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新月の夜。
廃園となった遊園地の真中にて。
「イテェ……クッソイテェ……。オレは勝った、灼滅者に勝ったんだ……。なのにあの女。このオレを、オレを狗の餌なんぞにしやがってェエエエエ!!!!」
怨嗟を吐きながら這いずる少年の前に現れたのは、ひとりの少女。
「大丈夫、私にはあなたが見えます。灼滅されてなお、この場に残留思念が囚われているのですね」
「クソ生意気なガキども……あいつらさえいなけりゃ、あんな女、返り討ちにしてやったのに……!」
「私は『慈愛のコルネリウス』。傷つき、嘆く者を見捨てたりはしません」
「もう一度オレの前に現れてみろ……! 一人残らずバラして、オレと同じ苦しみを味あわせてやる!!」
「……プレスター・ジョン、プレスター・ジョン、聞こえますか? この哀れな『廃園の王』を、あなたの国にかくまってください」
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「約一年ほど前。『ハイジ』という名のデモノイドロードの対処を依頼した。結果は一歩届かず、撤退となったのだが――」
灼滅者たちが去った後、重傷を負ったハイジは現れたヴァンパイアに『処分』され、灼滅されていたらしい。
「今回、その『ハイジ』の残留思念にコルネリウスが力を与え、どこかへ送ろうとしている」
大淫魔スキュラのように、残留思念を集めて八犬士のスペアを作ろうとしていた前例もある。
高位のダークネスならば、残留思念に力を与えることは不可能ではないのだろう。
「力を与えられた『ハイジ』が、すぐに事件を起こすことはない。……だが、このまま見過ごすこともできまい。コルネリウスが残留思念に呼びかけたところに乱入し、『慈愛』の目論見を妨害してほしい」
コルネリウスは強力なシャドウであるため、現実世界に現れることはない。
事件現場にいるコルネリウスは実体をもたない幻のようなものなので、戦闘を仕掛けることは不可能だ。
また、コルネリウスは灼滅者に対して強い不信感を持っており、交渉なども行えない。
「残留思念である『ハイジ』は、生前の記憶がおぼろげだ。……だが、力と金への執着心。そして灼滅者に恨みがあることだけは、しっかりと覚えている。きみたちが現れれば、復讐を遂げるために必ず仕掛けてくるだろう」
ハイジの武器やサイキックは、以前と同じ。
『デモノイドヒューマン』『ウロボロスブレイド』に似たサイキックと、『シャウト』。
扱う攻撃は、どれも殺傷ダメージが高いのが特徴だ。
単純に戦いを挑むだけでは相手の攻撃に押し切られ、痛手を負うおそれがある。
しかしハイジの性格などを利用し、なんらかの策をたてて挑めば、前回以上にうまく立ち回ることも可能となるだろう。
「今回は、現場には一般人もヴァンパイアも現れない」
戦闘に集中できるため、存分に力を振るうことができるだろうと告げ、一夜は説明を終えた。
「これまでの報告書を見ると、ほかのダークネスも多数、コルネリウスから同様の呼びかけを受けているようだ」
『慈愛』の名の通り、その行動は一面的には良い事であるように見える。
しかし、真意はわかったものではないと、エクスブレインは眉根をひそめ。
「『慈愛』の狙いも気にはなるが、今回の相手は『ハイジ』だ。一度重傷に追いこんだとはいえ、四大シャドウの力を得た残留思念はダークネスに匹敵する戦闘力を持つ。どうか、心してかかってくれ」
そして、今度こそ。
悪逆無道なグラン・ギニョールに、確かな幕引きを――。
参加者 | |
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巨勢・冬崖(蠁蛆・d01647) |
リーリャ・ドラグノフ(イディナローク・d02794) |
逆霧・夜兎(深闇・d02876) |
冬永・雫(心に眠る業火・d12993) |
銃神・狼(ギルティハウンド・d13566) |
佐島・マギ(滑走路・d16793) |
月居・巴(ムーンチャイルド・d17082) |
リュアノルン・シー(ディバインナイト・d32023) |
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雲ひとつない夜。
廃園となった遊園地の敷地内を、8人の灼滅者たちが歩いていく。
一番後ろを歩くのは、今回が初任務というリュアノルン・シー(ディバインナイト・d32023)。
(「さて、初参加となりますね。頑張らせていただきましょうか……!」)
傍らのビハインドを見やり決意を新たにしていると、いつの間にやら足元に真っ白いサモエド――霊犬『ふゅーねる』の姿が。
口の端をあげて笑っているかのようなサモエドスマイルに見あげられ、思わず、肩から力が抜けていく。
「リュアノルン、緊張すんなよ。みんないる。初めてでも回数を重ねても、戦闘は緊張するもんだ」
銃神・狼(ギルティハウンド・d13566)が声を掛けるのにあわせ、『ふゅーねる』が灼滅者たちの周囲をぐるぐると駆けだして。
面白がった佐島・マギ(滑走路・d16793)が、一緒になってぴょんぴょんと跳ねまわった後、くるんとはねた肩までの髪を揺らし、立ち止まった。
「ところで、『ざんりゅうしねん』って何です? ゆうれいです??」
問いかけに答えたのは、月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)だ。
「『残留』『思念』というくらいだから、ダークネスの残した強い想いのようなものだろうね」と前置きし、
「灰路のいきさつは報告書でしか知らないけれど、みすみす見逃すわけにはいかないね。この手でしっかりと、幕を下ろしてあげなくては」
事前に目を通してきた報告書の内容を思いかえし、廃園の行く先を見据える。
「――静かに」
先頭を歩いていたリーリャ・ドラグノフ(イディナローク・d02794)の鋭い声に、仲間たちが足を止め、身構える。
周辺の立地を確認していたリーリャだったが、眼前に見えはじめたメリーゴーランドには見覚えがあった。
約一年前。
まさにこの場所で、『廃園の王』と対峙したのだ。
(「もう一度、ここに来ることになるとは」)
胸中でつぶやき、後続の仲間たちに隊列を組むようハンドサインを送る。
メリーゴーランドから距離をおき、灼滅者たちが息をひそめて見守っていると、ふいに、透きとおった少女――コルネリウスの幻影が浮かびあがった。
『私は「慈愛のコルネリウス」。傷つき、嘆く者を見捨てたりはしません』
灼滅者たちには残留思念の姿は見えなかったが、少女には見えているのだろう。
虚空へ向け、手をかざしたその瞬間、
「今だ! 往くぞ!」
巨勢・冬崖(蠁蛆・d01647)が叫び、残留思念がいるであろう場所へ向かって、走りだす。
『……わかりました。では、あなたに力を与えましょう』
現れた灼滅者を見て、残留思念が何事か告げたのだろう。
コルネリウスの眼前に淡い燐光が集束したかと思うと、そこにハイジ(灰路)の輪郭が浮かびあがり、しだいに実体を得て顕現していく。
「ひゃーっはっはっは! クソガキども! 覚悟しやがれェェェエエエエ!!」
吠えるハイジのそばで少女の幻影は霧散し、中空に溶けるように消えていった。
「執念深い奴だな……。今度こそ、終わりにしてやろう」
逆霧・夜兎(深闇・d02876)が駆けながらスレイヤーカードの封印を解放し、冬永・雫(心に眠る業火・d12993)も続けて、唱える。
「――罪の炎よ、我が身を灼け」
手にしていたスレイヤーカードが、一瞬にして黒い炎に呑まれ。
指先に揺らめくちいさな黒火を確認すると、雫は漆黒の髪と白のマフラーをなびかせ、戦場へ身を躍らせた。
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「今度こそバラッバラにしてやるぜ、灼滅者!」
実体を得たハイジは鞭剣を振りまわし、力を誇示するように暴れまわった。
しかし、圧倒するほどの敵意もなんのその。
「ハーイ! ですよー。灼滅者ですよー」
蛇のようにしなりくる刃を軽やかな足取りで避けながら、マギはぶんぶんと楽しげに手を振り、
「できるもんなら、やってみな!」
冬崖はフェイントをかけながら、積極的に攻撃を仕掛けていく。
2人に続くべく、間合いに飛びこんだ夜兎も魔導書を広げ、
「ハイジ。お前こそ、またオレたち灼滅者に倒されにきたのか?」
怒りで注意を引こうと、その身に原罪の紋章を刻みこんだ。
続く巴は仮面を向けながら、うやうやしく一礼。
「さあ始めよう、闘争の宴を!」
後ろ手に構えた漆黒の槍『号哭』を閃かせ、死角から一閃!
ハイジの脇腹を、深く、強く斬り裂いた。
任務成功のため、全力ではなつその一撃に、ためらいや惑いは欠片もない。
「調子乗んじゃねぇぞ――ガキども!!」
叫び、手繰ったハイジの鞭剣が唸りをあげ、前衛に立つ灼滅者たちを襲う。
攻撃線上に飛びこんだのは、狼の霊犬『ふゅーねる』、マギのビハインド『常晴』、リュアノルンのビハインドたちだ。
もとより壁役として立っていた夜兎と狼も傷を負ったが、傷を負いながら、なんとか踏みとどまった。
――かつて多くの一般人を惨殺し、屍の王国を築きあげていたダークネス。
あらためて敵の強さを目の当たりにし、リュアノルンは身にまとった重鎧の下で、肌が泡だつのを感じていた。
ここで灼滅しなければ、この残留思念もいずれ人間に害を成す。
(「無辜な民草を護りぬくのが、私の使命……!」)
任務の重み、鎧の重みをあらためて自覚しながら地を踏みしめ、己の役割をまっとうすべく、声をあげる。
「回復は、私たちにお任せください!」
リュアルノンのはなった防護符に続き、夜兎のナノナノ『ユキ』がふわふわハートを飛ばし、夜兎と狼の傷を癒していく。
戦闘開始以降マイペースを崩さないマギではあったが、決してハイジをあなどっていたわけではない。
(「一筋縄ではいかない予感もありますし……。ここは集中力を削いで戦力低下を図ったのち、ささっと灼滅です!」)
手にした槍を握りしめ、
「ふふふー!」
微笑みとともに、捻りを加えた一撃を叩きこむ。
「ハッ、口ほどにもねえな!」
冬崖はハイジを嘲笑うと、手のひらを上に向け、煽るように手招いた。
元来、敵を小馬鹿にするような真似は好まないが、作戦――ひいては仲間を守ることにつながるとあれば、割りきって演じられるというもの。
舌打ちして鞭剣を引き戻そうとしたハイジめがけ、
「これが、実力の差ってやつだ……!」
両手に集中させたオーラを、余すことなく放出する。
「ぐおあっ!?」
直撃したオーラに弾き飛ばされ、灼け焦げたハイジの身は、地を擦るように転がっていく。
リーリャはできる限りハイジの正面を避けつつも、常に視界の端に入りこむ位置から攻撃を続けていた。
体内から噴出させた炎をガンナイフに宿し、タイミングをはかったうえで、眼前に立つマギと冬崖の影から躍りでる。
ハイジは、灼滅者の連撃から立ちあがったばかり。
現れたリーリャを認識こそすれ、回避する間もなく燃えるナイフに斬り裂かれ、苦悶の声をあげた。
「くっ……そぉぉおおお!!」
ふたたび鞭剣が振るわれるも、その切っ先には、すでに先ほどまでの勢いはない。
サーヴァントたちがかばいに走るまでもなく、灼滅者たちは攻撃を見切り、次々と回避。
狼は内なる深淵と向きあい、眼前に『漆黒の弾丸』を生みだし、告げた。
「お前のような『害悪』に引導を渡しに来たぜ。お前の大嫌いな、灼滅者がな!」
右手を掲げ、拳銃を構えるように、撃ちだして。
一直線に飛んだ弾は肩を貫き、ハイジはたまらず傷口を押さえた。
「灰色の路を歩む、『廃園の王』。……ならばその魂を、炎をもって正しく灰にするのが私たちの役目」
撃たれ、毒に冒された傷口が痛むらしい。
肩をおさえ、うめきながら睨みつける、ハイジへ。
「石と化せば、痛みもあるまい」
指輪の呪いに乗せ。
雫は冷たく、言いはなった。
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己の力を過信していた『廃園の王』には、相手が自分より格下であるという強い思いこみがあった。
実際、コルネリウスから与えられた力は大きく、ハイジも易々と倒れはしない。
しかし、次々と向けられる挑発に、集中力を欠く言動。
そして間断なく繰りだされる攻撃は着実に正常な判断力を奪い、その自信を打ちのめしつつあった。
「灼滅者キライです? キライです?? うふふふ!」
「俺も他のダークネスに『なりそこない』だの言われてきたが、灰路君もいまや立派な『できそこない』ですねー」
目障りだと斬りかかれば、マギの抗雷撃と冬崖の鋼鉄拳に殴り倒され。
捕縛をしかけ1人ずつ倒していこうと切り替えれば、視界の端に位置取ったリーリャのバスタービームが、正確にその身を撃ちぬき、阻害する。
しかしハイジとて、やられるばかりではない。
ときおり振るわれる腕は巨大な刃となって灼滅者たちを圧倒し、巴をかばいに出た霊犬『ふゅーねる』が、消滅。
続けてはなたれた鞭剣が頬をかすめ、
「っと……危ないなあ。大事な一張羅なのに」
冬の夜を思わせる外套を、巴がばさりとひるがえす。
その死角から飛びだしたのは、狼だ。
「誰ひとり、お前の餌食にはさせない……!」
流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りが炸裂し、追い撃ちをかけるように、巴が漆黒の杖『叫喚』で打ち据える。
流しこまれた魔力はハイジの体内を駆けめぐり、その脚を、腕を、内側から容赦なく破壊していった。
(「ここで押しきられるわけには、いきません!」)
リュアノルンは刻々と変化する戦況を注視し、ナノナノ『ユキ』と協力して、仲間たちの回復に全力を尽くす。
ビハインド『常晴』も仲間たちと足並みをそろえ、果敢に霊障波をはなち。
念押しのように雫の黒炎がハイジを舐めつくせば、残留思念は延焼する炎もそのままに、灼滅者たちを睨みつけた。
「馬鹿にしやがって……!!」
ふたたび鞭剣を振るおうとするも、
「おっと。少し大人しくしてろよ」
すかさず動きを封じるべく、夜兎が鋼糸を巻きつける。
「ご存知でしょうが、マギたちはチームプレイが得意なんですよ。チョコマカとわずらわしいでしょう?」
マギは先端にロールケーキをかたどったマテリアルロッドに持ち替え、ハイジの鼻先をちょんとつついて。
「ホラ、コッチですよー!」
やっとのことで鋼糸から抜けだしたハイジの攻撃を避け、横合いから殴りかかった。
ふたたび地に伏したハイジの眼前に、ばらばらと落ちる影。
よく見れば、それは――、
「『廃園の王様』は、金が好きなんだろ? いくらでもくれてやるぜ。ほら、拾ってみろよ」
ポケットに入れていた小銭を投げつけ、冬崖は侮蔑するように、唾を吐きかける。
「――ってめええらあああああ!!!」
ハイジは小銭を踏みつけ立ちあがると、怒りのままに掴みかかった。
冬崖は身を引いてその背を押すと、
「まるで、なっちゃいねえ!」
叫び、『蝿の王』の名を冠する巨大なハンマーを振りおろす。
打撃は吸いこまれるようにハイジを打ち、血反吐を吐いた身を、吹き飛ばした。
連携につぐ連携を受け、ハイジの疲労はもはや限界に近付きつつある。
それでも、恨みつのって残留思念を遺すほどのダークネスだ。
傷を負えば負うほどより激しい怒りを浮かべ、何度でも灼滅者たちを狙う。
ごうと唸りをあげ鞭剣が飛び、仲間をかばい続けたリュアノルンのビハインドが、消滅。
同じく雫を守るために身を投げた夜兎は、傷を負いながら、叫んだ。
「コルネリウスに助けてもらわないと、喧嘩もできない弱虫がっ!」
完全に逆上していたハイジに、その言葉が届いたかどうか。
「次の攻撃、きます!」
縛霊手の指先に集めた霊力を夜兎へ撃ちこんだリュアルノンが、すぐに、仲間たちへ警戒の声を向ける。
間合いにいた『常晴』が周囲を凪ぐように振るわれた大刃をしかと受け止め、『ユキ』が癒しに飛んでいく。
「これは、先ほどのお返しだ」
拳にオーラを集束させ、巴が怒涛の連撃を叩きこんだ、その時。
――ピピピピピピピピピ。
戦闘開始時にセットしていたリーリャのタイマーがアラームを響かせ、8分目の訪れを知らせた。
灼滅者の動きが、一斉に止まり。
体勢を崩していたハイジは何事かとリーリャを見やるも、当の少女は、変わらず睨めつけるのみ。
「ハイジ、私は貴様を知っている。貴様は私を知っている。貴様はこの状況を想い出し……この音の出所を、探す」
予言めいた言葉は、『プレイバックシアター(即興演劇)』のようにかつての情景を繰りかえすべく仕掛けたもの。
しかし灼滅前後の記憶を喪い、ただ灼滅者への怨念を糧に浮かびあがった残留思念が、そのことに気づくはずもなく。
無防備に立ち尽くす少女めがけ、ハイジは走った。
「とち狂ったか灼滅者! オレは殺すやつの顔なんざ、いちいち覚えちゃいねぇんだよ!!!」
吠えるハイジの刃を受け止めたのは、狼だ。
WOKシールドで攻撃を受け流すも、切っ先が肩をかすめる。
回復に入ろうとしたリュアルノンを、狼は叱責した。
「俺なら大丈夫だ、攻撃しろ!」
「私が縛りあげる、そこを狙え」
雫は視線を向けず言いはなつと、影の触手でハイジを絡めとる。
仲間たちの言葉を胸に、リュアノルンは噴出させた炎を縛霊手に宿し、力強く、答えた。
「――了解であります!」
渾身の力をこめ、固めた拳を叩きつけ。
延焼した炎にハイジが包まれるころには、リーリャの位置取りも完了している。
――銃爪を引くのに、感情など要らない。
パンと銃声が鳴り、弾丸はハイジの額を、まっすぐに貫通した。
血しぶきが散るよりも早く炎がその身を焼き尽くすと、火や灰は一瞬で燐光に変じ、跡形もなく消えていく。
「獲物を前に舌なめずりは、三流のすることだ。殺せる時に、躊躇なく殺す。それが、弱者が生き残る術」
言い捨て、リーリャは不機嫌そうに、夜空を見あげた。
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「無事に倒せて、良かったです」
「血なまぐさい『グラン・ギニョール(恐怖演劇)』は、今度こそ、終わりだな」
「ああ。灰路もいいかげん、懲りただろう」
リュアノルンと狼の言葉に、冬崖も仲間たちの無事を確かめ、安堵する。
「ともあれ、召された方は人だろうがダークネスだろうが、安らかにと思うですよ」
マギは両手をあわせ、ナムナムと呟いて。
「それにしても、コルネリウスは一体何をしようとしているんだろうな」
首をかしげる夜兎をよそに、雫は「学園へ戻ろう」と、仲間たちに背を向けた。
執拗に隠した服の下で、肌が、熱をもっている。
(「帯びる黒炎は、今なお、魂を糧に燃え続ける、か」)
そのことを再確認し、歩きだし。
確固たる信念を貫き闇をはらった『一角獣(イディナローク)』もまた、ロシアンコートをひるがえし、廃園をあとにする。
先を行く仲間たちの背を見やり、巴はひとり、呟いた。
「―――おやすみ」
胸の前に手をあて、その場でうやうやしく、一礼。
廃園を騒がす者は、もう、どこにもいない。
荒唐無稽な暗黒劇は、今度こそ、おしまい、おしまい。
作者:西東西 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年1月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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