定礎儀式 in ダム

    ●某ダム建設現場にて
    「定礎は~建物の礎~」
     夜更けの、とあるダム建設現場の一角に、怪しげな祝詞……というよりは呪文が流れている。
    「礎は~建物の基礎~基礎がないと~建物は建たない~」
     しかも当たり前のことしか言ってないし。けれど良く聞くと、
    「定礎は~ご当地の礎~しかるに~ここに人々を捧げ供えて~」
     なんだか物騒。
     呪文を唱えているのは、3体のペナント怪人。彼らはダムの『定礎石』の前で、怪しい儀式に没頭している。
     見れば、立派で真新しい定礎石には、3名の一般人が縛り付けられているではないか。一般人は意識を失っているらしく、ぐったりと定礎石に寄りかかっている。
     ペナント怪人のひとりが呟く。
    「このダムの定礎式は、吉日を選んでつい先日行われたばかりっぺな。きっとご当地パワーも強いに違いないっぺな。定礎石の力と、我らの呪文で、この一般人共を何としても覚醒させてみせるっぺな……」
     そしてまた、一心に呪文を唱え念を送る……と。
     一般人のひとりが、ひどく重そうに頭を起こした。
    「おお!」
     ペナント怪人たちが色めき立つ。重そうなのも当たり前、何とその一般人の頭が『定礎 2014年10月』と記された四角い石になっているではないか!
    「成功っぺな!」
    「また1人、定礎怪人の誕生っぺな!」
     縄を引きちぎって立ち上がった定礎怪人を囲み、ペナント怪人は喜びに踊り出した。
     
    ●武蔵坂学園
    「琵琶湖のご当地怪人って、ホンットに打たれ強いですよね」
     春祭・典(高校生エクスブレイン・dn0058)がホトホト呆れたように言った。
     琵琶湖大橋の戦いを灼滅者たちが阻止したのはつい先日。なのに、安土城怪人の勢力は、もう新たな作戦を開始した。
    「ペナント怪人が、一般人を誘拐して深夜に怪しげな儀式を行うようです」
     ペナント怪人は、拉致してきた一般人を、定礎石で行う儀式により、定礎怪人、または強化一般人として覚醒させようとするのだ。
    「僕が予知したのは、この建設中のダムで」
     典は地図をガサガサと広げて指さした。
    「定礎石はこのあたり、いずれダム公園になる予定の、資材置き場の隅にあります」
     周囲には巨大な資材が沢山積んであるので、隠れ場所には不自由しない。
    「介入するタイミングは、ペナント怪人たちが儀式に没頭しだした頃がいいでしょう……しかし」
     そこまで言うと、典は困った顔をして、
    「戦闘開始から10分以上経ってしまうと、集められた一般人の何人かが、定礎怪人か、強化一般人として覚醒してしまうのです」
     新たに生まれた怪人は、ペナント怪人に加勢したり、逃亡を図ったりする可能性がある。
     だからと言って、覚醒する前の一般人を先に保護したり、逃がしてしまうことも難しい。ペナント怪人は、逃げ出した一般人を真っ先に攻撃してくるからだ。転じれば、一般人はペナント怪人にとっても貴重な人材、逃げ出さなければ攻撃してくることはないので、保護については考えなくてもよいということになる。
    「そういう情況なので、あくまでペナント怪人を速攻で撃破することに集中するのが得策かと思います」
     典は心配そうに。
    「ペナント怪人3体というのは、皆さんの実力でしたら、普通に戦えば難しくない相手ですが、10分以内ということになると、少々苦労するかもしれません。油断せずに、きちんと計画を立てて臨んで下さいね!」


    参加者
    アナスタシア・ケレンスキー(チェレステの瞳・d00044)
    龍海・柊夜(牙ヲ折ル者・d01176)
    芥川・真琴(レティクル座のカミサマ・d03339)
    白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)
    ナハトムジーク・フィルツェーン(黎明の道化師・d12478)
    宮代・庵(小学生神薙使い・d15709)
    双葉・幸喜(正義の相撲系魔法少女・d18781)
    雛護・美鶴(風の吹くまま・d20700)

    ■リプレイ

    ●某ダム建設現場
    『礎は~建物の基礎~』
     囂々とした川音を打ち消すように、怪しい呪文が聞こえる。ライトが現場のそこかしこを照らしているとはいえ、深い山中、人工の光は山の闇に到底打ち勝てず、まだらに暗がりを残す。そんな景観だからか、定礎石前の儀式は、術者がアレな割には神秘的に見える。
     灼滅者たちは、巨大なコンクリートの土管の中から、そのアヤシイ儀式を観察していた。
    「ぬぅ……無垢な一般人をよくわからない怪人を作るためのよくわからない儀式のために誘拐するなんて許せませんね!」
     宮代・庵(小学生神薙使い・d15709)がメガネをくいっとやりながら、憤りを抑えきれない様子で囁いた。
     アナスタシア・ケレンスキー(チェレステの瞳・d00044)が頷いて、
    「定礎怪人を増やそうとしてる理由は分からないけど、一般人を闇堕ちさせる儀式を見逃すわけにはいかないよね」
    「儀式の成就をくい止めるのを第一に考えましょう」
     白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)も力強く同意する。
    「あいつら頭は愉快なんだけどなぁ、地味にわけ分かんないよね」
     ナハトムジーク・フィルツェーン(黎明の道化師・d12478)がニヤリと笑みつつ。
    「要するに10分以内にしとめればよろしいんだろ?」
     彼は一般人救出にはあまり興味はないのだが、敵が増えるのは面倒だ。
    「そういうことですね!」
     双葉・幸喜(正義の相撲系魔法少女・d18781)は宿敵との戦いに、すでにメラメラ燃えている。
    「見た目や普段の作戦から軽視されがちですけれど、ご当地怪人は侮れません! なんとしても企みを阻止しなければっ」
     つい声が大きくなった幸喜を、静かに、と龍海・柊夜(牙ヲ折ル者・d01176)が穏やかに宥め、
    「ぼちぼちですよ」
    『定礎は~ご当地の礎~』
     気づけば、ペナント怪人たちの呪文の声が熱っぽく大きくなっている。しかも、定礎石に縛り付けられている一般人たちの周囲に、目には見えないがエネルギーの磁場のようなものが渦巻いているのを、灼滅者たちの鋭敏な感覚は捉えた。
    「儀式は佳境、ってカンジだね」
     雛護・美鶴(風の吹くまま・d20700)が緊張した様子で腕時計を確かめ、
    「何考えてるんだろう、ねー……」
     芥川・真琴(レティクル座のカミサマ・d03339)が眠そうに呟きながらSCを取り出し、仲間たちも、全く何考えてんだか、と思いながらカードに触れる。
    「準備はいいかなっ……じゃ……Goだよっ!」
     美鶴の合図で、灼滅者たちは一斉に土管から飛び出した。

    ●タイムバトル・スタート
    「マジピュア・ウェイクアップ!」
     ジュンは星や花を散らしながら装備と武器を纏い、ナハトムジークは、
    「ここは不意打ちしとくとこだよね」
     射程に入ったと見るや『フィンフツェーン』を構え、灼滅者たちの足音と気配に驚いて振り向いたペナント怪人に妖冷弾を撃ち込んだ。
    「な、何だっぺな、お前たちは……うわっ!」
     仲間を庇うように前に出た1体が氷に覆われる。一際体格もいいし、おそらくこいつが盾役であろう。
     柊夜は、氷に覆われ一瞬固まった盾役をすりぬけると、その傍ら、ぎらりと凶悪に輝く手裏剣を持った攻撃役とおぼしき一体を、思いっきりシールドで殴りつけた。まずは盾役から集中撃破する作戦になっているので、柊夜はダーゲット以外の敵を引きつけておくつもりだ。
     その間に仲間たちは、作戦通りに盾役を囲む。
    「いますぐその一般人の人たちを返しなさい! そしてさっさと灼滅されちゃってください!」
     庵が高飛車に叫びながら異形化した腕で殴りつけ、幸喜はぐいと前に突き出した掌から光輪を発射する。
    「熱は命、ココロは焔……」
     真琴は炎を載せた刃で斬りつけると、ついでに輝く十字架を降臨させ、
    「一般人に手出しした以上、絶対許さないんだからね! 歯を食いしばりなさーいっ」
     美鶴は飛び込むなり雷を宿した拳でアッパーカットをかます。
    「制限時間内にきっちり灼滅するよ!」
     アナスタシアは『狗鷲』を振り回し、
    「私は希望の戦士、ピュア・ホワイト! 邪悪な儀式はそこまでですよっ、ホーリーフィールド!」
     ジュンは縛霊手を掲げて結界を張り……その時。
    「キサマら、灼滅者っぺな!?」
     後ろの方にいた、白装束の術士っぽいペナント怪人が叫んだ。
    「灼滅者か! またわしらの邪魔をするつもりっぺな!?」
     武器を構えて柊夜とにらみあっていた攻撃役が、ガッと踏み出すと柊夜の襟首を取り、
    「ロックフィルダイナミックっぺな!」
    「うわあっ!」
     地面に思いっきり投げ落とした。
    「柊夜先輩! 回復しようか……わっ」
     メディックの美鶴が駆け寄ろうとするが、術士の投げた毒手裏剣に阻まれる。
     柊夜は押し止めるとよろりと立ち上がり、
    「まだ大丈夫です……まずは攻撃に専念してください。敵の盾役も回復してるようですし」
     攻撃役と術士の攻撃の間に、盾役は多少の回復を自ら施していたようで、またずいと前に出てくると。
    「この儀式はなんとしても最後まで……うぎゃっ」
    「絶対させないわよっ! 火だるまになっちゃえ!」
     台詞を最後まで言わせず、美鶴と真琴がタイミングを合わせ、炎を噴くエアシューズで蹴りつけた。庵は大鎌を死神よろしく振り下ろし、
    「ペナント怪人て個性ないよなー、こう暗いと見分けつかないね。新人の墓石みたいなのの方が、まだマシじゃないかねえ?」
     ナハトムジークは軽口で挑発しながら、槍でぷっすりとペナント頭に穴をあける。
    「ドカーンといくよ!」
     続いてアナスタシアはハンマーで殴りつけ、幸喜は、
    「どすこーい!」
     気合い一発、魔法の矢を撃ち込む。
     一方柊夜は、灼滅者の背後に回り込もうとしていた術士を見つけ、
    「そうはいきませんよ!」
     シールドで殴りつける。
    「なにするだ、痛いっぺな!」
     殴られて血が上った術士は、柊夜に向けて手裏剣を振り回してつっこんできた。
    「……うっ」
     鋭い手裏剣の刃に切り裂かれ、血がしぶく。
    「柊夜先輩が……早く1体でも減らさなきゃ! マジピュア・ハートフラッシュ!」」
     ジュンは柊夜のガードに入りつつ、盾役にビームを発射。
    「うげえっ!」
     ビームに鳩尾を直撃された盾役は、
    「うぐぐ、ビームのお返しだっぺな!」
     怒って撃ち返す。そこにすかさず、攻撃役が大量の手裏剣を蒔いた。
     ドババババーン!
     爆竹のように手裏剣が爆発した。
    「大変! 今回復するからね! みんな、まだまだ倒れないでね!!」
     畳みかける前衛への攻撃に、たまらず美鶴が進み出て、すでに深手を負っている柊夜に癒しの符を投げる。真琴も聖剣を抜くと清らかな風を吹かせた。
    「ありがとう……まだまだいきますよ!」
     回復を受けた柊夜は、神霊剣を抜いて盾役に斬りつけた……が、ぎりぎりで躱される。しかし、躱した所には庵の鬼の拳が待ちうけていてジャストヒット!
    「流石わたしですね!」
     得意げに眼鏡くいっ。その隙を逃さず、ジュンは結界を張り直し、ナハトムジークはFest der Narren【Gran Partita】から銃弾を放った。幸喜は光輪を、盾役の先ほど痛めた腹に命中させ、アナスタシアは遠心力で勢いをつけたハンマーを叩きつける。
    「こ……この野郎っ……ぺな」
     盾役は接近していたアナスタシアを蹴ろうとしたが、よろけて外してしまう。相当参っているようだ。
    「しっかりしろっぺな!」
     攻撃役が前に出て、毒手裏剣を前衛に投げつける。盾役はよろめきつつも、術士に、
    「か、回復役を……」
     指示を出し、美鶴を指さした。
    「わかったっぺな! スプラッシュビームだっぺな!!」
    「!」
     美鶴は身構えたが、
    「させません!」
     ジュンが魔法少女衣装をひらりとさせて射線に飛び込んだ。
    「ジュンくん!」
     庇われた美鶴がジュンに駆け寄って素早く符を貼る。真琴も再び聖剣を抜いて前衛の解毒を行う。
    「さっさと片づけてしまいましょう!」
     庵が死神の鎌を振り下ろし、柊夜の『ヴェルスシェード』が盾役を喰らい込み、ナハトムジークが楽しげに、
    「ペナントの氷漬けなんてどうだい?」
     氷弾をぶちこんで。
     ピシイッ。
     盾役の全身が凍り付く。そして一瞬の後。

     どっかあああん。

    「ああ、兄弟、なんてこったっぺな……」
     あっという間に盾役が倒され、呆然と立ちすくむ攻撃役に、
    「次行くよ!」
     アナスタシアがハンマーを振り上げ、続けて幸喜が放った魔法の矢が、ぶっすりと肩を貫通した。
    「ひええっ」
     盾役に比べると、やはりダメージが目に見えて大きい。
    「マジピュア・シューティングスターキーック!」
     回復なったジュンも、キラキラのキックを見舞う。
    「正面から戦うのは得策じゃないっぺな!」
     術士が叫んだ。
    「資材の陰から攻撃して、時間を稼ぐっぺ!」
    「わかったっぺな、定礎石の覚醒を待つっぺな?」
     ペナント怪人たちは、ひらりと傍らの大きな四角いコンクリートの陰に隠れた。
    「わたしたちから逃げようなんて、馬鹿ですね!」
     庵が叫んだ通り、もちろん大人しく時間を稼がせてやるつもりはない。灼滅者たちは躊躇なく、敵が潜んだ資材の向こうへと飛び込んだ。

    ●5分経過
     激しい戦いは続き――。
    「5分経ったよ!」
     美鶴が、術士のビームに撃たれひっくり返ってしまった真琴に符を投げてから、腕時計をちらりと見て叫んだ。
     戦闘開始から5分が経過した。
     ナハトムジークは、絶賛包囲中の攻撃役の弱りっぷりを見やり、
    「あ、そう、まだ5分? いけそうじゃない、だってコイツもうすぐ倒れるよね?」
     軽い口調で敵を挑発し、味方を鼓舞してガンナイフの引き金を引く。
    「ぐあっ……」
     胸に銃弾を受けた攻撃役は大きく後ろによろけた。そこにすかさず背後の資材から飛び降りたジュンが、スターゲイザーを見舞う。今度は前のめりになったターゲットに、
    「何が何でも灼滅です!」
     情け容赦なく、庵のデスサイズが振り下ろされ。

     どっかあああん。

     2体目も滅びた。
     灼滅者たちは定礎石を顧みる。そこには変わらず一般人3人がぐったりと縛り付けられていて、目覚める様子もない。しかしそこに渦巻く怪しいエネルギーは、戦闘開始時より明かに強くなっているのが感じられる。
     敵はあと1体。時間内に片付けられそうな目途は立ってきた。だが残ったのは、ご当地怪人にしては頭の回りそうな術士だ。それに灼滅者たちにもダメージが蓄積しているし、油断はできない。
    「さて」
     灼滅者たちは気合いを入れ直して、敵の姿を探す。ラストターゲットは、こそこそと更に向こうの資材に逃げ込もうとしていた。
    「まずは毒のお返しだよ!」
     アナスタシアが鉤爪つきの注射器に毒液を満たしながら真っ先に駆けだし、
    「停まりなさーい!」
     幸喜はちらりと見えた白装束の背中に向けて、狙い違わず魔法の矢を命中させた。
    「ぎゃっ!」
     ミサイルに撃たれてバランスを崩し、術士はコンクリ塊の向こうに倒れ込む。
    「ナイスヒット!」
     それをアナスタシアの注射器の鉤爪ががっちりと捕まえ、射出された針から毒液をたっぷりと注入する。
    「う……ここでやられるわけにはいかんっぺな……」
     みるみるボロボロになった術士は、やぶれかぶれのように腕を振り回し、
    「わあっ!」
     また爆発する手裏剣を振りまいた。距離を詰めていた前衛に、激しい爆風と金属片が襲いかかる。
    「うぅ……」
    「痛ったぁ……」
     咄嗟にクラッシャーを庇った柊夜とジュンが呻いた。ずっと前のめりで戦っているので、ディフェンダーはボロボロだ。
    「大丈夫? 柊夜先輩、ジュンくん、一旦下がったら?」
     美鶴と真琴がすかさずヒールを施すが、戦闘中に回復しきれるものではない。しかし、
    「いや、もう終わるだろうから」
    「ここで頑張らなくては、ピュア・ホワイトの名がすたります」
     2人は気丈に踏みとどまる。
    「うん、手っ取り早く終わらせちゃおうね」
     ナハトムジークが薄笑いを浮かべながら怪力無双を発動し、傍らの大きな金属部品をひょいと持ち上げ、まだ逃げようとしているペナント怪人の向こうに投げて逃げ道を塞いだ。
    「グッドアイディアです……たあーっ、大相撲ビームっ!」
     立ちすくんだ敵に、すかさず幸喜が渾身のつっぱりから巨大力士型のビームを放った。光の力士は高速すり足で接近し、敵をどかーんと跳ね飛ばした。
    「うぎゃあっ!」
     跳ね飛ばされた敵がまだ地面に落ちる前に、柊夜の影が喰らいこみ、ジュンのビームが追い打ちをかける。そこにクラッシャーたちがトドメを刺そうと一斉に群がっていく……が、突然真琴が。
    「あ-。ちょっと待ってー、折角だから、やっつける前にさくっと聞いておきたいことがあんのー……」
     緊張感のない口調で仲間を止めた。真琴は、倒れて呻いている術士を見下ろして、
    「色んな所で似たようなことしてるけれど、次はどういうイベントの仕込みー……?」
     幸喜も、
    「定礎のご当地パワーを利用するだけでなく、わざわざ怪人にすると言う事は……ご当地パワーをどこか別の場所……琵琶湖とかに運ぶとか?」
     興味津々で質問を投げかける。
     ペナント怪人は灼滅者たちを憎々しげに睨み付けると、
    「しゃ、灼滅者ごときの質問に答える筋合いは無いッ! 大体お前らがわしらの味方をしておれば……ぐぼっ」
     真琴は台詞半ばで、エアシューズに炎を載せ乱暴に腹を踏みつけた。
    「あっそ、答える気が無いならいいんだー。時間ないしー……5100度の炎に包まれて、おやすみなさい、良い夢を」
     真琴が下がり、クラッシャー陣が今度こそとばかりに飛びかかっていく。庵は鬼神変を叩きこみ、ナハトムジークの氷弾が炸裂し、
    「これでトドメ、行くよ!」
     アナスタシアの注射針がぶっすりと……。

     ――どっかああん!

     ひときわ大きく響いた爆発音が収まった頃。
    「8分!」
     美鶴の誇らしげな声が響いた。

    ●やっぱりよくわからない
    「ああ……疲れたね」
     灼滅者たちは、お尻が冷えるのも構わずに、傍らの資材や地面にへたりこんだ。無事任務は果たしたが、こちらのダメージもかなりのものだ。
    「一般人の人、起きる様子がないね……よいしょ」
     アナスタシアが疲れた体にむち打って、一般人にかけられていた縄を解き、持参の毛布で包んでやる。現場を離れたら、ジュンが救急車を呼ぶ手はずだ。
    「……真琴さん、何をしてるのですか?」
     庵が眼鏡をくいっとして尋ねた。真琴が定礎石の前で飛び跳ね始めている。
    「ペナント怪人の儀式の実践―……定礎、定礎」
     しばし踊っていたが、やはり何も起こらず……諦めた真琴は、仲間に向かって首を振り。
    「やっぱりご当地怪人の考えることは、良くわかりませんでしたー……とさ」

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年10月24日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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