ゆっちゃあいけん、広島風!

    ●広島の、お好み焼き屋さんが集まってるとあるビルのとある店で
    「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」
     春休み旅行中の大学生らしき3人連れの若い男性に、その店員はにこやかにメニューとお冷やを出した。店員はアルバイトの女子高生で、エプロンとキリッとしたポニーテールが良く似合っている。
    「いっぱい種類あるんだなあ。君のオススメの広島焼きって、どれ?」
     メニューを開きながら大学生が尋くと、にこやかだった店員の顔がピシリと引きつった。
    「あのお客様、当店のメニューには『広島焼き』なんてモンはございませんが」
     大学生3人は不思議そうに。
    「え? だってここ、広島焼き屋さんじゃないの?」
    「そもそも広島焼きの専門店ばっか入ってるビルでしょ?」
    「あ、そっか!」
     ひとりがポンと手を叩いた。
    「俺聞いたことある、地元の人は『広島焼き』って言わないんだって。ええと『広島風お好み焼き』って言えばいいのかな?」
     ミステイクに気づいた大学生はどや顔で店員を見上げた……が。
    「……『広島風』って、なんじゃ」
     店員の顔が変貌していた。仁王像のようなものすごい憤怒の表情。しかもソース色に染まりはじめている。
    「よう見ろ! どこにも『広島風』なんで書いてないじゃろが!!」
     怒りに震える手で、店員はメニューを大学生たちに向けてバッと開いた。
    「広島で売ってるのは正真正銘・純正の『お好み焼き』じゃ~!!」
    「うわあああああ!」
     メニューから炎が迸った。
     
    ●武蔵坂商店街
    「広島ではコレがスタンダードなんですもんね。わざわざ『広島風』なんて言われたら、そりゃ『イラッ』と来ますよねえ」
     春祭・典(高校生エクスブレイン・dn0058)はしみじみと言った。
    「うん、気持ちは分かるよね~。大阪のとかとは進化の過程が違うみたいだし~。そもそも広島(とその周辺)以外で、関西風と区別するために、コレを広島風って呼ぶようになっただけなんだって~☆」
     殺雨・音音(Love Beat!・d02611)がヘラで指した『コレ』は、薄手の生地と卵の間にキャベツどっさりと麺が挟まった、例のお好み焼きである。
     ここは武蔵坂商店街のお好み焼き屋さん。ちなみに、ここのお品書きにもこの手のお好み焼きは『広島風』と明記してある。東京だから仕方ない。
    「音音さんに言われて粉モン絡みの噂に注意してましたら、『広島風お好み焼き』という名称にストレスを募らせて、闇堕ちしかけているお好み焼き屋さんの店員をみつけたというわけなんです」
     闇堕ちしかけている店員……彼女は小田福好子という、広島のお好み大好き女子高生で、お好み焼き屋だらけのビルにある店でアルバイトをしている。この店、県外からくる客も多く、無神経に『広島焼き』とか『広島風お好み焼き』とか連呼されているうちにストレスがたまり、とうとう闇堕ちしそうになっているというわけだ。
    「接触するには、やはりこのお店にお客として行くのがいいと思うんですよね」
     好子が注文を取りに来たら『広島焼き』『広島風』と連呼すれば、怒ってかかってくるだろう。
    「それでこれが、お店の入ってるビルなんですけどね」
     典はビルのパンフレットを開いた。件の店は1階にある。
    「わあ。このビルお好み屋さんだらけ~♪」
    「ええ。だからもし好子さんが本格的に闇堕ちして暴れだしたら大変なことに」
    「そうだね、ビル中がめちゃくちゃにされちゃいそう~?」
     いつも明るい音音も、さすがに深刻な顔になった。
    「だから今のうちに何とか目を覚ましてやってください」
    「わかった、説得もガンバルね。まずは広島では『広島風』がスタンダードであることを、他県の人もわかってるよ~って、言ってあげようかな~♪」
    「いいですね。それとか、関西風に負けないくらい美味しいのも知ってる、とかもいいかもしれません」
     説得によって人間らしい心を取り戻した上でKOすれば、彼女は救われるのだ。
    「他にも考えてみるねっ……ところで」
     音音がまたヘラで鉄板の上を指して。
    「いいかげん、食べない~?」
    「あ、そうでした、いただきましょう」
    「いっただっきまーす☆」
     もぐもぐ。うまうま。
    「うーん、美味しいねえ~v」
     音音は一切れ食べて、にっこりし。
    「せっかく広島まで行くんだから、本場のも食べてこよーかな~♪」


    参加者
    殺雨・音音(Love Beat!・d02611)
    ヴィントミューレ・シュトウルム(ジーザスシュラウド・d09689)
    黒芭・うらり(高校生ご当地ヒーロー・d15602)
    崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213)
    ソフィ・ルヴェル(カラフルジャスティス・d17872)
    饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)
    高嶺・楠乃葉(餃菓のダンプリンフィア・d29674)
    ヘイズ・レイヴァース(緋緋色金の小さき竜・d33384)

    ■リプレイ

    ●某お好み焼き屋にて
    「ここね」
     黒芭・うらり(高校生ご当地ヒーロー・d15602)が看板を確かめ、今回の現場であることを確かめる。
    「私も粉物はたまに食べるけど、呼び方気にしたことはなかったなあ。んー、いくらなんでも沸点低すぎる気が……ヒーローとしてはNG」
    「そうじゃな……でも地元民としては、切ないもんなんじゃ」
     崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213)が悲しげに首を振り、店の戸を開けた。お好み焼き屋の息子で、自身も店をやっているので、好子の気持ちは痛いほど解る彼である。だからこそ、心から闇堕ちを止めてやりたいと思うのだ。
    「「いらっしゃいませー」」
     女の子の声の二重唱が7人を出迎えた。好子と、プラチナチケットで一足早く店に入り込んでいたヴィントミューレ・シュトウルム(ジーザスシュラウド・d09689)の声である。ESPと大人っぽい落ち着きのおかげで何とか潜り込めたようだ。
    「お席こちらどうぞ」
     大人数のため2つのテーブルを寄せながら好子が案内した。気が利く働き者のようだ。
     灼滅者たちは素早く店内の様子を把握する。現在のところ店内には、地元民らしき客が3人のグループとカップルで合計5名、店員は厨房に2名と好子のみ。予知にでてきた大学生はまだいない。これから来るのだろうか。人払いが間に合うといいのだが。
    「僕ら旅行で来たんだー。お好み焼きについて教えて欲しいなー」
     饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)が席に着きながら、かわいらしく首を傾げてねだる。このまま好子をこの席に引きつけるべくヘイズ・レイヴァース(緋緋色金の小さき竜・d33384)も、
    「ボクも調べてはきましたが、広島のお好み焼きは初めてなので、本場の人から詳しい話を聞きたいであります」
    「そうですか、では少しだけ」
     『広島の』はセーフらしい。
    「広島のお好みは、食料が不足した戦後に、少量の小麦粉と野菜を多く使用して……」
     好子が上機嫌でしゃべり始めたのを見て殺雨・音音(Love Beat!・d02611)がトイレにいくような様子でなにげなく席を立った。ヴィントミューレと視線を交わし、2人は3人グループのテーブルに近づいていく。そしてそっとラブフェロモンを発動して。
    「ねえねえ、おじさま方♪」
     サラリーマンとおぼしき3人組は、ぽ~っとした目で音音を見上げる。
    「別のお店にいこ~♪ 音音もあとで行くから待ってて~v」
     3人組はちょうど食べ終えたところだったので、すんなり店を出てくれた。ついでに『臨時休業』の札を入り口に出しておく。例の大学生たちの来店に間に合ったようだ。カウンターにいたカップルの方は、食べてる最中だったこともあってちょっと手間取ったが、音音が店の外までつれていくことで解決した。
     さて、あとは厨房の店員だが……。

     一方、他のメンバーは好子を一生懸命引きつけている。
     広島お好み焼き歴史講座が一段落したところでソフィ・ルヴェル(カラフルジャスティス・d17872)が感心した表情で。
    「お好み焼き初めてなので、とてもためになります……アメちゃん食べます?」
     樹斉がメニューを見ながらニコニコと。
    「キャベツ山盛り入れるんだよね。具には牡蠣とかおもちとかあるんだよね~。ソースも色々なんだって?」
    「あ、そういえば」
     高嶺・楠乃葉(餃菓のダンプリンフィア・d29674)が大げさに手を叩いて、
    「広島はお好みソースが独特なのよね。何より、お好みソースの発祥の地なのね!」
     來鯉が鼻息荒く、
    「うん、そうなんじゃ! ここの店のソースはどんなん? ウチは球団と天狗の組み合わせ使うちょるけど……あ、そもそも、ここのお好みはオーソドックス? それとも呉焼きや府中焼き?」
     
     厨房にいた店員のうち、パートのおばさんは、
    「好子ちゃんに用事があって、今からちょ~っとだけ店を使わせてほしいから、席外してくれないかにゃ~?」
     と、ラブフェロモン使用の音音に上目遣いでお願いされ、ぽーっと勝手口からバックヤードに出てくれたが、店長の方は責任感からかなかなか言うことを聞いてくれない。
    「(うーん、気は進まないけど力づく~?)」
     と音音が覚悟を決めかけたところで。
    「待って」
     ヴィントミューレが厨房からフロアに顔を出した。すると心配そうにこちらを見ていたヘイズと目があった。避難係からの合図を待っていたのだ。察したヘイズは口の中でぶつぶつと怪談を語り始めた。百物語である。
     夢中でお好み談義を繰り広げている好子には聞こえていないようであるが、厨房には怪談がぞわぞわと満ちてくる。
     すると、グズっていた店長がソワソワしはじめた。だめ押しに音音が微笑みかけ、勝手口へと誘うと、今度こそ店長は後ろ髪を引かれる様子で出ていってくれた。この店の周囲からも、次第に一般人が離れていくだろう。

     避難役が厨房から出ていくと、引きつけ役たちがちらりとこちらをみた。ヴィントミューレが目配せすると、それを受けてソフィが。
    「へえーっ『広島風』お好み焼きってすごいんですねーっ」
    「んっ、何じゃって!?」
     好子は禁句に敏感に反応し、続けて樹斉と楠乃葉も。
    「こないだ関西風のお好み焼き食べてきたけど、広島風もすごくおいしそうだねーっ」
    「広島風お好み焼きは、なんと言っても重ね焼きが独特なのよねーっ」
     禁句連発。
    「あ……あんたら」
     ずっとにこやかだった好子の顔が、みるみる憤怒の表情に変わっていく。それと共に、どす黒いソース色に。
    「こんだけお好み焼きについて語っておきながら……」
     好子はがばっとメニューを取り、
    「結局なんにもわかってないやないかーーッ!!」
    「うわあああっ!」
     メニューから迸った炎が、灼滅者達を舐めた。

    ●お好みバトル
    「にゃ~ん、好子ちゃんったら、いきなり怖ぁ~い☆」
     音音が清めの風を吹かせながら駆け寄ってきた。怖ぁ~いとか言ってる割には、うさ耳ぴこぴこで張り切ってる様子。
     その間に、ヘイズは
    「samon raid!」
     緋緋色金の鱗を纏った小竜に、楠乃葉は、
    「餃菓……転化!」
     チョコ餃子型ご当地怪人『ダンプリンフィア』へと変身した。皮がこんがりで美味しそう。
     続いて、
    「チェンジ! カラフルキャンディ!」
     かけ声と同時にソフィの腰に七色のダイダロスベルトが出現した。ボリュームアップした衣装にマントを羽織って決めポーズ。
    「彩り鮮やかは無限の正義! ソフィ参ります!」
    「あんたら、やる気じゃね!」
     負けじとシャキーン☆ と大きなヘラを出現させた好子に、
    「ちょっと落ち着いて、好子ねーちゃん!」
     戦艦風甲冑姿の來鯉のダイダロスベルトが突き刺さり、子狐に変じた樹斉は斬艦刀を振り下ろす。ヴィントミューレは慎重に狙いを高め、楠乃葉が跳び蹴りですっ転ばせる。そこにうらりが槍を……。
     ギンッ!
     槍はヘラで防がれた。金属音が店内に響き、好子とうらりが睨み合う。
    「……ねえ、好子さん」
     先にうらりが槍を引いて。
    「拘りがあるのは良いけど、時代と共に呼び名や意味が変わっていくのは、仕方ないんじゃないかな? それに適合していくのも大事だよ……確かに私もさ」
     そこでぐっとうらりは拳を握って。
    「三崎のマグロを他の産地のと間違われたら怒……え、それとは違う?」
     仲間たちに、ちゃうちゃう、と突っ込まれてうらりは慌てて話を戻す。
    「えっと、区別のために『広島焼き』って呼ばれるのは間違いではないんじゃないかな。むしろ『広島焼き』という名前を『本家』であると発想を変……」
    「じゃあ、大阪のを『関西焼き』って呼べばいいじゃろ!」
     うらりの台詞が、好子の叫びに遮られた。
    「人口とか縄張りの差があるから、他県で『広島風』と言われるのは仕方ない。でも、広島じゃグローバルスタンダードは断然こっちなんけえのぉーーッ!」
     好子がヘラを振り回して突っ込んできた。見かけによらずその刃は鋭利で、前衛の者たちから血が飛沫く。
    「……よくも、やりましたね」
     ソフィがドルル……とブランのエンジンをふかし、好子に終始同情的だったはずの來鯉の目の色も変わっている……と、そこに。
    「やだも~、好子ちゃんもみんなも、目が怖いよ~☆」
     音音が爽やかな風を吹かせた。怒りにかられそうになっていた前衛が、ハッと我を取り戻したところで。
    「ところで、明石焼きって知ってる?」
     ヴィントミューレが大人びた口調で。
    「あれは地元では玉子焼きって言うそうね。たこ焼きよりも、玉子を多く使ってるから。でも、明石焼きと呼ばれても平気のようよ。個性と味で勝負してるからじゃないかしら?」
     好子は相変わらずヘラとメニューを用心深く構えてはいるが、違う切り口に興味を持ったのか、耳は傾けている様子。
     樹斉が素早く人間型に戻り、
    「それはきっと、味に自信があるからなんだろうねー。好子さんとしては、独立したお好み焼きに見て欲しいんだろうけど、どっちも美味しいんだし、区別されない事にそんなに怒らなくてもいいんじゃない?」
     言うだけ言うと、樹斉はまたくるんと狐型に戻った。
     ソフィが首を傾げ、
    「どうでしょう、好子さんはむしろ、区別のために不本意な名前をつけられ、定着してしまったことに怒ってるのでは……その気持ちは解ります」
    「お好み焼きは歴史も深く、地域で異なった進化を遂げたと聞くであります。培った歴史と愛着は、広島も関西風に等しいでしょう」
     育ての母がご当地怪人だったヘイズは、好子の気持ちを義母と重ねているようだ。
    「僕も帰るご当地があるから、気持ちはわかるの」
     楠乃葉も、餃子ヘッドで頷いて。
    「でも、広島風には、お好みソース発祥の地っていう、唯一無二な部分が……」
    「また広島風ゆぅたなーっ!」
    「しまったー!」
     今度は後衛にメニューの炎が躍り掛かった。前中衛がすかさず反撃に出る。樹斉が子守歌を響かせる中、ソフィがブランに援護させながら好子をひっつかんで投げ飛ばし、うらりがオーラを宿した拳で殴りつけた。
     後衛には、來鯉の霊犬・ミッキーとうらりの黒潮号が瞳を光らせ回復を施している。
     いきりたつ好子を、來鯉が必死にシールドで押し戻しながら、
    「大阪の料理と勝手に混同されて、腹立つんはわかる! んな呼び名、こっちがパクリとか亜流みたいじゃしなっ」
    「そうじゃろ!?」
    「でも、腹立つからって暴力に頼ったら負けを認めたと同然じゃろが!」
     ハッと好子が立ちすくんだので、來鯉は勢い余ってつんのめった。
    「そうじゃろか……?」
    「うん、おしつけたら逆効果だよね? 大切なものを理解してもらえないのは嫌だけど~☆」
     音音が回復を受けながら、
    「大好きなものは、素直に好きっ、て伝えればいいんだよ~♪ 他の人にも好きになってもらえるように~v」
     音音が、好きなもの、と言った時、思い浮かべているのは当然弟のクオンであるが。
    「そう、あなたのその想いは闇に委ねるべきものじゃない」
     ソフィがチャンスと見て熱く語りかける。
    「より多くの人に美味しさを知ってもらうための熱意になると信じています!」
     楠乃葉も、
    「そうよ、僕なんかスイーツ餃子だけど、理解されるまで広めようと思ってるのよ。貴女ならもっと簡単なはずなのよ」
     餃子姿で言うと説得力がある。
     來鯉が真剣な眼差しで。
    「不当な名前に、力じゃのうて、言葉と、何より味で対処してこそ、料理に携わる人間じゃろ? そのヘラは人を傷つけるためじゃのうて、お客さんに美味しいお好みを焼いてやる為にあるんじゃろ!」
     ……カラーン。
     好子がヘラを取り落とした。深くうつむいたその顔から、ソース色が少しずつ引いていく。
    「そうじゃね……名前に負けんよう、お好み焼きのグローバルスタンダードになるまで、味と宣伝で勝負を……」
    「わかってくれたか!」
     しかし、好子は途方にくれたような目を上げ。
    「でも……どうやったらええん?」
     ヴィントミューレが進み出て。
    「東京の、私たちの学園に来てみない? 同じ様にご当地名物を広めようとがんばっている仲間が大勢いるわよ」
    「学園?」
     よってたかって武蔵坂学園の説明をするうちに、好子の瞳に人間らしい光が戻ってきた。
    「東京でお好みが焼けるんじゃね……ステキ。でも……」
     しかし好子は自分の顔を手で覆って。
    「あたし、こんなんじゃが……」
     顔はまだ厳ついままだし、ソース色もまだらに残っている。
     また人間型に戻った樹斉が、落ちたヘラを好子に持たせた。
    「僕らが、その闇を追い出してあげるよ。だから、好子さんは正しいお好み愛を忘れないよう頑張って欲しいんだ」
    「ボクは貴女のお好み焼きが食べたい……だから己の闇に負けないで」
     ヘイズも熱心に言い添えた。
     闇を祓うためにしなければならないこと……言外の意味を悟った好子は、緊張の表情でヘラを受け取って頷いた。
    「行きましょう、私達が救い出します!」
     騎乗したソフィが気合いを入れ直してご当地ビームを放ったのを皮切りに、灼滅者たちは一気に攻勢に出た。來鯉も続けてビームを放って引きつけ、うらりは、
    「カルシウム足りてないんじゃない? 小魚食べるといいよ小魚!」
     槍から氷弾を放った。ヴィントミューレも氷魔法で畳みかけ、また素早く狐に転じた樹斉が……なかなか忙しい……獣の素早さで接近して急所に刃を振るう。楠乃葉は、
    「苺大福餃子ダイナミックゥッ!」
     豪快なパワーボムを喰らわせた。ヘイズのスマートフォンから湧きだした金色の刃は集って竜となり、刃が爪が尾が襲いかかる。メディックの音音もここが勝負処と裁きの光を撃ち込んで。
    「ぐ……」
     好子が床に倒れ込んだ。苦しげな顔に、再びソースの色が上ってきている。ぎりっとヘラが握りしめられ、瞳が禍々しく光る。
     まだくるか……!? と皆が身構えた瞬間。
    「耐えなさい、好子さん! あなたが人として生きる意志があるかどうか、今こそ裁きの時。受けなさい、洗礼の光を!」
     ヴィントミューレが渾身の魔力を込めた光線を炸裂させると、
    「必殺! マグロダイブキィィィィック!」
    「この攻撃、受け切れますか!」
     うらりとソフィが左右からご当地キックを見舞った。
     ボワン。
    「うわっ!?」
     いきなりソースの香りのする煙が大量に巻き上がった。
     なにこれ、げほげほ、ごほごほ、などと噎せているうちに、煙は晴れ……そこには、穏やかな表情の好子が横たわっていた。
     ヘイズが慌てて駆け寄り、脈と息を確かめる。
    「大丈夫、眠っているだけのようでありますっ」
     よかったー、と灼滅者たちは息を吐き、笑顔を浮かべる。
    「ねえねえ、好子ちゃんが起きたら、お好みパーティーしよv」
     音音が嬉しそうに提案すると、
    「わーい」
     人間形に戻った樹斉が元気よく手を挙げて。
    「僕は牡蠣がいいな……っと、季節的にどうなんだろ。アウトだったら、餅とイカタコでもいいな!」

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年4月14日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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