華更紗~Kalos Eidos Skopeo 睦月

    作者:西東西


     『店長厳選のこだわりはちみつを使ったランチ&スイーツと、個性豊かな手作り雑貨で、身も心も癒される、あたたかいひと時を、あなたに――。』

     そんなキャッチコピーでほそぼそと営業を続ける、小さなカフェ兼雑貨店が、ある。
     店の名は、『Honeypot Maniacs(ハニーポット・マニアックス)』。
     はちみつ色を基調としたイメージカラーに、木のぬくもりを大切にした店の内装。
     ハンドメイドの品物が販売されている雑貨スペースの隣にはカフェが隣接され、日本産のはちみつを使ったランチ&スイーツを楽しむことも可能だ。

     開店から、二年。
     希少な日本産はちみつを多く扱うカフェメニューは少々値が高く、客足は決して、多いとは言えないけれど。
     年若い女性店主と数名のアルバイトたちによって、今日もまったりと、営業を続けている。
     

    「――というわけで、一夜。この店で催される、『万華鏡ワークショップ』に、参加しよう」
    「……しようって。まあ、面白そうだし。構わないよ」
     なにやら一生懸命に告げてくる七湖都・さかな(終の境界・dn0116)の言葉に、一夜崎・一夜(大学生エクスブレイン・dn0023)は笑いながら答え。
     詳細を確認したところ、以下のような話だった。

     次の休日に、『Honeypot Maniacs(ハニーポット・マニアックス)』という名のカフェ兼雑貨店で、『万華鏡ワークショップ』と題した手作り交流イベントが催される。
     作れる万華鏡は、主に下記の三種。
     一般的によく知られている、鏡を使った『チェンバースコープ』。
     ボール等を使う『テレイドスコープ』。
     オイルの中に素材を入れる『オイルチェンバースコープ』。
     作成キットは店が用意するので、入店時に必要なものを購入するだけで良い。
     素材に凝りたければ持参もOKなので、参加者それぞれ、こだわりの作品ができあがることだろう。
    「……ワークショップの後、飲み物を一人一品、サービスしてくれる。完成した万華鏡をみながら、のんびり、したら良いとおもう」
     当日に限り、お菓子などの持ち込みもOKとなっている。
     お店のランチやスイーツを楽しみたい場合は、追加注文をどうぞ、とのこと。
     なお、店内は少々手狭となっている。
     客足が多くなった場合は相席の可能性もあるので、その点は、あらかじめご了承願いたい。

    「詳細は了解した。では当日、皆がどんな万華鏡を作るか楽しみにしているよ」
     チラシを手に、去っていく一夜の背を見送って。
     さかなはカバンから真っ白な手帳を取りだし、メモを確認する。
     ――万華鏡つくりたい。
     ――みんなをさそう。
     ――一夜のたんじょうび。
     ――いわう。
    「……ん」
     さかなはひとり、こくこくと頷いて。
     一緒にワークショップへ向かう学生を募るべく、教室へ向かった。


    ■リプレイ


     イベント当日。
     購入したキットを手に、作業スペースへ向かうのは椿子(d23631)と三樹(d30985)。
    「万華鏡って見たことないんだよねー。ハートとか星とか、模様作れるのかな?」
    「模様の出方は、素材しだいね。ポスターカラーを持ってきたから、オイルに溶かしてみたら面白いかも」
     続いて何度も店名を確認し、入店したのは峻(d08229)だ。
     かつて救った店主・蜂須賀夜美の姿を認め、安堵する。
    「店主さん、ご自分の罪と向き合われて良かった……。そうじゃなければ、こんな素敵なお店にならないですよね」
     香乃果(d03135)も生き生きと働く夜美と店員を見やり、微笑む。
    「訪問するのが楽しみだと、夢の中で伝えたしな」
     代金は俺が奢ると告げる峻へ、お言葉に甘えちゃいますねと、香乃果がぺこり、お辞儀する。
     かねてから店が気になっていたのは、亮(d05168)も同じ。
    (「やっと訪れる事ができて、感激です!」)
     木の温もり溢れる店内を見渡し、挑戦するのはベーシックなチェンバースコープ。
     バリ島で入手した手漉き紙を筒に巻き、アジアン風に仕上げるつもりだ。
    「上手くできるといいのですが」
     隣の参加者たちは、オイルを使った万華鏡に挑戦するらしい。
    「オイルチェンバースコープって、手を出すにはハードルが高そうなイメージだったんだよなぁ」
     不安げに説明書を読みこむ静樹(d17431)をよそに、流希(d10975)は早くも組み立てにかかっている。
    「赤と青をメインに、色々と組み合わせてみましょうかねぇ」
     同じ作業テーブルに相席したクロード(d30182)へどんなものを作るのかと問えば、
    「僕は『自分をイメージした作品』にしたいんだ。ちょっとした記念と、健康祈願の意味をこめてね」
     と、オレンジを基調に素材を選んでいく。
     頭を寄せあい作業に勤しむのは、徹(d19056)とさかな(dn0116)。
    「前に来た時、美味しかったメニューってなんですか?」
     作業の邪魔にならない程度に他愛ない会話を振れば、
    「パンケーキ。プリン。スフレ」
     待てば、さらに続きそうな様子だ。
    「まだあるんですか?」
     呆れたように笑う徹へ、一夜(dn0023)と陽桜(d01490)が声をかける。
    「七湖都は、運動会に『ハチミツ漬けホットケーキ』弁当を持ちだすほどのはちみつジャンキーだからな」
    「この間は、ひおと皆で、メニューの端から端までシェアしたんですよ!」
    「テーブルいっぱいのスイーツ。とっても豪勢だったよねぇ」
     当日同席していた千代(d05646)も、甘味パラダイスを想い出してうっとり。
    「フリマの時は出店に専念してたから、今日のドリンクサービスは嬉しいわ」
     後でカフェに行くのが楽しみと、瞳(d13296)も黒を基調にした千代紙を筒に貼りつけていく。

     色と光を紡ぐ工程は心躍るけれど、慣れない作業に香乃果は四苦八苦。
    「ここは、説明書通りに」
    「これを張りつけるの?」
     峻の助言を頼りに、なんとか完成にこぎつける。
    「俺の万華鏡は、クラブに置いて良いか?」
    「それなら、私のも置こうかな。みんなにも楽しんで貰えると嬉しいから」
     香乃果は完成したばかりの万華鏡を手に、微笑んだ。
     徹、さかな、瞳、陽桜の4人は互いに手順を教えあい、すぐに完成にこぎつけた。
     陽桜は万華鏡越しにのぞく景色がくるくると変わる様子に目を輝かせ、
    「さかなおねーちゃんのも、ちょっとだけいいですか?」
    「ん。わたしのは、ちいさめ」
     同じテレイドスコープでも、さかなが作ったのは指の長さほどのもの。
     球の大きさが変われば見え方も変わり、陽桜はさらに歓声をあげる。
    「ほんと、世界がキラキラ模様に変わっちゃいそうねー?」
     瞳も完成した万華鏡をのぞき、店内や学生たちを見て表情をほころばせる。
    「瞳のは、筒がきれい」
     花や蝶の舞う和紙を見やり、さかなが手を伸べる。
    「一夜崎も見て、これ面白いです」
     呼ばれた一夜が万華鏡を受け取り、徹を覗き見る。
    「どう?」
    「なるほど。オイルの物とは見え方が違う――」
     更紗眼鏡を外した先には、かえる柄のファイルを掲げた徹が笑っていた。
    「僕からのプレゼントです。資料を纏める時などに使って貰えたら」
    「ああ」
     一夜はなにかを想い出したような、納得したような声をあげ。
    「いつもありがとう、お誕生日おめでとうございます」
     言葉を受け、一夜の表情が驚きから喜びへと変わるのに、そう時間はかからなかった。
     別の作業テーブルでは、静樹が新緑の葉舞う筒に添えるため、チェンバーに植物の色あいを閉じこめていく。
     オイルの流れや具材の量ひとつで、見え方は大きく変わってくる。
    (「空気が入らないよう、傾けながら慎重に」)
     次々とカフェへ向かう学生たちを見送りながら、静樹は最後まで、色の組み合わせにこだわり続け。
     同じころに完成し、万華鏡を覗く流希の表情もまた、満足げだ。
    「昔、万華鏡と人生は似ているといった詩人がいましたっけ。さまざまな様子が見られる人生模様と、極彩色の世界を映す万華鏡。不思議な因果があるのでしょうかねぇ……?」
    「なんだか、哲学的な話だね」
     クロードが感心したように告げ、完成したばかりの万華鏡を手に想いを馳せた。
     作業スペースの端には、早々に店を訪れていた民子(d03829)と供助(d03292)が陣取る。
    「さわたみさんのは、オイルか」
    「そ。筒には絵画をプリントした紙を巻いて、インテリアにもなる!みたいなやつ作ろかなって」
     中は寒色系でまとめ、青や緑のパーツに、黄色のビーズを散らすつもりだ。
     「キョンたは?」と問えば、透明なガチャ玉に水を閉じこめた万華鏡に挑むという。
    「水でも中身は舞うらしいけど……上手くいくかな」
     作るのは、ピンクや白の花弁舞う水球に、青や緑の玻璃と星がたゆとう水球。
     枝葉柄のクラフト紙を巻いた筒にはワイヤーを取りつけ、ガチャ玉の付け替えができるようにするつもりだ。
     職人じみた意気で作業に勤しむ二人のそばに、キットを手にした晴汰(d04373)が腰をおろす。
     作るのは、オイルチェンバースコープ。
    「どんな模様にしようかなぁ」
     持参したスケッチブックとにらめっこしていると、作ったばかりのテレイドスコープを手にしたさかなの姿が目に入った。
    「さかなちゃんは、もう完成したんだ」
     これからいくつか増やすのだと告げ、「晴汰のは?」と問い返す。
    「俺は、夜空のイメージかなぁ」
     鼻歌を歌いながら星の絵を描けば、
    「星、きらきら」
     手にした万華鏡でスケッチブックを覗き見たさかなの眼前に、満天の星空が広がった。


     作業を終えた学生たちは、作品を手にカフェスペースへ。
     【StarGazer】の仲良し四人組も、スイーツを頬張りながらのんびりと午後を楽しむ。
    「前とは違った作り方を知れて、大変有意義だった!」
    「学園祭の時、『探究部』で万華鏡作ったんだよね。懐かしいなあ」
     満足そうな結衣奈(d01289)の様子に、色々な事があったなあと銀河(d02950)が呟く。
    「気がつけばもう、中学卒業だねェ」
     パンケーキを口に運びながら夜桜(d01049)が何気なしに零せば、
    「夜桜と銀河って、はじめて会った時から全然身長伸びてないよーに感じるんだけど」
     凰呀(d00530)がしれっと、爆弾を落とす。
    「これでも9cm伸びてンだケド」
    「ちゃんと伸びてるよ、5cm以上も!」
     不満と抗議の声を同時にあげた後、思わず、互いを見つめあう。
    「わたしたちも伸びたから、四人のバランス的には変わらない、かな?」
    「結衣奈はまぁ、色っぽくなってきてると思うけど」
     フォローした結衣奈に凰呀が言い添え、「わたしなんて!」と結衣奈が手を振る。
     振り返れば、色濃く想い出すのは四人で寄り添い、過ごした記憶。
    「修学旅行の最終日に乗ったグラスボート、綺麗だったわよね~」
    「カヌー競争とか人間カイロとか、懐かしい!」
    「あれはほんと良い時間を過せたわ~。……最後に、誰かさんがゲロるまではね」
     頬杖をついた凰呀の視線を受け止め、夜桜ははちみつレモンに口をつけ、
    「船酔いには、ホント参ったわ……。余裕あれば、卒業旅行とか行きたいわよねえ」
    「いいね、卒業旅行! 行こう!」
     賛同する銀河の声をさえぎり、その前に期末テストがあるケドと夜桜が釘を刺す。
     気落ちする一同とは反対に、結衣奈はそれさえも楽しみといった様子で笑う。
    「昨年は闇堕ちでテストも休みもなかったから、今年は想い出たくさん、みんなと作りたいね!」
     共有した時間は愛おしく、どれもかけがえのない大切な宝物。
     それは、今この瞬間も、これからもきっと同じで。
     凰呀がひょいとグラスを掲げたのに、三人も続いて。
    「ま、中学卒業してもヨロシクね」
     夜桜の言葉に応え、涼やかな音が、鳴り響いた。

     万華鏡を作った後、優奈(d02148)と暁(d03770)もまた一直線にカフェへ向かった。
     迷わず選んだのは、ふわふわのパンケーキ。
     たっぷりの蜂蜜を添え、優奈は甘い幸せを暁の口元へ。
     すんなり受け入れられれば、照れ隠しのように「春には卒業か」と零す。
    「暁は、やっぱ美術学部?」
    「もちろん。それしか取り柄もないし」
    「あたしは好きな事じゃないと続かないし、音楽学部かな」
    「それはアタシも同じだけど、行く途は別ね」
     告げる言葉に、優奈は手にしたティーカップに視線を落として。
    「――なぁに、寂しいの?」
     ふいにかけられた言葉に、こくり、頷く。
    「ふふ、寂しかったら夕方から、アトリエに来なさいな」
    「うん。毎日会いに行く」
     知らず成長していく感情に、驚き半分、戸惑い半分。
     作ったばかりの万華鏡を戯れに覗けば、
    「見せて」
     向ける暁の微笑みが、こうするだけで簡単に同じ時を重ねられるのだと告げる。
     手渡し覗けば、共有する瞬間が、またひとつ。
     ゆったり舞う色とりどりの星に、二人、想いを馳せた。

    「上手くできて良かったね」
     テレイドスコープを通して見る世界は、まるでプラネタリウムのよう。
     鈴(d06617)の隣で、葉(d02409)は自分の万華鏡から目を離し、しみじみ呟いた。
    「……やべぇ。自分の才能がこわい」
    「え、マジでそんな感動するほど? 貸して貸して」
     「しょーがねぇなー」と渋る葉の手から、万華鏡を受け取って。
     覗き見た世界は、白の滴が泡のひかりを思わせ、水底を揺蕩うよう。
     すげーきれいじゃん!と感嘆の声をあげ、
    「空に透かすともっと綺麗だよ。葉の心の内と違って、ぴかぴかのきらきら!」
     葉の覗く球に映る鈴も、くるくると表情を変えていく。
    「……えっ。なんで笑ってんの気持ち悪い! 怒っていいトコだよ怒れよ!」
    「んにゃ、別になんでもねぇよ?」
     くつくつと笑い、葉は店員の運んできた二人分のドリンクを受け取る。
     白詰草の蜂蜜を使った、ハニーラテ。
     口に含めば、ぬくもりに身も心も和らいでいく。
    「甘い物を前に、争いごとなんて無粋ってね」
     一時休戦と告げる鈴に、葉も微笑み、頷いた。

     希沙(d03465)と梛(d18259)の来店は、二度目だ。
     その節はお世話になりましたと幸せオーラを零す希沙に、
    「どういたしまして。それ以外でも、色々順調そうでなにより」
     梛が意味ありげに笑えば、話題を変えるべく希沙が「ご馳走します!」と豪語する。
    「きさはハチミツレモンとハニートーストにしよ。梛先輩は?」
    「ハニーラテと、んー……。お前、もうひとつ食えるならどれ選ぶ?」
    「蜂蜜と林檎のパイ!」
    「んじゃ、それ」
     皿が揃うのを待って頬張れば、広がる甘さにほわり、身も心もほころんで。
    「先輩これめっちゃ美味しい! ひと口どうぞ!」
    「こっちもどーぞ。食いたかったんだろ?」
     互いに、お裾分けをありがたく、ぱくり。
    「うま!」
     至福に満ちた希沙の表情は、自分の何倍も美味しいものを食べているようで。
     ちらり、覗き見た梛と視線がぶつかる。
    「ね、おかわりしちゃいましょか!」
    「だな」
     甘い香りとともに満ちるのは、不思議な居心地の良さ。
     もう少し長居しようと、二人は再びメニューを開いた。

     甘い物が不得意な芥汰(d13981)は、夜深(d03822)に注文をお任せ。
     「責任重大!」と意気ごむ夜深は、迷いに迷って二品を決め。
     運ばれてくるまでの間は、万華鏡を覗き見ることに。
    「ね、夜深のはどんな?」
    「我、万華鏡。夜空、意識しタ、のヨ! あくたん、万華鏡、は。どンな景色?」
    「交換っこしましょ」
     喜んで渡し交わせば、芥汰の視界に満天の星空が広がって。
     夜深の瞳は、シーグラスを詰めこんだ海を映す。
     やがて運ばれてきたのは、パフェとスフレ。
     幸せそうに頬張る姿を見やり、芥汰はスフレをとりわけ、夜深の口許へ。
    「んんん。スふレも、ぱフェも。美味シ!」
     ついばむように頬張る夜深へじっと視線送れば、
    「あくたんモ、ぱフェ。喫食すル?」
     「はイ。あーン♪」と、夜深がスプーンをさしだす。
    「あーん」
     口を開いて、ゆっくりと味わって。
     続けて、スフレもぱくり。
    「如何? 美味シ?」
    「ウン。……甘い。が、美味し」
     唯一人の前でなら、こういうのも悪くないと。
     芥汰は再び、すくったスフレを口に含んだ。

     桜花(d07132)はたい焼きと星のビーズ。
     菊乃(d12039)は桜の花弁と若草色のビーズを使った万華鏡を作り、互いに贈りあった後にカフェスペースへ。
     ハチミツ入りミルクティを注文して、のんびりとおしゃべりを開始する。
    「菊乃さんは、気になる殿方はいらっしゃるのかしら~?」
    「私はその、実はおつきあいしている殿方が……」
    「既におつきあいしてますの!? 同級生? それとも年上の方かしら~♪」
    「わ、私のことより桜花さんはいかがですか? 女子大生ともなれば、やはり色恋の一つや二つ!」
     詳細を迫る桜花へ、ハニースイートポテトをつつきながら菊乃も真っ赤になって問い返す。
    「わ、私は、少しずつ進展中で……。店員さ~ん、はちみつパウンドケーキもお願いしますわ!」
     菊乃の言葉をかわすように、桜花が店員を呼びとめる。
     その隣の席では、三樹の持ちこんだシュークリームを前にお茶会が開かれている。
    「物足りなかったら、蜂蜜タップリのお菓子も注文しましょ」
     告げる三樹に、椿子はぶんぶんと首を振り、
    「ほら、お店で作ったのもおいしいけど、作ってもらったものの方がおいしいというか!」
     「うん、ほらおいしい!」と、シュークリームを頬張って見せる。
    「で、椿子ちゃんの万華鏡はどうかしら? 私のは、変な色合いになっちゃったわ」
     ちょっと失敗ねと、三樹が完成した万華鏡をさしだして。
    「うんうん、結構いい感じになったよ! 見てみる見てみる~?」
     伸べた手に生クリームがついているのに気付き、椿子は慌てて手指を拭った。
     作業を終え、完成した万華鏡を手に亮はくすりと、含み笑い。
     その足でカフェスペースへ向かえば、すでにほぼ満席で。
     通されたのは、嵐(d15801)との相席だった。
    「やっと来られたお店ですし……あ、店長さんのおすすめを頂きたいです!」
     聞けばハニーワッフルを勧められ、紅茶とともに注文する。
    「じゃあ、あたしはアップルハニーパイで」
     そちらも美味しそうだと亮がメニューを見返せば、
    「後で交換してみる?」
     察した嵐が、さりげなく声をかける。
     相席になったのも、何かの縁だ。
    「では、万華鏡も交換してみませんか?」
     あなたの創った世界を見てみたいですと、亮はにこり、微笑んだ。


     カフェスペースで一夜がまったりしていると、
    「誕生日おめでとう。どんなの作ったんだ?」
     注文したハニーラテを手に、供助が隣の席へ。
    「ありがとう。私はごく普通のチェンバーを。森田は、凄いのを作っていたようだな」
     さっき覗き見たと笑う一夜に、供助が完成した万華鏡を手渡して。
     一夜の姿を認め、ほかの学生たちもそろって祝いに集まった。
     陽桜と千代が音頭をとり、そろって歌うのはハッピーバースデーの歌だ。
    「一夜は誕生日おめでとう」
    「幸せいっぱいの一年になりますように」
     峻と香乃果からも、祝福の言葉が贈られ。
    「一夜さん、お誕生日おめでとうございますわ♪」
    「これ、餡子に蜂蜜を使った特製たい焼きです。よろしければ♪」
     桜花と菊乃は、手製のサツマイモクッキーとたい焼きをプレゼント。
    「一夜さん、新たな一年の始まりにおめでとうね♪」
     瞳は手作りだという、千代紙人形のお守りを手渡す。
    「誕生日、おめでとうございます!」
     晴汰は手にしていたスケッチブックをババーン!とめくり、歌うカエルの絵とお祝い文をお披露目。
    「一夜、誕生日おめでと」
     民子が一夜の前に置いたのは、チョコレートで『HAPPY BIRTHDAY』と書かれたテザートプレートだ。
    「こういうのも、あたしの日常よ」
     と告げ、ニッと笑って見せる。
     さかなは、一夜と徹に先ほど作った小さな万華鏡をプレゼント。
     聞けば、徹の誕生日は一夜と一日違い。
    「店員さん! プレートもう一枚!」
     民子の声に店員が走り、陽桜がもう一回歌うよーと一同に声をかける。
    「賑やかで、良かったな」
     供助がぽつり告げれば、一夜は照れくさそうに頷き、
    「ああ。嬉しいよ、とても」
     皆との出会いを経たからこそ、今の自分があるのだと。
     そっと、眼を細めた。
     
     

    作者:西東西 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年2月2日
    難度:簡単
    参加:30人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 2
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