求)ペナント縫製スタッフ

    作者:西東西


     ある日の夜。
     夜闇に包まれた山中を、眉目秀麗なひとりの女性が歩いていた。
     求人情報が掲載された雑誌を手に、歌うように楽しげに、声を弾ませる。
    「ふらいんぐ洋服屋、レプラコーン。
     就職先~を、さがしてます~。
     書類の審査、通ったから、面接いくの~」
     女性の正体は、ダークネス。
     野良の淫魔で、名を『レプラコーン』という。
     ランタンを携え傍らに浮かぶのは、『フライングウェディングドレス』。
     どうやらこのフライング眷属は、このレプラコーンの作品であるらしい。
     ドレス全体には精緻な刺繍がほどこされており、まばらに散らしたパールやビジューが、きらきらと輝き、美しい。
    「ペナント縫うくらい、お茶の子さいさい~。
     私で良ければ、お手伝いします~。
     チクチックチク、チクチックチク、新作もどうぞ~」
     レプラコーンは自慢の作品を見あげ満足げに微笑むと、迎えに現れるというペナント怪人との合流地点をめざした。
     

    「みなさん、『フライングメイド服事件』のことを覚えていますか……?」
     教室に集まった灼滅者たちを見渡し、野々宮・迷宵(高校生エクスブレイン・dn0203)が事件の説明を開始する。
    「これまであらゆる『フライング服飾系眷属』を作成してきたレプラコーンたちが、今回、安土城怪人の傘下に加わろうと行動をはじめたみたいなんです」
     どうして安土城怪人の傘下に、と問う声がすれば、
    「『安土城怪人』の、勢力拡大策のひとつですのようですね」
     安土城怪人が、求人雑誌に求人情報を載せたらしい。
     ずいぶん好待遇の求人だったらしく、このままでは野良レプラコーンたちが、次々と安土城怪人の元に集いかねない。
    「そうなる前に、みなさんの手で、灼滅をお願いします」
     
     今回対峙することになるレプラコーンは、『妖精職人』として知られる強大な淫魔だ。
     ブレイズゲート『緋鳴館』の一角である『メイド無法地帯』にも出現するため、直接対峙したことのある者もいるだろう。
     彼女たちは靴からメイド服まで、ありとあらゆる『フライング服飾系眷属』の生産技術に長けていることで知られている。
     戦闘においては『瞬きの間に15メートル移動する』と言われる高速移動能力を用い、まさに妖精の如く神出鬼没に襲いかかってくる。
     大地のどこかに眠る広大な『黄金鉱脈』こそがレプラコーンの力の源であり弱点だと言われているものの、確かなことは分かっていない。
    「戦闘になれば、レプラコーン、フライングウェディングドレスの2体が攻撃をしかけてきます。今回については安土城怪人勢力の増強を防ぐため、必ずレプラコーンを灼滅するようにしてください」
     そう告げ、迷宵はひととおりの説明を終えた。
     
     敵はランタンを手に移動しているため、見つけるのは容易い。
    「レプラコーンと接触するタイミングについては、みなさんにお任せします」
     ただし戦闘に時間がかかってしまった場合、レプラコーンを出迎えに現れたペナント怪人と遭遇する可能性が高くなる。
     最悪、2体のダークネスを相手にしなければならなくなるので、注意が必要だ。
    「戦闘時間については、くれぐれも、お気を付けください」
     よろしくお願いしますと続け、迷宵は深々と、頭をさげた。


    参加者
    羽柴・陽桜(はなこいうた・d01490)
    相良・太一(再戦の誓い・d01936)
    或田・仲次郎(好物はササニシキ・d06741)
    山田・菜々(家出娘・d12340)
    契葉・刹那(響震者・d15537)
    ルフィア・エリアル(廻り廻る・d23671)
    端城・うさぎ(リンゲンブルーメ・d24346)
    月岡・悠(銀の守護者・d25088)

    ■リプレイ


     夜闇に包まれた山のなか。
     のんきに揺れる灯を見出した灼滅者たちは、ダークネスと眷属の行く道を先回りすべく、隠密に徹し移動していた。
    「『レプラコーン』というのは、職人集団的な種族……なのか? それとも、『メイド無法地帯』の分割存在が出てきたのか……」
     どちらにしても面白そうじゃないかと呟くのは、ルフィア・エリアル(廻り廻る・d23671)。
    「衣装自体はどれも素敵なのですよね。私のライブ衣装も、手掛けてもらいたくなります。……もっとも、ダークネスを雇うなんてゾッとしませんけどね」
     淫魔に興味はあるものの、敵の勢力が強まるのは阻止しておきたいところと、契葉・刹那(響震者・d15537)も先を急ぐ。
    「ダークネスが読む求人雑誌って、どんなの、かなぁ」
     素朴な疑問を口にしつつ仲間たちの背を追うのは、端城・うさぎ(リンゲンブルーメ・d24346)。
    「勢力拡大も、防がなくっちゃ、いけない、し。頑張ろう、ね、たれみみちゃん」
     傍らのサーヴァントへ呼びかければ、ウイングキャットが応えるようにばさりと翼をはためかせる。
     灼滅者たちは知るよしもないが、レプラコーンが手にしていたのは『裏表紙に安土城怪人や斬新な会社の求人情報がカラーで掲載された求人雑誌』だ。
     掲載されていた安土城怪人の求人はとってもホワイトな案件で、斬新な会社の求人は、とってもブラックな内容だった。
     レプラコーンたちが安土城怪人のもとへ向かうのも、むべなるかな。
     そんなわけで――。


    「ふらいんぐ洋服屋、レプラコーン。
     就職先~を、さがしてます~」
     夜闇に包まれた森の中を、1体のレプラコーンが楽しげに歩いている。
     傍らにはランタンを手にしたフライングウエディングドレスが優雅に浮遊し、主の行く先を照らす。
    「ペナント縫うくらい、お茶の子さいさい~。
     私で良ければ、お手伝いします~。
     チクチックチク、チクチックチク、新作もどうぞ~」
     語り終えた瞬間、先を行く眷属が動きを止めた。
     道の先に、いくつもの人影がよぎる。
    「お前が『妖精職人』と言われるレプラコーンだな!」
     相良・太一(再戦の誓い・d01936)が声をあげると同時に、灼滅者たちが手にしていた照明器具を一斉に点灯。
     淫魔と眷属が、驚いたように一同を見やる。
    「あれあれ、灼滅者、どうしてここに~?」
     レプラコーンにしてみれば、就活のため、面接先に向かって歩いていただけなのだ。
     しかも、人間や灼滅者たちにはとくに用の無さそうな、へんぴな森の中。
     なぜ行く手をさえぎられるのか、さっぱり理由がわからない。
    「もしかして、就職先、探しにきたの~?」
     見当違いな問いかけには答えず、
    「レプラコーンさんのお仕事、ひお的には尊敬するとこなんだけど……。でも、ペナント怪人の勢力強化を見過ごすわけにはいかないの!」
    「悪いっすけど、安土城怪人と合流はさせないっすよ」
     羽柴・陽桜(はなこいうた・d01490)と山田・菜々(家出娘・d12340)が、続けて声をあげる。
     月岡・悠(銀の守護者・d25088)もスレイヤーカードを手に、言いはなった。
    「せっかく決まったお仕事だけど、このまま見過ごすわけにはいかない」
    「お仕事とお命ちょうだい、なの!」
     進行方向遮るように立ちはだかった陽桜が、びしぃ! と指差し、
    「仕事はちゃっちゃと終らせてしまいましょうねー、うふふ」
     まるで緊張感のない様子で、或田・仲次郎(好物はササニシキ・d06741)がスレイヤーカードの封印を解放。
     レプラコーンめがけ突撃したライドキャリバー『仮・轟天号』に続き、意志持つ帯を射出する。
    「ひどいわ灼滅者、おに! あくま~!」
     突撃を抑えこみ、主の代わりに切り裂かれる眷属の死角で、淫魔が憤慨したように両腕を振りまわす。
     しかし、灼滅者たちにも事情がある。
     なんと言われようと、退くわけにはいかない。
    「レプラコーンよ。条件が良いとはいえ、その腕前でペナントを縫ったら随分と独創的なペナントができそうだな」
     「フライングペナント怪人とか」と、ガトリングガンを手にしたルフィアが弾幕を張るも、フライングウエディングドレスが攻撃線上に身を投げ、主を守り通す。
    「それは名案ね、提案してみましょう~!」
     就職先にアイデアを持ちこめば、お給料をあげてもらえるのかもしれない。
     淫魔が賛同し、ぱっと顔を輝かせた、次の瞬間、
    「隙ありだわ~」
     ふいに悠の耳元で声がしたかと思えば、
    「ッ!?」
     叩きつけるような衝撃とともに、悠の身体に激痛がはしった。
     目にもとまらぬ速さで迫ったレプラコーンが、手にした斧で斬り裂いたのだ。
     ――瞬く間のできごとに、仲間のだれもが反応できなかった。
     血のあふれる傷口を押さえ、たまらず悠が膝をつく。
    「悠おねーちゃん!」
     駆けつけた陽桜が歌声を響かせ傷口をふさぐも、受けた疲労は、確実に少女の身体を蝕んでいる。
     刹那は一瞬気圧されたものの、すぐに思考を切り替え、戦場全体に視線をはしらせた。
     数のうえでは、灼滅者たちが圧倒的。
    (「機動力は高そうですが、それさえ凌げれば押すのみ」)
    「ラプソディ、サポートお願いね!」
     主の声に応え、霊犬『ラプソディ』が純白の長い毛足をなびかせ、駆ける。
     刹那が足元の影を手繰ると同時に、眷属の押さえにあたるべく、うさぎも詠唱を開始。
    「鬼さん、こちら……っ!」
     ふたたび主を守ろうと舞いあがった眷属めがけ、顕現させた魔法の矢を撃ちはなつ。
     矢がドレスを射抜いた瞬間、霊犬の斬撃と影の刃が、たて続けにレプラコーンを斬り裂いた。
     無残に裂けていく淫魔のメイド服を見やり、歓喜の声をあげたのは太一だ。
    「レプラコーンのメイド服! 万感の想いをこめて……エロスをありがとう! 最高だ!!」
     メイド服への感謝をこめ、両手に集中させたオーラを放出。
     回避に失敗したレプラコーンが攻撃を受け髪を乱すも、
    「それなら、虜に、なればいいわ~!」
     太一を魅了するべく、蠱惑的な歌声を響かせる。
    「うおおおお、メイド服よ永遠なれ!!」
     思わず聴きいり催眠にかかりかけた太一だったが、
    「太一おにーちゃん!!!」
     すかさず、陽桜が一声。
     黄色の標識を手に迫り、淫魔のかけた術を解除する。
     「ハッ」と我にかえった太一はさておき。
    「裁縫が得意みたいっすね。時間があったら、教えてもらいたいとこなんすけど……!」
     菜々がマテリアルロッドを振りかぶり、レプラコーンを打ち据える。
     流しこんだ魔力が内側から爆発するのを見やり、悠が指輪を掲げる。
    「スピードに自信あり。なら、止まっていてくれたら嬉しい」
     先ほどの二の舞にはなるまいと、制約を加える魔法弾を叩きこむ。
     灼滅者たちがさらに追いうちをかけようとするも、舞い飛んだフライングウエディングドレスが、踊るように周囲の灼滅者たちをなぎ払った。
    「すぐに回復するの!」
     縛霊手『はなうた』を掲げた陽桜が清めの風を招いた、その時。
     ――ピピピピピピピピ。
     響く無機質なアラームは、戦闘開始5分を告げる音。
     レプラコーンも眷属も、今なお健在。
    「このままだと、相良君がウエディングドレスを着る余裕はなさそうですねー、うふふ」
     そう告げる仲次郎の言葉に、ライドキャリバー『仮・轟天号』が幾度めかの突撃を仕掛け。
     仲次郎はカランと下駄を鳴らし、交通標識を手に淫魔へ殴り掛かった。


     決定打に欠けるまま、レプラコーンとの戦闘は後半戦へとなだれこむ。
    「ここで、逃がすわけにはいかないのでな」
     カミの力で逆巻く風の刃を巻き起こし、ルフィアが確実に淫魔を切り刻み、
    「すみませんが、ここで倒させてもらいます……!」
     歌使いとして負けるわけにいかないと、刹那が練りあげたオーラを一気に撃ちはなつ。
    「その言葉、そのまま、お返しするの~!」
     理由もわからず襲撃された淫魔とて、一方的にやられるつもりはない。
     『瞬きの間に15メートル移動する』と言われる高速移動能力を用い、灼滅者たちの死角から、神出鬼没に攻撃をしかけくる。
    「菜々!」
     戦闘中、レプラコーンの動きを捉えるべく意識を集中させていた太一が叫ぶも、間に合わない。
    「っ! 口さけ女みたいっすね。ポマードって言えばいいんすか!?」
     回避しきれなかった菜々が血を流しながら膝をつき、陽桜が幾度めかの歌で癒しを施す。
     淫魔へはいくらか枷を与えてはいたものの、完全に動きを止めるには至っていない。
    「わかっちゃいたけど、高速移動能力は厄介だな!」
     声とともに太一が光輪をはなてば、光は軌跡を描いて淫魔を斬り裂いた。
     入れ替わるように菜々が怒涛の拳を繰りだしたものの、眼前に現れたのは、フライングウエディングドレスだ。
    「援護する、よ!」
     うさぎが魔法の矢で眷属を縫いとめている間に、
    (「まったく憧れがないと言ったら、嘘にはなるけど――」)
     眷属を見やり内心つぶやいた悠が、縛霊手から網状の霊力を放射し、レプラコーンを縛りあげる。
     ――ピピピピピピピピ。
     陽桜のアラームが鳴る。
    「7分経過なの……!」
     灼滅者たちに、焦りが広がる。
     眷属も淫魔もすでに満身創痍とはいえ、残り時間は3分。
     ――ここで淫魔を倒しきれなければ、安土城怪人が勢力を増してしまう。
     裁縫の得意なレプラコーンのことだ。
     1体でも逃せば驚異的な戦力となり、先ほどルフィアが言っていたように、新たなペナント怪人を生みだしかねない。
     踊るように舞うウエディングドレスの攻撃を、霊犬『ラプソディ』、ウイングキャット『たれみみ』とライドキャリバー『仮・轟天号』がかばい受け。
     仲次郎はへらりと笑みを浮かべると、サーヴァントたちの死角から、レプラコーンへと攻撃を狙い定めた。
     射出したダイダロスベルトが、しなやかに伸びる脚を斬り裂く。
    「うふふー『就活』の前に、『終活』をすべきでしたねー」
    「私が、いったい、なにしたっていうの~!」
     物騒なセリフに淫魔が声をあげ、灼滅者たちを翻弄すべく、地を蹴った。
     と同時に、ローラーダッシュをかけたルフィアが炎をまとった蹴りをはなち、すれ違いざまに淫魔を地面へ叩きつける。
    「ふ。こう見えて、貧乏病院時代に裁縫では腕をならしたものだ」
     裁縫の腕前が、今の一撃に影響したかどうかは、ともかく。
     主を救うべく舞うフライングウエディングドレスの攻撃を華麗に回避し、
    「どうしても逃がすわけにはいかないんだ。――ごめんね?」
     悠の語った七不思議奇譚が、伏したレプラコーンへ追い撃ちをかける。
     そして、こんな時ではあったが。
     こんな時だからこそ、太一はメイド服への感謝を忘れず、淫魔へ向け影の刃をはしらせた。
    「シルキーのメイド服! ヘソ! 圧倒的にヘソ! ありがとう! チャイナメイド服! 奇跡のコラボ! スリットから覗く太股ディモールト!!」
     影は声にあわせ、レプラコーンの服を、身体を執拗に斬り裂いていく。
    「なんなの、この灼滅者、むちゃくちゃよ~!」
     ――ピピピピピピピピ。
     淫魔の悲鳴にのせ、ふたたびアラームが鳴る。
     あと2分。
     急がなければ、ペナント怪人がこの場へやってきてしまう。
     そして満身創痍とはいえ、いまだ眷属の姿も残っている。
     『たれみみ』が猫魔法でフライングウエディングドレスを戒めたところへ、
    「あなたの相手は、私たち、だよ……っ!」
     うさぎが両手に集中させたオーラを、一気に放出。
     眷属の動きを封じこめている隙に、己の片腕を異形巨大化させた菜々が迫り、拳を叩きつける。
    「今っす!」
     呼び声に応え、殴り飛ばされた淫魔のもとへ『仮・轟天号』と『ラプソディ』が走る。
     突撃と斬撃を受けたレプラコーンは体勢をたて直す間もなく、攻撃の支援に回った陽桜の風の刃に身を引き裂かれた。
    「仲次郎おにーちゃん、刹那おねーちゃん!」
     応える代わりにカランコロンと下駄が鳴る。
     淫魔が地を蹴ろうとした瞬間、『進入禁止』の赤色標識を手にした仲次郎が、振りかぶる。
    「うふふ、悪あがきはここまでですよーっと」
     ゴッと鈍い音が鳴り。
     レプラコーンの身体が、赤い髪とともにふわりと舞いあがる。
     踏みだした刹那が歌うのは、子守唄。
     神秘的な歌声に、満身創痍のレプラコーンの意識は、あっという間に呑まれた。
    「――おやすみなさい、良い夢を」
     力尽きた淫魔の身体は、地に落ちる前に赤い花弁となり、四散。
     灼滅者たちが息をついた、その時。
     白い影が視界を覆い、次々と灼滅者たちを切り刻んだ。
     そう。
     まだ、戦闘は終わっていない。
     穿たれ、引き裂かれ、返り血に染まり無残な姿となり果てたウエディングドレスは、それでも主の仇を撃たんと、灼滅者へと攻撃をしかけてきていたのだ。


     戦闘前半。
     灼滅者たちは攻撃を淫魔に集中させ、ある程度の枷や、打撃を与えることに成功していた。
     一方で、眷属への対応・対策が圧倒的に不足。
     難なく抑えを突破したフライングウエディングドレスはたびたび主をかばい、さらに眷属の攻撃による回復の手間が、確実に灼滅者たちの手数を削った。
     時間をかければ、そのままレプラコーンと眷属を討ちとることはできただろう。
     しかし、今回の戦いには制限時間があった。
     ご当地怪人とはいえ、ダークネス。
     疲労を抱えた灼滅者たちが眷属と同時に対峙して、難なく勝てるような相手ではないのだ。

     ――ピピピピピピピピ。
     10分目のアラームが鳴り、灼滅者たちは回復を後回しに、フライングウエディングドレスに背を向ける。
     眷属はなおも灼滅者を追うべく攻撃をしかけたが、サーヴァントたちを壁に、陽桜がオーラキャノンを撃ちはなち、牽制。
     即時撤退を開始する。
    「おっかしいペナ~。待ち合わせ場所は、ここであってるはずペナ」
     森の奥から聞こえてきた声に気づいた眷属が、動きを止める。
     おそらく、淫魔が合流する予定だったペナント怪人だろう。
     しかし、灼滅者たちにその姿を確かめるだけの余裕はない。

     聞こえるのは、砂利を踏みしめる複数の足音。
     そして、息つく仲間たちの呼吸音。
     行く手をさえぎる枝葉を乱暴に振りはらいながら、8人とサーヴァントたちは月明かりを頼りに、夜闇を駆けぬけていった。
     
     

    作者:西東西 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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