修学旅行2015~本格琉装で王朝気分♪

    「大学生になっても、またみんなで沖縄に行けるなんて嬉しいわぁ~」
     黒鳥・湖太郎(黒鳥の魔法使い・dn0097)は『修学旅行のしおり』と、沖縄のガイドブック、それから図書館から借りてきた本を楽しそうにめくっている。

     今年の修学旅行は、6月23日から6月26日までの4日間。
     この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に沖縄を訪れる。
     また、大学に進学したばかりの大学1年生が、学部の仲間などと親睦を深める為の親睦旅行も、同じ日程で行われる。
     
    「1日目の体験学習、アタシ今回は『琉球衣装体験』にしようかと思ってるの」
     沖縄伝統文化テーマパークで、本格的な『琉装』を体験するプランだ。『琉装』とは、16世紀頃に成立した、琉球王朝時代の正装である。沖縄では、結婚式で新郎新婦が着用することもある。
     女性用は、胴衣・裾(どうぢん・かかん)と言われるカラフルなインナーの上に、きらびやかな紅型柄の打ち掛けを着る。色は、赤、黄色、ピンク系が選べる。ロングヘアならば「からじ」という沖縄髷も結ってもらえる。
     男子はインナーの胴衣・袴(どうぢん・こ)の上に、長衣の御衣を羽織って、長い帯を胸前で結ぶ。頭には八巻冠(はちまきかん)。色は、紫・黄・赤・青・緑系が選べる。
     もちろん男女とも着付け・ヘアメイクをしてもらえるし、教わることもできる。
    「その衣装で、パーク内の古民家を巡ったり、カフェでお茶したり、お土産屋さんでお買い物もできるのよ。ロマンチックね~。写真もたくさん撮りたいわ」
     伝統的な古民家や礼拝所、ハイビスカスの樹下、ヤシの茂る水辺など、園内には撮影スポットがいっぱいだ。
     カフェではシークワーサージュースや、サーターアンダギー等、沖縄スイーツをいただける。
    「それからね、ちょうど体験時間中に、琉球王朝風のパレードが行われるんですって。そのパレードの、王と妃の侍従・侍女として参加することもできるのよ」
     更に、伝統衣装を体験したお土産・記念品としてオススメのものがある。
    「手巾(てぃさーじ)っていってね、細長い手織物なんだけど」
     スカーフやバンダナのように、頭に巻いたり、首に巻いたりして使うようだ。カラフルな幾何学模様が織り込んであるものが多い。
    「これって、昔の沖縄では、愛する男性への贈り物だったんですって。内地でいうところの、恋人にマフラーを編むようなカンジかしら」
     読谷の花織手巾などは別名『想いの手巾』『情の手巾』と呼ばれ、兄弟や夫、恋人が旅に出る際、安全や無事を祈って、女性達が必ず持たせたという。大切な人へのお土産にもピッタリだろう。
     湖太郎は、ガイドブックと伝統衣装の本をめくりながら、うふふ、と楽しそうに、
    「ね、ステキでしょ、よければこの『伝統衣装体験』一緒に参加しない? ……それにしてもアタシ、男女どっち着たらいいのかしら。華やかな女性用はモチロン着たいけど、アタシってば長身細マッチョだから、男装も結構似合うと思うのよねえ。迷うわあ~」
     ……湖太郎の迷いはおいといて、美しい伝統衣装を着て、沖縄らしい風景の中、友達や恋人と、素敵な思い出を作っちゃおう!


    ■リプレイ

    ●まずは衣装選び
     南国らしい色彩の琉装がずらりと並ぶクローゼット前で、
    「翌檜に似合う色を選んであげるわ。感謝しなさい、ふふん」
     先輩に向かっていばりくさっているのはひより。
    「え。俺は普通に自分で選びたい……」
     翌檜は反論するが、ひよりは、
    「あら湖太郎、一緒に翌檜の衣装を選んでくれない? 女の子は買い物と服選びが一番楽しいのよ、ふふん♪」
     来あわせた湖太郎まで巻き込んでとーっても楽しそう。
    「うわ、ぜんぜん聞いちゃいねえ……」

    「せっちゃん、これ着て!」
     レビは雪那にわくわくと黄色の女物をさし出したが。
    「……ごめん、嫌」
     雪那はすげなく断る。
    「俺も着るから! 一緒なら怖くないよね!」
    「歴史装束が怖いって何ですか」
     ツッコミを入れながら續はハラハラと2人を見守っている。
    「(雪那さん、暑いの苦手だもんな)」
     雪那はひんやりした視線で否定を伝えるが、レビが諦める様子はない。
    「……分かった」
     結局雪那は女装を承諾した。
    「やったー! せっちゃんの恥ずかしさが軽減するように、俺はピンクを着るからね! ……ねえ續君も着るよね?」
    「結構です」
     ニッコリ答えた續はいち早く紫色の男物を抱えている。
    「折角ですから、1人くらい男物着ましょ」
    「ちぇー手強いな。まあいいや、いずれ罰ゲームで……ふふふ」

    ●女子更衣室
     衣装を選んだ生徒たちは、早速着付けに入っている。
    「男物を着てみようかな」
     晶がふわりと羽織った長衣を見て、
    「あら、紫似合うじゃない!」
     声を上げたのはピンクの女物を着付けしている巳桜。晶は眩しそうに友人に目を向け、
    「ありがとう……皆華やかで目が楽しいな。巳桜もよく似合っている」
    「そう!?」
     巳桜ははしゃいでくるりと一回転。
    「ほら、そんなにはしゃいだら着崩れてしまうよ!」

     着付け終わって、きゃぴきゃぴしているのは武蔵坂HC。
    「これが沖縄の正装か~、凄いゴージャス!」
     織姫は感心したように女物の琉装を見下ろした。
    「意外に重装備ですよね」
     好弥は、南国の正装は全部アロハシャツだと思っていたらしい。
    「結構着込んだけど、涼しいねっ」
     そう言った夏奈は、両手いっぱいにハイビスカスの髪飾りをさし出して。
    「これもみんなでどうかな? 沖縄っぽくなるし」
    「お揃い、いいですね」
     好弥は早速おかっぱ頭に、織り姫も下ろしたままの髪にツーサイドアップで花をつけた。
    「お揃いお揃い~♪」
     織姫が嬉しそうに、
    「夏奈ちゃんは赤、好弥ちゃんは黄色、わたしはピンク、色の違いが楽しめてLucky♪」
    「この衣装、日本にいるのに、異国にいるみたいで不思議だね~」
    「さ、写真撮りにいきましょう」
     3人は意気揚々とパークへ。

    ●男子更衣室
     青い男物を着つけ終わった勇介は、
    「役者の勉強中なので、女物の着付けやメイクも教えてもらえますか?」
     要望を聞いて施設スタッフが見せてくれたのは、女装中の紅狼と湖太郎。
    「なんか俺、女物渡されちゃって……」
     紅狼はなし崩しである。しかし紅色がよく似合っているので、まあいいか。
    「アタシは後で男物も着てみるわよ」
     湖太郎は黄色の美しい着物に超ゴキゲン♪
    「チェンジも出来るんですよね、俺も後で女物着てみようかな……せっかくの衣装、当時の人を演じてみたくなってきたし」
     勇介が呟くと、
    「それならパレードに参加すれば? 俺も侍女で出ようかなー」
     紅狼はすっかり開き直り?
    「え、俺でも参加できる行列があるんだ!」
     勇介の目がキラキラ。

     キレイね、と青みがかった漆黒の髪をスタッフにほめられ、おおきに、と恩は微笑んだ。
    「おお、真っ赤な女物か。似合うじゃねえか」
     鏡を背後から覗きこんだのは、既に着付け終えた命(d28675)。恩は鏡の中の命に、
    「みぃ、着付けが終わったら行列に参加してみよかと思うが、如何じゃ?」
    「パレェドか、楽しそうだし参加させてもらうとするぜ。祭はいいよな!」
    「それ迄は土産物を探しにいくか」
     会話の間に、手際よく髪が結われていく。

    ●着付けを終えて
     男女それぞれの更衣室で着付けを終えた生徒たちが、続々と施設の外に集まってきた。
    「おう、似合ってるぞ、可愛いもんだ。お人形みたいだが」
     青色の琉装を着た既濁は、女子更衣室から出てきた、レーネを見つけて声をかけた。レーネは着慣れない黄色の着物にちょっと居心地悪そうに既濁を見上げ。
    「お人形……服がきちんと整ってるという事です?」
     言葉選びに緊張した既濁は、ただレーネの頭をなでた。

     パシャ。
     いきなりのシャッター音に翌檜が振り向くと、携帯を構えたひよりが。
    「写メはいいって……お前、あちこちばらまくだろ」
    「あ、当たり前でしょっ、よく似合ってるんだから……アタシが見立てたんだから、当然だけどねっ」
     ひよりはごまかしながら、それでも偉そうに胸を張る。

    「コタロー!」
     更衣室を出た湖太郎に飛びかかってきた(?)のは。
    「あらクリスちゃん……どうしたの、その服?」
     なぜか空手着にヌンチャク姿のクリスティーヌ。
    「琉球ノ芸能八手トイウヤツネ!」
    「……ええと、ちょっと違わない?」
    「エッ」
     クリスは周囲の学友たちを見回し、
    「シマッタ、マチガエタ? コタローとペアルックにキガエルネ!」

    「わー、華やかで綺麗だねー! アジアンテイストを友禅染めとかより断然強く感じるんだよ☆」
     【武蔵境2-1】の茶子は、着飾ったクラスメートの姿にはしゃぎまくる。
    「はわわ、いつもの雰囲気と違ってみんなキレー!」
     朔眞もドキドキしながら皆の変身を見つめている。和はほわほわと頷いて、
    「皆艶やかで煌びやかで、どこぞの貴族様みたいよ~」
     和は朱色、朔眞はピンク、茶子は黄色。手助けしあって髪も綺麗にからじに結っている。黒一点の華丸は、
    「最近舞台では女形が多いから、ここはやっぱ男装で……って、おお、気づけば女子ばっか。俺ってばかなり役得?」
     黒い衣装でニヤニヤしつつ、女子の髪に花を挿してやる。

    「朔夜!」
     更衣室を出た空凛と陽和が、一足早く着付け終えていた弟を見つけて手を挙げると、
    「わあ、ふたりともすごく綺麗!」
     朔夜は目を見張りながら駆け寄ってきた。空凛はピンク、陽和は赤。髪もきちんとからじに結っている。
    「キレイでしょー、空凛姉さまはピンクが似合うよね!」
    「陽和も、やはり明るい色がとてもよく似合いますね」
    「僕だけ見てるのがもったいないな……」
    「あら、そういう朔夜だって、どこの皇子様かと思いました」
    「こういう衣装って、身が引き締まるよ」
     空凛と陽和は、青の衣装に鉢巻冠をりりしくかぶった弟を挟んで。
    「さあ、早速記念撮影しましょうか!」

    「……さ、悟君!? 普通に似合ってて気がつかなかった」
     【西久保2ー5】黄色を纏った壱琉が、驚きの声を上げた。
     仙も目を点にして。
    「美女がいると思ったら、東当か」
    「イケてるやろ?」
     悟は赤地に赤い花と青い蝶の柄の女物、赤い番傘でキメキメ。
    「そういう仙はなんで男装やねん!」
    「着慣れない暖色ばかりでね」
     仙は、青い男物を凛々しく着こなしている。偉そうに腕組みしているのは、瑠璃色の男物を着た秀行。
    「ふっ、俺は衣装だけで自然と風格が出てしまうからな」
    「みなさん綺麗なのですー」
     鶫も嬉しそうに皆を眺め回し、
    「どうですか、私も似合ってます?」
     ピンクの衣装を翻してくるり。
     青地に金模様の渋めの女物姿のしでは、友人たちの頭にそれぞれに似合う花を挿し終えると、満足げに頷いて、
    「さ、カフェに行こうか……って、クゥエルくんは?」
     気づけば1人足りない。見回すと青色の男物を着たクゥエルがふらふらと遠ざかろうとしている。
    「あやー、面白そうなものがたくさんだねー♪」
     クラスメートたちは慌てて放浪癖の友人を捕まえにいく。

    「はーいたーい・うーちなーっ♪」
     オレンジっぽい黄の衣装で嬉しそうに踊っているのは【ファッション研究会】の杏子。
    「これがメイドさん……もとい、侍女の服なんて豪華だねえ」
    「やっぱ、南! って感じするね。旅先でのトクベツなカッコって、楽しいねー!」
     ピンク系の女物で、黒髪をからじに結った結月は、初めての服装にどきどきだ。
    「カラフルな色やデザイン、とっても南国風だよね。異国情緒が味わえるよ♪」
     さやかの衣装もピンク。小さめのお団子に髪を結ってもらってゴキゲンだ。
    「何枚も重ね着しているから暑くて苦しいんじゃないかと思ったけど、意外にそうでもないね。ご当地の気温に合わせた服だから当然かな?」
     ファッション研究会らしくしげしげと黄色の衣装を見回しているのはマコト。アップにした髪にハイビスカスを挿している。
     沖縄の着物は本土より脇等がゆったり仕立ててあり、風通しがいいのだ。
    「みんな、華やかでとっても似合ってるね」
     黒一点のマシューは青系の男物。
    「僕の出身地のイングランドはこれという民族衣装がないから、こういうの憧れちゃうな」
    「さあ、パレードの時間まで、いっぱい写真撮っちゃお!」
     
    ●そぞろ歩き
    「今日は、私の王子様役をやってもらいます!」
     太陽みたいな黄色の衣装に、うなじを出さずに髪をからじ風にまとめた律希は、相棒の正流に手を挿し出した。
    「心得ました。さ、参りましょうか……姫様♪」
     手を取った正流は、愛用の鎧をイメージした紺の胴衣・袴、長衣と冠は暗めの紫、帯が赤という組み合わせ。戦支度の意匠を残すのは、姫を守る士の心構え! とか威勢のいいことを言っているが、いつもと違う雰囲気の相棒にドキワクだ。
    「琉装は、結婚式で着ることもあるそうですね」
     ゆるりのんびり歩きながら、律希がいたずらっぽい眼差しで正流を見上げた。髪に挿した花が香る。
    「こういうのも……悪くないですね?」

     古民家で湖太郎たちと写真撮影中のハリマは、黄色系の男物に金茶色の八巻冠、同系色の扇子を持ち、体格と相まって年齢離れした風格だ。しかし、
    「こんなオシャレな服、来たことないから照れくさいなー」
     先輩達を見上げるあどけない笑顔はやはり小学生。
     と、そこに。
    「おや、そこの長身のお嬢さんは黒鳥くんだね? ステキじゃないか」
     やってきたのは晶と巳桜。2人はカメラを差し出して。
    「よければ撮ってくれないか?」
    「お安いご用よ~♪」

     七と鶴一は、相合い日傘で古民家群のエリアを歩いている。七は黄色の女物。鶴一も赤の女物。和傘は鶴一の、
    「日差しが気になるお年頃、相合い傘で歩かない?」
     という提案による。
     七はジュース片手に古民家を珍しげに眺めて。
    「当たり前だけど、北海道とは全然違うわ。蛭川はどこの出身だっけ?」
    「鎌倉の方。古民家は多いけど、うん、沖縄は別の趣があるわー」
    「あっ、かわいいシーサー!」
     七が窓辺を指した。
    「あれと写真撮ろうよ! それからさっきハイビスカスがキレイなとこあったじゃない、あそこでも撮りたいな」
     シーサーと写真を撮った2人は足早に道を戻り、
    「顔もっと寄せて~」
     花の下で鶴一が自撮棒を掲げる。
    「撮るわよ~、はい、チュラさん!」
    「チー……チュラ? ……ああっ、ヘンな顔で写っちゃった! もう1枚!」

    ●土産物屋にて
     土産物屋の前には【餃子うどん】のメンバーが集っていた。
    「わあ、ふたりともすごく可愛い! 髪型変えると印象変わりますねー」
     歓声を上げた陽坐は黒と青の男物に、はちまきをエイサー風に巻いてもらっている。
     アガーテは黄色の着物に、髪はアップ。命(d33085)はピンクで、髪はからじ風にまとめているが、前髪はいつも通り分厚く下ろしている。
    「アガーテさんは普段落ち着いた雰囲気だから、華やかな黄色がイメチェンなカンジ。命ちゃんのピンクも女の子らしくてすごくいいよ」
     赤の長衣姿の良信も大変褒め上手。
     女子ふたりも幾分照れながらありがとう、と応じ、
    「それぞれお土産を買ったら、再集合して写真撮りましょう」
    「はーい」
     4人がお土産屋に入って行くと、すでに武蔵坂の生徒達が買い物に勤しんでいた。
     やはり人気があるのは手巾売り場で、律希と正流はこっそりと互いのプレゼントを選んでおり、巳桜は大切な人のお守りとして海の色の手巾を、晶も青好きな双子の弟の一枚をじっくりと探している。
    「姐さんたちの土産……てぃさーじってのは男に贈るもんなんだろ? 菓子がいいか?」
     悩んでいる命の傍らで、恩は素早く自分も入れて隠し撮り。
    「隙有り……ふふ、此方に来てから多忙極めた故、共にある寫眞を撮る暇が皆無じゃッたからのう」
     空凜と双子は恋人の分だけでなく、家族の分も楽しそうに選んでいる。
    「もちろん4人分買うよ」
    「家族ですからね、当然です」
    「この絆は永遠に続きますように……ってね!」

    ●カフェにて
    「じゃーん!」
     カフェに駆け込んできたレビは、いつの間にか男物に着替えている。
     冷たいスイーツで生き返っていた雪那はそれを見て、
    「……着替える」
     剣呑な目つきで席を立った。流石にひとりで女装はいたたまれない。續は苦笑し、
    「雪那さん溶けかけてますし、そろそろ衣装返却しましょうか」
     レビはそんなふたりに慌ててすがりつく。
    「ええっ、待って待って! その前にもう1回一緒に写真撮って、お願いっ」

    「あ、黒鳥さんたち、一緒にお茶しません?」
     カフェに入った湖太郎たちに声をかけてくれたのは、琉装でくつろぎまくりの萌愛。
    「ありがと~♪」
    「私のオススメ沖縄スウィーツはぜんざいですよ! 冷たいかき氷に甘く煮た小豆が最高です。本土の小豆と違って大きくて食べごたえがあるんですよ」
     実は萌愛は子供の頃数年沖縄に住んだことがある。
    「へえー、俺頼んでみよ。美味しそうだなー」
    「アタシも~」
     紅狼と湖太郎はぜんざいを頼み、
    「シークワーサージュースも飲みたいんだけど……」
     ハリマは悩んだ末、
    「ぜ、ぜんざいもお願いしまっす!」
     結局両方……と、その時。
    「コタロー、オマタセー!」
     湖太郎とお揃いの黄色い女物をはためかせ駆け込んできたのは、クリスティーヌ。
    「遅レタオワビニご馳走スルネ!」
    「えっ、ホント?」
    「僕たちもー!?」

     既濁は完熟マンゴーのデザートに舌鼓を打っている。
    「美味いなこれ。そっちはどうだ?」
     レーネは紅芋タルト。
    「しっとりしてて、お芋の味がいっぱいです。既濁くんもいかがですか?」
    「お、サンキュー……こっちも美味いなあ」
     既濁はタルトを味わうと、
    「こっちも1口やろう。結構いけるぞ」
    「ありがとうございます……マンゴーのお味が濃くて美味しいですね」

     【西久保2-5】のメンバーは、山のようなスイーツを前に写真を撮ろうとしている。フローズンマンゴーにシークワーサージュース、紫芋のサーターアンダギーにかき氷ぜんざいなどなどなどなど……。
    「ええっ、スイーツと一緒に写真撮るなんて聞いてないぞ!」
     慌てているのは一番たくさん頼んだ秀行。実は大の甘党なのだ。せめて腕組みしてニヒルな笑みを浮かべてみたりして。
    「うさぎさんもええか?」
    「さっさと撮ろうよ、溶けちゃう!」
    「早く食べたいよー」
    「みんなのも一口ちょうだいね!」
    「食べたらお土産も見に行こうよ」
     ……パシャリ!

    ●ヤシの水辺
     【餃子うどん】は土産物を手に、ヤシの水辺で記念写真を撮ろうとしていた。アガーテは自分のお守り用に青の手巾、陽坐は紅型のブックカバー。
    「その……ジンベイザメのデザインが可愛くて」
     良信は琉装に合わせた黒地に金模様の軍配のような団扇。命は、
    「私は衣装に似たピンク地に紅型文様の暖簾を……って、ああっ、衣装と同化しちゃう!? ガーン」
     ショックの命にアガーテが手を伸ばし、
    「私のと交換しましょ」
     優しい姉貴だ。
     アガーテが通行人にシャッターを頼みに行ってる隙に、良信が囁く。
    「戦隊風のポーズで撮らねえ?」
    「いいですね、ちょうど4色ですし」
     高校生2人の会話に陽坐は肩をすくめ、
    「はいはい、ヒーローポーズは後でつきあいますから……」

    ●パレード!
     王朝パレードが始まった。露払いのようにエイサーと琉球舞踊が先導し、その後ろに王と妃の輿が続く。その回りに侍従と侍女……琉装の武蔵坂の生徒たちが付き従っている。
     【武蔵境2-1】のメンバーも、一応しずしずと歩いているが、
    「うーん、素敵! 琉球の歴史もちょっと調べてみたくなっちゃったんだよ!」
     カメラ片手に興奮を隠しきれない茶子をはじめ、皆テンションアップ。和は、
    「伝統芸能に精通してる方が多いから、所作も含めてしっくり……きゃうっ!」
     言ってるそばからつんのめっている。
    「おっと」
     華丸が慌てて支え、もう片手はペンギン歩きの朔眞に差し出す。
    「姫君お手をどうぞ……って、侍女と侍従だけどな」
    「ありがと、これって裾持った方がいいのかな……う、持たない方がいい?」
     ハハハと、華丸は両手に花で陽気に笑う。
     【ファッション研究会】の杏子は、沿道に学友たちを見つけると、その中にいた湖太郎にカメラを渡し、
    「写真撮ってくれるー?」
    「いいわよー!」
     動きやすいように黒の男物にチェンジしていた湖太郎は、パレードを追いかけながらレンズを向ける。
    「写真撮るよ-、みんなおいでー!」
     結月が皆に声をかけ、研究会のクラブ員はもちろん、パレードに参加している仲間たちも集まってきて――。

     ――ステキな思い出、たくさん作れたね!

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月23日
    難度:簡単
    参加:46人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 3
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