夏のエスカロップはロシア風

    ●根室だって夏は暑い
     エスカロップ。それはポークカツレツをケチャップライスに乗せてドミグラスソースをかけた、根室のご当地グルメ。地元の漁師さんたちが手早く満腹になれるメニューとして考案されたというだけあって、ボリューム満点のがっつり系だ。
     だが、それだけに暑い夏には……。

    「今年の夏も、エスカの売り上げ落ちるんだろうなあ」
     ランチメニューを考えながら、渋い顔をしているのは根室のとある喫茶店のマスター。開店前のミーティングタイムだ。
     ちなみにエスカロップは略してエスカ。
    「暑い時期にはちょっと重たいものねえ」
     奥さんも悲しげに首を振る。
    「それでもウチの一番人気だからね、何とか夏にも食べて欲しいなあ」
    「夏仕様になるよう、工夫できるかしら?」
    「工夫なあ……」
     マスターと奥さんは腕組みしてうーんと唸り始めた……と、そこへ。
    「わしに任せろ!」
     突然ひとりの男が店内に飛び込んできた。漁師のような胸当てつき合羽ズボンにギョサンを履いた大男だ。しかしその頭部は。
    「……エスカロップ?」
     ハッハッハッ、と男はエスカロップ頭で高笑いして。
    「その通り! 我こそは根室オクローシカ・エスカロップ怪人!!」
    「長っ」
    「略してエスカ怪人と呼んでくれ。まあそれは置いといてだな、お前らの悩みに応えてやろうではないか」
    「夏仕様のエスカ、ですか?」
    「そうとも! デミグラスの代わりにこれをかければいいのだ!」
     そう言って怪人が出したのは、なんだかしゅわしゅわした茶色のスープだった。
    「何です、これ?」
    「夏のロシアで定番の冷製スープ、オクローシカだ! これをかけろ。爽やかになるぞ」
    「えー、なんだか不味そうですよ?」
    「何だとッ!?」
     怪人の目がビカっと光った。するとマスターと奥さんは白目になり、ふらふらと厨房に入って、機械的にエスカロップとオクローシカを作り始めた。
    「そうそう、わしの言う通りに作ればいいのだ。オクローシカに欠かせないクワスは用意してきてやったぞ」
     怪人はカウンターに瓶に入った茶色の液体を置くとまた高笑いし。
    「この調子で、今夏のうちに、根室中でオクローシカ・エスカロップを流行らせてやるぞ!」
     
    ●武蔵坂学園
     ご当地幹部ロシアンタイガーが日露姉妹都市を転々とし、ご当地怪人と名物をロシア化……というあたりはすでに耳タコだろうから語るまい。
     そのロシア化怪人が、サハリン州セベロクリリスク市と提携している根室にも現れてしまった。
     
     武蔵坂学園の調理室で、夢野・ゆみか(サッポロリータ・d13385)は可愛らしく首を傾げ。
    「ゆみか、北海道出身だからエスカロップは知ってるんですけど、オクローシカって何ですかぁ?」
     春祭・典(高校生エクスブレイン・dn0058)は、
    「これですよ」
     と、細かく切った野菜や卵が浮いた茶色いスープを取り出した。作り方としては、野菜や卵、ハムなどをみじん切りにし、そこにクワスを混ぜるだけ。
    「スープそのものは至って簡単なんですが、クワスが日本じゃ手に入らないから、自作しなくちゃで大変でした」
    「クワスって何ですかぁ?」
     クワスとは、ライ麦と麦芽を発酵させて作る微発砲のアルコール飲料で、ロシアでは街角の屋台でも売っているくらいポピュラーな飲み物。また各家庭においてはパンと酵母で手軽に作られる。
    「えっ、お酒ですか?」
    「アルコール度数は1%~2,5%程度ですし、混ぜたりしてるうちに飛んじゃうでしょうから子供でも大丈夫でしょうけど」
     甘酒くらいだろうか。
    「ビールみたい……微発砲のお酒のスープって……」
     ゆみかはオクローシカを不審そうに観察する。典はその様子にわかるわかると頷いて。
    「とりあえず、エスカにかけるのは断然止めて欲しいですよね」
    「はい、やめて欲しいですぅ!」
     典は怪人への接触方法について説明する。
    「喫茶店は開店前ですので、店の外でエスカ怪人の出現を待ってください。現れてから突入ですね。そしてまずはマスターと奥さんを避難させてください」
     マスターたちが妖しい光に操られてしまってからだと、ESPが効きにくくなるので、その前が望ましい。
    「戦闘は店内より、外の道路がいいでしょう。怪人もエスカを出す店を壊すのは本意ではないので、上手く煽れば出ると思います」
     北海道だから道広いし。
    「わかりましたぁ!」
     ゆみかは元気に手を挙げて。
    「根室名物を守るために、がんばりますよぉ~!」


    参加者
    古樽・茉莉(百花乱武・d02219)
    城橋・予記(お茶と神社愛好小学生・d05478)
    希・璃依(金ぴかすべり台・d05890)
    羊飼丘・子羊(北国のニューヒーロー・d08166)
    夢野・ゆみか(サッポロリータ・d13385)
    攻之宮・楓(攻激手・d14169)
    鳥辺野・祝(架空線・d23681)

    ■リプレイ

    ●開店前の喫茶店
    「遠かったですね……根室」
     夢野・ゆみか(サッポロリータ・d13385)は、件の喫茶店を監視できる路地に潜みつつ、仲間達に囁いた。根室がえらく遠いのは、以前別のエスカロップ怪人と戦った経験からもよく知っていたのだが、それでも駆けつけてしまうご当地ヒーローの性。
    「釧路まではともかく、更に3時間もかかるのですぅ……あっ」
     ゆみかは、押し殺した悲鳴を上げた。気づけば『Closed』の札がかかった洒落たドアを開けて、合羽ズボンにエスカロップ頭の大男が店に入って行ったではないか。
    「(出たな、根室オクローシカ・エスカロップ怪人!)」
     灼滅者たちは視線を交わし無言で作戦を確認しあうと、緊張感を漲らせて店へと近づく。
     ドアや窓からそっと店内を覗き込むと、エスカ怪人がマスター夫妻にえらそーに料理指南をしていた。

    『デミグラスの代わりにこれをかければいいのだ!』
    『何です、これ?』
    『夏のロシアで定番の冷製スープ、オクローシカだ! これをかけろ。爽やかになるぞ』
    『えー、なんだか不味そうですよ?』

    「――話は聞かせてもらいましたッ!」
     怪光線が放たれる直前、灼滅者たちは古樽・茉莉(百花乱武・d02219)を先頭に突入した。
    「何だお前たちは!?」
     怪人は突然店になだれ込んだ少年少女に驚いて振り返る。茉莉はビシリとフォークを突きつけ。
    「新メニューの相談をしてらしたようですね? 根室とロシアは関係が深いですから、ロシア人にも受けるくらいの名物を作るなら協力しましょう……もちろん美味しければの話です」
    「日本では滅多に手に入らないクワスとか使うんだそうですね。面白そうですわ」
     攻之宮・楓(攻激手・d14169)はさっさとカウンターの椅子に腰掛け、
    「僕も、海外のご当地名物に興味あるよ! ご当地愛に差別はないもんね」
     羊飼丘・子羊(北国のニューヒーロー・d08166)も毒舌を愛らしい笑顔に隠し、無邪気な風で怪人を見上げる。
     アスティミロディア・メリオネリアニムス(たべられません・d19928)は、じっと怪人を見つめ。
    「エスカロップ・オクローシカ……気になる。とっても気になるから、今すぐ食べる! 作ってくれ!」
     怪人は突然のおねだりに、ぽかんと口を開けた。

     その間。
     ゆみかは入店するなり、パニックテレパスを発動した。怪人の出現にそうでなくとも動揺していたマスター夫妻はESPにすっかり混乱してしまい、手を握り合ってへたりこんだ。
     そのマスター夫妻に避難誘導係の3人がそっと接近し、
    「あのエスカ頭は危険なんだ。逃げて」
     城橋・予記(お茶と神社愛好小学生・d05478)が囁いた。割り込みヴォイスを使っているので、小さな声でも良く聞こえる。
    「裏口ある?」
    「あ、ありますけど」
     マスターがへどもどしながら厨房の奥を指した。カウンター越しに勝手口っぽいドアが見える。が、
    「で、でも、店が」
     マスターは泣きそう。店が心配なのだ。
    「大丈夫、アレはすぐ誘き出す。アンタ達はちょっとの間、店から離れててくれな」
     希・璃依(金ぴかすべり台・d05890)が2人を支えて立ち上がらせ、素早く勝手口を開けてきた鳥辺野・祝(架空線・d23681)が、
    「さ、落ち着いていこう」
     声をかけながら怪人から夫妻を隠す位置に立つ。
     避難係は、後ろ髪引かれる様子の2人を裏口へとそっと誘った。

     挑発班にねだられた怪人は、
    「そんなに食べたいなら、店の者に作らせてやろう」
     と振り向くが、すでにマスター夫妻はいない。
    「アレ、どこ行った?」
    「あなたが作ればいいでしょ~?」
     ゆみかが唇を尖らせ、
    「そうですよ、あなたが作ったのでないと、納得しませんからね?」
     茉莉も詰め寄り、
    「まさか作れないとでもおっしゃるの?」
     楓が挑発的に首を傾げる。
    「な、何を言う。わしは本場の根室オクローシカ・エスカロップ怪人だぞ! 作れないわけなかろう!!」
     怪人は憤然と鼻の穴を膨らませると(エスカ頭だけど)厨房へと入っていく。

    ●オクローシカ・エスカロップ
     威張っただけのことはあり、怪人の手際は良かった。あっという間に付け合わせのサラダとオクローシカ用の野菜を刻み、その間に温めておいた油で、衣をつけたロース肉を揚げ焼きにする。またその横で豪快に鍋を振って、5人前のケチャップライスをいっぺんに作ってしまう。並べた皿に良い香りのケチャップライスをちゃっちゃと分けると、
    「ライスの脇にサラダを添えて、上にポークカツレツを載せて」
     ぱりっときつね色に焼き上がったカツレツが美味しそうだ。
    「そして、真打ち登場、これをかける!」
     怪人はジャーンという効果音が付きそうな勢いで、大きなボウルの中にお玉を突っ込んだ。
    「(うーん)」
     ボウルの中の茶色い液体を見て、カウンターにずらりと座った挑発班5名は声に出さずに唸る。
    「(せっかく美味しそうなのに……うああ、かけちゃったよ)」
     怪人は、灼滅者たちの心中など知る由もなく、ドバドバとボウルの中身……オクローシカをカツレツの上からかけた。
    「さあ、食ってみろ!」
     灼滅者たちは仲間同士牽制しあってから、覚悟を決めて。
    「……いただきますッ!」
     一斉にフォークを口に運んだ。
    「???」
     楓が目を点にした。
    「(こ、これが文化の違いってヤツなのでしょうか……?)」
     異文化遭遇という問題だけではなさそうだ。パリッとしていたカツレツの衣はスープを吸ってでろんと剥がれ、ケチャップライスの油がスープに分離し、ご飯がふやけてしゃばしゃば。しかもオクローシカは冷たいから、せっかくの熱々カツライスがびみょーなぬるさに。
     他のメンバーも、表情は楓と似たり寄ったりである。それでも怪人を穏便に店から出すために、皆完食……偉い。
    「おおっ、全員完食か!」
     怪人はカウンター内で小躍りする。
    「……けぷ」
     茉莉は胃もたれしちゃったのか、お腹を押さえつつ、
    「ご、合格です」
    「うん、マスターにも、外に行った子にも薦めるから、外に行こう」
     食いしん坊のアスティミロディアも、さすがにげんなり。
    「ロシアのように広いところで、じっくり話を聞かせて欲しいな」
     子羊は張り付いたような笑みを浮かべているが、内心は。
    「(もちろん話=物理だよ。根室のご当地名物のロシア化なんて、しかもこんなの絶対許さないよ。うふ、うふふ)」
    「そういえば、外に行った人たちは、エスカロップにオクローシカとか正直ないわー、とか」
    「何だとッ!?」
     怪人は楓の台詞を遮ると、
    「食ってもみないでそんなことをぬかしてるのか!? ロシア風の素晴らしさをわしが教えてやる!!」
     エプロンをかなぐり捨てると、巨大な包丁とフライ返しを手に店から飛びだして行き――挑発班はその後を慌てて追った。

    ●ご当地料理を守れ!
     くんくん、と予記は鼻をうごめかし、
    「いい匂いがするなあ」
     そう呟いてしまってから、振り払うように頭をぶんぶんしてツンとした表情を取り戻し、
    「いやいや、無事に怪人を倒してから思う存分根室名物を味わうんだ……!」
     漂ってきたのは、ケチャップライスを炒めた香り。
     避難誘導班はマスター夫妻を近所の自宅に送り届け、店の前の広い通りに戻ってきたところ。店内では挑発班が試食をしている気配。3人がドアの小窓から中を覗き込むと……。
     バァン!
     いきなり乱暴にドアが開けられて、3人は飛び退いた。
    「お前たちか! 食ってもみないで、オクローシカないわー、とか言ってる奴らは!?」
     飛びだしてきたのは、怒りを漲らせたエスカ怪人。
    「おう、そうともさ!」
     祝が元気良く答え、縛霊手でビシリと怪人を指さし、
    「ご当地の美味しいものに余所の名物を混ぜて新しい名物を的なアレはほんと熟考してから作ってくださいと言いたい……!」
     ノンブレスで一気に言い切った。
    「グルメリポーターを目指してるアタシ的にはさ」
     璃依はナノナノの王子を出現させながら、
    「食ってのは、本人が美味しいってのが一番だと思ってる。だからアンタが何をどう食べようが自由だケド、人にムリヤリ食べ方を押し付けるのは気にくわないな!」
    「そうだよ、もしかしたらもしかしたら美味しいのかもしれないけど……無理やり押し通そうとするのは間違ってるよっ!」
     予記はナノナノの有嬉と共に、女の子たちを守るように前に出た。
    「何だとぅ……」
     心なしかエスカ頭のケチャップライスの赤が濃くなったようで……激おこ?
    「試食もしないで生意気ばかり言いおって! これでもくら……うがっ!?」
     予記と有嬉に向かって巨大な包丁が振り上げられたが、
    「させないよ!」
     背後から、店を飛び出してきた挑発班が一斉に攻撃をかける。
    「日本列島! 全国各地! ご当地愛がある限り! 北国のニュー☆ヒーロー羊飼丘・子羊、参上!!」
     子羊は山吹色のオーラで包まれた巨大な左腕でぶんなぐり、楓は槍を捻り込む。ゆみかは、ライドキャリバーに騎乗すると、
    「フルスロットルですよぉ~!」
     一発噴かして走り出しながら、動きを阻害する杭を撃ち込んだ。
     バランスを崩した怪人の刃は予記と有嬉をかすめ、血がしぶいたが深手ではない。すかさず祝が祭霊光を、王子がふわふわハートを飛ばして回復する。
    「なっ、何をするっ」
     背後からの攻撃にたたらを踏んだ怪人だったが、さすがにすぐに体勢を立て直して挑発班の方に向き直り、
    「お前ら、旨そうに食ってたじゃないか! 合格なんだろう!?」
    「ごめんなさい……嘘でした」
     茉莉は殺界形成を発動しながら、申し訳なさそうに謝る。
    「嘘!?」
    「完食大変でした。創作料理は好きなんですけど……ダークネス作というのは、ねェ」
    「何ッ!?」
    「つまり」
     アスティミロディアが仕方ない、というように首を振り。
    「不味かったということだな。ありゃ南極でもないわー……アヴィルネティオ、斬魔刀!」
     アスティミロディアは霊犬に命令を下すと、自らはシールドを掲げて体当たり。怪人はよろり、と絶望的によろめくと。
    「ま……不味かっただとっ……そ、そんなはずあるか! 根室とロシアの融合だぞ? 旨いに決まってる!!」
     怪人はますますケチャップライスを真っ赤にしてフライ返しを振り上げたが、
    「えーい、お返しだよ!」
     予記が火を噴くエアシューズで滑り込んでキックし、
    「合わせりゃいいってもんじゃないぞ。食に代わっておしおきだっ!」
     璃依が漆黒の弾を撃ち込む。
    「だあっ!」
     毒弾を躱そうとむやみやたらと振り回されたフライ返しは、料理への勇気ある感想を述べたアスティミロディアをひっぱたき、くるんとひっくり返した……すると。
    「ぷしゅう……」
     アスティミロディアは焼け焦げて倒れ込んでしまったではないか。
    「大変だ、今回復するぞ!」
     しかしすかさず祝から癒やしの光が放たれる。
    「よくもやりましたね!」
     楓がエアシューズから怒りの炎を迸らせて突っ込み、
    「本当の事を言われたからって、ヒドイのですぅ~!」
     ゆみかはキャリバーでくるくると走り回りつつ鋭く回転する杭を撃ち続け、
     茉莉は胃が重たいのか、お腹を押さえて槍から氷弾を発射し、子羊が、
    「いっくよー!」
     光と化した『ヒーロー☆ソード』で斬りつける。
     集中攻撃を受けて、ケチャップライスばかりかカツレツにまで真っ赤に血を上らせた怪人は、
    「ええい、わしは嘘つきと味音痴は、大嫌いだ!」
     フライ返しを掲げると、そこから激しいつむじ風が巻き起こった。
    「どっちが味音痴だよ!?」
     妙に油っぽいつむじ風は前衛を強烈に襲ったが、
    「させないよ!」
     予記が子羊を咄嗟に庇う。
    「ありがとっ!」
     子羊はつむじ風が去ると、予記の陰から素早く飛び出し、フライ返しをかいくぐって、
    「弾けろ☆」
    『ヒーロー☆ロッド』で腰のあたりを思いっきりひっぱたいた。
    「ぎゃっ!」
     眩しい火花が散る。かなり効いたようで、怪人は思わず腰を押さえた。
     もちろんその隙を逃す中後衛ではない。
    「喰らえ!」
     すかさず懐に入った璃依が雷を宿した拳で傷口を狙って連打し、茉莉はハンマーでひっぱたき、ゆみかは杭を撃ち込みまくる。
     もちろんその間に前衛は祝と王子が手分けして回復しまくっている。
    「く……くそう」
     よろりと膝をついた怪人を、回復成った前衛が、剣呑な目つきで取り囲み。
    「大分弱ってるようだね?」
    「うぐぐ、負けぬぞ!」
     苦し紛れに振り回された包丁は前衛をかすめたが、最初に比べればもう力もスピードもない。多少の傷はものともせず、前衛は怪人に群がっていく。予記は流星のような跳び蹴りを決め、楓は裁きの光を撃ち込んで、アスティミロディアは『Brinicle』を渾身の力で突き刺した。
    「一気に行きましょう!」
     茉莉は重たい胃をものともせずに足を高く振り上げると、影で怪人を縛り上げ、
    「とうっ!」
     ゆみかはキャリバーからジャンプすると、
    「札幌時計台キーック!」
     鋭い跳び蹴りを決めた。
    「王子、攻撃!」
     璃依はナノナノに攻撃を命じながら縛霊手で怪人を殴り抑え込み、勝負処とみたメディックの祝も、
    「名物にしたいなら、ちゃんと試作を重ねてからにして来てください、ほんと……」
     怪人の足下に回り込んで刃を立てる。サーヴァントたちも一斉に己の得意技で攻撃を仕掛け、予記の炎のキックが再びヒットし、アスティミロディアの影の刃が血の花を咲かす。
     ドォン……。
     重たい音を立てて、怪人が道路上に倒れ込んだ。全身ぼろぼろだし、あんなにカッカと真っ赤だったケチャップライスは白っぽく色あせてしまっている。しかし、
    「ろ、ロシアンタイガー様とわしの野望を……っ!」
     それでもまだしぶとく武器を握りしめ、立ち上がろうとする。
     クラッシャーの子羊と楓は視線を交わすと、
    「トドメだ! 潰れちゃえ!!」
     鬼神変とスターゲイザーが同時に炸裂!
    「ぐわあああぁ……!」
     野太い悲鳴は長く伸び……。
     オクローシカ・エスカロップ怪人は、夏仕様エスカロップを誕生させることなく、根室の地へと還ったのであった。

    ●普通が一番
    「――ふ、ゲテモノが生まれなくて良かった」
     アスティミロディアが武器を収めながら呟いた。
     祝がはたと手を叩いて。
    「ねえねえ、マスターたちをもう大丈夫って呼びにいってさ、まともなエスカロップ作ってもらおうよ!」
    「うんっ、賛成!」
     予記は満面の笑顔で両手を挙げてから、慌ててツンな表情を作り直した。
    「もちろんちゃんとしたヤツだよね?」
    「正統派で〆たいのですぅ」
     北海道ご当地ヒーローの2人は、ご当地料理を守れて安心した様子。
     璃依も嬉しそうに、
    「アタシも食べるよ、3人前―!」
     うぷ、と茉莉が口と胃を押さえた。胃もたれが悲しい。
     楓が店の方を振り向いて。
    「怪人が作ったオクローシカも残ってるはずですわね。アレも普通に食べたら美味しいかもしれませんわよね?」
     暑い夏でも、成長期の食欲は∞。

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年7月16日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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