     自嘲するように男は語りだした。
    「思えば俺の人生は失敗ばかりだ。不良共に目をつけられ、社会に出てからも結婚と離婚の繰り返し。おまけに腰を悪くして仕事もできなっちまった」
    「……」
    「パチンコで借金はかさむしカードは全部限度額になるまで使い込んじまうし、手を出したヤミ金も焦げ付かせるわ、バイトはクビになるわ、コンビニ強盗を働くも1万円しか奪えず、ヤクザに追い込みを掛けられて山中に埋められるわ……なぁ、何が悪いんだ? 生まれたことが悪いのか?」
     油断を誘うように物悲しい語り口で言いながら近づいてくる男に、実は自分を指差し、言った。
    「えっと、俺桃野。『C.o.S』の一人。それでご当地ヒーロー」
    「……?」
     唐突な自己紹介に、男は目を瞬かせた。
    「それで説明充分だろ? ……ええけん掛かって来まい。首刎ねるけん」
     敵対するならば、倒す。
     幾つもの戦いを潜り抜けた実は、その意思を叩き付ける。
     男は顔を引き締めると、実へと殴り掛からんする。目の前の少年に感じた怯えを振り払うように繰り出された拳は、しかし実に届くことはなかった。
     実に触れるより早く、男の首をクロ助の刃が切り裂いていたのだ。
    「ようやった、クロ助」
     男を倒した霊犬を実が褒める。ふと視線を戻すと、男は完全に事切れていた。

    ●関門トンネル定礎怪人
    「チミたちィ、どッから入ッたんだぁ?
     ここ、工事現場。ここ、関係者以外立ち入り禁止!
     わかったなら、とっとと出てきなさい、工事が遅れるでしょーが!!」
    「ボンソワール、紳士淑女の皆々様。さぁ、一緒に踊りましょう?」
     スカートをつまんで一礼する周防・雛(少女グランギニョル・d00356)。
     その頭が上がると同時に、関門トンネル定礎怪人率いる定礎怪人軍団と、灼滅者達との戦いの火蓋は切って落とされた。
     ハンマーを担ぎ、怒涛の如く連打を浴びせて来る定礎怪人達。
    「ぼかぁ、このトンネルの工事を請け負っちまったからね。チミたちを好き勝手にいかせるわけにゃぁいかんのよ! さっきも定礎怪人を何人も倒しちまうし、工期が遅れちまうでねーか!」
     工事責任者であるという関門トンネル定礎怪人は、その責任感を主張するように自らもハンマーを振るう。
    「結構、誠実な方なのですわね」
     見た目は愉快というか、他とあまり区別はつかないのだが、実力の面も確かなようだ。
    「でも、雛達も負けるわけには参りませんの」
     雛の張り巡らせた糸が、白銀の軌跡を残しながら定礎怪人達の動きを制限していく。
     そこに襲い掛かるのは、灼滅者達の一斉攻撃。
     灼滅者達の勢いは、定礎怪人達の守りを突破してあまりあるものだった。

    「こ、こいつはたまらん! けど、工事責任者が持ち場を離れるわけにはいかないでしょー!」
     渾身の力を籠めてハンマーを振り下ろして来る関門トンネル定礎怪人。
     しかし、その身体を雛の鋼糸が絡め取る。
    「なぁんとぉ!?」
    「これでは、ハンマーも振るえませんわね」
     雛が鋼糸を指ではじくと、鋼糸はたちまち関門トンネル定礎怪人の体に食い込んだ。
     血煙が上がり、関門トンネル定礎怪人が震える声をあげる。
    「なんとも情けない話だ! かつては墨俣城怪人と日本一の工事名人の座を争った、この関門トンネル定礎怪人の名が泣くわ……グローバルジャスティス様万歳! ザ・グレート定礎様万歳!」
     よろよろとへたり込んだ関門トンネル定礎怪人の頭の定礎石が爆発して消え去るのを、雛は静かに見届ける。
     爆風の消えた後には、先への道が開かれていた。

    →有力敵一覧

    →(3)野生のグラウンド(2勝5敗/戦力800→700)

    →(4)巳型調整プール(6勝6敗/戦力1650→1350)

    →(6)改造大坑道(58勝17敗/戦力2450→0/制圧完了!)

    →重傷復活者一覧

    →死亡者一覧

    ■有力敵一覧

    有力敵 戦功点 現状

    北関東から連れて来られた男
    270
    (6)改造大坑道:Battle3にて、クロ助(桃野・実のサーヴァント)に倒される。

    関門トンネル定礎怪人
    630
    (6)改造大坑道:Battle15にて、周防・雛(少女グランギニョル・d00356)に倒される。

    戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。

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