武者アンデッド北へ~碑より蘇りし

    ●セイメイ
     白の王セイメイの前に平伏しているのは、武者鎧姿のアンデッドであった。
    「北征入道への合力が、そなたらの望みでございますか」
     主の言葉に、武者は更に深く平伏した。
     武者に投げかけられる怜悧な眼差し。セイメイは小さくひとつ頷くと、
    「よろしいでしょう。各地に封じていた武者達を呼び起こし、北征入道の元に馳せ参じさせましょう」
     そしてひとりごとのように呟いた。
    「蒼の王コルベインの北征洞窟が現世に出現する事は、私の計画の助けにはなれど、邪魔にはならないのですから」
     
    ●武蔵坂学園
    「白の王・セイメイが、札幌のダンジョン事件を起こしているノーライフキングに、援軍を送ろうとしているらしいのです」
     春祭・典(高校生エクスブレイン・dn0058)は集った灼滅者たちに端的に告げた。
    「その援軍とは、鎌倉時代の武者のような姿のアンデッド達です」
     武者アンデッドは、サイキックアブソーバーの作動によって消滅しそうになった時、セイメイの力で各地に封印され、難を逃れた。以来セイメイ配下となったが、こたびの『北征入道』の札幌での活動を知り、援軍に行きたいと申し出、セイメイもそれを許した。
     封印解除と札幌への移動までには、まだ時間がある。けれど、一旦出現してしまえば、出現してから10分程度で、今度は地に飲まれるように消えて北海道のダンジョンに転移してしまうようだ。
    「つまり」
     典は灼滅者たちの真剣な眼差しを見返して。
    「予めアンデッドが現れる場所で待機しておいて、ターゲットが現れたら、消えるよりも前に灼滅しなければならない、ということです」
     武者アンデッドは古戦場跡など、因縁のある土地に封印されており、
    「僕が予知したのは、群馬県……彼らの時代で言うところの上野国の神社です」
     典は群馬県東部の地図を開き、鳥居マークを指さした。
    「この神社の隅っこに、小さな石の碑が幾つも立ってまして」
     古すぎて銘などはすり減って読めないが、
    「この地の有力領主の配下の、戦死した武者たちを祀った碑と言われてます」
     真夜中、その碑の下から武者アンデッド達が蘇る。
    「現れるのは、1体の強力なボスアンデッドと、その手下6体です。ボスは『四死兼(よしかね)』と名乗っていて……おそらく生前は吉兼とか義兼とかいう名前だったのでしょうが」
     4回死ぬまで蘇る……というような意味を込めた改名だろうか。
    「四死兼は、ダークネスに準じる力を持ち、手下もいつものアンデッドより強力です。しかも彼らはすぐに転送されてしまうわけですから、ひたすら守りを固めてきます」
     彼らからすれば、攻撃を10分堪え忍べば、確実に逃げられるのだから。
    「これだけの戦力を持ち、しかも守りに入ったアンデッドの一隊を殲滅することは、皆さんをもってしても難しいでしょう。ですから『北海道に渡る戦力をできるだけ削る』ことを目標にして戦って下さい」
     ただ注意してほしいのは、灼滅しきれなかったアンデッドは、転移後に回復してしまうので、1体ずつ確実に止めを刺さなければならない。
     ひととおりの説明を終えた典は、難しい顔のままで。
    「白の王セイメイが援軍を送るという事は、札幌のダンジョン事件が大きく動き出そうとしているということでしょう。武者アンデッドを可能な限り灼滅し、その上で、札幌のダンジョン事件の動きに備える……今ならまだ間に合いますので、どうかよろしくお願いします!」


    参加者
    黒瀬・夏樹(錆塗れの手で掴むもの・d00334)
    レナ・フォレストキャット(山猫狂詩曲・d12864)
    イーニアス・レイド(楽園の鍵・d16652)
    鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)
    北条・葉月(独鮫将を屠りし者・d19495)
    風峰・静(サイトハウンド・d28020)
    饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)
    アーデルベルト・エルツ(闇を睨むヴァイセラーベ・d34332)

    ■リプレイ

    ●夜の神社
    「古戦場に眠る武者のアンデッド、か……」
     カサカサに乾いた古木の陛に腰掛けて、北条・葉月(独鮫将を屠りし者・d19495)が呟いた。本殿の脇の能舞台から件の碑群を間近に見守ることができる。10基ほどの碑は、大きいものでも50cm高、それと意識して見なければ、碑であることに気づかないような荒削りの石だ。
     けれど曰く有りと知る灼滅者たちには、碑から不気味な妖気が滲みでているように感じられるのだった。薄い夜霧の中、外の道路の街灯と持ち込んだ灯りの中、碑は黒くうずくまっている。
    「セイメイにしろ北征入道にしろ、何を企んでいるのか知らないが、ろくでもねぇことなのは間違いねぇ。ここで奴らの狙いを挫いてやろうぜ!」
     うにゃ、と葉月の檄に頷いたレナ・フォレストキャット(山猫狂詩曲・d12864)であるが、猫っぽく首を傾げて。
    「武者の骸骨が甦って向かう北海道に、何があるのかにゃ?」
     だよなあ、と風峰・静(サイトハウンド・d28020)がおっとりと、
    「ここの武者共は、入道に義理立てする理由があるのかな。いざ鎌倉、みたいな?」
     武士道精神は感心ではあるが、ここで阻止しないわけにはいかない。
     んー、鎌倉の武者ねえ、と饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)が、
    「北征入道って名前が似合いそうで、鎌倉時代の人って、やっぱり橋で刀狩ってたあの人?」
     でも『あの人』はアンブレイカブルっぽいから違うかなあと首を捻る。
     渋い表情なのは鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)。
    「ここんとこ猫も杓子も北へ北へ、きな臭いことこの上ないぜ。まあ、やれることをやるまで……ん?」
     言葉がとぎれた。ドン、と碑の方で何か重たいものが倒れる音がしたのだ。
     灼滅者たちはハッと腰を浮かせたが、いつの間にか夜霧が濃くなっていて、碑がよく見えない。静が碑群の間に置いておいたカンテラの灯りがぼうっと滲む。この距離も見通せないほど急激に濃くなる夜霧って……。
     バタン、ズシン、と重たいものが倒れる音は続き、そして。
    『エイエ……オー……』
     遠く地の底から響いてくる不気味な……鬨の声?
    「現れたようですね」
     アーデルベルト・エルツ(闇を睨むヴァイセラーベ・d34332)が携帯を取り出すと素早くアラームを5分・7分にセットした。
    「いくぞ……Are you ready?」
     葉月の解除コードを合図に、灼滅者たちは能舞台を飛び降りた。

    ●戦闘開始
    「ここから碑まで障害物はないよ!」
     見通しの悪い夜霧の中、明るいうちに戦場の状態を確認しておいたイーニアス・レイド(楽園の鍵・d16652)が、真っ先に突っ込んでいく……と。
     突然眼前に、ボロボロの鎧を着け、錆びた刀を手にした骸骨が。
    「あっ、いた!!」
     イーニアスは咄嗟に裁きの光を骸骨に浴びせかけ遠ざける。
    「天国から札幌を目指す屍、不愉快だな! ……いいよ、僕がカミサマに祝福されない醜い生から救ってあげる!」
    「打ち合わせ通り、弓手から狙っていきましょう!」
     黒瀬・夏樹(錆塗れの手で掴むもの・d00334)が声をかけながら護符を投げて五芒星型の結界を張った。灼滅者たちは装備した照明を掲げ弓手を探す。
    「見つけたぞ!」
     葉月が叫んだと同時に、3体固まって矢を番えようとしていたアンデッドに竜巻のような回し蹴りを見舞った。すかさず半獣状態の樹斉が冷たい炎を放ちながら、
    「武者なら、名乗り上げたらどう!?」
     と呼びかけると、
    『ワレコソハ、ヨシカネ……』
     地響きのような声がして、弓手の背後に、配下より2回りも大きなアンデッドが現れた。鎧も兜も手下たちより明らかに立派で、抜き身の刀も怪しい光を放っている。
    「(これが四死兼か……確かにただのアンデッドではない)」
    『……ソノホウラコソ、ナヲナノレ……』
     迫力と妖気に気圧されそうになるが、今やるべきは速攻で弓手を倒してしまうこと!
    「我らは武蔵坂の灼滅者!」
     脇差が応じて、最も前にいた弓手の左手にするりと回り込み、愛刀『月夜蛍火』を鎧の隙間である脇の下に斬りつける。
     源氏の武者かもと予想を立てていた脇差は、接近した数秒の間に相手を素早く観察したが、朽ちかけた鎧兜から手がかりは読み取れそうもない。
     番えかけていた矢を取り落としそうになった弓手を、
    「肉球パンチいくにゃん!」
     レナが鬼の手ならぬ猫の手で抑えつけ、
    「さー、僕が相手だよ、こっち向いてー!」
     静がこれみよがしに槍を振り回して突っ込んでいく。
    「先ずは戦力を削らせて頂きますが」
     アーデルベルトは配下の後ろに佇む四死兼に冷静な視線を投げて。
    「私は貴方へ災いを運ぶ白い烏……この翼が届くのなら遠慮なくその命を頂戴致します」
     炎を宿した蹴りを最初のターゲットとなった弓手に見舞った。
     夜霧が薄れはじめ、武者たちの全貌が明らかになってくる。弓手の後ろに四死兼、脇に刀手。
     ギラリ、と刃を光らせて、四死兼が刀を振り上げた。
    『……イヨ』
     四死兼の指示とほぼ同時に、弓手は番えていた矢を、一斉に前衛に撃ち込んだ。
    「!!」
     降り注ぐ矢を避けようとしているところに、
    『キリコメ!』
     四死兼を含めた4体の刀手が一斉に斬りこんできた。
    「あ……危ない!」
     四死兼の刃が、挑発したアーデルベルトに迫っているのを見て、イーニアスはぎりぎりで体を入れた。
     ざくり。
    「う……」
     深々と、小さな体に刃が食い込んだ。
    「うわっ、強烈だな!」
     静が、膝をついてしまったイーニアスに急いで縛霊手を掲げ癒しの光を送った。予知通り、四死兼はダークネス並の戦闘力を有しているようだ。統率がとれている分、手下の太刀や弓の威力もあなどれない……しかし今夜は、全てを倒す必要はない。できるだけ戦力を削ることが目標だ。すなわち。
    「ボスはとりあえずおいとけ、弱ってるヤツから片づけちまおうぜ!」
     葉月が緋色のオーラを宿した蛇剣をファーストターゲットの弓手に絡みつかせた。そこから吸い取った精気が太刀傷を癒していく。
    「アンデッドから生命吸収ってのもなんだけどな……」
     思わず呟くと傍らにいた脇差が、
    「そういわず、せいぜい活用させてもらおう」
     続けて注射器を振り上げて迫っていく。狐型となった樹斉はダイダロスベルトを伸ばして敵の動きを阻害し、
    「(武士がなりふり構わない遅滞殲術をとるってことは、それだけ譲れないものがあるってことでしょうけど……)」
     夏樹は自らの内部から漆黒の弾丸をとり出して狙いを定め。
    「……それはこっちも同じですから!」
     レナも、
    「うにゃ、これでも喰らうにゃ!」
     素早く影の虎を放ち、回復なったイーニアスは、
    「愛しの我が主よ、尊きご慈悲を!」
     立ち上がりながら前衛に癒しの風を吹かせた。アーデルベルトは倒れた碑を踏み台に高く跳び、庇おうとした刀手を飛び越え、ターゲットに組み付いて。
    「屍は土に還るのが世の理、今一度貴方に絶望色の死を――沈みなさい」
     首をへし折る勢いでぐしゃりと地面にたたきつけた。
    「まずは1体」
    『……コシャクナ』
     急速に風化していく手下の屍を一別した四死兼は刀を振り上げ、
    『イヨ……ナゲ!』
    「うわあっ!?」
     中後衛に無数の矢が、同時に前衛を青白い光の衝撃が襲った。

    ●5分頃
    「させるかっ!」
     静がぎりぎりで夏樹の前に体を入れた。その肩口に重たく鋭い四死兼の刃が食い込む。
    「ありがとう静さんっ!」
     歯を食いしばって立ち続ける静の陰から、夏樹は素早く飛び出して、現在のターゲットである3体目の弓手に毒弾を撃ち込んだ。
     灼滅者たちは既に2体の弓手を倒している。3体目も瀕死だ。しかし、被っているダメージも小さくない。特に四死兼の刃は強力で、ディフェンダーは、何とかそれだけは攻撃手に当てまいと、癒し合いながら頑張っているが……。
    「……くっ!」
     回復の暇を与えまいとするように、刀手の1体が月光斬を放った。決定的なボスの刃は何とか防いでも、手下の統率の取れた攻めで、皆多かれ少なかれダメージを被ってしまっている……と。
     ピッ、ピッ、ピッ……。
     ダメージに息を荒げるアーデルベルトのポケットから、電子音が。
    「もう5分かよ、くそっ!」
     葉月がターゲットに突っ込んでいく。瀕死の仲間を刀手がかばおうとするが
    「援護するぜ!」
     脇差が影を伸ばして刀手を喰らいこみ、
    「サンキュ!」
     葉月は刃を、身を低くし転がるようにかわして。
    「どんだけ守りを固めてこようが、俺らがぶち破ってやるぜ!」
    『Cassiopeia』で渾身の魔力を叩き込むと。
     3体目の弓手は一瞬爆発するように輝き、そして動かない骨の山になった。
    「やったにゃ、やっかいな弓手はこれでいなくなったにゃ!」
     レナが『ルナティック・フェリン』を掲げて、葉月を追おうとする刀手に、行動を阻害する弾丸を撃ち込む。葉月は急いで敵から遠ざかりながら、虚ろな眼窩で消えゆく部下を見下ろすボスに。
    「四死兼! 俺らがここで徹底的に灼滅して、三度目の生は絶対迎えさせねえからな!」

    ●8分頃
    「くっ……カミサマ……まだ僕の光は消えませんから!」
     2人分の四死兼の月光斬を背中に受けたイーニアスは、彼の神への祈りを捧げながらよろりとよろめいた。
     先ほど7分を知らせるアラームが鳴った。ここまでに弓手3体と刀手1体を倒した。しかし受けたダメージもかなりなものだ。特に、
    「申し訳ない、イーニアス君」
     庇われたアーデルベルトの体力はギリギリだ。
    「僕はまだ何とかだいじょ……あっ、後ろっ!」
     イーニアスは、アーデルベルトの背後に刀手が回り込むのを見た。
    「!?」
     抜刀と同時にぎらりと刃が光り。
     咄嗟に振り向いたアーデルベルトの胸から血がしぶいた。
    「アーデルベルト!」
     仲間たちは切りつけた刀手に殺到しようとしたが、静が倒れたアーデルベルトに覆い被さり、
    「俺が守るから、決めちゃってよ!」
     見れば、ターゲットの刀手は四死兼に守られながら、鬨の声を上げて回復を図っているではないか。
    「うにゃ、もう8分くらい経ってるにゃ! ガンバルにゃん!!」
     レナが『にゃんこの手』を構えて気合いを入れ直すと、樹斉はこくんと頷いた。
    「(僕らは前衛よりは元気なはず!)」
     夏樹と脇差は、四死兼の後ろにいるターゲットへ回り込もうと左右から迫っている。夏樹は蛇腹剣型の影とウロボロスブレイドの二刀流、脇差の手には光る愛刀。しかしボスの巨体が手下への接近を阻んでいる。
     ふたりはちらりと目配せしあうと、
    「盾になるとは配下思いの将じゃないか。ハルファスとはえらい違いだな。だが俺達も手加減する訳にはいかない、悪く思うなよ!」
     脇差は敢えて四死兼の小手を斬りつけ、夏樹は具足を削り取った。
    『ム……』
     2人が四死兼を引きつけている間に、小さな人影が2つ、弱り切った刀手へと襲いかかる。
    「フォースブレイクくらうにゃ!」
     レナのロッドと、樹斉の『天雲』が5体目の手下にトドメを刺した。
     半ば獣形を解いた樹斉は、滅びゆく部下を見返った主にむけて、
    「800年も経っても、骸骨になっちゃっても、主君の命あれば参上するのが武士、なの?」
     もの悲しさのようなものを感じ、問わず語りに呟いた。
     5体灼滅。これで目標は達成だ!
     さて……。
     灼滅者たちは、わずか2体となった敵主従を取り囲んだ。
    「(四死兼を倒せるか……?)」
     ボスを北海道に渡らせたくはないし、ここまで散々痛めつけられた恨みもある。しかし、
    「ボ……ボスを倒すには時間が足りません、手下を」
     後方から苦しげな声が。自己回復とディフェンダーによって何とか身を起こしたアーデルベルトだ。
    「少しでも北へ向かう戦力を削るのが……」
    「そうだな」
     気持ちを切り替えて残った刀手を注視する。列攻撃やカバーで結構なダメージを受けているし、回復する暇もなかったはず。転送まで幾ばくもないだろうが、うまくすれば倒せるだろう。
     アーデルベルトを安全な後方に座らせたディフェンダー2人も包囲の輪に加わった。
    「2人も無理しない方がいいんじゃない? 目標は達成できたんだし」
     樹斉が心配そうにディフェンダーたちを見る。
    「いや、どーせあと少しだろ?」
    「うん、1体でも多く救いたいからね」
     2人とも身体はボロボロだが闘志は漲っている。
     おそらく攻撃はあと1回。四死兼は残った手下だけは守ろうと、必死に庇ってくるだろう。それをかわしながら刀手に攻撃を届かせるには、連携が大切。
     灼滅者たちは素早く視線を交わし、頷いた。
    「いくぜ!」
     まず葉月が蛇剣を四死兼に巻き付け、素早く獣形になった樹斉が子守歌を響かせる。
    「とにかく行かせないにゃん!」
     2人がボスを引きつけている隙に、レナが肉球パンチで刀手を殴りとばし、
    「イーニアス、僕らも反撃だ!」
     仲間を守り続けてきた2人も、オーラを宿した拳の連打と、光と化した聖剣で攻撃にでる。
    『グアアァァァァ!』
     蛇剣と子守歌の呪縛を振り払った四死兼は、必死に手下を救おうと吠えたが、その時には、脇差の影と、夏樹のトラウマを宿した拳が黒々と。
     ――最後の手下が崩れ落ちる様を、暗黒の眼窩が見つめる。その姿は正に落武者……。
    「まだいけるか!?」
     灼滅者たちが、立ちすくむ四死兼へと更に詰め寄っていくと。
     ぐらりと地面が揺れて。
    「うわっ? 地震!?」
     激しい揺れによろめく……みれば四死兼の足下の地面が、沼のように液状化しているではないか。そして巨体がみるみる吸い込まれていく。
    「あっ、転送か!?」
     灼滅者たちは慌てて遠距離攻撃を放つが、ゆれる地面に狙いは定まらず――落武者は、地底へと消えていったのだった。

    ●成すべきことは
     アンデッドが消えると、境内を覆っていた夜霧も妖気も消え失せた。
     灼滅者たちは疲れた身体にむちうって、戦場を片づける。
    「この石もセイメイが昔作ったのかな……」
     樹斉は倒れた碑を立てながらしげしげと観察しているが、今となっては何のへんてつもない古い石碑でしかない。
     アーデルベルトはしっかり回復を受け休息を取ったので、自力で歩けるまでに回復しており、一安心だ。それでも四死兼のダークネス並の強さは記憶に刻みつけられた。
     イーニアスは悔しげに、梢の隙間から見える北極星を睨みつけている。ボスを討ちもらしたことが悔しくてたまらない。
     その肩にぽん、と小さな手がおかれた。
    「目標はニャンとか達成できたにゃん!」
     レナだ。
    「悔しいのもわかるけどニャ……次のこと考えよう、ニャ?」
     イーニアスは唇をとがらせながらも、うん、と頷いた。
     一体、ダークネス各派が勢力を集めつつある北海道で、何が起きているのだろう……?

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月26日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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