●
ひとりの少女が、夕暮れの街を歩いていた。
顔色は病的なまでに青白く、けれど、足取りはしっかりとしている。
足早に繁華街を抜ければ、カフェ兼雑貨店『ハニーポット・マニアックス』という看板の掲げられた店が目の前にあった。
おりよく店から出てきたのは、カフェのスイーツを堪能したであろう2人の少女。
すれ違いざま、ほんのり、はちみつの香りがただよう。
(「ああ、なんて美味しそうなあまい香り」)
――甘いお菓子を食べた少女たちの血は、いったい、どんな味がするだろう。
はちみつ?
生クリーム?
それとも、とろけるようなチョコレート?
吸い寄せられるように2人の後を追えば、見知らぬ猫が足にまとわりつき、邪魔をする。
羽がついて、浮いているように見えるが――今は、2人の少女を追うのが先だ。
「おどき」
冷たく言いはなち、猫の体を突き飛ばす。
猫は哀しげな眼を向けるも、再び少女を足止めすべく、よろよろと後を追っていった。
●
「『ヴァンパイア』として、闇堕ちしかけている少女がいる」
一夜崎・一夜(大学生エクスブレイン・dn0023)が教室を見渡し、事件についての説明をはじめる。
少女の名は、霧羽・ほのみ(きりう・ほのみ)。
甘いものに目がない、どこにでもいるような女の子だったが、闇堕ちのきっかけとなった感染主から遠く離れたこの町で、ひとり、闇堕ちした。
通常であれば、闇堕ちしたダークネスはすぐにダークネスとしての意識を持ち、人間の意識はかき消える。
だが、ほのみは人間としての意識を残しており、ダークネスの力を持ちながらも、ダークネスになりきっていない。
では、残った意識はどこへいったのかというと――、
「霧羽ほのみの意識は、猫のサーヴァントの中に宿っている。その姿でヴァンパイアの悪行を止めようとしているのだが、サーヴァントである以上、主人であるダークネスに逆らうことは不可能。そのため、悪事を止めることができそうにない」
サーヴァントがヴァンパイアを止めることを諦め、消えてしまえば、霧羽ほのみは完全に闇堕ちしてしまう。
「そうなる前に、なんとしてでもヴァンパイアを撃破し、霧羽ほのみを救出してほしい」
そして、もしも猫のサーヴァントが消えてしまった場合は。
「……それ以上の悪事を重ねる前に、灼滅してやってくれ」
事件当日の夕方。
ヴァンパイアはカフェから出てきた一般人の少女2人を襲うべく、尾行を開始する。
「接触するタイミングや方法は皆に任せるが、『一般人2人を遠ざけ』、『ヴァンパイアを戦闘場所へ誘導』。そのうえで、戦闘を仕掛けるのが良いだろう」
ヴァンパイアは、『ダンピール』『影業』に似たサイキックを扱う。
闇堕ちから救うためには、戦闘してKOすることが必須。
猫のサーヴァント(ほのみの意識)を残した状態でKOすることができれば、灼滅者として生き残ることができるはずだ。
なお、猫のサーヴァントは灼滅者たちが主人を助けにきたとわかれば、戦闘には参加しない。
主に危害を加える存在と判断した場合は、ヴァンパイア側にたって攻撃をしかけてくる。
「もっとも、サーヴァントには霧羽ほのみの意識が残っている。戦闘となってしまっても、説得を続ければ、わかってもらえる可能性がある」
どうか最後まで諦めずに、声をかけ続けてほしいと言い添え、一夜は説明を終えた。
参加者 | |
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鵺鳥・昼子(ウラナケ・d00336) |
四月一日・いろは(剣豪将軍・d03805) |
クラウィス・カルブンクルス(片翼無くした空飛べぬ黒蝶・d04879) |
志賀神・磯良(竜殿・d05091) |
梯・紗希(武蔵境の虎頭犬・d08837) |
雨霧・直人(はらぺこダンピール・d11574) |
フィオレンツィア・エマーソン(モノクロームガーディアン・d16942) |
高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301) |
●
事件発生前。
集まった灼滅者たちはカフェの周辺を調べ、ヴァンパイアの誘導先を探していた。
ほどなくして、店から一定以上の距離をおいた場所に、人通りの少ない公園を発見。
広さも十分あるため、戦闘にも支障がなさそうだ。
たがいに携帯電話の連絡先を交換し、一般人の引き止めや、囮に向かう仲間たちはそれぞれの配置へ急ぐ。
「いいなー。俺も菓子食いたかったなー」
去っていく仲間たちの背中を見送りながら、鵺鳥・昼子(ウラナケ・d00336)が羨ましげにこぼす。
「任務が終わったら、皆で一緒に、カフェに行くのも良いかもしれないわね」
梯・紗希(武蔵境の虎頭犬・d08837)の言葉に、昼子は「それいい!」と声をあげ。
2人とともに公園で待機していたクラウィス・カルブンクルス(片翼無くした空飛べぬ黒蝶・d04879)は、携帯電話のコミュニケーションアプリで情報の流れを追いつつ、闇堕ちした少女に想いを馳せる。
クラウィス自身、以前に闇堕ちし、救出された経験を持つ。
(「まだ間にあうのなら助けたい……。ただ、それだけです」)
他人事とは思えないからこそ、強く、決意を固めた。
一方、雨霧・直人(はらぺこダンピール・d11574)は四月一日・いろは(剣豪将軍・d03805)とともに、カフェの外に潜伏。
ガラス張りの店であるため、店内の様子は外からでもいくらか確認することができた。
『今、磯良が店に入った。』
携帯電話を手に、逐一、状況を共有していく。
志賀神・磯良(竜殿・d05091)の役目は、被害者となりえる一般人2人を店内に足止めすること。
もとより、甘い物は大好きだ。
男一人でのカフェ入店も気にならない。
役得とばかりにコーヒーやケーキを注文し、時を待つ。
やがて、2人の少女が会計のために立ちあがったタイミングを見計らい、即座にESP『ラブフェロモン』を発動。
テーブル脇を通りかかった瞬間を狙い、置かれていた水を勢いよく倒した。
「きゃっ!」
悲鳴をあげた少女のコートが水に濡れ、思わず足を止める。
「わ、ご、ごめんね? 大丈夫?」
慌ててハンカチをさしだし、磯良はひたすらに謝った。
魅了された少女たちは、水だから乾けば大丈夫と告げたが、
「そうはいかないよ! クリーニング代をだすから、ちょっと待って。ええと、財布、財布」
磯良は会話を重ね、財布を探すふりをしながら、2人を店内に留め続けた。
さらに別の場所では、店外で待機していたフィオレンツィア・エマーソン(モノクロームガーディアン・d16942)が、かすかにただよう『業』の匂いを察知。
匂いが弱いのは、ヴァンパイアがまだ誰も手にかけていない証でもある。
安堵と同時に、これから成すべきことの重要さも思い返す。
『「DSKノーズ」に反応あり。行動を開始するわ。』
アプリで仲間たちに知らせ、高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301)と連れだって店の前を通りかかる。
すぐに、後ろをつける人の気配と、足音に気づいた。
ほのみが、罠にかかったのだ。
(「どこにでもいる少女が、感染主のせいで平穏な生活を失うなんてね。他人事のように思えないわ」)
胸中でつぶやき、そのまま、談笑するふりをして。
(「猫ちゃんを、ほのみさんの心を。消させなんて、しないんだから……!」)
一葉もカフェで購入していたハニーワッフルやパウンドケーキを頬張りながら、平静を装い、誘導先に向かって歩き続けた。
「……行ったみたいだね」
店の外で一部始終を見届けたいろはが、囮役の2人と、罠に食いついたほのみ。
その後を追う猫のサーヴァントが、カフェから十分に離れたのを確認。
アプリへと報告した後、店内に残る磯良を呼び戻すべく、携帯電話に電話をかける。
数分後。
無事合流したいろは、直人、磯良の3人は、ほのみの誘導先となる公園へ急いだ。
●
囮役のフィオレンツィアと一葉は、公園へ至るまでの間に襲撃されることも想定し、警戒しながら歩いていた。
しかし、表に出てきたばかりのダークネスは、確実に2人を仕留めることを優先したらしい。
ひと気のない公園へ入ったところで魔力を宿した霧を展開するも、
「おっと! 女の子を傷つけちゃいけねーぜ?」
公園に身を隠していた昼子と、昼子のライドキャリバー『ケルベロス』がすかさず攻撃線上に飛びだし、仲間を守る。
(「可能な限り、救出してあげたいけれど……」)
紗希は胸中でつぶやき、ESP『サウンドシャッター』を展開。
救出に失敗した場合は灼滅も視野に入れねばならないと、気持ちを引き締める。
続くいろはも、ESP『殺界形成』を展開。
一般人が公園に入ってくることのないよう、対策を徹底する。
「おまえたち、ただの人間じゃないわね……!」
驚いたヴァンパイアが慌てて間合いを取るも、周囲にはすでに、8人の仲間たちとサーヴァントが展開し、退路を塞いでいた。
驚いたのは、ヴァンパイアを止めようとしていた猫のサーヴァントも同じだ。
武器を構えた少年少女たちに囲まれた主を助けようと、背中の翼をはばたかせ、魔法をはなつ。
すかさず一葉が攻撃をかばい受け、声をあげた。
「猫ちゃん、私たちはほのみさんを助けに来たの。ひとりだと、どうすればいいのか分からないでしょ?」
「キミのご主人を救いたいんだ」
自分と霊犬『阿曇』の仲を見てなにか感じてもらえればと、磯良も説得の言葉を投げかける。
ヴァンパイアは、なぜ猫が自分を助けるのか理解していなかった。
しかし、己の側に立って共闘するというのなら都合が良いと、放置。
「おまえたちの血を、寄越しなさい!」
赤きオーラをはなつ逆十字が出現し、仲間をかばうべく飛びだした紗希のライドキャリバーが、引き裂かれる。
猫サーヴァント説得のため、灼滅者たちは積極的に攻撃を仕掛けるわけにもいかない。
とはいえ、早急に説得しなければ、灼滅者たちの疲労が増すばかりだ。
「俺も初めて吸血衝動を覚えたときは、喉の渇きに悩まされたものだ……!」
直人はかつての経験を思い返しながら『聖霊の祭櫃』を掲げ、除霊結界を構築。
せめてもの足止めを狙う。
「突然の非日常のできごとに、戸惑い、驚き、絶望しているかもしれません。けれど、まだ今なら……すべてが元通りとはいかなくても、戻れる道があります」
続くクラウィスも影の触手をはなち、ヴァンパイアを絡めとりながら、説得の言葉を紡いで。
猫サーヴァントは灼滅者たちに肉球パンチを繰りだしながらも、少年少女たちにためらうことなく攻撃をしかける主の姿に、戸惑いも覚えていた。
一方、ヴァンパイアにとっては、猫と灼滅者のやりとりなど関係のないことだ。
「さっきからごちゃごちゃと、わけのわからないことを!」
ふたたび周囲に霧を展開させれば、一葉のライドキャリバー『キャリーカート君』、磯良の霊犬『阿曇』、昼子が飛びだし、仲間たちへの攻撃をかばい受ける。
「危害をくわえるつもりはねえよ。俺もダンピールだし。とっとと体をダークネスから取り返して、菓子でも食おうぜ!」
灼滅者たちは、防戦一方。
攻撃は必要最低限に留めている。
それが、猫のサーヴァントにもわかったのだろう。
なおも攻撃を続けようとする主の足にすがりつくも、
「邪魔しないで……!」
ヴァンパイアの怒りをかい、容赦なく蹴り飛ばされてしまう。
いろははすかさず倒れた猫を抱きあげ、ヴァンパイアから距離を置いた。
「よく頑張ったね。キミと同じような辛さを乗り越えたひともたくさん知ってるから、もう独りぼっちで苦しまなくても、大丈夫」
優しく頭を撫でれば、猫の大きな眼が灼滅者たちを見つめる。
「私たちは貴方の主人のような特殊な力のある人を助け、正しい力の使い方を学ぶ学園から来たの。お願い、手を貸して」
ヴァンパイアを牽制すべく帯を射出したフィオレンツィアの言葉に、猫は瞳をうるませ、傷ついた主を見た。
猫のサーヴァントに宿ったほのみの心は、ずっとずっと、胸を痛めていた。
闇堕ちしたこと。
ひとを襲おうとすること。
怪我をおうこと。
そして、少年少女をためらいなく傷つけること。
これまでに起こったすべてを理解することは難しかったが、ほのみの願いは、猫のサーヴァントに宿った時から、ひとつしかない。
――もうこれ以上、だれも苦しまないで!
猫のサーヴァント・ほのみはぼろぼろと大粒の涙を流し。
言葉にならない想いを乗せ、悲痛な鳴き声をあげた。
●
猫は灼滅者たちにすべてを託し、主の援護も、主を止めることもしないと決めた。
みゃあみゃあと哀しげに鳴き、涙を流し続ける猫サーヴァントを後衛に立つ紗希に任せ、灼滅者たちは改めて武器を構える。
「私たちもほのみさんと同じような力や、吸血欲求を持ってる人もいる。辛さが分かるし、力になりたい。それには猫ちゃんの、ううん、ほのみさんの力も必要なんだ」
ヴァンパイアの攻撃を受け止めた『キャリーカート君』の影から身をひるがえし、一葉は獣を思わせる影業をはなち、一閃。
「闇に負けないで。私たちも手伝うから!」
傷つく主を見ても絶望せぬようにと、言葉をかけ続ける。
昼子は己へ向け繰りだされたヴァンパイアの影の刃を、軽やかに跳躍して回避。
「よーし。よく頑張ったな! あとは俺たちでなんとかする。ちゃんと体も取り戻すよ、任せとけ!」
「貴方の主人は、必ず助けるわ」
「だから、いろはたちを信じて」
フィオレンツィア、いろはと足並みをそろえ、ヴァンパイアを三方から取り囲む。
「いくぜ! ショウダウンだ!」
声とともにそれぞれの刃がヴァンパイアの身体を貫き、ダークネスはたまらず悲鳴をあげる。
「痛い痛い、痛い!!」
ヴァンパイアは泣き叫び、周囲へ向け魔力の霧を放出。
霊犬『阿曇』、紗希のライドキャリバーがかばいに走り、続く『ケルベロス』が突撃を仕掛け、ヴァンパイアを抑えこむ。
「すこしの間、我慢してくれよ!」
直人はほのみの心痛を思いながらも、仲間たちの守りを固めるべくシールドを展開。
磯良は紅をさした切れ長の眼を向け、神主服の袖をはらい、ダークネスを見据えた。
(「灼滅したいわけじゃない。救うために戦うのだから」)
「――祓い給え、清め給え」
力ある言葉とともに浄化の風を招き、引き裂かれた仲間たちの傷を次々に癒していく。
多数のサーヴァントに、壁役を多く配した隊列。
そして手厚い回復のおかげで、灼滅者たちは大きな疲労を負わずに済んでいた。
対するヴァンパイアは、灼滅者たちの連携に次ぐ連携により、回復も反撃もままならない。
「どうして邪魔をするの! 私がなにをしたっていうのよ!」
憤りのままに攻撃を仕掛けるも、動きの鈍った攻撃はサーヴァントたちに阻まれるばかり。
戦い慣れないがゆえに灼滅者たちにも攻撃を見切られ、ぼろぼろになっていく。
やがて己の敗北を知ったヴァンパイアが逃走を試みるも、それを見逃す灼滅者たちではない。
全員で行く手を阻み、
「行かせはしませんよ」
「ほのみさんは、私たちと一緒に学園に帰るんだからね!」
クラウィスの影がヴァンパイアを呑みこみ、トラウマに苛まれたダークネスが、切れ切れに悲痛な声をあげ。
間合いに飛びこんだ一葉の鍵爪が、獣のごとき傷痕をその身に刻みこむ。
「こんな形で、相反する存在として向きあわないといけないのが非常に残念だわ」
「誠に申しわけありませんが、いま一度、眠っていただきます……!」
紗希とクラウィスが同時に影を走らせ、ヴァンパイアを捕縛。
深く腰を落とし、昼子が地を蹴った。
「よっしゃ! おしまいにしてやろうぜ!」
緋色のオーラをまとった槍を繰りだし、ヴァンパイアの身体をまっすぐに貫いて。
中空に斬り飛ばされた少女へ、直人は燃えあがらせた『戒律の戦靴』を叩きこむ。
磯良は霊犬『阿曇』をともない、そっと、導眠符をはなった。
「――守り給へ、幸え給へ」
地に叩きつけられたダークネスに、その祝詞が届いたかどうか。
灼滅者たちの戦いを見守る猫のサーヴァントが、倒れた主をまっすぐに見ている。
託された想いを胸に、フィオレンツィアが地を踏みしめる。
「甘い香りが好きなのは、女性の特権。女の子は、綿菓子でできているから」
異形巨大化させた腕を振りかぶり、固めた拳を、渾身の力で叩きつける。
着物のすそをひるがえし、いろは納刀した刀に手をかけて。
「でも、程々じゃないスパイスは、すべてを台無しにしちゃうよね」
地を蹴り、一瞬で間合いを詰めると、流れるような身のこなしでダークネスを斬り裂いた。
ヴァンパイアが地に倒れたのを見届け、猫のサーヴァントは主のもとへ身を寄せ、その身体に頬を寄せる。
灼滅者たちを振りかえり、にゃあんとひと声。
礼を告げる代わりにリングのついた尻尾を振ると、そのまま燐光をはなち、霞むように消えていった。
●
戦闘後。
紗希が癒しを施せば、霧羽・ほのみはすぐに目を覚まし、猫のサーヴァントと同じようにぼろぼろと涙をこぼした。
「私をとめてくれて、本当にありがとう……!」
けれど泣きじゃくるほのみの表情は、晴れやかな笑顔で。
もう大丈夫だと、灼滅者たちもほっと、安堵の息をつく。
「吸血かー。血が足りない時って、どんな感覚? 俺はすげー喉乾く」
「俺はなにを食べても飲んでも満たされなくて、生命力にあふれた人間がとても美味そうに感じられる。……俺たちダンピールは他人の血がないと生きていけないから、吸血衝動とはうまくつきあっていかないとな」
昼子と直人に続き、一葉も言葉を重ねる。
「私も衝動を食べることで抑えてきたから、飢える気持ちは分かる。衝動はおかしいことじゃない。正しく発散させてあげれば良いの。それと甘い物が好きなら、一緒にカフェ巡りしよう!」
一方、磯良は吸血衝動については、よくわからない。
けれど、
「サーヴァントがそばにいてくれるのは、幸いな事だよ」
と、傍らに佇む『阿曇』を撫でて、微笑んで。
「ほのみが男の子だったら、子犬のサーヴァントだったのかもね」
英米の伝承童謡になぞらえ、いろはも冗談めかして笑った。
クラウィスもチョコレートを手渡し、告げる。
「かつて色々と迷惑をかけた私にも、戻れた日常があります。霧羽様が強く願えば、居場所は、ここにあるのです」
フィオレンツィアは笑顔を向け、そっと手をさしのべた。
「ほのみ、貴方には特別な力があるわ。その力を、私たちと一緒に人助けに使ってみない? 私たちの学園は、貴方を歓迎するわ。友達になりましょう」
突然の申し出に、ほのみは驚いた様子だったが。
すぐに瞳をうるませると、大粒の涙をこぼしながら、伸べられた手をしっかりと握りかえした。
――平和を愛する穏やかな心をもった、新たな灼滅者よ。
――武蔵坂学園へ、ようこそ!
作者:西東西 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年2月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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