礎 to 汝

    作者:西東西


     深夜。
     とあるオフィスビルの玄関口にて。
     4体のペナント怪人たちが、ぺらぺらの頭部をなびかせながら奇妙な踊りを踊っていた。
    「「「「定礎さま~! 定礎さま~!」」」」
     輪を描きながらステップを踏む怪人たちの中心には、両手足を縛られた複数の一般人男性の姿が。
     気絶状態の男性たちは、一様にぐったりと横たわっていたものの。
     やがて、そのうちの2人がカッと目を見開き――、
    「ムンッ!!!」
     気合いとともに両手の縄を引きちぎり、足の縄をはぎ取るや、ゆらりと立ちあがった。
     さらに別の男性が覚醒し、苦しみはじめたかと思うと、今度はその頭部がいびつに膨れあがったではないか!
    「ヌォォォオオオオオオ!!」
     叫びとともに、驚異的な力で両手足の縄を一気に引きちぎる。
     そこに立っていたのは。
     『定礎 平成26年10月竣工』と書かれた定礎頭の男――新たに誕生した、ご当地怪人であった。
     

    「――というヴィジョンを視たんですが……。どうやら、灼滅者の介入によって琵琶湖大橋の戦いが未然に防がれたことで、安土城怪人の勢力が新しい作戦を開始したみたいなんです」
     教室に集まった灼滅者たちの視線を受け、事件の説明をはじめたのは野々宮・迷宵(中学生エクスブレイン・dn0203)。
     安土城怪人配下のペナント怪人たちが一般人を誘拐し、深夜のビル街で怪しげな儀式を行うという。
     一般人は8名おり、全員、滋賀県から連れてこられた成人男性だ。
    「儀式の詳細はわかりません。ですが、巻きこまれた一般人の方々を見過ごすわけにはいきません。どうか、ペナント怪人の灼滅をお願いします……!」
     
     事件が発生するのは、深夜。
     オフィスビルの玄関口にある、定礎石の前となる。
    「儀式を行っているペナント怪人は4体で、全員が『ご当地ヒーロー』『WOKシールド』『バトルオーラ』に似たサイキックを扱います」
     ペナント怪人のうち1体は、他の3体にくらべて強力な攻撃を仕掛けるという。
     また4体は連携した動きも見せるため、敵の動きにも注意が必要だ。
    「それから、もしも一般人が逃げだした場合。怪人たちは、逃げた一般人を優先して攻撃します」
     つまり灼滅者と怪人が戦闘中であったとしても、怪人が一般人の逃亡に気づけば、灼滅者そっちのけで一般人を狙うということだ。
    「状況によっては一般人の命にかかわる可能性もあるので、先に避難させるのは、かなり難しいです……」
     迷宵は眉根をひそめるも、すぐに顔をあげ、続ける。
    「ただ、逃げさえしなければ、怪人たちが一般人を攻撃することはありません。なので一般人の保護については、戦闘終了後まで考えなくても大丈夫です」
     そう告げ、迷宵は胸に手を置き、ひと息ついた。
     
    「今回の事件ですが、戦闘が10分以上かかってしまった場合、集められた一般人の何人かが、強化一般人や、ご当地怪人となってしまいます」
     新たに生まれた強化一般人やご当地怪人は、ペナント怪人に加勢したり、逃走を図ったりするという。
    「時間をかければ十分に勝てる相手ですが、今回は時間に限りがあります。どうか気をつけて、任務にあたってくださいね」
     そう締めくくり、迷宵は灼滅者たちに向かって、深々と頭をさげた。


    参加者
    霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621)
    ピアット・ベルティン(リトルバヨネット・d04427)
    城橋・予記(お茶と神社愛好小学生・d05478)
    赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)
    御剣・譲治(デモニックストレンジャー・d16808)
    唯空・ミユ(藍玉・d18796)
    吉国・高斗(小樽の怪傑赤マフラー・d28262)
    ユヴェル・グラナート(嘆きのクローネ・d30078)

    ■リプレイ


     深夜。
     月明かりに照らされたオフィスビルの玄関口にて。
     ペナント怪人4体が踊る様子を、8人の灼滅者たちが物陰から見守っていた。
     輪になって踊る怪人たちは、まるでキャンプファイヤーを囲っているかのようだ。
     楽しげにも見えるが、今回は一般人に被害がおよぶ予知も出ているため、ゆっくり眺めてばかりもいられない。
    「『定礎』って、なんだか漢字も響きもカッコイイよね」
     怪人たちの傍にある定礎石を見やり、呟いたのは城橋・予記(お茶と神社愛好小学生・d05478)。
    「――って! 一般人や怪人も、思ってそうだよね!」
     単に感想としてそう思ったのであって、他意はないのだと慌てて言い添えれば、
    「そもそも。『ていそ』って、なんでしたっけ……」
     耳慣れない単語に、ユヴェル・グラナート(嘆きのクローネ・d30078)が首を傾げる。
    「定礎怪人は『定礎頭の男』だって、野々宮おねーちゃん言ってたよね? ってことは、『建築物に置かれている竣工年月日等を彫りこんだ石』のことじゃないかなぁ」
     ピアット・ベルティン(リトルバヨネット・d04427)の説明を受け、ユヴェルは自分の記憶をたどる。
     言われてみればビル等の入口に、そういったプレートや石の類が置かれているのを、見たことがあった……ような気がする。
    「元々おかしな怪人たちが、ますます意味不明なことしてますけど。一般人の命がかかってるなら、細かいことはおいて助けますかね~」
    「関わらなくて良い人たちを、巻きこむのは、許せない」
     用意していたヘッドライトを装着し、霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621)と御剣・譲治(デモニックストレンジャー・d16808)が、準備を整える。
    「ひとを強制闇落ちとか、強化一般人にする儀式は、絶対に止めないと」
     赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)も持参したポータブルライトを確認し、仲間たちを振りかえった。
    「一般人の命運がかかっている以上、いつもより気合を入れないとな!」
     吉国・高斗(小樽の怪傑赤マフラー・d28262)の言葉に、一同は改めて気を引き締める。
     謎の儀式を完全阻止するためには、10分以内での決着を目指ざさねばならない。
    「Schalter」
     解除コードを呟くユヴェルの声を、耳に。
     唯空・ミユ(藍玉・d18796)は、手の内にあるスレイヤーカードを握りしめる。
    「一般人の方々が怪我なく、敵となることもなく帰れるよう。尽くしましょう」
     静かに立ちあがり、物陰から一歩、踏みだした。


     灼滅者たちの行動開始をよそに、ぺらぺら頭のペナント怪人たちは、縛りあげた一般人を囲んで踊り続けていた。
     リーダーと思しき1体が、仲間たちへ檄(げき)を飛ばす。
    「手足はもちろんペナントの先まで美しく! キビキビと踊るペナッ!」
    「ハイッ! 定礎さま~! 定礎さま~!」
    「おおっ! おまえ、なかなか筋がいい――」
     と、声の主を見やり。
     頭部がペナントの形状でないことに気づいたリーダーが、慌てて足を止め、構えた。
    「な、なにやつペナッ!?」
     ドサクサにまぎれて輪に入り、怪人たちと一緒に踊っていたのは、刑一だ。
    「ばれた以上は――」
     不敵な笑みを浮かべスレイヤーカードを掲げると、手の内に顕現した妖の槍を振りかぶる。
    「先手必勝! デストローイ!!」
     捻りを加えた一撃は別のペナント怪人に阻まれ、リーダーには届かない。
    「きさま、灼滅者か!」
    「おっと。相手になるのは、俺ひとりじゃありませんよ」
     一足飛びに距離をおいた刑一のそばには、月を背にたたずむ、7人の灼滅者たち。
     中心に立つのは、月光に映える白ジャージに赤マフラーをなびかせた高斗だ。
     仲間たちが一斉に明かりを灯すのにあわせ、ビシッとカッコイイポーズを決め、告げる。
    「小樽の怪傑赤マフラー参上! お前たちの悪事は、ここまでだ!」
     宣言とともに大地を押し蹴り、ローラーダッシュで間合いへ接近。
     刑一の一撃を受けたペナント怪人へ向け、炎をまとった激しい蹴りを叩きこむ。
    「一般の人たちを、ダークネスになんてさせないよ! 小江戸の緋色が、阻止してあげる!」
     続く緋色は花とちりめんの装飾が施された『華槍』で空を薙ぎ、冷気のつららを撃ちはなつ。
     だが、攻撃は狙った怪人に命中することなく、別の怪人が相殺。
     間をおかず、怪人の1体からミユめがけ怒涛の連撃が繰りだされるも、己の片腕を異形巨大化させたピアットが攻撃をかばい受け、踏みとどまった。
    「その企み、土台ごと叩きつぶしてあげるの!」
     攻撃がやむと同時に巨腕を振りかぶり、渾身の一撃を叩きこむ。
    「あの方たちを渡すわけにはいきません。いざ、参ります……!」
     地に伏せた怪人に連撃を繰りだすべく、ミユも異形巨大化させた腕を振りおろす。
     しかし、
    「灼滅者ふぜいが、調子にのるなッペナ!!」
    「――唯空、さん!」
     ペナントリーダーと、ユヴェルが飛びだしたのは、同時。
     間一髪、拳が届く前に攻撃の間合いに踏みこんだものの、追撃が加わった一撃はことさらに重く、ユヴェルはミユを巻きこみ、後方へ吹き飛ばされた。
     すぐに予記のナノナノ『有嬉』が駆けつけ、ふわふわハートを飛ばすと同時に、2人を背にかばい、守る。
    (「……弱そうに、見える、のに」)
     ユヴェルは胸中でうめきながら、ミユの支えを受け身体を起こす。
     と、その時だ。
    「ひ、ヒイイイィィィ!」
    「くそッ! なんで縛られてるんだ!」
     殺気の応酬を受け、人質となっていた一般人たちが次々と目を覚ましはじめた。
     予記は手早くキャスケット帽をかぶり直すと、単身、一般人たちの元へ走った。
     縄をほどいて回る余裕はない。
     それでも、
    「ボクたちが守るから、安心して!」
     せめて動揺せずにいてくれたらと、一人一人に声をかけてまわる。
     一方、譲治は仲間と敵のやりとりを冷静に観察し、その編成を見極めようとしていた。
    (「さっきから、ペナントリーダーや弱った敵への攻撃は、ほとんど阻まれてる」)
     ――防衛に重きをおき、儀式の完遂を目指すべく組まれた編成。
    「連携するらしい、けど。数は、俺たちのほうが多い」
     譲治は最も攻撃を受けている怪人めがけ、妖の槍を繰りだした。
     しかし案の定、攻撃は別の怪人がかばい受け、ダメージが分散してしまう。
    「壁役3体とは用心深いことです。となれば、俺も本気を出すしかないようですね……」
     刑一は銀の双眸をすっと細めたかと思うと、
    「執拗な弁慶の泣き所攻撃ッ!!」
     次の瞬間には怪人1体の死角に飛びこみ、槍の穂先でザクザクと脛(すね)への攻撃を重ねる。
    「あででで! 痛ッ! 痛いペナ!」
     逃げ惑う怪人が、背を向ける。
     その瞬間を、高斗が見逃すはずもない。
    「スキあり! 赤マフラーキーーック!!」
     流星のごとき煌めきが弧を描き、重力を宿した飛び蹴りが炸裂!
     地に伏せた怪人に緋色が迫り、気づいた別の怪人がかばいに入ろうとするも、
    「行かせはしません!」
     即座にミユがマテリアルロッドを掲げ、招いた雷で弾き飛ばした。
     ――今なら、倒せる。
     そう判じた緋色は迷うことなく武器を持ち替え、マテリアルロッドを振りあげて。
    「いちげき! ひっさつ!!」
     気合いとともに、一閃。
     打ち据えた怪人の身体を魔力の奔流が駆けめぐり、爆散。
     ようやく、1体の灼滅に成功する。
     だがペナントリーダーとて、やられてばかりではなかった。
    「儀式の邪魔は、許さんペナ!!」
     両手の内に練りあげた力を、緋色めがけ撃ちはなつ。
     はなたれたオーラは目標を捕捉し、まっすぐに飛んでいく。
    「だめなのっ!」
     ふいにピアットの声が迫ったかと思うと、緋色は衝撃を受け、はね飛ばされた。
     痛みに身を起こす。
     己の身に怪我はない、けれど。
    「すぐ、回復するよ……!」
     大地の色をした靴で軽快に地を蹴り、予記が怪人たちの攻撃を避けながら、駆けつけた。
     すぐに縛霊手を構え、指先に集めた霊力をピアットに注ぎこむ。
     傷口は癒えても、受けた痛みはすぐには消えない。
    「これくらい、平気なの」
     それでもピアットは立ちあがり、戦線へと復帰する。
     ユヴェルは聖剣を手に、迫る怪人へ向け、白光をはなつ斬撃を見舞った。
     敵を裂く手ごたえとともに、己の肉体が『聖戦士化』されていくのが、わかる。
    (「俺は、壁としては、頼りないかもしれないけど」)
     次々と攻撃を繰りだす仲間たちの背中を、前に。
     両の足を踏みしめ、ふたたび、聖剣を構えた。


     積極攻勢を貫く灼滅者たちに、こまめな防御と回復、そして痛烈な一撃を見舞う怪人たち。
     繰りかえされる攻防を一般人たちが固唾をのんで見守るなか、刑一は変わらぬ調子で、怪人へと攻撃を繰りだしていた。
    「リア充じゃないですけど、爆発しろぉ!」
     振りあげたマテリアルロッドで怪人を殴り倒せば、足並みをそろえた譲治が、すぐさま間合いへと飛びこむ。
    「あの人たちを、ご当地怪人や強化一般人には、させない」
     撃ちこまれた百の拳が、ぼろぼろになった怪人の身体をさらに歪ませていく。
     やがて外からの打撃と、刑一に受けた魔力の奔流が爆ぜ、どーんと爆発。
     跡形もなく散っていった。
     ようやく3体目を灼滅した、この時。
     すでに、8分が過ぎようとしていた。
     事前の相談では、『8分経過時、撃破数が2体以下、かつ残り2分で倒しきれないと判断した場合、一部の灼滅者の立ち位置を変更する』と決めていた。
     最悪の想定より多く怪人を灼滅しているとはいえ、残る1体はペナントリーダーだ。
    「よくも同志たちを、と言いたいところだが、お遊びはここまでだペナ!」
     3体の怪人が身をていして守り続けたかいあって、リーダーの体力には、今なお余裕がみてとれる。
     その上リーダーの一撃は脅威的で、ナノナノ『有嬉』は仲間たちへの攻撃を幾度かかばい受けた結果、すでに消滅してしまった。
     このまま戦えば、敵の攻撃により灼滅者たちは回復に手を裂かねばならず、10分以内の灼滅は、叶うかどうか、わからない。
     ――迷っている時間は、ない。
    「編成変更、しますか?」
     マテリアルロッドを手に雷をはなち、ミユが仲間たちへ問いかける。
     けれど。
    「まだまだいけますとも!」
    「ピア、最後までしっかり攻撃をガードするの、頑張るの!」
    「ボクも。このまま押しきれそうなら、加勢するよ」
    「あのひとたちが怪人になってしまうのは、可哀想、ですし。こっちも困ります、から」
     戦闘開始から変わらぬ調子の、刑一。
     すでに、満身創痍のピアット。
     『有嬉』の分まで回復に奔走していた予記に続き、言葉を選ぶように、ユヴェルがつぶやく。
    「守りを固めれば、俺たちなら増援にも耐えきれるだろうさ。でも!」
    「希望がある限り、死力を尽くす。それが、ヒーローだよ!」
     宿敵が相手だからこそ、高斗と緋色の2人は、その瞳に強い闘志を燃やした。
     残る譲治もまた、敵を見据えたまま、頷く。
     ――自分と同じような目には。誰ひとり、あわせたくない。
     だから。
    「最後まで、諦めない」
     必ずここで、阻止してみせる。
     強固な決意を胸に、譲治は怪人の攻撃を受け止め、反対に、手にした妖の槍でその身を貫いた。
    「愚問、でしたね」
     わずかに微笑んだミユはすぐに己の腕を異形化させ、譲治を援護すべく殴りかかる。
     2人が飛び退いたところへ仕掛けたのは、ユヴェルだ。
    「もう、やられはしません」
     足元から伸びた影がふくれあがり、一瞬にしてペナントリーダーを丸呑みにする。
    「くっ! あがいたところで、もう遅いペナ!!」
     現れたトラウマを振り払うように、怪人は拳を固め、ユヴェルを狙った。
    「それは、こっちのセリフなの!」
    「いい加減、怪人らしく爆発四散するのです! うりゃー!」
     ピアットがユヴェルをかばうべく身を投げ、刑一が援護するべく死角から脛を執拗に切り刻む。
     攻撃を完全に阻むには至らず、ピアットが連撃のいくらかを受け、はね飛ばされた。
     それでも、ペナントリーダーのすきを作るには、充分。
     すかさず踏みこんだのは、攻め手に回った予記だ。
     たなびく空色のオーラに、流星のきらめきが、重なる。
     重力を宿した飛び蹴りをはなつと同時に、腹の底から、叫んだ。
    「ベルティン先輩!」
     声は、予記の攻撃の間に体勢をたて直した、ピアットへ。
     エアシューズをその足に、はね飛ばされた場所から地を蹴り、ぐんぐんと加速する。
     摩擦を受け、燃えあがる靴は少女の意思を映すかのよう。
    「キャンプファイヤーの代わりに、ペナント燃やしてあげるの!」
     叩きこまれた脚から、炎がペナント頭に燃え移る。
     ペナントリーダーは、よもやあと数分で儀式が完成するというところで、怒涛の反撃をくらうとは思ってもいなかった。
     余裕を失ったからこそ、ここへきて初めて、判断を誤った。
     すなわち。
     回復より、攻撃を優先させたのだ。
    「灼滅者ごときに、やられる私ではないペナ!!」
     さらにピアットへ追い撃ちをかけようとするも、縛霊手を構えたユヴェルが走り、一撃を踏み耐える。
     仲間たちに回復を託し、怪人に迫ったのは、緋色。
    「ここが、年貢の納めどきだよ!」
     怪人の背中から掴みかかり、高く持ちあげると、
    「小江戸――ダイナミック!!」
     勢いよく地面に叩きつけ、ご当地パワーで大爆発を巻きおこす。
     大地に叩きつけられた怪人を待っていたのは、高斗だ。
    「お前の命運は、ここまでだ!」
     宣言とともに、高く、まっすぐに飛びあがり。
     ご当地・北海道の力をその身に宿し、急降下。
    「くらえ! 地獄坂キーーーーーック!!」
     赤いマフラーが一筋の線を描き、正義の蹴りが怪人の身をまっすぐに穿った。
     最後に回復を行っていれば、怪人たちの儀式は完成し、増援が現れていた。
     そのことに気づいた時には、もう遅い。
    「こ、このままでは終わらんペナァァァァ!!」
     ペナントリーダーの身体はひときわ大きな爆発を起こし、煙がひいた後には、影も形も残っていなかった。
     ――ギリギリの、勝利。
     それでも。
     だれひとり犠牲を出さずにすんだことが、誇らしく。
     灼滅者たちは視線を交わすと、晴れやかに笑いあった。


     戦闘終了後。
     予記とユヴェルが率先して一般人を解放してまわり、最寄りの駅まで見送った。
    「結局、真の目的はわかりませんでしたね」
    「一体、何をしようとしていたんでしょうか」
    「うーん。石垣でも作ろうとしたのかなぁ?」
     刑一とミユ、ピアットが首をひねり、
    「この定礎石、儀式に必要なものだったりするのかな?」
     緋色が周辺を調べるも、これといった痕跡は見当たらない。
    「ともかく、この場は撤収しようぜ」
     あくびを噛みころした高斗の提案に、仲間たちが次々とビルを後にする。

     譲治は人影のなくなった定礎石の前に、最後まで佇み。
    (「――良かった」)
     己の手を、じっと見つめ。
     確かめるように、強く、握りしめた。
     
     

    作者:西東西 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年10月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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